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SHAME-シェイム- <2011/英> ★★★★★

shame_20120130160705.jpgShame
2011/イギリス
監督/脚本:スティーブ・マックイーン
脚本:アビ・モーガン
撮影:ショーン・ボビット
出演:マイケル・ファスベンダーキャリー・マリガン、ジェームズ・バッジ・デール、ニコール・バハーリー
受賞:2011年・第68回ベネチア国際映画祭 主演男優賞
IMDb評価:8.0/10

哲学度 ★★★
社会度 ★★★★
催涙度 ★★★
官能度 ★
宗教度 なし

劇場公開 2012年3月10日

ニューヨークの高級マンションに1人で暮らし、エリートサラリーマンとして働くブランドンは、何不自由ないように見えるが、人とのつながりを極端に拒み、セックス以外での付き合い方を知らないセックス中毒者である。そんなブランドンには妹シシーがいる。何度も電話がかかってきているが、いつも留守電でブランドンは一度も受話器を上げようとしない。そのシシーが突然部屋に転がり込んできてしまった。恋愛依存症で自殺癖のあるシシーのせいでブランドンの生活が脅かされ始め、事態は悪化していく…。

shame1.jpgマイケル・ファスベンダーを一気にスターダムにのし上げ、人気を不動のものにさせた前作「ハンガー」に続く新鋭スティーブ・マックイーン監督待望の2作目。前作同様ファスベンダーを主演においた、またもや衝撃作。ファスベンダーの作品はほとんど観たが、彼の能力を最大限に引き出せるのはマックイーン監督だと改めて思った。
台詞は絞られ多くを語らない。シンプルな映像ながらも、ディテールにもこだわりを感じさせる映像と張り詰めた緊張感は前作同様。マイケル・ファスベンダーキャリー・マリガンも説得力のある演技を見せている。2人の代表作になることは間違いないだろう。
マイケル・ファスベンダーキャリー・マリガンもオールヌードに挑んでおり、セックスシーンの回数も少なくはないが、全て必然的。監督がカットするのを拒んだのも納得である。日本公開版で入るといわれているモザイクは2人の下半身だろう。
「セックス・トラフィック(2004)」「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 (2011)」の脚本家アビ・モーガン も脚本に携わっている。
shame2.jpgストレスなのか、焦燥なのか、ブランドンは目覚ましをかけているが、必ず鳴る前に目覚めている。きちんとした身なりで会社に出向くが、仕事中もPCでアダルトサイトを見てはトイレでマスターベーションをし、仕事後も部屋にコールガールを呼ぶといった性に満ちた生活ぶり。高級マンションはきれいに整頓されているが、クローゼットを開けるとアダルトグッツの山。一見すると几帳面で身なりが良い男性だが、私生活は“恥(シェイム)”に満ちているのである。

性生活で満たされた日常が充実していると錯覚しているブランドンの“恥”を徹底的に掘り下げ、浮かび上がってくるのは孤独である。生き方も性格もまるで違う兄妹だが、妹は恋愛依存症で、自殺癖があった。危うい2人が共にいても孤独感は深まるばかり。孤独を埋めるために何かに依存して満たそうとする経験は私にもある。セックス依存症に苦しみ、自身の存在意義を見出さそうとする男の苦悩を描いている。

夢を抱いて人々が訪れるニューヨーク。高層ビルが立ち並び、オシャレだが無機質な高級マンションに温もりはない。青やグレーを基調とした映像からも希薄な現代の人間関係を連想させる。セックス以外に人との接し方を知らない男の苦悩は息苦しく、胸が張りさける思いがした。

2人がどんな環境で育ったのか、どんな思いでニューヨークに出てきたのか、ほとんど語られないが、シンガーを目指しニューヨークへ出てきた妹シシ―がステージで歌う歌詞には2人の思いが収束していると思われる。理想通りうまくいかない現実をこの先どう受け止めるのか…人生の挫折といった面では共感性を持たせている。

<鑑賞> 2012/1/26
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ハンガー <2008/アイルランド> ★★★★★

1日1本ペースで観ていると、どうでもよかった内容はほんとにあっという間に消えてしまい、いい作品だけしか記憶に残らない。普段このブログを読んでくださっている方はお気付きかと思いますが、私は娯楽大作系の商業映画はほとんど観ません。観るとしたら語学勉強のためだったり、俳優目当てといった理由の時だけ。
解釈や評価は人それぞれで、私が思う“いい作品”とは、考えさせられる内容であることと、何か強烈なインパクトを残してくれるかどうか。本作はおよそ1年前に観て以来、いろんなシーンがず~っと脳裏にこびりついている。この1年間300本前後の作品を観ているけど、本作以上の強烈な衝撃を感じた作品には出会えていない。ここ2、3年で観た中でもベスト作品。今回、観直しても感想は変わらない。再見につき、記事大幅修正しました。

hunger1_20110813140520.jpg
Hunger
2008/96分/アイルランド
伝記、ドラマ
監督/脚本:スティーブ・マックィーン(映画監督デビュー作品)
出演:マイケル・ファスベンダー、スチュアート・グラハム
受賞:2008年 カンヌ映画祭 ゴールデンカメラ他32受賞、17ノミネート
IMDb評価:7.6/10


待望の2作目「Shame」は再度マイケル・ファスベンダーを主演に迎えている。セックス中毒の話らしい。イギリスでは今秋、アメリカは2012年公開予定。本作は映画祭上映したキリ、配給がつかなかったので、次作も無理でしょう。新作には期待しても、日本公開には期待せず。楽しみで仕方がない。



hunger2_20110813140520.jpgタイトル「ハンガー」とはハンガー(飢餓)・ストライキ(Hunger strike)のことである。
非暴力抵抗運動の方法の一つであり、何らかの主張を世間に広く訴えるために行うストライキの一種。
北アイルランドをイギリスから分離し、アイルランドへの併合を求める組織アイルランド共和国暫定派(PIRA)の囚人達が1977年から政治犯ではなく、テロリストとして扱われた事に対し、メイズ刑務所内では撤回要求する動きが起きた。
制限されている収容所の中で彼らが取った手段とは、“ブランケット・プロテスト(犯罪者ではないので、囚人服着用を拒否し、毛布だけで過ごし、政治犯であることを主張する手段)”、“ダーティ・プロテスト(房内の壁を糞尿で塗りたくること)”、そして、“ハンガー・ストライキ”であった。1981年にPIRAの1人ボビー・サンズが刑務所内でハンガー・ストライキという飢餓による非暴力抵抗運動を行い、66日間の抵抗の末27歳で餓死した。死に至るまでの歴史的事実の6カ月間を描いている。

監督はアーティスト出身のアフリカ系イギリス人。絵画展をひらくほどの実力の持ち主で、その後戦争カメラマンとしてイランへ出向き、戦死した兵士の顔写真を切手にするプロジェクトで一気に注目を浴びる存在となった。本作が監督デビュー作となる。この事件に実際に関わった人たちに会い、脚本を練り上げたという。多くを語らず台詞は徹底的に排除され、映像の力で魅せていく描写はシンプルでストレートだが、ディテールまでにも拘りを感じる。ピンと張りつめた空気は一時も緩むことなく、息をするのも忘れるほどの緊張感と、説得力のある演技は刺激が強いが目を背けずに観て欲しい。

hunger3_20110813170135.jpg出勤前の看守の朝の風景から始まる。キレイにアイロンのかかった服の着方、食事の仕方、手の洗い方から彼が神経質で几帳面な性格であるということがわかる。手の甲は傷だらけのため、水が沁みる。毎度のことで沁みるのをわかっていながら気を引き締めるかのようにしばし手を水につける。そして、玄関を出ると近所に不審者がいないことを確認し、車の下まで念入りにチェックする。いくら神経質な性格でも普通は車の下までは見ないだろう。淡々と描いているが、冒頭から緊張感が漂い、彼の尋常ではない行動から、看守たちと囚人たちとの関係の悪さや、非人道的な暴行が行われているであろうことは容易に想像がつく。

“ノーウォッシュ・プロテクト”をしている囚人を部屋から引きづり出し、拳で顔を殴り押さえつけながら神や髭を切り、体を硬いブラシで洗い、肛門検査の際抵抗した者に対しては棒でたたきつけたりと、前半は容赦ない看守の暴行と決して思想を崩さない囚人たちの戦いが次々と映し出される。それと同時に、看守は拳からは血が滲み、水に手をつけては、しみる痛みを噛み締め、1人外で煙草を吸いながら考え込む。暴行の様子が見るに耐えられず、壁の向こうで泣き出す機動隊もいる。本作の素晴らしい点の一つしては、誰かを批判することなく、囚人、看守、政治といった様々な局面から歴史的事実を見つめている点である。

hunger_20110813140520.jpg“There's no such things as political violence, political murder ... ”
サッチャーの実際のスピーチやラジオ放送が引用されている。 囚人たちの要求はただ一つ。自分たちは犯罪者のテロリストではなく政治犯だということ。
見所の一つでもあるのが、中盤のボビーと神父が語り合うシーンである。アングルを変えず1カットで延々と17分。 唯一、まともな台詞があるシーンでもある。ボビーは“ポリティカル”を認めない英国政府に対する主張として“ハンガー・ストライキ”を実行することを神父に伝え、彼の思想や信念が語られる。
神とは?自由とは?死とは?
揺るぎない彼の思想や主張が社会にどれほどの影響を及ぼしたかも垣間見れた気がした。

そして、“ハンガー・ストライキ”は唐突に始まる。数十人が行ったとされるが、ボビーの様子だけが映し出される。日に日にやせ衰え、骨と皮だけが残り、体中に残る床ずれからは血が滲みが痛々しい。演じたマイケル・ファスベンダーは医師管理のもと過酷なダイエットを行ったというが、全く面影がないほどの激痩せぶり。作品としてこれ以上の説得力はない。意識が朦朧とし、目を開ける力すら失っている中で、母を見つめ何を思ったのか。心情は想像するしかない。死に向かう彼をじっと見守ることしかできない母の心痛は計り知れない。

<鑑賞> 2010/7、2011/8/13英語字幕

初版:2010/7/31
最新版:2011/8/13

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