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異魚島 <1977/韓> ★★★

iodo.jpg異魚島/이어도/Io Island
1977/110min/韓国
ドラマ
監督:キム・ギヨン
出演:イ・ファシキム・ジョンチョルパク・チョンジャパク・アム、クォン・ミヘ、チェ・ユンソク   
IMDb:6.2/10
第28回ベルリン国際映画祭出品作品

社会度 ★★★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★
鬼才度 ★★★
脚本 ★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★

iodo1.jpg現在…
ソウルの観光会社は済州島に新たな観光ホテルを建設した。そのキャンペーンとして記者たちを乗せた行き先不明の観光船が出港された。船に乗って告げられた行き先は“異魚島”。済州島の近くにあり、異魚島を見ると帰ってこれなくなるという伝説があった。その伝説の真相について乗客の2人は口論になっていた。すると、その1人ナムソクが失踪するという事件が起こった。チュンギョルは参考人として警察の事情聴取を受けるが、証拠不十分のため一旦釈放される。自らの容疑を晴らすため、ナムソクの出身地を訪ね、失踪原因と異魚島の伝説について調べ始める…。

回想…
男たちは漁に出たきり、船は帰ってこず、ナムソクは島唯一の男性となっていた。自分もこのままでは異魚島に命を取られてしまうと恐れたナムソクは恋人に必ず戻ると言い残し、島を去っていた。ソウルで大学を卒業し、アワビの養殖を始めるために帰郷する。一度は成功するものの、環境汚染で全滅し、繁殖方法を模索するが、ままならず、またソウルへ戻り新聞記者を始めていた。そして、観光船で失踪してしまった…。

監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の22作目。ギヨン監督には珍しい文芸作品。鬼才度は低めだが、医学の道を歩んだ経歴を感じさせる生物学的なテーマであり、私を虜にさせた一本である。
ギヨン作品の多くに出演し、眼力のあるイ・ファシパク・チョンジャが酒場役とムーダン役を演じ、ハマり役。癖のありすぎるキャスティングも見どころであり、タイトルに“女”が入っていないが、女性の苦悩をとことん掘り下げている。

iodo2.jpg失踪したナムソクは済州島近くの小さな島の出身であり、チョンギョルともう1人の男性はその島を訪ねた。生前のナムソクを知る人たちを一軒一軒訪ね、聞き回るうちに、ナムソクの過去と異魚島伝説が明らかになるというミステリー作品。
失踪原因の謎解きが主軸となり、男たちはどうなったのか、ナムソクの恋人は誰だったのか、恋人はその後どうなったのか、女たちの生活ぶり…など、現在と回想、幻想が入り乱れた構想になっており、あまり観客にやさしい作品ではない。映画字幕による2度目の鑑賞だが、あまりにも壮絶な人間ドラマなため、どれも現実とは考えにくく、どこからが幻想なのか自分なりの解釈に至っていない。

済州島同様、漁業が盛んな島であり、女たちは海女として海に潜り、男たちは漁船に乗って漁にでて生計を立てていた。しかし、漁に行ったきり船は帰ってこず、ナムソク1人を残し島に男はいなくなってしまっていた。島に残された女性たちは“異魚島”を見たから戻ってこれないという伝説を信じ込んで暮らしていた。長い部族社会で生きていたムーダン(巫女)の伝統と伝説が作り出した歪んだ社会を背景としている。

テーマは、“繁殖”。チュンギョルの妻は不妊に悩んでおり、精子を冷凍保存し、人工授精するというエピソードが冒頭から使われている。ナムソクの出身島でも男不在のため、子孫繁栄に苦しめられていた。子孫繁栄のために連れてこられた男性たちは、ムーダンから海女を数人ずつ割り当てられ、妊娠させる対価として彼女らの稼ぎで遊んで暮らしている。監督自身も妻から経済的援助を受けながら映画製作をしていたということもあり、やはりギヨン作品での男女の立場は普通の視点とは違う。女たちが男を求め、奪い合う姿は執念というより女性同士の意地のようにも感じるが、子を授かることができず、いわば女性としての役目を果たせない女性たちの苦悩を掘り下げている。アワビの養殖が環境汚染のために失敗し、新たに模索する姿も、そんな苦しむ女性たちの苦悩を反映させている。

印象的なのがムーダンの存在である。島での重要事項は全てムーダンの祈りによって取り決められ、翻弄されている女性たちの姿が強烈に描かれている。パンソリの力強い歌声がストーリーを引き立てていて、何よりも生命力の強さを感じさせる赤のチョゴリが艶めかしい。

<鑑賞> 2010、2012/3/13
初版:2010/6/20
最終版:2012/3/15

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陽山道 <1995/韓> ★★★☆

yong.jpg
陽山道
1955/90min/韓国
ドラマ、ロマンス
監督:キム・ギヨン
出演:キム・サンファ、チョ・ヨンス、キム・スンホ、パク・アム
IMDb評価:5.8/10

社会度 ★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★★
鬼才度 ★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★

yong1.jpg年頃のスドンとオクランは将来を約束していた。しかし、両班の息子ムリョンがオクランに一目惚れをし、2人の関係を壊し、オクランを奪おうとする。スドンとオクランはこっそり結婚を済ませようとしたが、ムリョンの手下に知られてしまい、喧嘩の末、スドンは誤ってその手下を殺してしまった。牢屋にぶち込まれるが、オクスンはスドンを救い出すため、ムリョンとの結婚を承諾してしまう…。

監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の2作目。現存する最も旧いフィルムとされていたが、デビュー作「死の箱(1955)」もフィルムが発見されたようで、何らかの形で観れる日が来ることを切望。
本作に至っては大きく欠損している箇所はなく、繋ぎ目の粗さは多少あるが、音声が途切れる程度でストーリーを追う上ではさほど支障はない。

yong2.jpg舞台は朝鮮王朝時代。封建社会を背景とした三角関係の末の悲劇を描いている。平民をストーリの中心に置き、両班との身分差や理不尽な社会も浮き彫りにしている。半世紀以上も前の作品であることを考慮すると、かなり型破りなストーリーであり、2作目にしてすでにギヨンワールド炸裂。

抱擁のシーンはあってももちろんラブシーンはない。この時代の婚前カップルに肉体関係はないと推測されるが、オクランに迫り拒否されるといったシーンもあり、2人の恋仲の深さや奥ゆかしさが感じられる。ところが、純愛をベースとしていながら、ギヨンの手にかかると清らかさも甘酸っぱさもなく、あたかも不倫の泥沼の末の悲劇のような展開。両班のせいで2人の運命は引き離され、泥沼化していく様とオクランの心情をクドいほどに掘り下げていく。

“陽山道(ヤンサンド)”とは、日本語で検索すると焼き肉店しかヒットせず、知り合いの韓国人に聞いても答えは様々かつ曖昧。掘り下げて調べてみたら、古くから歌われている京畿地方民謡だそうで、男女カップルの間に両班が入り込み、泥沼化していく三角関係の末の悲劇を歌った歌だという。まさに歌通りのストーリーだが、おそらくギヨン監督らしい濃い味付けにはなっているのだろう。劇中でもサムルノリやカヤグムの演奏が効果的に使われ、パンソリの独特な歌声が感情起伏の激しいストーリー展開を盛り立てている。歌詞が理解できればもっと感情移入できたかと思うと、少々悔やまれる。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/2
[サイト内タグ検索] キム・ギヨン監督 パク・アム
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殺人蝶を追う女 <1978/韓> ★★★★

nabi.jpg殺人蝶を追う女
1978/110in/韓国
ホラー、SF
監督/脚本:キム・ギヨン
脚本:イ・ムヌン
出演:キム・ジャオク、キム・ジョンチル、キム・マン、ナムグン・ウォン、イ・ファシ、キム・マン、パク・アム
IMDb評価:6.7/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★★★
宗教度 なし
民族度 ★★
鬼才度 ★★★★
脚本 ★★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★

ストーリー① (①と②は結末に触れています)
学生のヨンゴルは友人たちとピクニックに来ていた。蝶を追いかけて捕まえると、ある謎の美女に出くわす。オレンジジュースをご馳走になったが、その美女は自殺願望がある女性で、毒が盛られていた。誰でもいいから一緒に死にたかったと言う。幸い、ヨンゴルは一命を取り留めたが、その後、自分も自殺願望が芽生えてしまった。自殺を試みようと思った矢先に、見知らぬ中年男性が“意思”という本を売りにやって来た。その男は生きる“意思”について語るが、自殺をしようとする者にはそんな話は響かない。口論の末、ヨンゴルはその男を殺してしまった。ところが、翌日もその男はやって来た。その後何度殺しても、その男は蘇る。最後には、骸骨の姿で「生は意思だ~!」と叫びながら、灰になって行った。

ストーリー② (①と②は結末に触れています)nabi2.jpg
ヨンゴルは友人たちと洞窟へ出かけ、白骨体を見つける。こっそり家へ持ち帰ると、命が吹き込まれ、謎の美女が現れた。両親が決めた相手との結婚したくなく、死を選んだが、人間の肝臓を食べれば、またこの世に戻ってこれると言う。ヨンゴルの肝臓を欲しいとせがむが、ヨンゴルは頑なに拒んだ。その代わり一緒に暮らすために、アルバイトとして家で米菓子(円盤型)を作ることにした。機械を稼働し、ポン、ポン…と次々と作られた米菓子が宙を舞う中、2人は結ばれた。しかし、ヨンゴルの肝臓を諦めた美女は、再び骨にもどってしまった。

ストーリー③
ヨンゴルは彼女の骨を持って、考古学の教授を訪ねる。すると、教授の娘は①で毒入りオレンジジュースを飲ませた美女の友人だった。彼女の死がきっかけで教授の娘も自殺願望が芽生えていた。一方ヨンゴルは、3人の死をきっかけに生きる活力にみなぎっていた…。

nabi1.jpg監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の22作目。主演はギヨン作品3作目となるキム・ジョンチル。ドラマ「私の名前はキム・サムスン」「コーヒープリンス1号店」など日本でもお馴染みのキム・ジャオクが教授の娘役として出演している。ギヨン作品には欠かせないイ・ファシパク・アムもかなりクセのある役柄で強烈な印象を残している。

展開は初期のポランスキー監督を彷彿とさせ、ストーリーは江戸川乱歩、演出はアンジェイ・ズラウスキ監督といったところだろうか。私が観たギヨン8作品の中で一番カルト的でシュールで、ブラックユーモアに溢れる。検閲を通過させるためなのか、他の作品にはなかったどこか隠喩的表現方法であるが、ギヨンらしい独特な感性でキャラクターそれぞれの死生観を掘り下げていく。米菓子が宙を舞う中でのセックス・シーンは噂に聞いていた通りの名珍場面だった。
キム・ギドク監督も「悲夢」でラストに蝶を用いているが、本作でも蝶は死の世界へと誘う役目を持っており、“殺人蝶”といった独特な表現を用いている。教授の娘の趣味が蝶の標本だったり、教授は考古学の権威だったり、死を意識させる演出もギヨン作品らしい。“殺人蝶を追う女”とは自殺願望がある女のことである。

現実なのか、夢なのか、はたまた妄想なのか…解釈は観る側の想像に委ねられているが、結局のところ、そんなのはどうでもよく、ギヨン作品では珍しく清々しい爽やかなエンディングとなっている。独立しているように見える3つの話だが、女性たちの死生観を通して、1人の青年が失いかけた“生きる意思”を見出す過程を描いており、全体を通じて、心の更生と希望が感じられる展開になっている。

キム・ギヨン監督作品を観ていつも思うのは、かなり発想がぶっ飛んでいて、開いた口が塞がらない状態になるのだが、実は至って真面目なことを言わんとしているということ。何度も生き返る男をねちっこく描くくどさは伝えたいことが明確であることの裏返しでもあるのだろう。男は“生きる意思”を力説しているが、「“意思”次第で、人生には生きる意味ができる」というメッセージは、いつの時代でも通ずる普遍的な問いかけであり、自殺者が多い韓国の作品となると更に感慨深いものがある。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/6
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玄海灘は知っている <1961/韓> ★★★★

KMDbの今月の特集(無料配信)はなんとキム・ギヨン監督。しかも11本も。どれだけ待ち焦がれていたか。
鑑賞済み4本も含め、全作観る気満々でいるのだが、内臓を引っかき回される感覚…「陽山道」と本作のたった2作でかなり気が滅入った。
この調子で11本も立て続けに観たら、ノイローゼになりそうだけど、こんな貴重な機会を見逃すわけにもいかないし…
おそらく全作観て、全作記事書きます(or書き直します)!ので、他の作品のアップはしばらくない、と思います。

genkainada.jpg
玄海灘 은 알고 있다 /玄海灘は知っている
1961/韓国
恋愛、戦争
監督: キム・ギヨン
出演: コン・ミドリ、キム・ウンハ、イ・サンサ

社会度 ★★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★★
鬼才度 ★★★★

脚本 ★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★


太平洋戦争の真っ只中の1944年。多くの朝鮮人学生たちが志願兵として半ば強制的に徴兵された。その中にいたア・ロウンは名古屋の日本軍輸送部隊に入隊した。ある日、秀子という日本人女性と出会い、恋に落ちてしまった。日本人と朝鮮人の恋愛など許されるはずもなく、秀子の母親はひどく反対した。しかし、秀子の妊娠を知り…。

genkainada1.jpg監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の10作目。パク・チャヌクやキム・ギドクといった世界的映画監督を輩出する下地になっていると言われている。長らく失われていたフィルムが次々と発見されたり、復元がされたり、観る機会が増えるのはファンとしては有り難いこと。本作に至っては東京国際映画祭時、2か所の音声と映像の欠落箇所はがあり字幕補足とのことだが、私がIMDbで観たのは音声だけの欠落が2か所で字幕なし。欠落映像が復元されたのか、そのままカットされたのかは不明。いずれにしても観れたことに感謝。

日本軍に入隊させられた朝鮮人兵士の視点から旧日本軍や日本を見つめた作品。私にとって7本目のキム・ギヨン作品であり、今までは女性を主人公にした作品ばかり観てきたが、本作のような男性を主人公にした作品は初めてであり、ユーモアを感じたのも初めてかもしれない。
前半は輸送部隊での様子がメインだが、中盤からは日本の一般家庭を舞台とし、日本人と朝鮮人の壮絶な恋愛ストーリーに移行していく。日本軍からの差別、戦争、恋愛といった苦難にも立ち向かっていく青年のたくましさが前向きに描かれている。

genkai2.jpgほとんどが日本人という設定だが、全員が流暢な韓国語を話しているため、誰が日本人約で誰が朝鮮人役なのか見分けがつき難い。ア・ロウンに靴の底についた犬のフンを舐めさせたり、暴力シーンもあり、民族差別的な発言も多少あるが、下っ端に対するイジメと捉えることもでき、反日だと気分を害することはなかった。日本に対する批判というよりは戦争そのものを訴えているような気がした。北朝鮮映画のように日本人全てが悪人として描かれていないことにも好感。

秀子があまりにも積極的で奥ゆかしさはどこにもない。この時代の日本人女性とは程遠いキャラクター設定ではあるが、ギヨン監督が描く女性像が常に魔性の女であることを考慮すると、比較的控えめということだろうか。

唐突に挿入される空襲や空爆の様子が何ともリアル。拍車がかかる終盤の展開の凄まじさは毎度のことだが、ラストは地獄絵図そのもの。とんでもない恐怖のクライマックスを見せつけられた。この2人の恋の行く末は、“玄海灘は知っている”…のか。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/4
[サイト内タグ検索] キム・ギヨン監督
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252. 晩秋 <1981/韓> ★★

late.jpg
晩秋/Late Autumn
1981/95min/韓国 
ドラマ、ロマンス
監督:キム・スヨン
脚本:キム・ジホン
出演:キム・ヘジャ、チョン・ドンファン
IMDb評価:2.8/10

韓流度 ★
催涙度 なし
映像美 ★






late2.jpg殺人罪で服役中のヘリムは刑期がまだ2年残っているが、模範囚だったため母の墓参のための特別出獄を許可される。看守付きで江陵行きの列車に乗ったヘリムは、ボックス席である青年ミンギと会い、恋に落ちる。しかし、ミンギは犯罪組織に巻き込まれ、警察に追われており、一緒に逃げようと持ちかける。ミンギの提案を断り、服役終了後の2年後に会うことを約束し、刑務所に戻り刑期を全うすることにする。そして、約束通り待ち合わせ場所へ出向くが、ミンギは警察に捕まり、刑務所に送られたと知る…。

母なる証明」の母役のキム・ヘジャとドラマ「秋の童話」「冬のソナタ」「春のワルツ」でお馴染みのチャン・ドンファンの映画デビュー作となる。2人ともお若い。
late1.jpg
オリジナルはイ・マニが監督を務め、韓国映画史に残る不朽の名作といわれているが、残念ながらフィルムは現存していないため鑑賞不可能。脚本だけ残っておりその後4回リメイクされている。ヒョンビン出演の最新版は11月日本公開予定。

1966年 韓国 『晩秋』    イ・マニ監督 (オリジナル版)
1972年 日本 『約束』    斉藤耕一監督
1975年 韓国 『肉体の約束』 キム・ギヨン監督
1981年 韓国 『晩秋』    キム・スヨン監督
2010年 韓国 『晩秋』    キム・テヨン監督 (ヒョンビン主演)


2人の共通点は“孤独”であり、惹かれ合う様を描くロードムービー。複雑な2人の状況ゆえ、感情を抑えた演技ながら、情熱を燃やす恋物語は晩秋の紅葉でのラブシーンが印象的。裸は代役と思われるが、代役を使ってまでヌードのシーンを入れなくてもよかったように思う。冒頭から哀愁が漂い、ラストは悲壮感が突きつけられる。

日本でもリメイクされているので、おそらく観てる方も多いのでは?
韓国版4作品の脚本はキム・ジホンが担当しており、私が観たキム・ギヨン監督版と本作を比較するとストーリーや設定、構図に大差はなく、対照的な演出に監督のカラーが強くでていると感じる。キム・ギヨン監督版はアレンジをたっぷり加え、ヘリム、看守、祈祷師といった女性に強烈なインパクトがある仕上がりに対し、本作スヨン版は、文芸監督といわれるだけあり、原作を忠実にリメイクしたと言われている。かなり観やすいが、その分、面白味に欠ける。キム・ヘジャの個性もあまりでていない。

<鑑賞> KMDb配信にて 2011/7/10

[サイト内タグ検索] キム・ヘジャ キム・ギヨン監督
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キム・ギヨン/金綺泳/김기영

キム・ギヨン/金綺泳/김기영 (1919年10月10日-1998年2月5日)
giyoung.jpg
パク・チャヌクやキム・ギドク、ポン・ジュノといった世界的映画監督を輩出する基盤となっているキム・ギヨン監督
女性の内面描写を徹底して生々しく描いた所謂“魔性の女”系列作品を得意としている。
キム・ギドク好きとしては観ずにはいられない。





【監督作品】
1955 死の箱 The Box of Death
1955 陽山道 Yangsan Province
1956 鳳仙花 A Touch-Me-Not
1957 女性前線 A Woman’s Front
1958 黄昏列車 The Twilight Train
1959 初雪 The First Snow
1959 十代の反抗 A Defiance of Teenagers
1960 悲しき牧歌 A Sad Patoral Song
1960 下女 The Housemaid 
1961 玄海灘は知っている Hyeon-hae-tan Knows
1963 高麗葬 Goryeojang 
1964 アスファルト Asphalt
1966 兵士は死して語る A Soldier Speaks after Death
1968 女(オムニバスの一篇) Woman
1969 美女、ミス洪 Lady Hong the Beauty
1969 レンの哀歌 The Sad Song of Len 
1971 火女 Woman of Fire
1972 虫女 The Insect Woman
1974 破戒 Transgression 
1975 肉体の約束 Promise of the Flesh 
1976 血肉愛 Love of Blood Relation
1977 異魚島 I-eo Island 
1978 土 Earth
1978 殺人蝶を追う女 A Woman after a Killer Butterfly
1979 水女 Woman of Water
1979 ヌミ Neumi
1981 潘金蓮 Ban Geumryeon
1982 火女’82 The Woman of Fire ‘82
1982 自由処女 Free Woman
1984 馬鹿狩り Hunting of Idiots
1984 肉食動物 Carnivore 
1995 死んでもいい経験 An Experience to Die For


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[ 2011/01/28 21:24 ] 敬愛なる映画人たち | TB(0) | CM(0)

218. 肉体の約束 <1975/韓> ★★★☆

kimkiyoung.gif
육체의 약속/肉体の約束/Promises of flesh
1975/104min/ドラマ/18歳以上
監督:キム・ギヨン 
脚本:キム・ジホン
出演:キム・ジミ、イ・ジョンギルパク・チョンジャ
受賞:第14回 大鐘賞 主演女優賞(キム・ジミ)、助演女優賞(パク・チョンジャ)、録音賞
IMDb評価:6.7/10

韓流度 なし
衝撃度 ★★★★
官能度 ★★★
 
<あらすじ>
男性不信から犯罪を犯した女性を通して,現代人の魂の救済を訴える作品。金綺泳監督は,人間の内面のエゴイズムを描く作品が多いが,本作は女性をリアルに描いており,優れた文学性が高く評価されている。

模範囚であるスギョンは,特赦でしばらく刑務所から出ることが許され,看守とともに母の墓参りに向かう。そして,乗った列車で向かい側に座ったフンという男を知るようになる。
強盗罪で刑事から追われている身のフンは,スギョンを見た瞬間,強い印象を受けて真の愛情を感じるけれど,自分が強盗犯であることを明らかにしない。
二人は,私生子として生まれた立場に共感を感じて脱出を試みるが,スギョンは,思い直して残る刑期2年を終えて再会する約束をして刑務所へ戻る。
しかし,フンは,別れる前にスギョンにプレゼントをしようとして警察に捕えられる。これを知らないスギョンは,2年後に出所してフンをひたすら待つのだった。

<レビュー>
1966年 韓国 『晩秋』    イ・マニ監督がオリジナル版となる。
その後、少なくとも4回リメイクされている作品でもある。
1972年 日本 『約束』    斉藤耕一監督
1975年 韓国 『肉体の約束』 キム・ギヨン監督
1986年 韓国 『晩秋』    キム・スヨン監督
2010年 韓国 『晩秋』    キム・テヨン監督 (ヒョンビン主演)

このキム・ギヨン監督版しか観ていないので比較はできないが、
いろんな方の批評を読むと、オリジナルとは全く別作品に作り変えてしまったようだ。
異魚島」同様、時間軸がはっきりしない構成で混乱するが、ストーリーはいたって単純。

「肉体の約束」
このタイトルを目にし、キム・ギヨン監督なので一筋縄ではないことはわかっていたが、やはりすごい内容だった。
あまり上品なタイトルではないが、まさにズバリなタイトルであることは観てみればわかる。
まだ処女性を重んじていたであろう1975年の作品であることにも驚き。
独特な女性観を描くことで有名なキム・ギヨン監督だが、私が観た4作品の中で本作が一番リアルだ。
この作品で初めて知った主演のキム・ジミの艶っぽさもあって、男におもちゃのように弄ばれた女の心情が実にリアルで怖いとさえ思った。

そして、看守役パク・チョンジャの存在感の大きいこと。
異魚島」では祈祷師を演じていが、たった2作品の鑑賞だけで強烈な印象を持ってしまった。
他の作品も観たいのに、なかなか手に入らないのが悲しい。
キム・ギヨン監督作品は女優さんのインパクトが強く、男優さんは印象が薄い。
相手役の男性 見覚えがある顔だと思ったらイ・ジョンギルだった。
ドラマのイメージと全然違う。

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193. 高麗葬 <1963> ★★★☆

kouryo.jpg
高麗葬
1963/90分 白黒
監 督: キム・ギヨン
出 演: キム・ジンキュ、イ・イェチュン 
IMDb: 7.1/10

高麗時代まであった姥捨ての習慣があったそうで「高麗葬」と言っている。
姥捨て山伝説を話題に人口問題について専門家が議論する現代のシーンから始まる。
そして映像はすぐに3年間干ばつに苦しむ農民の苦悩へ一転。

テーマは飢餓と貧困が招く悲劇。
水を得るためにじゃがいもが必要。じゃがいもを得るために女は体を買ってくれる相手を探す。
子供ですらじゃがいもと引き換えに差し出してしまう。
「生きる」ために全てのことを犠牲にするので、人間の怨讐や醜い部分が浮き彫りになっています。
更にびっこや聾唖(ろうあ)など肉体的欠陥者も重要人物となっていて、強烈な世界観を作っている。
映像は白黒なのに描写が濃く、恐ろしいです。

北朝鮮関連本をよく読みますが、この作品はまさに私が抱いている北朝鮮の農村部そのものでした。
北朝鮮の現状を描いた「クロッシング」は本やこの作品に比べると表面的なことしか描いていない。
この作品のほうが北朝鮮の「今」を描いていると最も感じたのは巫女の存在感にある。
村人にとって巫女の占いは絶対であり、何の疑問も抱かずに服従、運命を委ねているのだ。
まさに独裁政治そのもの。

タイトル「高麗葬」のとおり、70歳になったら老人は山へ捨てられます。
上の写真は息子が母を背負い、捨てに行くところです。
「まだ生きたい」という欲望を断ち切り、息子の背中を見つめる母の姿や母を狙っている鷲(鷹?)は深い余韻が残ります。

本編は20分程度欠落していて、音声のみとなっている。
音声だけでも圧倒される作品ですが、欠落部分が一番面白かったような気もする。

↓ネタバレします。
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