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【短編】Factory <1971/ポーランド> ★★★

Fabryka
1971/17min/モノクロ/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
IMDb評価:5.9/10

工場にフォークリフトを導入するかどうかを検討する会議から始まる。工場の一室で行われているが、参加者は皆作業着ではなくスーツを着ている。後半になってやっと対顧客とのプロジェクト会議であったことがわかる。
どうやらここの製品が納期遅延しているらしく、延滞金も要求されている。輸送方法の変更も謀るつもりのようであった。

ポイントは全員がスーツ着用だということ。工場関係者が誰1人会議に参加していないことを意味している。工場労働者には意見を述べることも許されていないし、労働者へのシワ寄せもどうでもいいのでしょう。
現場を知らない官僚たちのみで決定づけられる表面的で絶対的な構造はポーランド社会への皮肉でもあることが観て取れる。
前職でこういう会議ばかりしていたので自分の仕事を覗いているようでもあった。退屈な作品だったけど、客観視できただけでも観る価値はあったかな。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/16
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デカローグ第10話+まとめ <1989/ポーランド>★★★

Dekalog, dziesiec
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:イェジ・シュトゥール、ズビグニェフ・ザマホフスキ
IMDb評価:8.4/10、9.2/10(全体)

第8話でうれしそうにゾフィアに切手を見せに来た老人の葬儀から話は始まる。葬儀で2年ぶりに顔を合わせた息子2人は遺品整理のために父のアパートを訪ねる。殺風景で質素なのに、防犯装置に厳重な金庫を完備した不釣り合いな部屋で、金庫を開けると大量の切手コレクションしか入っていなかった。父親が一生をかけて収集したものだが、興味のない者にとってはただの紙切れに過ぎず、兄弟は処分しようと考える。しかし、「この一枚でフィエットが買える、この一枚では家が買える。」とある収集家に言われ、兄弟2人の目の色は変わる。
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普通の話なら、全て売りさばいて豪遊するだろうが、本作がそんな単純な話であるはずがない。兄弟は、切手の魅力にとりつかれ、子どもの頃冷やかな目で見ていた父親と同じ道を踏み出してしまうのだ。コレクションの価値を更に高めようと不足分を買い足し、ドーベルマンを飼い防犯も強化する。更に驚くべきとんでもない手段で連作を入手する。

息子2人が収集を受け継ぐことは死んだ親にとっては喜ばしいことだろうが、収集ばかりにうつつを抜かし家族を省みなかった姿まで受け継いでしまった。妻子はほったらかしで没頭してしまうのだ。妻子には愛想つかされ、さらに、ある出来事をきっかけに兄弟関係にも亀裂が入り始める。物に執着したがために希薄していく人間関係をコミカルに描いている。この10話のみが喜劇となっている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15

<まとめ> ネタバレなしです。
7話は編集でカットされてしまったが、10話以外の全話に登場する人物がいる。
第1話では焚き木をするホームレス、第2話では病院の従業員、第3話ではタクシードライバー、第4話ではボートを運ぶ青年、第5話では建築現場で働く青年、第6話では買い物バックを運ぶ青年、第7では話駅員、第8話では講義を傍聴する学生、第9話では自転車に乗る青年。台詞はなく、重要な場面で登場人物とすれ違うだけだが、神のような存在感を残している。またミルクもよく使われ、印象深い。
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「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。」これもキェシロフスキ監督が残した言葉である。登場人物たちは、運命に翻弄される人間の孤独と苦悩の中で厳しい試練を与えられている。

不倫、盗み、殺人、ウソ。罪を犯す人物像はもともとは旧約聖書で描かれていた人々だ。誰もが本当はわかっているはずなのに、気付かなかったり忘れていたことを改めて気付かせてくれる。本作はそんな作品だった。個人を冷徹に描き、誰も責めない。補足的なナレーションもなく、観る側の想像に委ねられる描き方は、性別や年齢、境遇によって解釈や感じ方が異なるでしょう。

スタンリー・キューブリックは生前、「この20年間で一番素晴らしい映画」だと絶賛していた。きっとこれからも残る名作となるでしょう。



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デカローグ第9話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, dziewiec
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.2/10、9.2/10(全体)

9条「隣人の妻を欲してはならない。」をテーマにした第9話「ある孤独に関する物語」について。

「何人と性交渉を持ったか?」「8~15人」
「奥さんは魅力的か?」「うん。とても」
「それなら別れなさい」

医師に性的不能を告知されるシーンからスタートする。家に戻りベッドの中で夫は妻に、「愛人を作ってもいい」とさえ言う。「下半身だけが愛じゃない」という妻におそらく安心しただろうが、実はすでに若い男と不倫関係にあったのだ。何となく匂いを嗅ぎつけた夫は、電話に盗聴器をつけ証拠をつかもうとする。
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不倫の事実を知り絶望の淵に立たされた夫は離婚を決意するが、妻は愛人と別れ、夫とやり直したいと言う。愛人とは性欲を満たすためだけの関係だったのだ。愛人に別れを告げるが、彼にはその気はない。気晴らしのために1人で行ったスキーにも愛人はついて行ってしまった。それを夫は勘違いをし、夫婦の運命は思いもよらぬ方向へと進んでしまう。夫は妻の不倫を責めることなく、孤独の殻に閉じこもってしまうのだ。一度狂ってしまった歯車はどうなってしまうのか?
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車の助手席前のグローブボックスが閉めても閉めても開いてしまうのだ。中には愛人が残したノートが入っていた。別れたくても別れられない愛人との関係を暗示してたのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/14
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デカローグ第8話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, osiem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:7.9/10、9.2/10(全体)

8条「隣人に関して偽証してはならない。」をテーマにした第8話「ある過去に関する物語」について。

教授ゾフィアはワルシャワの大学で倫理学を教えている。講義を聴講したいとうアメリカから来た女性研究者を学部長から紹介される。研究者エルジュビエタはゾフィアの全著作の翻訳者であり、かつてゾフィアがアメリカを訪ねた際、案内をしてくれた人だった。
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この日の講義は、「デカローグ第2話」をテーマとした内容だった。自身の都合で子どもを産むべきか、おろすべきかを医者の判断に委ねるという話だ。「子どもの命が大切だ」という教授の言葉にエルジュビエタが口を開き、第二次世界大戦中のユダヤ人のある少女の話を始めた。ナチス時代のワルシャワで、命を守るためにその少女はある家庭にかくまわれ、カトリック洗礼の受けた。その家庭の夫婦が名付け親になることを一旦は承諾したが、結局は拒み、外出禁止の時間帯に少女は外へ出されてしまった。そしてナチス軍に捕まり収容所へ送られたという。

教授ゾフィアはすぐさま自分のことだとわかった。少女を外へ放り出した張本人だったのだ。そして、あの時の少女が研究者のエルジュビエタのことだったのだ。収容所は死を意味するのに、生きていたのだ。

実はこの出来事は誤解が招いてしまったことだったのだ。全ての事情を話しエルジュビエタの赦しは得られたが、未だ過去から立ち直れず、赦してくれない者もいる。ゾフィアとエルジュビエタが仲良さそうに歩いている姿を見て、気に入らない顔もしているのだ。誤解であったとはいえ、罪を赦すことは難しい。しかしながら、倫理学を教えていても、矛盾した行動を取らざるを得ないこともある。人間の弱さなのか、境遇なのか、はたまた偶然なのか。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15
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デカローグ第7話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, siedem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.0/10、9.2/10(全体)

7条「盗んではならない。」をテーマとした第7話「ある告白に関する物語」について。

マイカは16歳で娘アンカを出産するが、母親エヴァは自分の子として戸籍に入れてしまう。実父というのはマイカの国語教師で、その高校の校長は母親だったのである。母親は孫を自分の籍に入れ、その教師を辞めさせることで、この不祥事をねじ伏せ、体裁を保ったのだ。

「アンカは私の娘。マイカはあなたの娘」と夫に言う母親。校長としての地位もある彼女は、自分の思い通りにならないマイカに落胆すると同時に、孫アンカを自分の設計通りに育てようとしていた。この6年間、マイカは我が子に一度もママと呼ばれず娘と母親の関係を羨み、ついに自分が本当の母であると告白することにする。劇だか何かの練習中に忍び込んで娘アンカを連れ出してし、実父の元に向かったのだった。

実父はアンカを見るやいなや、すぐ自分の娘であることに気がついた。マイカはカナダへ行く予定だったから3人で暮らすつもりはなかったのだろう。わざわざ実父に合わせた理由はよくわからなかった。逆探知されないよう、マイカは公衆電話から家へ電話をかける。誘拐犯がマイカであることに動揺する母親に対し、父親は娘はマイカに返すべきだという。
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育ての親と産みの親という2人の親。大人の都合で起こした行動が後先、子どもにどう影響するのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/10

↓以下、ネタバレします。
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デカローグ第6話 および 愛に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★★

ドラマDekalog, szesc/映画 Krótki film o milosci
1989/58min,86min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:グラジナ・シャポウォフスカ
IMDB評価:8.5/10(ドラマ)、8.3/10(映画)9.2/10(全体)

6条「姦淫してはならない。」をテーマとした第6話「ある愛に関する物語」および映画「愛に関する短いフィルム」について。

孤児院で育ち、友人の母親と住むトメクは郵便局に勤めている。夜8時半に目覚ましをかけ、電気を消した部屋にこもる。向かいの棟に住み、8時半に帰宅する女性マグダを望遠鏡で覗き見するためだ。覗き見行為は1年にも及んでいるという。下着姿、牛乳をこぼしたこと、泣いていたこと、彼氏との営み、彼氏との喧嘩。部屋でのできごと全てを知っているのだ。初めは自慰行為の対象としてとして覗いていたが、彼氏との抱擁に嫉妬してしまうほどマグダへ気持ちは膨らんでいく。そして、会いたいという気持ちから偽造の入金書を作成し、自分が働いている郵便局に足を向かせるように仕向けるのだ。しかし、不審に思った郵便局はマグダを詐欺師扱いをしてしまう。そして、怒って郵便局を後にしたマグダを追いかけ、トメクは自分がやったと自白するのだ。そして、牛乳配達のバイトを始めて、彼女の家へ配達することを日課にする。
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毎朝の配達で顔を合わせ、とうとうデートに誘うことに成功したトメクは、覗き見をしていること、下着姿を見てかつて自慰行為をしていたこと、全てありのままに話してしまう。女性経験のない無垢なトメクはマグダにとって新鮮だったのか、怒るどころか、彼を部屋に招き入れてしまう。そして、お風呂上がりのマグダは彼に太ももを触らせる。そして、トメクは服を着たまま、、、あまりの恥ずかしさにトメクは家を飛び出すのであった。
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この映画は10代の頃に一度観たのだが、トメクがなぜ走って去って行ったのかがわからなかった。年齢を重ねてようやく理解できることも増えてくるが、こういった男性の行為もその一つだ。誰にでもある失敗なのかよくわからないし、どれだけ恥ずかしいことなのかもわからないが、ここまで赤裸々に掘り下げた作品には出会ったことがない。

映画版とドラマ版では結末が異なる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9

↓以下ネタバレします。


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デカローグ第5話 および 殺人に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★

ドラマDekalog, piec/映画 Krótki film o zabijaniu
1989/56min,84min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:オルジード・ルカセウィッツ
IMDB評価:8.4/10(ドラマ)、8.2/10(映画)、9.2/10(全体)

5条「殺してはならない。」をテーマとした第5話「ある殺人に関する物語」および映画「殺人に関する短いフィルム」について。

核心にまで触れています。
ゴキブリ、ネズミの死骸、猫の首吊り、人間の首だけの飾り物。はやくも冒頭から死にまつわる描写。首吊りをしている猫はネズミを殺した猫なのだろうか。これから起こることをはやくも暗示しているのだ。
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当てもなく街を彷徨う青年ヤツェック。やっと弁護士になれた青年ピョートル。団地に住む中年のタクシー運転手。共通点のない3人が犯行当日に街の中で偶然にも出会ってしまったのだ。ヤツェックが殺人の準備をしていたカフェに、ピョートルは恋人といた。晴れて弁護士になれたことを喜んでいたのだ。その後、偶然にも乗ってしまったタクシーの運転手が犠牲者となってしまう。弁護士ピョートルはヤツェックの弁護が初仕事となる。3人の運命が偶然の出来事で交錯する。
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タクシーの洗車が終わるまで待っていた客(第2話の夫婦)がいたのに拒否して出発してしまったり、若い女性に色目を使ったりとイヤな男ではあったが、野良犬にサンドイッチを分けてあげるやさしい一面もあった。何とも運の悪い男だ。

殺人シーンは残酷でかなりリアルで、嫌な気分にさせられるので覚悟したほうがいい。カフェで用意した紐で絞殺するのだが、なかなか手強い。湖に引きずられながらも、妻の名前を必死で叫ぶ姿が脳裏に焼きついて離れない。「殺人は究極の暴力だ。」と考える監督は容赦なく、残酷なシーンを突き付けてくる。

判決は死刑を宣告された。死刑執行直前、ヤツェックはピョートルにおそらく初めて胸の内を語る。殺人に及んだ経緯、家族のこと、妹の死の背景、母の心配、自分の墓の心配。犯行前、初対面の少女たちに笑顔で接していたヤツェック。妹と重ねてみていたのかもしれない。妹思いだった一面も垣間見れ、それほど冷淡な男ではなあったのかもしれない。

「法とは人間がお互いの関係を調整するために作った理念である。犯罪を防止するためだけではない。法によって下された刑罰は法ではなく、復讐だ。本当に無垢なる人々が法を作っているのか?」
弁護士でありながら自問し続けるピョートルは死刑の是非について悩んでいた。そんな時に聞かされたヤツェックの本音。もしかしたら他に彼を救う方法があったのではないか、と自責の念に駆られるピョートルであった。

殺人を殺人で裁く矛盾。監督は、「死刑実行も殺人だ。」と唱える。恐怖で怯えるヤツェックの死刑シーンも残酷な殺人そのものとして描かれていた。
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予算工面のための映画化に監督自身が選んだのは本作だった。映像は終始暗く、薄気味悪い。赤、青、黄のフィルターをかけ、怪しいを演出したとのこと。空虚で物悲しく、逃れられない閉塞的なポーランド社会をも描きたかったのだろう。

なお、ドラマ版には、ピョートルが恋人に弁護士試験に合格したとの報告、ヤツェックがピョートルに話す胸の内はカットされている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9


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デカローグ第4話 <1989/ポーランド> ★★★★★

Dekalog, cztery
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:ヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛
IMDB評価:8.4/10、9.2/10(全体)

4条「あなたの父母を敬え。」をテーマにした第4話「ある父と娘に関する物語」について。

父親の死後開封するようにと書かれた手紙を娘は開けてしまう。この手紙はもともとは母親が亡くなる時に描いたもので、娘が大きくなったら読ませ欲しいということだった。娘が10歳になった時にはまだ小さすぎると思い、15歳になった時にはもう遅すぎると思った父は、更に封筒に入れ、自分の死後に読ませようと考えていたのである。
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手紙の内容は、父親は実父ではないという内容だった。父親は手紙を読んだのかどうかはわからないが、内容は察しており、心のどこかで自分が健在中に娘に読んで欲しいという思いがあったようだ。なぜか?娘を異性として意識していたからではないだろうか?心のどこかで、結ばれることを望んでいたのではないか?実父だという確信もなかったのではないか?娘に運命を託す父親には恐れも感じるし、理性と本心で揺れ動く葛藤がひしひしと伝わってくる。

手紙を読み父親が実父ではないと知った娘の発言には衝撃を受ける。「他の男と寝る時、お父さんに罪悪感を感じる」というのだ。そして、もはや親としてではなく、男として意識している父親の前で裸になり、父親を誘惑するのだ。愛を選んでしまうのか?それとも20年間の親子の絆を選ぶのか?

終盤でどんでん返しがあり、真実が明らかになっていく仕掛けはお見事。ラストの落とし所も巧妙。昔、男女の駆け引きに使われていたEaster Monday(水をかけ合う)を思わせる冒頭も、男女関係を暗示していたのだろう。実は自分なりに解釈するのに一番時間がかかったのがこの第4話であり、私にとって一番の傑作でもあった。親子を異性として意識すること自体が罪に思えるが、親子、血の繋がり、愛することとは一体何なのか?親子のもどかしさを見ていて、そんな疑問が生じた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8

↓以下ネタバレします。
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デカローグ第3話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, trzy
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:7.6/10、9.2/10(全体)

3条「主の日を心にとどめ、これを聖とせよ」をテーマとした第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」について。

1話に出ていた父親が冒頭にでてくる。アパートの入口で主人公のヤヌーシュとすれ違い挨拶を交わす。
子どものためにサンタクロースに扮しプレゼントを配るヤヌーシュ。家族で過ごしていたクリスマスイヴに元恋人のエヴァから電話がかかってくる。夫が行方不明だから一緒に探して欲しいとのことだ。ヤヌーシュは車が盗まれたから、とウソをつき家を出る。
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思い当たる所を2人で方々探し回る。交通事故があったと聞いては死体安置所に死体確認へ行ったり、自宅へ戻ったり、留置所まで見に行ったり、一晩中振り回され、最後に行き着いた駅である事実が明らかになっていく。
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<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

↓以下、ネタバレします。

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デカローグ第2話 <1989/ポーランド> ★★★★☆ 編集あり

Dekalog, dwa
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:クリスティナ・ヤンダ尋問
IMDB評価:7.9/10、9.2/10(全体)

2条「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」をテーマとした第2話「ある選択に関する物語」について。

ワルシャワの病院に勤める医師は、団地のとある階に住む。ある朝、上の階に住んでいる女性が訪ねてくる。医師は夫の主治医で、夫の回復の可能性を聞きたかったのだ。その理由は、夫の親友との間の子どもを身籠り、夫が生き延びるようなら中絶するし、もう長くないのなら産もうと考えていたからだ。年齢的にもこれが最後の出産のチャンスだ。しかし、医師はわからないと言う。妻と娘を亡くしているので、死に対しては人よりも特別な思いがあるのだ。
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不倫しているとはいえ、まだ愛する夫の回復を願う反面、死んでくれれば赤ちゃんを産めるのに、と葛藤の中での彼女の決断は中絶だった。夫の主治医にその旨を伝えると、医師はついに口を開いた。夫はもうすぐ死ぬのだと。だから、中絶はするなと。しかし、これは阻止さえるための医師のウソだったのだ。そうとも知らずに産むことを決意する。

医師の判断に委ねた結果は果たして正しかったのか?医師のウソを知った時に判断を悔いることになるのか?それとも、それでも良かったと思うのか?もし逆の選択をしていたら、どうなっていたのだろうか?十戒的に考えると正しい決断をしたかのようにも思えるが、結果的には果たしてどちらが幸せだったのだろうか?この話は第8話の倫理性を問う講義の中でも引用されている。
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ジュースの中で溺れたハエがもがき苦しみ、必死でストローを這い上がろうとするシーンが印象的。人間への教訓だ。甘い誘惑に負けると後悔することになると。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/3

↓以下、ネタバレします。

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デカローグについて+第1話 <1989/ポーランド> ★★★☆ 編集あり

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Dekalog, jeden
1989/53min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:8.2/10、9.2/10(全体)

<デカローグについて>
トリコロール3部作監督で知られるクシシュトフ・キェシロフスキ監督のポーランド時代のドラマである。旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条の戒律をテーマに、ワルシャワの団地に住む人々をそれぞれ独立した10話で描いている。各話の登場人物がすれ違うのも面白い。

旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条とは、、、
1.わたしのほかに神があってはならない。
2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
4.あなたの父母を敬え。
5.殺してはならない。
6.姦淫してはならない。
7.盗んではならない。
8.隣人に関して偽証してはならない。
9.隣人の妻を欲してはならない。
10.隣人の財産を欲してはならない。

第1話「ある運命に関する物語」53分
第2話「ある選択に関する物語」57分
第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」56分
第4話「ある父と娘に関する物語」55分
第5話「ある殺人に関する物語」57分
第6話「ある愛に関する物語」58分
第7話「ある告白に関する物語」55分
第8話「ある過去に関する物語」55分
第9話「ある孤独に関する物語」58分
第10話「ある希望に関する物語」57分

「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

1981年というと、戒厳令施行によりポーランド国内で映画の公開・輸出が禁止されていた(1983年7月 戒厳令全面解除)。1982年、弁護士で作家のクシシュトフ・ピェシェヴィチと出会い、脚本の共同執筆を開始した。その第1作として「終わりなし」(84)を完成させる。そして1987年、ピェシェヴィチの発案で「デカローグ」に着手。まずテレビ局に話を持ち込むが、十分な予算をもらうことはできなかった。そして、予算を補うために2本を映画化するということで別予算を得ることに成功した。監督自らの希望で第5話が「殺人に関する短いフィルム」(87)、映画担当者の判断で第6話が「愛に関する短いフィルム」(88)となったのだ。当初は10話を10人の監督に依頼するつもりだったがシナリオを見て結局はキェシロフスキ監督がメガフォンを取ってしまった。1989年ヴェネチア映画祭国際映画批評家連盟賞、1988年ヨーロッパ映画グランプリを受賞している。

その後1991年には初のフランスとの合作「ふたりのベロニカ」を発表。1993~1994年にかけて、「トリコロール」3部作をヴェネツィア、ベルリン、カンヌ映画祭に連続出品。次回作に世界中の期待が集まる中、1996年3月13日、突然の心臓発作により54歳の生涯を終える。

<レビュー>
まずは、この1条「わたしのほかに神があってはならない。」をテーマとした第1話「ある運命に関する物語」について。

団地の一室に住むある男性クシシュトフは大学教授で数学を教えている。息子パベルも時々授業を傍聴したりする。家では息子に問題を出しては算数や科学を学習させたり、パソコンで計算させている。普段遊んでいる湖の氷の厚さの算定もその一つだった。その日の気温などの条件を入力しては、氷の耐荷性を計算するのだ。その日も、息子の体重の3倍まで耐えられるという自分の理論には絶対的な自信があった。しかし、万年質のインクがこぼれ、クシシュトフは理屈では説明のつかない不吉な予感を感じるであった。
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伯母は信仰心が強いが、クシシュトフは神を全く信じていない。全ての出来事が理屈で説明がつくと思っているのだ。しかし、直観的な不吉な予感を拭い去ることができず教会へ足を運び神にすがろうとするが、理屈で説明のつかないことに葛藤が生まれるだけだった。

犬の死を目撃した息子との死に関する親子の会話。伯母との神に関する会話。結局はこの時に息子の運命は決定づけられていたのか?息子と遊んでいた友人が事故のことを何かを知っていそうで親に口止めをされいる。結局、どういう状況だったのか曖昧なままストーリーは終わる。運命は神のみぞ知るのだ。結局、人間の作る出す物に絶対はなく、自然の摂理・神には勝てないのだろうか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/30
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(未) 【短編】Talking Heads <1980/ポーランド> ★★★

talking heads
Gadajace glowy
1980/16min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
IMDb評価:7.8/10

「あなたは誰ですか?いつ産まれましたか?人生に何を望みますか?」

1歳の赤ちゃんから100歳のおばあちゃんまで、3つの同じ質問を投げかけ、年齢順にその答えを流すだけのドキュメンタリー。皆の回答を聞きながら、自分の答えを考えてみたが、「あなたは誰ですか?」という質問への答えが見つからないし、まだわからない。私と同様に「わからない」と答える人もいたが、営業職だとか教師だといった職業を答える人もいれば、保守的だとか内向的だといった性格を答える人もいた。

興味深かったのは、最後の質問だ。様々な世代、性別でありながら、答えは似通っている。世界平和、皆が幸せになること、今がずっと続くことを願う人が数多くいるのだ。共産主義や歴史的背景がそういう思想を導いているのか?望んでいると同時に恐れでもあるのかもしれないと感じた。
日本で同じ質問をしたらどんな答えが返って来るだろうか?自己満足を満たすだけのエゴな答えが多いのではないだろうか?
最後の100歳のおばあちゃんの答えは、「もう望むものは何もない」だった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/11
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トリコロール 白の愛 <1994/仏> ★★

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TROIS COULEURS BLANC
1994/92min/フランス=ポーランド
監督/制作/脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
出演:ジュリー・デルピー、ズビグニェフ・ザマホフスキ

<あらすじ>
フランス国旗の3色、青(自由)、白(平等)、赤(博愛)をテーマに、3人の女優を主演に据え、ポーランドを代表するキェシロフスキ監督が撮った連作の第2作。パリで美容院を経営するポーランド人のカロルは、フランス人の妻ドミニクに一方的に離婚を言い渡される。大きなトランクを片手に、片言のフランス語で街をさまよっていた彼は、同郷の中年男性ミコワイと意気投合、彼の協力でポーランドへの密航に成功する。両替屋の用心棒となり、ひょんなことから大金を手に入れた彼は、自殺願望のあるミコワイと奇妙な友情を築いていく。新しい生活を始めながらも、いつまでも妻への思いを断ち切れないカロル。そんな中、彼はある計画を思い付くが……。

<レビュー>
トリコロール3部作の2作品目。「平等」を表す白をテーマカラーとしている。ところどころで鳩の羽ばたき音が効果的に使われている。

性的不能を理由に離婚裁判。カバン一つで放り出されてしまった主人公のカロル。不能であることを世間にバラサレ恥はかくし、金もない。フランス人女性はセックスに寛容なのは有名だが、ここまでしなくも、、、と思ってしまうが、珍しい話ではないようだ。地下鉄が白い光に包まれる。カロルの頭の中は真っ白になり途方に暮れているのだ。光の取り込み方が巧い。そんな時に出会ったミコワイという男性。ある男の自殺を手助けして欲しいと持ちかけられ、お金のなかったカロルはスーツケースに隠れ、ミコワイの手荷物としてパリからポーランドへ渡るのだ。

紆余曲折はあるものの、カロルは、ポーランドで起死回生を図る。裏切られ、傷つけられ、愛情と表裏一体にある憎悪。その間で悩むカロルの行動は予想外の展開へ。その果てには一体何が?観客に委ねられている。セックスで達した時にも白い光が現れる。平等に与えられた権利とでも言いたいのだろうか。ストーリーよりも内面を映像で表現している映像のほうが印象に残る作品だ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/28

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トリコロール 青の愛 <1993/仏> ★★★★

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TROIS COULEURS BLEU/
1993/99min/フランス=ポーランド=スイス
監督/制作/脚本: クシシュトフ・キエシロフスキ
出演: ジュリエット・ビノシュ

<あらすじ>
フランス国旗の3色、青(自由)、白(平等)、赤(博愛)をテーマに、3人の女優を主演に据え、ポーランドを代表するキェシロフスキ監督が撮った連作の第1作。“青“をテーマにした本作のライトモチーフはヨーロッパ統合。ヨーロッパ統合のシンボルとなるシンフォニーを依頼されている世界的に有名な作曲家と、その妻、そして娘の3人を乗せた車が道路脇の木に激突し炎上。奇跡的に妻のジュリーだけが助かった。夫と娘の死を恨み、厭世的になる彼女は、夫が遺した欧州統合のためのシンフォニーの断片を捨て去ろうとするのだが、夫に愛人がいたことを知ったことから、再び生き直す決意をする……。

<レビュー>
交通事故により夫と娘をなくし、失望感からどう立ち直るのか。やはりテーマは「運命と偶然」だ。それに翻弄されながらも、乗り越えていこうとする様を描いている。「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。 」と唱える監督だが、この作品では、生きるとは何か。人間は喪失感から何を求めるか。愛とは何か。と問い続ける。夫の死後に知った愛人の存在、さらに妊娠を知ってしまった時の憎悪と嫉妬。孤独の中でどう立ち向かうか。さらに問い続ける。内面をとことん追究している。

美と感情を大事にする監督らしく、映像へのこだわりも強く感じる。テーマの色である青の使い方がほんとに巧い。青という色は寂しさを感じさせる寒色で、青いプールで泳ぐ姿は失望感を効果的に演出している。しかし、海や空といった広い意味での自由を感じさせる色でもある。
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コーヒーに角砂糖を染み込ませるシーンなんかも絵のように映し出す。ネズミのお産のシーンと愛人の妊娠を重ねたような描き方は憎いほど巧い。「ふたりのベロニカ」よりずっと好きだ。白の愛と赤の愛も観直してみることにする。

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/27

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ふたりのベロニカ <1991/仏> ★★★

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La Double Vie De Veronique
1991/92min/フランス=ポーランド
監督/脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:イレーヌ・ジャコブ

<あらすじ>
同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた二人──一方はポーランドの小さな田舎町で、もう一方はパリ郊外で。名前も同じベロニカ。双子のような瓜二つの容貌と同じ癖を持ち、ともに音楽の才能に恵まれていた。そして先天的に心臓を患っていることも共通していた。二人はお互いを知らずに暮らしているが、どこかに自分とそっくりなもう一人の存在を感じている。ある日、ポーランドのベロニカが心臓発作で死んでしまう。その痛みを感じとるパリのベロニカ。彼女のまわりで起こり始める不思議なできごと──死んだ彼女に導かれるように、まるで二人分の命を生きるかのように、パリのベロニカは本当の恋を見つけるのだった。

<レビュー>
一貫して「運命と偶然」をテーマにしている監督だが、本作でもそれを強く感じた。同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた二人が瓜二つの容貌。同じ癖、同じ名前。そして共に音楽の才能に恵まれるなんてことがほんとにあるのだろうか?全ての出来事があたかも運命で導かれるかのようで、何度も鳥肌がたった。
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まずはポーランドのベロニカの話から始まる。彼女の神々しい歌声が指揮者に認められるが、晴れの舞台で心臓発作に見舞われ、短い生涯を終えてしまう。
そして、舞台はフランスのベロニカへと移る。運命に導かれているのか、不思議なできごとが次々と起こるのだ。送り主不明からの一本のテープ。そこには雑踏、駅のアナウンス、カフェの定員の声だけが録音されていた。消印を見るとパリ・サンラザール駅となっており、運命のように惹きつけられたベロニカはサンラザール駅のカフェにたどり着く。そしてそこにはある男がいた。彼もベロニカが来るであろうことを予感していたのだ。非現実的ではあるが、これも運命なのだろうか?
ポーランドのベロニカの存在に気付いているのかいないのか定かではないが、感じているような雰囲気は節々に読み取れる。
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それにしても、難易度はかなり高い。私がまだ未熟ということかもしれない。行間を読み切れたら自ずと答えも導けるのかもしれないが、理解に苦しむシーンばかりだった。しかし、ガラス越しのショット、音楽効果、木漏れ日のショットなどの美しさは芸術品であることは間違いない。

主演のイレーヌ・ジャコブは初出演であるにもかかわらず、カンヌで女優賞を受賞している。これもまた運命か?

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/2
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美しき運命の傷痕 <2005/仏> ★★★★★

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美しき運命の傷痕/L' ENFER/ HELL  
2005/98min(日本102min)/フランス
監督/脚色:ダニス・タノヴィッチ
原案:クシシュトフ・キェシロフスキ、 クシシュトフ・ピエシェヴィチ
脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィチ
出演:エマニュエル・ベアール、カリン・ヴィアール、マリー・ジラン、ギョーム・カネ
IMDb評価:6.9/10

<あらすじ>
22年前に起きた悲劇によって父親を失った三姉妹。それは彼女たちの心に深い傷として残り、いまでは美しく成長した彼女たちがそれぞれに抱える苦悩の遠因ともなっていた。長女のソフィは夫の浮気を疑い、激しい嫉妬が彼女を見境もない行動に駆り立てる。次女のセリーヌは恋人もいない孤独な日々。体の不自由な母の世話を一身に引き受けていた。そして大学生の三女アンヌは、不倫の関係にあった大学教授から突然の別れを告げられてしまう。そんな彼女たちは、思いもよらぬ形で再び22年前の出来事と向き合うことになるのだった。

<レビュー>
3姉妹+母の生き様を描いている。
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夫に浮気される長女。不倫相手が寝ているベッドまで忍び込むなどの異常な行動を見せている。次女は男性経験がなく、男性恐怖症だ。父親世代の男と不倫をしていた三女は、不倫のもつれの仕返しに自宅まで乗り込み、家族に不倫の悩みを打ち明け当人を困らせる。父親の過去は終盤で明らかになるが、父親のせいで過去を引きずり不運な人生を歩む3姉妹だ。鑑賞後に邦題を知ったが、美しき運命とは皮肉としか思えない。運命というより、哀しい宿命というべきだろう。
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冒頭、刑務所から出てきた父親が雛を巣にもどしてあげるシーンがある。あまりにもインパクトが大きく調べてみたら、カッコウの雛だとか。それが何を意味するのか調べて驚愕した。カッコウは他種の鳥の巣の卵を一つ捨て、そこに自分の卵を産み付けるそうだ。父親が雛を巣に戻すことで、生態系が崩れてしまうことを意味する。すなわち、家に戻ることで一家に悲劇をもたらすことを暗示していたのだ。言語障害の母親の何でも見透かしているような鋭い目と冷たい表情が印象的。その母からの最後の言葉も鋭い。4人の人生は運命と偶然に翻弄されていたということだろう。何度か出てくる万華鏡が繰り返される出来事をさらに効果的に演出していて、物悲しい。

残念ながら1996年に54歳の若さで他界したキェシロフスキ監督の遺稿である。ダンテ・アリギエーリ『神曲』から構想を得た「天国」「地獄」「煉獄」三部作の2番目である。ボスニアヘルツゴビーナ出身のダニス・タノヴッチ監督作品であるが、キェシロフスキ監督特有のタッチが忠実に活かされている。
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<鑑賞> 英語字幕(海外版DVD) 2010/9/26
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