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デカローグ第4話 <1989/ポーランド> ★★★★★

Dekalog, cztery
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:ヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛
IMDB評価:8.4/10、9.2/10(全体)

4条「あなたの父母を敬え。」をテーマにした第4話「ある父と娘に関する物語」について。

父親の死後開封するようにと書かれた手紙を娘は開けてしまう。この手紙はもともとは母親が亡くなる時に描いたもので、娘が大きくなったら読ませ欲しいということだった。娘が10歳になった時にはまだ小さすぎると思い、15歳になった時にはもう遅すぎると思った父は、更に封筒に入れ、自分の死後に読ませようと考えていたのである。
dekalog42.jpgdekalog41.jpg
手紙の内容は、父親は実父ではないという内容だった。父親は手紙を読んだのかどうかはわからないが、内容は察しており、心のどこかで自分が健在中に娘に読んで欲しいという思いがあったようだ。なぜか?娘を異性として意識していたからではないだろうか?心のどこかで、結ばれることを望んでいたのではないか?実父だという確信もなかったのではないか?娘に運命を託す父親には恐れも感じるし、理性と本心で揺れ動く葛藤がひしひしと伝わってくる。

手紙を読み父親が実父ではないと知った娘の発言には衝撃を受ける。「他の男と寝る時、お父さんに罪悪感を感じる」というのだ。そして、もはや親としてではなく、男として意識している父親の前で裸になり、父親を誘惑するのだ。愛を選んでしまうのか?それとも20年間の親子の絆を選ぶのか?

終盤でどんでん返しがあり、真実が明らかになっていく仕掛けはお見事。ラストの落とし所も巧妙。昔、男女の駆け引きに使われていたEaster Monday(水をかけ合う)を思わせる冒頭も、男女関係を暗示していたのだろう。実は自分なりに解釈するのに一番時間がかかったのがこの第4話であり、私にとって一番の傑作でもあった。親子を異性として意識すること自体が罪に思えるが、親子、血の繋がり、愛することとは一体何なのか?親子のもどかしさを見ていて、そんな疑問が生じた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8

↓以下ネタバレします。
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尋問 <1989/ポーランド> ★★★★★

interrogation.jpg
Przesluchanie /Interrogation
1982(公開1989)/118min/ポーランド
監督/脚本: リシャルト・ブガイスキ
製作: タデウシ・ドレヴァノ
製作総指揮: アンジェイ・ワイダ(ノンクレジット)
出演:クリスティナ・ヤンダデカローグ第2話」、アダム・フェレンツィヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛」、アニエスカ・ホランドオルジード・ルカセウィッツ
受賞:1990 カンヌ映画祭 主演女優賞
IMDb評価:8.3/10

芸術度 ★★
社会度 ★★★★★
衝撃度 ★★★★★
感動度 ★★★
催涙度 ★
演技力 ★★★★★

<あらすじ>
キャバレー歌手アントニーナは、身に覚えのない容疑で投獄。公安から執拗な尋問を受け、それは恐るべき拷問へと変わる。彼らは彼女に知人を陥れる嘘の証言を強要。頑としてそれを受け入れない彼女に地獄の日々が7年もの間続く…。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

<レビュー>
たまたま出くわした映画が、いい意味でとんでもない作品だった。ポーランド映画数本しか観たことがなくても見たことのある顔ぶれが名を連ねていた。主人公アントニーナと獄中仲間であった女性を驚くべきアニエスカ・ホランドが演じていた。クシシュトフ・キェシロフスキ監督の助手や監督としての彼女しか知らなかったが、かなりの存在感がある。何よりも主人公のクリスティナ・ヤンダの体を張った迫真の演技に圧倒させられる。「デカローグ第2話」とは全く違う役柄で同一人物だとは気付かなかった。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したのにもうなずける。惜しくもパルムドールは逃してしまった。

本作は1982年に完成していたが、1981年の戒厳令施行によりポーランド国内で公開・輸出が禁止されていた。1983年7月 戒厳令全面解除されたが、8年後の1990年、カンヌにて公式初上映された。

キャバレー歌手アントニーナは仕事後、ファンだという男性2人と飲みに行く。ものすごいピッチで飲み続けたアントニーナは見事に酔い潰れてしまった。そして、翌朝目覚めると、そこは牢獄であった。一緒に飲んでいた男性2人が連れてきたのだ。

50年代のスターリン体制下という時代背景である。身に覚えのない容疑でも不当に逮捕されてしまうとんでもない時代だ。そんな時代をたくましく生きた人々の苦痛は計り知れない。

アントニーナもなぜ投獄されたのか全くわからず尋ねるが、逆に過去に関係を持った男性の名前を洗いざらい全て言わされる。その中の一人であるオルツカは国家反逆罪の容疑をかけられており、たった一度関係を持ったアントニーナを共犯と仕立てようとしていたのだ。国家反逆罪を立証する自白をさせ、都合良く仕立てられた調書にサインをさせようとする。「国家の安全のためなら友達をも犠牲にしなければならない場合もある。自白さえすれば、罪は軽くなる。」とまでいう取調官。無実だということは承知しているということだろう。
interrogation2.jpginterrogation3.jpginterrogation1.jpg
同じく投獄されている者たちもやはり不当逮捕であった。共産党のある者は、党の命令でアメリカ人を国家施設に案内してしまったことが、諜報活動に手を貸したことになるという理由であった。自白をさせるために、人権を無視した暴力的な拷問が繰り返し繰り返し行われる。犬のように扱われたり、独房で水死させられそうになったり、ピストルで頭をぶち抜かれた死体を見せられ、次はお前だと脅かされたり、よく次から次へと思いつくものだと関心してしまうほどあらゆる手段で自白、署名を強要するのだ。拷問に耐えられず自白してしまう者も少なくないであろう。裏切り、裏切られ、皆人間性を失っていくのだ。しかし、アントニーナは決して人間の尊厳を見失うことはなく賢明に立ち向かい、無実であることを訴え続けた。

耐え抜きながらアントニーナは毎日夫のことを思っていた。ついに面会に来てくれたのだが、別れを告げられてしまった。関係を持った男性遍歴を知ってしまった以上、離婚せざるを得なくなってしまったのだ。生きがいを失ってしまったアントニーナは手首を噛みきって自殺を図ってしまう。出血多量で亡くなったかと思ったが、どうにか一命はとりとめ、病室房に送られる。そこへかつての取調官タデウシュがお見舞いにやってくる。彼はアントニーナの意思の強さに魅了されており、手を挙げることはなかった人である。クリスマスだったその日に2人は結ばれたのであった。やがて獄中出産し、子供は孤児院に預けられる。

↓以下、ネタバレします。

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