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ソウル・キッチン <2009/独=仏=伊> ★★★

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Soul Kitchen
2009/90min/ドイツ=フランス=イタリア
コメディー/ドラマ
監督・脚本・プロデューサー:ファティ・アキン「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「クロッシング・ザ・ブリッジ
プロデューサー:クラウス・メック
脚本:アダム・ボウスドウコス
出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライブトロイ、ビロル・ユーネル、アンナ・ベデルケ
受賞:2009年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞、ヤングシネマ賞
IMDb評価:7.3/10

<あらすじ>1月22日劇場公開
ハンブルクでレストラン“ソウル・キッチン”を経営するジノス。恋人のナディーンが夢を追って上海に行ってしまったり、税務署からしこたま滞納していた税金の支払いを迫られたり、衛生局から新しいキッチン設備の導入を命じられたり、食器洗浄機を動かそうとしたら椎間板ヘルニアになったり……と、このところ上手くいかないことばかり。
ヘルニアで調理ができなくなったジノスが頑固者の天才シェフを新しく雇うと、彼が作る料理が評判を呼んで、店は連日大盛況! そんなある日、兄のイリアスが刑務所から仮出所してくる。イリアスが店のウェイトレス・ルチアに惚れて、音楽好きな彼女のために盗んできたDJセットでジノスの大好きな音楽をかけながら、店は絶好調に繁盛し出した。すべては上手く回り始めた、ハズだった。
しかし、ソウル・キッチンの土地を狙う不動産が現れ、店は乗っ取りの危機に陥る……。この店はオレたちの心(ソウル)。なくすわけにはいかない! (公式ページより)

<レビュー>
世界三大映画祭を最年少36歳にして制覇したファティ・アキン監督。
コメディーだとは知っていたけど、ファティ・アキンならきっと何かあると期待して鑑賞。
愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」のような重い映画を作っていた監督とは思えないほどゆる~いコメディで、ちょっとブラック。かなり意外でした。でも、コメディーのネタとしては簡単に思いつくような物ばかりでさほど新鮮なネタは含まれていない。

ぎっくり腰だけでも日常生活は大変なのに、さらに突然で踏んだり蹴ったりな危機に次々と見舞われる。結構な大惨事なのに、ジノスはいつでもゆる~い感じ。ぎっくり腰の間抜けな姿がゆるさに拍車をかけている。悪戦苦闘している様子もなく、おそらくどうにかなるだろうぐらいにしか思っていない。
刑務所から出てきた弟に店を押しつけ、上海にいる恋人に会いに行こうとする。ただ会いたいのではなく、現実から逃げているようにしかみえない。ジノスのレストランは冷凍食品を温める程度で接客も適当であった。それに限らず、私生活もどことなく冷めていて活力がないのである。
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でもそんな陰には助けてくれる人もいたりして、人生は痛みばかりではない。冷凍食品を温めるだけのレストランでも通い詰めてくれるお客はいるし、親身になって治療につきあってくれるマッサージ師もいる。そんな人たちの有難みに気付けただけでも人生の収穫である。アキン監督らしい人間的な前向きな成長が描かれていて微笑ましい。

これまでは自身のルーツであるトルコ移民を主体にしていたファティ・アキン監督。本作では移民については直接的には触れていないものの、やはりトルコ系やアラブ系、ギリシャ系といった多民族が登場する。このハンブルグに限らず、多民族が共存する都会では「ソウル・キッチン」は心の拠り所。ここで流れる音楽もソウル・ミュージックだったりドイツのパンクだったり、民族と同様に無国籍。これまでのスタイルとは異なっても選曲のセンスは健在。本国でのポスターはレコードジャケット風で日本版よりアキンらしさがあっていい。

ぎっくり腰の間に雇われた代理のシェフ役には、アキン監督でお馴染みのビロル・ユーネル。ゆる~いジノスへの料理指導のストイックさがゆるさの中で唯一スパイスになっている。好きな俳優なので出番があまり多くなかったのが残念ではあるけど。

<鑑賞> 英語字幕 2011/1/16
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愛より強く <2004/独=トルコ> ★★★★

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Gegen die Wand/Head-On/愛より強く
2004/121min/ドイツ=トルコ
監督:ファティ・アキンFatih Akin
出演:ビロル・ユーネルBirol Ünel、シベル・ケキリSibel Kekilli、グヴェン・キラック
受賞:2004 ベルリン国際映画祭 金熊賞他、22受賞、11ノミネート
言語:ドイツ、トルコ、英語
IMDb評価:8.0/10

<あらすじ>
愛する妻を失った40歳のジャイト(ビロル・ユーネル)は、人生に絶望して自殺を図るが未遂に終り、一層の苦悩を背負い込む。若くて美しいトルコ系ドイツ人女性シベル(シベル・ケキリ)は、保守的なイスラム教徒の家族から逃れたい一心で自殺未遂を図る。精神科のクリニックに入院したシベルは、家族から自由になるには結婚しか道はないと、クリニックで出会った同じトルコ系ドイツ人のジャイトに偽装結婚を願い出る。ジャイトは渋々ながらも、彼女を救うためならと、その申し出を受け入れる。こうして2人は、同じアパートをシェアして愛のない偽りの結婚生活をスタートさせるのだが…。(allcinema)

<レビュー>
本作はキム・ギドク監督「サマリア」をおさえ、ベルリン国際映画祭において金熊賞を受賞した作品。
トルコ系ドイツ人監督によるトルコ系ドイツ人労働社階級カップルのお話。

「壁に向かって」という原題がこの作品にぴったりだと思うほど、「壁」がよく出てくる。
ジャイトにとっての壁は妻との死別。壁に衝突事故を起こし自殺を図ってもいる。壁にぶつかっては自身の存在意義すら自問自答する日々。生きる意味をも見失っていた。
シベルにとっての壁は厳格なイスラム教徒の家庭。復建制度的な家庭環境であった。イスラム教と父が壁になっていた。たとえ偽装結婚だとしてもトルコ系の男性と結婚し、父親から逃げたかった。それが全ての悲劇の連続の始まりだったのだ。
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舞台はドイツのハンブルグ。ドラッグ、セックス、アルコールそしてパンクミュージックに溢れる自由な街だ。そんな街で始まる愛のない2人の共同生活はドラッグまみれで、お互い自由にやりたい放題。シベルはバーにいっては夜の相手を探す毎日。ジャイトはそんな妻の行動を気にしながらも気づかない素振りを見せる。妻の遊び相手から、「お前はほんとに亭主か?俺はトルコ人とやれればいい」と言われ、殴ってしまう。皮肉にもこの事件がきっかけでお互いの愛にやっと気付き始めたのだ。

自身の行き場を見失っていた2人にとっての偽装結婚は何を意味したのか?それは、未来への希望だったはず。抑圧からの解放、刺激への渇望、心の葛藤、真実の愛、移民者の生活環境。。。2人一緒なら壁に立ち向かえるはずだったのに、結婚が招いてしまった悲劇と共に変化をみせる心情が激しくて切なく、歯がゆい。観賞後「愛より強く」という邦題の意味を考えてみると、愛だけでは罷り通れない現実の厳しさをひしひしと感じた。でも、この間違った結婚は人生再生への第一歩となったことを証明する形でのエンディングに希望の光も見えた。
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ドイツを象徴するかのようにパンクを愛する2人だが、劇中、イスタンブールを背景に演奏されるトルコ民謡が印象的だった。ドイツに移民しても心はトルコ人であること。こんなことが移民へのメッセージとして込められているような気がした。ドイツ映画というよりトルコの文化が濃く感じられる作品だった。

<鑑賞> 2010/5/24 英語字幕
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