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(未) Sinners <2002/アイルランド> ★★★

sinners.jpgSinners
2002/90min/アイルランド
ドラマ
監督:Aisling Walsh
脚本:Lizzie Mickery
出演:アンヌ=マリー・ダフ、Karen Ardiff, John Boland and Ruth Bradley、
IMDb評価:7.5/10

哲学度 ★★★
社会度 ★★
宗教度 ★★★
ゴア度 ★
閉塞感 ★★★

sinners1.jpgピーター・ミュラン監督2作目の「マグダレンの祈り」と同様、マグダレン修道院を舞台にした作品。こちらはBBC製作。どちらも2002年製作であるが、本作のほうが公開(放送)は早いようである。
「マグダレン~」で従兄にレイプされ修道院に入れられたマーガレット役のアンヌ=マリー・ダフが主演を務める。

「マグダレン~」では、何が“罪”で修道院へ送られたのかそれぞれのケースごとに詳しく描かれるが、本作では全員が妊婦であり、未婚での性交渉が罪となる。その背景は恋愛ばかりではなく、レイプや近親相姦も含まれるが、さほど触れていない。みな修道院内の便器のような椅子の上で産み落とし、一定期間母乳を与えられるだけで、赤ちゃんは予告なしに孤児院にもらわれていく。我が子を奪われる妊婦たちの苦悩に焦点を当てている。

「マグダレン~」と異なる点は、本作はカトリックの立場で描かれていること。少女たちは逃げ出したいと願うものの、やはり罪の意識を感じているのである。本作の意図は、当時は未婚での性交渉は認められておらず、それを破るとこうやって罪を償っていたんだよ、と伝えたかっただけだろう。「マグダレン~」のような痛烈な批判もなければ、女性の尊厳に触れる節もない。

マグダレン修道院の意義にも触れていないため、予備知識なしでいきなり本作の鑑賞では理解度は低い。罪を洗い流すと言う意味で洗濯に従事しているのだが、なぜ洗濯の仕事なのかの説明もない。あくまでも「マグダレン~」の補足としての鑑賞をオススメする。エンターテイメント性はなく閉塞感があるが、結婚を申し出る人がいれば修道院を出れるという希望も残した描き方をしている。救われる思いはするが、現実味の薄い演出にも思え、「マグダレン~」には及ばない。

<鑑賞>聞き取り度 60% 2011/10/27
[サイト内タグ検索] 日本未公開 アンヌ=マリー・ダフ
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マグダレンの祈り <2002/アイルランド=UK> ★★★★★

昔、日本語吹き替えで観た記憶がある。たぶん、民放。当時はハリウッド映画と韓国映画しか観ていなかったから、良さが全く分からなかったのだけど、観直して見て、かなりの衝撃を受けた。個人的には「ハンガー」とか「XXY」と並ぶ1級品。ますますピータ・ミュランのファンになってしまった。

magda.jpg

Magdalene Sisters
2002/119min/アイルランド=UK
ドラマ
監督/脚本/出演:ピーター・ミュラン
出演:ノラ=ジェーン・ヌーン、アンヌ=マリー・ダフ、ドロシー・ダフィ、ジェラルディン・マクイーワン、アイリーン・ウォルシュ
受賞:2002年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
IMDb評価:7.8/10



哲学度 ★★★★
社会度 ★★
宗教度 ★★★
ゴア度 ★



1964年、アイルランド、ダブリン。マグダレン修道院に、時を同じくして3人の少女が収容される。孤児バーナデットはその美しさで周囲の少年たちの目を惹きつけてしまうことが、マーガレットは従兄弟にレイプされたことが、そしてローズは未婚のまま赤ん坊を産んだことがそれぞれ“罪”とされたのだった。彼女たちは、修道院を管理する修道女たちに性悪女と決めつけられ、祈りと労働によって神に奉仕し“罪”を悔い改めるよう言われるのだった。しかしそこで彼女たちを待っていたのは、過酷な労働と自由の一切ない刑務所以上に非人間的な環境だった。@allcinema

magda1.jpgキリストによって改心した娼婦マグダラのマリアに因んで名付けられたマグダレン修道院。性道徳が厳しいとされるカトリックで、性的に“堕落した”女性たちを矯正させる目的で運営され、閉鎖される1996年までに延べ3万人もの少女が収容されたという。そこで経験した女性たちの過酷な実態を描いたドキュメンタリー「Sex in a Cold Climate」に衝撃を受け、監督は映画化を決意したそうだ。俳優ピーター・ミュランの監督第2作目。監督自身もカトリックである。なお、そのドキュメンタリーはDVDの特典に収録されている。

マーガレットの親戚の結婚式の場面から始まる。アイルランド独特の楽器が使われ、「The Well Below The Valley(谷間の井戸)」というアイルランドの民族音楽が奏でられる。その歌は近親相姦によって子供を産んだ女性の哀しい歌だという。結婚式に相応しいとは思えぬ歌詞は、あたかも独身女性たちを戒めるかのようでもある。この日、マーガレットは従兄にレイプされた。悲しみにくれるマーガレットは母に報告すると、司教へ伝えられ、翌日、修道院へ送られた。加害者の従兄にお咎めはない。

孤児院にいたバーナデットは美貌のせいで、少年たちの注目の的であった。肉体的交渉の有無によらず、美貌のせいで修道院へと送られた。そして、未婚のまま出産してしまったローズも修道院へと送られた。3人は性道徳の厳しいカトリックにおいて“罪”を犯した人間なのである。物語の舞台となるのは1960年代。同時に修道院へ来た女性3人と、もう1人クリスピーナの4人の視点で修道院の実態に迫っていく。この4人が見事なキャスティング。当時は新人、もしくは無名女優たちだったが、今ではアイルランドを代表する女優さんである。

magda2.jpg罪を洗い流すという意味で、少女たちは日々洗濯に従事していた。洗濯機がなかった時代であり、全て手洗い。労働による対価は表向きは修道院の運営費用に回されているが、実際はシスターたちの私腹を肥やしていたとされる。食事のメニューの違いでも明らか。更に、少女たちを一斉に裸に横一列に並ばせ、胸の形や陰部を笑いのネタにするという始末。
刑務所のように刑期があるわけでもなく、いつ出れるのかもわからなければ、出られる保証もない。ここでおばあちゃんになり、生涯を終える者も少なくない。信仰心の深さの違いなのだろうか。宗教とは救いだけではなく、さまざまな葛藤をも生み出すものでもある。耐え切れず逃げ出す者もいれば、ここで試練を全うすることが死後の幸せに繋がると本気で思っている者もいる。

修道院は96年に閉鎖され、4人のその後はテロップで流れる。矯正させる目的の修道院でありながら、4人は矯正されておらず、その後の道を踏み外してしまっている。やはりここでの生活や家族から見放されてしまったことで歪んでしまったように思う。性行為がいけないことだと洗脳されてしまったのも起因しているだろう。
本作の批判的な描写がバチカンから抗議を受けたとされるが、監督の主張は宗教冒涜ではなく、修道院そのものの存在意義に疑問を投げかけているのである。彼女たちの肉体的、精神的苦痛は計り知れない。

淡々とした描写でありながら、監督の主張も見せ場もはっきりしており、エンターテイメント性も高いが、催涙性の高い過剰な演出はない。ドキュメンタリー「Sex~」での当人たちの証言によると、実際はもっと過酷だったという。本作では、少女たちを娼婦にさせていたというくだりはないが、裸での品定めは娼婦にさせる前の儀式だとも言われている。本作では司教からの性的虐待のシーンが数秒ある程度、しかも意識してみないと見逃すほどのシーンであり、何が起こっているのすら分からない人のほうが多いと思われる。若干説明不足と感じる箇所も多いが、敢えて伏せていたように思う。関連作品を観ることで、説明不足箇所は補えるため併せて観ることをオススメするが、衝撃は一層大きい。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/26
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ジョジーの修理工場 <2007/アイルランド> ★★★★★

garage.jpg
ジョジーの修理工場/Garage
2007/82min/アイルランド
監督:レナド・エイブラハムソン
脚本:マーク・オハローラン
出演:パット・ショート、アンヌ=マリー・ダフ、コナー・ライアン、アンドリュー・ベネット、デニス・コンウェイ
IMDb評価:6.9/10

哲学度 ★
社会度 ★★
嫌悪感 ★★
映像美 ★


garage1.jpg地平線と雲が美しくとけあうアイルランドの片田舎、ガソリンスタンド兼修理工場で長年管理人を勤めるジョジーは、孤独ではあるが幸せに暮らしていた。ある夏、無口な15歳の少年デビッドがアルバイトとして一緒に働き始めると、ジョジーの運命は静かに動き始める。
次第に打ち解け、仕事が終わると裏庭へ回り缶ビールをあけて心を通わせる二人。そんなある朝、スタンドでジョジーを待っていたのは…。ジョジーの人生を、永遠に変えてしまったひと夏の出来事が、
心を大きく揺さぶる。@大阪ヨーロッパ映画祭

物語は静かに進み、やんわりじんわり心に響く感じがとっても私好み。トム・マッカーシー監督デビュー作「The Station Agent」を彷彿とさせるほのぼのとしたストーリー展開だが、残酷で理不尽な現実を見せつけられる。地味な小作であり、あまり多くの人の目に留まらないことを残念に思う。
アイルランド出身レナド・エイブラハムソン監督の長編2作目。前作「Adam&Paul(2004)」に引き続きマーク・オハローランが脚本を担当している。前作は訛りがひどくて途中挫折してしまったが、作風は共通していると記憶している。頑張ってもう一度観てみることにしよう。

garage2.jpg“ガレージ”とは日本語だと倉庫や車庫のことをいうが、英語だと“ガソリンスタンド”“修理工場”のことを示すと初めて知った。
ガソリンスタンド兼修理工場で管理人を勤めるジョジーは人柄がよく、誠実に仕事をこなしてはいるが、知能指数が少々低く、町の住人の中には馬鹿にしている者もいる。足りないジョジーを演じるパット・ショートという役者さんはアイルランドでは有名な喜劇役者だという。線路を歩く姿がとっても印象的で、手つかずの田舎の風景と足りない感じが滲み出ている歩き方が見事にマッチしていた。

パブで柄の悪い男性たちにいじられても、決して盾つくことなく歯を食いしばって耐えるジョジー。そんな彼に癒しを感じる女性もいるが、男として見ている訳ではない。純粋で愛すべきキャラクターだが、淋しさを1人で抱え込み、唯一心を許すのは職場と自宅の間で飼われている馬一頭だけであった。

ある日、15歳のデビッドがバイトで働き始める。無口で内心ジョジーを馬鹿にしていたが、次第に人柄に惹かれ友情が芽生え始める。しかし、ほんの少しだけ配慮が欠けた行動で2人を永遠に引き裂いてしまう。

田舎って人と人との距離感が近くていいなぁとも思うのだけど、反面煩わしい時もあるよね。ほんの些細なことでも罪人のレッテルを貼られてしまうと居場所がなくなってしまうのも現実。そんな狭い社会で生きるジョジーもまた厳しい現実に立ち塞がれてしまう。神経質になり過ぎている市民や、事務的に処理するだけの警察への批判とも取れる。ほのぼのとし、温かみのある作風からは想像のつかなかった現実の残酷さ。真面目に生きる人ほど損をしている理不尽な人生。純粋無垢であったがゆえに招いてしまった結末に涙が止まらなかった。

<鑑賞> 聞き取り度60% 2011/10/14
[サイト内タグ検索] アンヌ=マリー・ダフ
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