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(未) Home of Dark Butterflies <2008/フィンランド> ★★★★

home_20110720152447.jpg
Tummien perhosten koti
2008/105min/フィンランド
ドラマ、ミステリー
監督:ドメ・カルコスキ「Lapland Odyssey
原作:Leena Lander
脚本:Marko Leino
出演:Niilo Syväoja、Tommi Korpela、Kristiina Halttu、カティ・オウティネンペルッティ・スヴェホルム
IMDb評価:6.9/10

ゴア度 ★
民族度 ★★
緊迫度 ★★★
哲学度 ★★★


dark2.jpg悲劇的な幼年時代を過ごしトラウマになっている少年ユハニは、両親への反発から問題ばかり起こしていた。手に負えない両親はユハニを離れ小島にある更生所に送ってしまう。ある日、経営難で運営を断ち切るという話が浮上し、少年7人は家へ帰されることを告げられるが、7人はここに残ることを希望する。家に戻るよりはここにいた方がずっとマシだからだ。そこで、少年たちは養蚕業を始め、運営資金を稼ごうと起ち上がる…。

監督はキプロス共和国出身で、5歳でフィンランドに移住した方。本作は長編2作目にして米アカデミー賞外国語映画部門フィンランド代表候補作品に選出されている。3作目「禁断の果実」はフィンランド映画祭で上映されている。

本作はホラーではないし、季節も夏なのに、とにかく暗く、身震いするような寒さ。ここ数カ月の間に観た作品では一番怖かったし、今まで観たフィン映画で一番面白かった。スウェーデンが得意とするような心理スリラーで、コメディーばかりを描いているドメ・カルコスキ監督にこんな隠れた才能があったことには驚き。隠れたプロットが多くありそうで、何度か観ないと理解できないような難解さがある。日を改めて再見し、加筆したいと思う。

dark1.jpgここは少年院ではなく、更生施設。少年たちは犯罪を犯しているわけではなく、ある程度自由が許されている。なぜここに送られてきたのかが徐々に明かされていくが、想像を超える陰惨な悲劇には言葉を失ってしまう。明かし方もじわりじわりと神経を逆立てするような描き方で背筋が凍ってしまった。少年たちの過去を知り、彼らの心理全てを見透かしたような施設長もまた不気味。カウリスマキ作品でお馴染みのカティ・オウティネンが演じる施設で働く手伝い人の存在にもゾッとさせられる。
幼少時代の出来事が及ぼす影響、集団心理の描き方は興味深く、考えさせられる。

タイトルに“バタフライ”があるが、蝶ではなく蚕蛾(カイコガ)のことを言っている。
カイコは家蚕(かさん)とも呼ばれ、家畜化された昆虫で、野生には生息しない。また、野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物として知られ、人間による管理なしでは生育することができない。そんな習性と少年たちをかぶせるようなストーリー展開が素晴らしい。

<鑑賞> 英語字幕 2011/7/18

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(未) Sauna <2008/フィンランド> ★★★

sauna.jpg
Sauna
2008/83min/フィンランド
歴史、ホラー
監督:Antti-Jussi Annila(長編2作目)
脚本:Iiro Küttner
出演:Ville Virtanen、Tommi Eronen、Viktor Klimenko、カティ・オウティネン
IMDb評価:6.4/10


ゴア度 ★★
民族度 ★★★
緊迫度 ★★
哲学度 ★★★



sauna1.jpg1595年、ロシアとの戦争が終結し、ロシアとスウェーデンは共同で新たな国境を調査していた。ロシアからは戦時中に70人もの敵を殺したことが自慢のエリック、スウェーデンからはクヌート兄弟が参加し、共に北へ向かう。道中、ある村人を惨殺し、その娘を地下室に閉じ込めたまま一団はその村を去っていた。すると、行く先々で少女の亡霊らしきものを見かけ、罪の意識に苦しみ始める。そして、その後、辿りついた村は湿地帯に囲まれ、沼地にはサウナ小屋が佇んでいた。このサウナに入った者は全ての罪を洗い流すことができるという文書を発見した一団だが・・・。

映像に全く色がなくて薄暗く、殺伐と死重苦しい雰囲気はいかにも北欧ホラー。ゴア度は低めだが、湿った空気感と鮮血の対比が醸し出している雰囲気がいい。カウリスマキが苦手で、フィンランド映画全般に対して苦手意識を持ってしまっているが、ホラーは結構良作に出くわす率が高いので、最近、積極的に観ている。

sauna2.jpg本作はフィンランドの誇り“サウナ”がうまくストーリーを引っ張っている。“サウナ”とは…
湖のほとりにサウナ小屋を建て、今では主に憩いの場として使われるが、かつては結婚式前の新婦が身体を清め、出産する場、老人にとっては死期が近付くと向かう場であった。遺体を安置する場所として使う地域もあったとか。劇中では“サウナ”に対する説明は十分なされていないので、知っているかどうかで理解度が大きく分かれるであろう。生や死の表現として“サウナ”が使われ、神聖な場所といった意味合いが強い。日本でいうと神社のような感じだろうか。一団が最後に行き着いた村は、沼地にサウナが佇んでいた。その村は病人が死ぬこともなく、赤ん坊が産まれない村であった。本来の“サウナ”として機能していない事実がストーリーの鍵となってくる。

フィンランドの国宗はキリスト教ではあるが、一般的に結婚式と葬式以外に教会に通う習慣はなく、事実上、無神論者が多い。 成仏していない亡霊の登場の仕方も日本に通ずるものがあり、宗教観が近いような印象を受けた。テンポが遅いのに、複雑な展開に混乱するが、結末の衝撃のために我慢して観てよかったと思えた作品。

<鑑賞> 英語字幕 2011/9/14
[サイト内タグ検索] 日本未公開 カティ・オウティネン
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マッチ工場の少女 <1990/フィンランド> ★★

Tulitikkutehtaan-tyttF6.jpg
Tulitikkutehtaan tyttö /The Match Factory Girl
1990/68min/フィンランド・スウェーデン
脚本/監督/編集:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ、ヴェサ・ヴィエリッコ
IMDb評価:7.7/10

<あらすじ>
「虹」という名をもつイリスはマッチ工場で働く平凡な娘。両親とは工場や倉庫の続く場末の古ぼけたアパートに住んでいる。彼女はけっして幸福とはいえない。家に帰れば母親に家賃をせびられ、義父には売春婦と罵られる毎日。ある給料日、ショーウインドーに美しいドレスを見つけたイリスは衝動的にそれを買ってしまう。そして、意を決して出かけたディスコで見知らぬ男に声をかけられ、誘われるまま一夜を過すことになるが…。

<レビュー>
最低限の演出に台詞、無表情な顔、古臭い歌謡曲、独特な間から感情を読まなくてはいけないスタイルのカウリスマキ監督。初めて観た時は静止画を連続で観ているような感覚で好きになれなかったが、慣れてくると段々良さもわかってくるようになる。日本にファンが多いのもわからないでもない。

本作は特に台詞が少ない。冒頭でマッチ製造工程が延々と映し出される。マッチってこうやってできるんだ~なんて興味深く見入ってしまった。主人公イリスの同じことの繰り返しでつまらない人生を代弁しているかのように開始30分はテレビから流れる世界のニュースが唯一の台詞。その内の一つがなぜか天安門事件。意味があるのかないのか、不自然さもカリウスマキ監督らしい。

主役はお馴染みのカティ・オウティネン。眉ひとつでの演技は素晴らしい。眉の動きだけで心の内を表現できる女優さんはそうそういない。ダンスホールで男性に声をかけられず淋しそうな顔といったら。足元にはただただ増えていくジュースの空き瓶が更なる虚しさを表していて、演出の仕方もまさにマリウスマキ。

音楽が台詞の代わりにもなっている。「お前はブスだとみんなは言うけど、俺は構わない」なんて曲を聞きながらケーキを一人淋しく食べるシーンはなんか可笑しい。この作品のために作られた曲なのか、こういう曲を探してくるのか、ほんと不思議なセンス。

「敗者3部作」の最後に相応しいほどの敗者っぷりは救いようがないのに、どよんとしていない結末こそがカウリスマキ・マジックと呼ばれるものなのか?社会の片隅でほんのささやかな幸せを求めているだけなのに、それすらも得られない人々を観ていて、人生ってこんなもんだなって思わされた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/25
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過去のない男 <2002/フィンランド> ★☆

man without a apast
Mies vailla menneisyyttä/The Man Without a Past/過去のない男
2002/97min/フィンランド/コメディー、ドラマ
監督:アキ・カウリスマキ
出演:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン、ペルッティ・スヴェホルム
受賞:2002年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演女優賞他18受賞
      オスカー他20ノミネート 
IMDb評価:7.6/10

「マッチ工場の少女」「浮き雲」のアキ・カウリスマキ監督が、過去のない男を主人公に描く再生と希望のドラマ。記憶を失った男が、周囲のユニークな人々との関わりを通して前向きに人生を歩んでいく姿を、現代社会への皮肉を効かせながらユーモアと哀愁を込めてオフビートに綴る。主演はマルック・ペルトラ。共演にカウリスマキ作品の常連カティ・オウティネン。。

<あらすじ>
 ある日列車に揺られ、夜のヘルシンキに流れ着いた一人の男。公演のベンチで夜明けを待っていた彼は突然暴漢に襲われ、瀕死の重傷を負う。男は病院で奇跡的に意識を取り戻すが、過去の記憶を全て失っていた。身分証もなく、自分の名前すらも分からない有様。しかし、幸運にもそんな彼にコンテナで暮らす一家が手を差し伸べ、男は彼らと共に穏やかな生活を送り始める。そして救世軍からスープが振る舞われる金曜日。男はコンテナの主人に連れられ支給場所へとやって来る。そこで男は救世軍の女性イルマと運命的な出会いを果たすのだった…。

<レビュー>
背後に注意していなかったために暴漢に殴られ記憶を失い、それ以後後ろを振り返らない主人公の生き方には皮肉的なユーモアがある。
冒頭とラストに使われている列車が止まることのない人生のよう。

無表情なのはフィンランド人の特徴だとは思うが、感情表現を極端に抑えた演技、独特な間があり、台詞のタメが、画面に注意をひきつける。
この独特なタッチが好きか嫌いかの分かれ目でもある。

前向きな主人公は、今の時代だからこそ強く感じる人生訓なのかもしれないが、私はこのとぼけた調子が苦手。
私には胸に迫るものがなかった。


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