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2012年 第65回カンヌ国際映画祭コンペ部門、ある視点部門 ノミネート・受賞作品

受賞結果を追記しました。(2012/5/28)

第65回カンヌ国際映画祭(5月19~27日)コンペティション部門、ある視点部門の出品作品が発表されました。
審査委員長は公式コンペ部門はナンニ・モレッティ、ある視点部門はティム・ロス。

前年度の作品が満足に観切っていないのに早くもカンヌの季節到来。
個人的に興味があるのはトマス・ヴィンターベア監督、ウルリッヒ・ザイドル監督、パブロ・トラペロ監督グザヴィエ・ドラン監督クリスティアン・ムンジウ監督あたり。

*「タイトル」監督名/国名 (★:Koo評価、満点5つ星)

【コンペティション部門】
「ムーンライズ・キングダム」ウェス・アンダーソン監督/米
「Rust & Bone」ジャック・オーディアール監督/仏=ベルギー
「Holly Motors」レオス・カラックス監督/仏=独
「Cosmopolis」デビッド・クローネンバーグ監督/仏=加=ポルトガル=伊
「The Paperboy」リー・ダニエルズ監督/米
「Killing Them Softly」アンドリュー・ドミニク監督/米
「Reality」マッテオ・ガローネ監督/伊=仏 グランプリ
「Amour」ミヒャエル・ハネケ監督/仏=オーストリア=独 パルムドール(最高賞)
「Lawless」ジョン・ヒルコート監督/米
「In Another Country」ホン・サンス監督/韓
「Taste of Money」イム・サンス監督/韓
「ライク・サムワン・イン・ラブ」アッバス・キアロスタミ監督/仏=日
「The Angel's Share」ケン・ローチ監督/英=仏=ベルギー=伊 審査員賞
「In the Fog」セルゲイ・ロスニツァ監督/独=オランダ=ベラルーシ=露=ラトヴィア 国際批評家連盟賞
「Beyond the Hills」クリスティアン・ムンジウ監督/ルーマニア=仏 女優賞コスミナ・ストラタン、クリスティーナ・フルトゥ、脚本賞
「After The Battle」ユスリ・ナスララ監督/エジプト=仏
「Mud」ジェフ・ニコルズ監督/米
「You Haven't Seen Anything Yet」アラン・レネ監督/仏=独
「Post Tenebras Lux」カルロス・レイガダス監督/メキシコ=仏=オランダ 監督賞
「On the Road」ウォルター・サレス監督/仏=英=米=ブラジル
Paradise: Loveウルリヒ・ザイドル監督/オーストリア=オランダ=露 ★★★★
「The Hunt」トマス・ヴィンターベア監督/デンマーク 男優賞マッツ・ミケルセン、芸術貢献賞、エキュメニカル審査員賞

【ある視点部門】
「Miss Lovely」アシム・アルワリア監督/印
「La Playa」ファン・アンドレス・アランゴ監督/コロンビア
「God's Horses」ナビル・アユチ監督/仏=モロッコ=ベルギー
「Trois Mondes」カトリーヌ・コルシニ監督/仏
「Antiviral」ブランドン・クローネンバーグ監督/加
「7 Days in Havana」ベニチオ・デル・トロ、パブロ・トラペロ、フリオ・メデム、エリア・スレイマン、ファン・カルロス・タビオ、ギャスパー・ノエ、ローラン・カンテ監督/西=仏
「Le Grand Soir」ブノワ・ドゥレピーヌ、ギュスタブ・ケルベル監督/仏=ベルギー 審査員特別賞
「Laurence Anyways」グザヴィエ・ドラン監督/加=仏 女優賞シュザンヌ・クレモン
「Despues De Lucia」ミシェル・プラティニ監督/メキシコ グランプリ
「Aimer A Perdre La Raison/Loving Without Reason」/ヨアヒム・ラフォーズ監督/ベルギー=ルクセンブルク=仏=スイス 女優賞エミリー・デュケンヌ 
「Student」ダルジャン・オミルバエフ監督/カザフスタン
「La Pirogue」ムサ・トウレ監督/仏=セネガル
「Elefante Blanco/White Elephant」パブロ・トラペロ監督/アルゼンチン=西=仏
「Confession of a Child of the Century」シルビィ・ベレイド監督/仏=独=英
「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」若松孝二監督/日
「Mystery」ロウ・イエ監督/中=仏
「Beasts of the Southern Wild」ベン・ザイトリン監督/米 カメラドール(新人監督賞)、エキュメニカル審査員特別賞、国際批評家連盟賞



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[ 2012/05/28 12:04 ] ★映画関連★ 映画賞 | TB(0) | CM(2)

マーターズ <2008/仏=加> ★★

martyrs.jpg
Martyrs  
2007/100min/フランス=カナダ
ホラー、スリラー、ドラマ
監督:パスカル・ロジェ 
出演:モルジャーナ・アラウィ、ミレーヌ・ジャンパノイ、カトリーヌ・べジャン、イザベル・ジャス、グザヴィエ・ドラン
IMDb評価:7.0/10

哲学度 ★★
宗教度 ★★★
嫌悪感 ★★★
ゴア度 ★★★★
衝撃度 ★★★

DVDレンタルしており、面白味半減してしまうので、簡単に。

martyrs1.jpg1971年のフランス。少女ルシ―は、下着姿で衰弱しきった姿を路上で発見され、保護された。食肉処理場で何者かによって監禁・拷問・虐待されており、自力で脱出したのだった。15年後、そんな惨いことをしていた者たちを探し出したルシ―は復讐に向かった。ごく普通の幸せそうな家庭であったが、ルシ―は一瞬にして血の海にしてしまう。後から駆けつけた親友のアンナも犯行現場に驚愕する。死体処理を終え立ち去ろうとするが、隠れ扉を見つけたアンナは秘密の部屋へ足を踏み入れると、そこには…。

監督は、「MOTHER マザー(2004)」のパスカル・ロジェ監督。ルシ―役は「中国の植物学者の娘たち(2005)」のミレーヌ・ジャンパノイ。殺害される一家の長男役は「マイマザー/青春の傷口」で監督主演を務めたグザヴィエ・ドラン。

martyrs2.jpg久しぶりに観たホラーが、こんなに強烈だったとは。アンナ役のモルジャーナ・アラウィは撮影中骨折し、ルシ―役のミレーヌ・ジャンパノイも殴られ過ぎて翌朝立ち上がれなかったというだけあって、リアルな描写は容赦ない。ジャンルは強いて言えば、スプラッターあり残虐行為満載の拷問系。しかも直接描写である。度を超えた要求をこなした女優魂を褒め讃えたいところだがやり過ぎ感は否めず、インパクトの大きさで言ったらかなり上位に食い込む問題作である。描写が強烈なので、免疫のある人、覚悟のある人にだけオススメします。

序盤はルシ―の凄惨な復讐劇を中心に展開するが、単なる序章にしか過ぎず、本番は主人公が親友のアンナに移ってからとなる。序盤とは全く違った展開を見せている。アンナは彼らの監禁・拷問・虐待の理由を知っているのかどうかは定かではないが、観ているこちら側は一体何が目的なのかがなかなか見えず、この先何が待ち受けているのか分からないという恐怖が襲いかかって来る。拷問の肉体的な痛みよりも怖いのは底知れぬ人間の恐怖である。一日一度の流動食と拷問を受ける毎日。精神的な苦痛の中での生かさず殺さずといった状況は、人間にとって一番つらい。

中盤、凡長に感じられる部分もあるが、筋立てはしっかりしており、哲学的で宗教的な解釈を要する結末はホラーというジャンルを超越している。タイトル“マーターズ(Martyrs)”には殉教者、犠牲者、目撃者、証人といった意味がある。私が思うに殉教者への崇敬が本作のテーマなのではないかと思う。肉体的、精神的苦痛の極限の果てに、人間には何が待ち受けているのか…目撃者のアンナは犠牲者でもあり、その後殉教者となり証人になるまでの苦痛を描いた作品。

<鑑賞> 英語吹き替え 2011/11/18
[サイト内タグ検索] グザヴィエ・ドラン監督
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(未) Heartbeats <2010/加> ★★★★

heart3.jpg
Les amours imaginaires/Heartbeats
2010/カナダ
ドラマ、ロマンス
製作/監督/脚本/出演/編集/衣装:グザヴィエ・ドラン
出演:モニア・ショクリ、ニール・シュナイダー
言語:フランス語
IMDb評価:6.9/10


普遍度 ★★★
哲学度 ★
官能度 ★★
映像美 ★★



heart1.jpgマリーとフランシスは大親友である。その2人の前に田舎から引っ越してきた青年ニコラが現れる。女性のマリーも男性のフランシスもニコラに心を奪われてしまう。そして、奇妙な三角関係が始まる…。

監督はカナダの新鋭、グザヴィエ・ドラン監督。カンヌ映画祭監督週間にて初長編「マイ・マザー/青春の傷口(原題:僕は母を殺した)(2009)」で鮮烈デビューを果たし、その1年後本作で再びカンヌに出品。デビュー作では同性愛者であることへの悩みや母との葛藤といった苦しい胸の内の告白に対し、本作ではそういった悩みを達観した落ち着きさえも見せ、普遍的な恋愛や友情を描いている。等身大の思いや悩みを投影しており、続編という位置づけではないが、順に見ると一歩大人になったと感じられ、監督自身の人間的成長が見られる。次回作はご本人の出演がないのが残念だが、どんな監督作品を見せてくれるのか楽しみ。
ニコラを演じるのは、前作で寮の友人を演じたニール・シュナイダー

heart2.jpg中心となる3人は等身大の若者。同じ男性ニコラを好きになってしまった親友マリーとフランシスの視点で描かれる。2人は内心ニコラに興味津々なのに悪口を言っては相手の腹を探ってみたり、ニコラの思わせぶりな仕草に期待を持ったり、ニコラ中心の生活が始まる。果たしてニコラの思いはどこにあるのか、ニコラの手の平でコロコロと転がされているようなストーリー展開をみせる。
うまくいかないもどかしさ、ほろ苦い思い、嫉妬、腹の探り合い、駆け引き、友情との天秤。
男性の同性愛的感情も含まれるが、至って純粋な恋心が描かれる。誰しもが経験する普遍的なストーリーだが、前作同様オリジナリティーに溢れ、この監督の手にかかると感性の豊かさが際立ち、見えるもの全てがオシャレになってしまう。

前作は詩の引用が印象的だったが、本作では映画界を代表するスターの名前が羅列される。ポップなカラーアート、ヴィンテージの服、クラシックな音楽、前作同様、独自のスタイルを貫徹している。次回作も同じ世界感を貫いてくれることを切望。

原題は“空想の恋”。また憎いタイトルをつけている。つまり、成就しない恋である。笑えるオチもこの方らしい憎い演出。この監督、タダ者ではない。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/15
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マイ・マザー/青春の傷口 <2009/加> ★★★★★

キム・ギドク作品を一気に書き上げようと思っていたけど、精神的につらいので、ちょっと休憩。

killed.jpgJ'ai tué ma mère/I killed My Mother
2009/103min/カナダ
伝記、ドラマ
製作/監督/脚本/出演:グザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan)
出演:アンヌ・ドルヴァル、フランソワ・アルノー、スザンヌ・クレマン、Manuel Tadros、ニール・シュナイダー
受賞:
2009カンヌ映画祭監督週間 SACD Prize、C.I.C.A.E. Award、Prix Regards Jeune
2010 アカデミー賞外国語映画賞カナダ代表
言語:フランス語
IMDb評価:7.3/10

哲学度 ★★★
社会度 ★★★
邦題のセンス なし
この邦題だと、ありがちな青春映画に思われがち。「母を殺した」のほうがインパクトがあっていい。

すっごい観たかった作品、シネフィルで放送してくれたことに感謝。永久保存版にします。

killed1.jpg16歳のユベールは母と二人暮らし。母のすることなすこと全てにイライラさせられている。彼女に対する愛情は人一倍あるものの、母親としては愛せず、悶々と過ごしていた。一方ユベールの母は、彼の同性の恋人の母から、息子たちが同性愛関係であることを聞き、衝撃を受ける…。@シネフィルイマジカ

17歳の時に書き上げた脚本を、弱冠21歳のドランが監督・製作・主演まで務めた半自伝的な作品。タイトルは「私は母親を殺した」という意で、ドキッとさせられるが、もちろん実際に殺したのではなく、「心の中で母の存在を消す」というニュアンスで使われている。母との関係に悩み苦しみ、衝突しながら成長する少年の姿を描いた愛憎劇。

母のことは愛してはいるが、憎い存在。食べ方も服のセンスも気に入らないし、いちいち口うるさい母に毎日イライラ。学校で両親の仕事のことを課題に出されるが、母と口も利きたくないユベールは“離婚した父とは会わないし、母は死にました”と嘘をついてしまう。母の存在を消すことで心の均衡を保とうとする。

素直になれず、自分の思い通りにならないもどかしさ。自分は大人だと思っていても、子ども扱いされる苛立ち。思春期特有の感情を繊細に描き込んでいる。両親の離婚が子どもにもたらす心理も鋭い。そして、息子との関係に悩む母親の葛藤もよく描かれている。親世代か子世代かによって観方も変わってきそうだが、私は母親になることを意識し始める世代でもあり、ちょうど双方の心理を興味深く観れた。

killed2.jpgルックスを見れば俳優を志すのは当然だと思うが、こんな完成度の高い映画を撮ってしまう才能には驚かされた。グザヴィエ・ドランは、同性愛者であることは以前から公表している。子どもの頃から、漠然と“変わった子ね”と片付けられるのを嫌っており、自分は人と何が“違う”のかをはっきりと自覚している。それは同性愛という観点だけではなく、自分の哲学としている。大人びた感性を持っていながら、自分の母親と恋人の母親を比較するあたりが子どもらしいとは思ったが、その“違い”を対比させるかのような描き方もうまい。母のことを“違いを理解する理性に欠けている。”と表現している台詞が印象的だったが、詩の引用・言葉の選び方・適格な表現力には知性が溢れている。いくつかのインタビューも観たが、かなり頭がよく、しっかりした考えや意見を持っている。卓越した自己分析力と観察力、そして表現力。完成度の高さは監督しての才能ではなく、1人の人間として完成しているから。痛みを経験したからこその成長が何よりもの強み。

芸術高校出身ということもあり、家のインテリアや数々の絵画のチョイスにも感性の豊かさがうかがえる。映像には直観の感性で撮ってしまったような思いっきりの良さがある。基本的な映画ロジックを無視したような自由な発想は若さだろうか。監督デビュー作品でいきなり長編を撮ってしまうのも若さがゆえだろう。これからが楽しみな方。
ちなみに、お父様はドラマを中心に活躍される俳優で、アパート管理人役として数分出演。

<鑑賞> シネフィルイマジカにて 久々の日本語の字幕に感動 2011/8/31
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