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(未) Stuff and Dough <2001/ルーマニア> ★★

stuff.jpg
Marfa si banii/Stuff and Dough
2001/90min/ルーマニア
ドラマ
監督/脚本:クリスティ・プイウ(Cristi Puiu)(監督デビュー作)
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク(Razvan Radulescu)
出演:Alexandru Papadopol、ドラゴス・ブクル、Ioana Flora
IMDb評価:7.0/10









stuff1.jpgOvidiuの両親は田舎町で小さな食料品店を経営している。商品の調達はOvidiuがブダペストまで買いに行っている。ある日ある人から、調達のついでに運び屋の仕事をやらないかと持ちかけられ、引き受けることにした…。

監督は「ラザレスク氏の死」のクリスティ・プイウ監督。本作がデビュー作となる。
主演のAlexandru Papadopolにとってもデビュー作となる。日本での公開作はなく、海外進出もしておらず、世界的にもおそらく無名に近いと思うが、「4か月、3週間と2日」のクリスティアン・ムンジウ監督作の2作品に出演している。そして、特に注目しているわけではないのだが、最近観ているルーマニア映画のほとんどに出演しているドラゴス・ブクル。本作は3本目の出演で、まだ無名に近いようだが、今となってはルーマニア映画に限らず、「コッポラの胡蝶の夢(2007)」や先日アップしたアメリカ映画「The Way Back」にも出ている。2人とも、本作の演技が認められ、人気を獲得としたといっても過言ではないようだ。

中盤の1時間はバンを運転しながらブダペストへ向かう道中で、うだつの上がらない日常の会話でもたつきを感じる。15分程度の短編で十分だったように思うが、最新作以外の3作品を全て観た感想としては、シニカルな台詞回しが特徴であり、見所となっているようだ。私の苦手な、しかしながら俳優たちがこぞってノーギャラでも出演したがる韓国のホン・サンス監督を彷彿とさせる。

貧困ゆえに知らぬ間に犯罪に加担してしまっている日常の恐ろしさを描きたかっただとは思うが、ちょっと肌に合わず、いまいちポイントが掴めない。見逃している恐れあり。

<鑑賞>英語字幕 2011/10/31
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ラザレスク氏の死 <2005/ルーマニア> ★★★★

death.jpgMoartea domnului Lazarescu/The Death of Mr. Lazarescu
2005/153min/ルーマニア
ドラマ、コメディー
監督/脚本:クリスティ・プイウ(Cristi Puiu)(長編監督2作目)
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク(Razvan Radulescu)
出演:イオアン・フィスクテーヌ、ルミニタ・ギョルジュー、ドルー・アナ、ダナ・ドガル、ドラゴス・ブクルミミ・ブラネスク、Bogdan Dumitrache、Gabriel Spahiu
IMDb評価:7.8/10
2005年 カンヌ国際映画祭 ある視点出品
2005年 アカデミー賞外国語映画賞 ルーマニア代表作品

社会度 ★★★★
ブラック度 ★★
余韻度 ★★★

日本ではシネフィルで放送されたのみ。

1980年代、チャウシェスク独裁政権下のルーマニアの首都、ブカレスト。62歳のラザレスク氏は集合住宅で3匹の猫と一人暮らしをしている。ある土曜の朝頭痛で目が覚めた。鎮痛剤を服用したが、効き目がない。さらに吐き気までもよおすようになってしまった。救急車を呼んだが、なかなか来ない。もう一度電話してみるが、来る気配がない。隣人に助けを求め、部屋に来てもらうと、血液混じりの嘔吐をしてしまう。酒の飲み過ぎだと思っていた隣人もようやく事態の深刻さに気付き、救急車を手配してくれた。頭痛と嘔吐が原因で救急車を呼んだが、救急隊員はお腹にしこりを見つけ、大腸がんの疑いをかけ、最初の病院へ搬送する…。

death1.jpg監督はルーマニアで今もっとも期待されている若手監督の1人。デビュー作「Stuff and Dough (Marfa si banii)」、本作、次作「Aurora(2010)」の長編3本全てがカンヌ映画祭に出品され、短編「Cigarettes and Coffee (Un cartus de kent si un pachet de cafea)」はベルリン国際映画祭短編部門で金熊賞を受賞している。
「Six Stories from the Bucharest Suburbs(ブカレスト郊外での6つの物語)」を構想中とのことで、本作はその1作目になる。2作目「Aurora」では自身が主演を務めている。監督と共に脚本を書き上げたのはラズヴァン・ラドゥレスク。国際的に評価の高い近年のルーマニア映画にはこの方が携わっていることが多く、個人的に注目したい方。先日アップした「不倫期限」にも名を連ねている。

タイトルに“死”が使われており、重くなりがちなテーマだが、不思議と悲壮感はない。深刻というよりどこか温かみを感じる。実際にラザレスク氏が死ぬわけではなく、明らかに弱り果て、この状態が続けばいずれ死を迎えてしまうという警告である。コメディーといっても笑い転げるというより、特に医師同士の台詞回しが面白く、シニカルなブラックに仕上げている。医師が練り上げたのかと思うほど医療専門用語が巧みに使われているが、病名や症状がストーリを理解する上でさほど重要なわけではない。

death2.jpg2時間半という長さ、弱っていくラザレスク氏、疲労困憊の医師たちの姿を延々と見せられることになる。病院を何軒もたらい回しにされ、医療現場の現状と問題点が浮き上がってくる。常に患者と医師の板挟みになっている救急隊員の目線で、患者側と医師側を客観的に描いているのが興味深い。

ラザレスク氏にとってはタイミング悪く交通事故が重なり、医師は緊急性を要する患者たちを優先したが、それは単なる言い訳に過ぎない。ラザレスク氏は低所得者の老人であり、病院はできれば処置したくない状況が覗える。共産政権下という時代背景だが、今の日本の医療現場も同じ状況である。老人の孤独な1人暮らしという点も日本と共通している。
一方、救急隊員と医師との身分格差も垣間見れる。ろくに患者の身体に触れないため、シコリに気がつく医師はいない。救急隊員が口を出せば、「救急隊員ごときが口挟むな」とお叱りを受けることとなる。しかしながら、救急隊員のほうがよっぽど人間的な対応であり、救急隊員なしでは見過ごされ、まともな治療も受けられなかったかもしれないという恐ろしい現状も見え隠れする。しかしながら医師も人間であり、24時間体制で働き詰めというわけにはいかない。医師不足も日本と同じ状況であり、浮かび上がってくる医療現場での多くの問題点は日本も対岸の火事ではない。

なお、ラザレスク氏を演じたイオアン・フィスクテーヌ氏は本作が遺作となり、2007年に他界されました。
ご冥福をお祈りいたします。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/23
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不倫期限 (原題:Tuesday, After Christmas) <2009/ルーマニア> ★★★★

Tuesday.jpg 不倫期限/Marti, Dupa Craciun/Tuesday, After Christmas
2010/99min/ルーマニア
ドラマ、ロマンス
監督/脚本:ラドゥー・ムンテアン(Radu Muntean) (監督4作目)
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク(Razvan Radulescu)
キャスティング・ディレクター:Bogdan Dumitrache
出演:ミミ・ブラネスクマリア・ポピスタス、ミレーラ・オプリショル、ドラゴス・ブクル、ヴィクトル・レベンギュウク
IMDb評価:7.2/10

第62回(2009)カンヌ映画祭 ある視点部門出品

哲学度 ★★★
社会度 ★★★
普遍度 ★
官能度 なし
邦題のセンス 



Tuesday1.jpg妻と結婚して10年を迎えるパウルには1人娘がおり、歯の矯正に通わせているが、なんと、パウルは娘の歯科医師と不倫関係にあった。クリスマスを目前に、不倫関係は5か月が過ぎようとしていた。まだ妻にはバレテはいないが、やはりこのままではいけないと思っているパウルは、妻に全てを告白をした。そして、どちらかと別れる決断を下す…。

「不倫期限」という作品がレンタルされているのは知っていたが、まさかこれだったとは…。この邦題、あまりにもショックが大きい。
本作の監督はルーマニア新鋭といわれる作家監督であり、国際的な評価も低くない。本作はカンヌ映画祭のある視点部門に出品されている。ヨーロッパ映画を意識して観ている人ならば、ポスター写真がたとえヌードであろうと、ある視点部門に出品されたと知ればそれなりに作風や傾向は推測できるはずである。しかしながら、この邦題とポスター写真に惑わされ、ポルノのような作品を期待しレンタルし、騙されたと後悔した人も少なくないはず。逆に、邦題のせいで見逃してしまう人もいるかと思うと悲しくなってしまう。
こんなターゲットを間違えている宣伝の仕方でいいのか?カンヌに出品されたことは宣伝に利用されているのだろうか?
どういった人たちが好み、求める映画なのか見極め、ターゲット層を絞った上で、邦題や宣伝方法を決定して欲しい。
対象はヨーロッパ映画好きの男女アラサー世代以上といったところだろうか。

Tuesday2.jpg時はクリスマス間近。パウル一家もクリスマスパーティーやらプレゼント、ツリーの準備に忙しい時期である。そんな忙しい日常を一歩下がった視点から淡々と描く中で、妻と愛人の板挟みで悶々と悩むパウルの心情を浮かび上がらせ、不倫が及ぼす社会的状況まで迫っていく。
原題も英題も“火曜日、クリスマスの後”。クリスマス後の火曜日に起ころうとする出来事に向けてパウルが静かに動き出すのだが、はっきり言って、劇的な出来事はなく、一般的な不倫映画とも趣旨が異なる。私が観たのはアメリカ版で無修正のヌードシーンがあるが扇情的なシーンもなければベッドシーンもはない。レンタルで観られた方のブログを覗くと、ボカシが入っているようです。おそらく多くの人が不倫映画に期待するであろうベッドシーンや泥沼化、修羅場といった要素を一切排除しており、こういう描き方もあるのかと関心させられた。

主要人物となる3人(パウル、妻、愛人)は常に冷静な態度で、極力感情を抑えているが、いつ爆発するかわからない危うい感情のバランスを見せている。微妙な感情の揺れ動きのみが表現され、音楽もない。固定カメラによるワンシーンワンカットの撮影スタイルは客観性があり、いい緊張感を生んでいる。内に秘めている罪悪感や嫉妬、怒りといった感情が見て取れ、涙が吹き出してしまった。

共に歩んできた10年の月日を感じさせる夫婦の距離感が絶妙。仕草や会話からはごく自然な家族の幸せが漂い、夫の不倫など想像もつかない。ありきたりな家族の形が普遍度を高めている。“自分も被害者だ”というパウルの発言は許せることではないが、結果はどうであれ“けじめ”をつけようとする姿勢は、自分の都合を優先して曖昧な関係をダラダラ続ける男よりはよっぽどマシである。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/19
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4か月、3週間と2日 <2007/ルーマニア> ★★★★★

4months.jpg
4 luni, 3 saptamâni si 2 zile/4 Months, 3 Weeks & 2 Day
2007/113min/ルーマニア
監督/脚本:クリスティアン・ムンジウ
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク
出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ
受賞:2007年カンヌ国際映画祭パルムドール 他23受賞、19ノミネート
IMDb評価:7.9/10

<あらすじ>
1987年の冬のある日、チャウシェスク政権下のルーマニアで、大学生のオティリアは寮のルームメイトのガビツァとせわしくなく動き回っていた。寮を出たオティリアはホテルへ行くが、予約が入っていない事を知り、仕方なく別のホテルを取る。またガビツァの代わりにある男に会う事に。実はガビツァは妊娠しており、オティリアはその違法中絶の手助けをしていたのだ。しかし思うように事は進まず、オティリアの苛立ちはつのっていく。

<レビュー>
女の子が何をせわしく駆けずりまわっているのか教えてもらえないままストーリーは進む。
予めあらすじは知っていたが、それでも状況がわからなかったし、主人公が誰なのかもわからなかった。
重苦しい寮に冴えない顔付き、チャウシェスク政権下、真冬、、、音楽を一切排し、とにかく暗い。

時代は、チャウシェスク政権下。
常にID提示を求められ、女性たちの避妊、中絶は禁じられていた。
抑圧された社会が見事に浮き彫りになっている。
望まない妊娠に対しての中絶は秘密裏に行うしかなかった。
万が一、違法な中絶が見つかったら罪に問われる時代だが、闇医者は存在する。
手術をする側も施す側も命がけ。
設備が整った病院で手術できるわけがないのは当たり前だが、ホテルの1室で麻酔なしに数分で行われる。
殺伐としていてやり場のない気持ちになった。
命を軽んじる少女が悪いのか、中絶を禁じる国が悪いのか、、、

この国での闇医者は、望まない妊娠をしてしまった女性にとっては救世主。
私はそんな思いで闇医者を見ていた。しかし、弱みにつけ込む許し難い行為は最低だった。
この国で暮らす女性たちに希望はあったのだろうか?

一番の被害者は妊娠した少女ガビツァではない。ルームメートのオティリァである。
中絶場所として指定されたホテルの予約が失敗したのは当事者の責任だが、医者の機嫌をとったのはオティリァだった。
命がけの中絶。
万が一見つかった際、手助けをしたオティリァも罪を問われてしまうのに、なぜこんなに協力的だったのか。
彼女自身も明日は我が身だったのです。もしかしたら同じ境遇なのではないかと思わせるシーンすらある。
「自分が妊娠した時はガビツァが助けてくれるかもしれない」
こんな思いをせざるを得ないことがあまりにも哀れだ。

中絶を禁じる社会状況、闇医者、それ以上に私をイライラさせたのは当事者のガビツァ。
ルームメートのオティリァの助けなしでは中絶はないえなかったであろうに、あまりにも子供で身勝手だ。
手術後の食事のメニューは彼女の無神経な性格を象徴しているかのよう。

すごくヘビーで、胸がえぐられるほどショッキングな作品だった。
でも、興味を引き付けるリアルさがあり釘付けになってしまった。
緊迫感、絶望感、閉塞感がこれでもかと言わんばかりに襲ってきた。
しかし、社会状況や中絶是非を批判するものではない。
絶望の淵の中でたくましく生き抜くオティリァはこの作品の中で唯一の希望に見えた。


参考までに、
1989年、ルーマニア革命で中絶は合法化
1920年、旧ソ連中絶を合法化(1936年非合法化のちに1955年再度合法化)
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