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愛さえあれば <2012/デンマーク> ★★★☆

2013年5月17日公開予定。

Love Is All You Need愛さえあれば/Love Is All I Need
2012/116min/デンマーク
ロマンス、コメディー
監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トマス・イェンセン
撮影:モーテン・ソーボー
出演:ピアース・ブロスナン、トリーヌ・ディルホムキム・ボドゥニアパプリカ・スティーンボディル・ヨアンセンセバスチャン・イェセン

社会度 ★★★
哲学度 ★★★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 なし
ゴア度 なし
脚本 ★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★★


Love Is All You Need1娘の結婚式のためにイタリアへ旅立つ前日、イーダは病院から予定より早めに帰宅すると旦那は女を連れ込んでいた。乳がん治療に苦しんできたイーダにとってこれ以上の裏切りはない。夫はすぐさま家を出ていき、娘の結婚式で落ち合うことにした。その後、イーダは空港の駐車場で事故を起こしてしまう。被害者は偶然にも娘の婚約者の父親であり、イタリアへ向かうところであった。2人は一緒にイタリアへ向かう…。

監督は、「未来を生きる君たちへ」「アフター・ウェディング」「ある愛の風景」のスサンネ・ビア。
脚本は、監督とのタッグは5作目となるアナス・トマス・イェンセン
出演は、、「未来を生きる君たちへ」のトリーヌ・ディルホム、「007」シリーズでおなじみのピアース・ブロスナン、「未来を生きる君たちへ」「プッシャー」のキム・ボドゥニア、「しあわせな孤独 (2002)」のパプリカ・スティーン

Love Is All You Need2原題は“坊主のヘアドレッサー”。乳がん治療のために頭髪を失った美容師イーダのことである。乳がんの治療が落ち着き、喜びの報告をしようとした矢先に発覚した夫の浮気。そして直後の衝突事故。被害者のフィリップもまた、妻の死から立ち直れないでいた。2人の出会いを軸にしたほろ苦くも温かいラブコメディー。

舞台は、南イタリアにあるフィリップの別荘。海が望める豪華な別荘でそれぞれの家族や友人たちが集まり挙式が行われる予定である。結婚式を挙げるまでの数日間を背景に、家族の悩みやキャラクター像がどんどん掘り下げられていく。登場人物は傷を負っている人たちばかりだが、愛らしい魅力的なキャラクターばかり。掘り下げられていく過程は、鋭い人間考察であり、それぞれが本当の幸せを見つけ、再生していく過程がじっくり描かれる。必ずしもハッピーな展開ばかりではないが、悲観さはなく希望に満ち溢れ、前進することで人生は変えることができるという前向きなメッセージが込められている。

ビア監督×イェンセン脚本のタッグは本作で5作目になる。ビア監督としては(おそらく)初であり、意外にも感じられるコメディー色が強めな趣きの異なる作品。身近に潜んでいるシリアスな問題を取り上げるあたりはビア監督らしく、キャラクター設定やユーモアのセンスにはイェンセンらしさを感じる。2人のそれぞれの特色がうまく融合された作品に仕上がっている。

<観賞> 2013/3/2
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未来を生きる君たちへ <2010/デンマーク> ★★★★

ようやく今朝、岩手・宮城在住の親戚全員の安否確認ができ、震災後、初の記事です。(最後の記事は予約投稿でした)
被災者の方々には、心よりお見舞いを申し上げます。

in a better worldHaevnen/In a Better World
2010/119min/デンマーク=スウェーデン
監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トマス・イェンセン
撮影:モーテン・ソーボープッシャー」「Valhalla Rising
音楽:ヨハン・セーデルクヴィスト
出演:ミカエル・パーシュブラントトリーヌ・ディルホムウルリッヒ・トムセンボディル・ヨアンセンキム・ボドゥニア
言語:デンマーク語・英語・スウェ語
受賞:アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞
   デンマークアカデミー賞主演女優賞
IMDb評価:7.7/10

2011年アカデミー賞外国語映画賞エントリー65作品についてはこちら
2011年デンマークアカデミー賞(Robert Award)ノミネート・受賞作品についてはこちら



in a better world3学校でイジメに合っているエリアスの両親は離婚調停中である。父親は、医師としてアフリカの難民キャンプに赴任しているが、息子とはテレビ電話でよく話をしている。ある日、母親を亡くし、ロンドンから帰ってきたクリスチャンがエリアスのクラスに転入してきた。隣の席で次第に仲良くなり、行動を共にするようになる。エリアスのいじめに我慢できなくなったクリスシャンはついにイジメグループのリーダーを傷つけてしまう。ある時、父親は難癖をつけてきた男性に暴力を奮われる。理不尽な暴力に居合わせた息子とクリスチャンは仕返しするように父親を説得するが、「新たな暴力を生むだけだ」ときっぱり断る。父親を殴った男が許せないエリアスは父の代わりに仕返しを考える。それが子どものイタズラといったレベルのものではなく…。

in a better world2
権力による暴力と殺人がはびこっている赴任先のアフリカ。犠牲者が多く運ばれる難民キャンプで現実に直面し、心を痛めるエリアスの父親であった。クリスチャンが息子のために仕返しをしたことでいじめが明るみになり、息子も被害者であったことを両親は初めて知らされるのである。先生は夫婦の不仲や海外赴任といった家庭環境が一因でもあるという。アフリカの現状に心を痛めていたが、自分もいじめの要因を作っていたとは露とも知らずに。



in a better world1子どものいじめ。大人の暴力。権力による暴力と殺人。デンマークとアフリカといった全く異なった環境でも共通する問題を提起している。暴力が新たな暴力を生み、連鎖し続ける復讐。抵抗をせず、子供たちに暴力と復讐の無意味さを教えようとする父親。誰かがどこかで赦さなければ永遠に終わらない。よりよい世界(better world)を求めて、人々は復讐と赦しの狭間で揺れ動く。“やったらやり返す”クリスチャンにとっても“赦し”とはハードな試練となる。

負の感情を抑えてこそよりよい世界が生まれること。偶然にも、本作の前に観た「Dragonflies」も同様のテーマであった。復讐の果てに残るのは解放心ではなく、絶望と新たな傷だということを本作のほうが明確に示している。暴力の先には死も潜んでいることも示唆している。

監督の鋭い洞察力にはまたもや驚かされたし、面白かったが、デンマーク映画として観てしまうと平凡で少々物足りない。普遍的で万人向けであるのが世界で受け入れられる理由なのだろうか。

<鑑賞> 英語字幕 2011/3/11
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(未) Nothing's All Bad <2010/デンマーク> ★★★

nothing1.jpgSmukke mennesker/Nothing's All Bad
2010/93min/デンマーク
監督/脚本:Mikkel Munch-Fals(長編デビュー作)
出演:ボディル・ヨアンセンセバスチャン・イェセンヘンリク・プリップ、Kurt Ravn、ダール・サリムピーター・ガンツェラー
受賞:2011年 デンマーク・アカデミー賞6部門ノミネート、助演女優賞(ボディル・ヨアンセン)
IMDb評価:7.1/10

変態度 ★★★
個性度 ★★★★
感動度 ★

2011年 デンマークアカデミー賞ノミネート・受賞作品についてはこちら





女性を見ると自慰行為をやめられないドナルド。体を売って小遣いを稼いでいる息子のヨナス。
酔って寝てしまい目覚めたら夫が死んでおり未亡人になってしまったイルゲボルグ。乳がんで乳房を失ってしまった娘のアン。普通ではない方法で知り合った4人の交差した運命は・・・。

失意の男女4人がよりよい人生を求める日常の奮闘記といった普遍的なテーマではあるが、4人の共通点である孤独や喪失感をアブノーマルな性で満たすという視点は面白い。ここで描かれる性とは男女間の性行為ではなく、アダルトビデオ、売春、強姦、自慰行為といった行為であり、違法や犯罪とされる行為まで恥じらいもなく堂々と描いている。北欧映画らしくゆったりと描かれる中で、時としてインパクトのある映像にギョッとさせられる。アカデミー賞外国語作品にノミネートされていたギリシャ映画「Dogtooth」ほどではないけど、本作もかなりの変態的な視点。未亡人イルゲボルグを演じるのはトリアー監督作『イディオッツ』で主演を務めたボーディル・ヨーゲンセン。

nothing.jpg冒頭では女性を見ただけで下半身が反応してしまうドナルドを変態的に描いているが、物語が進むにつれ、本人も悩んでいることがわかる。病院に通い医師に相談するが、医師も呆れた様子。他に医師に嫌悪療法を薦められるがうまくいかず、いっそのこと性器を自ら切り落としてしまおうとさえ考える。
片胸を失ったアンは、失った乳房を補うかのように残っている方の乳房を鏡に反射させる。そして、まだ女性であることを確認するかのように、アダルトビデオへの出演を決めるのであった。
男女問わず、体と引き換えに金を稼ぎ、その日暮らしをしていたヨナス。体だけではなく、心もズタズタになっていた。
イルゲボルグはバーで若い青年が声をかけてきたとに胸を弾ませるが、金目当てだったことを知り、愕然とする。

nothing2.jpg軽く結末に触れています。ご自身の判断で読み進めてください。
心ではいつも泣いている4人の独立したストーリーは巧みな脚本によって複雑に絡まり合っていく。彼らに共通するのは、それぞれ人には知られたくない性のエピソードがあること。その場限りの関係だったはずの相手とバッタリ出くわすことの気まずさから流れる寒い空気まで伝わってくる。でも、苦しみを知っているからこそ人の苦しみも理解できる4人は次第に打ち解け、ほんのり温かい気持ちになれるエンディングでした。社会の隅に弾き出されてしまったような4人。誰も目を向けようとしないキャラクター(特に露出狂)ですら愛着が湧いてくる、そんな作品でした。秘密や悩みを共有することで人間は幸せにもなれるのねぇ。

<鑑賞> 英語字幕 2011/2/16
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