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メランコリア <2011/デンマーク=スウェーデン=仏=独> ★★★★★

melan.jpgMelancolia
2011/136min/デンマーク=スウェーデン=フランス=ドイツ
SF、ドラマ
監督/脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、キーファー・サザーランド、シャーロット・ランプリングアレクサンダー・スカルスガルドステラン・スカルスガルドウド・キアー、ジョン・ハート
受賞:第64回(2011)カンヌ映画祭 女優賞 (その他ノミネート、受賞作品はこちら)
IMDb評価:7.8/10

哲学度 ★★★★
宗教度 ★★
映像美 ★★★
鬼才度 ★★★

2012年2月よりTOHOシネマズ渋谷ほか全国でロードショー

巨大な惑星“メランコリア”が時速10万キロのスピードで地球に接近する中、二人姉妹の妹ジャスティーンは結婚式を挙げる。夫ジョンの豪華なスウェーデンの邸宅で大勢の人たちに祝福され、幸せの絶頂にあるはずの彼女であったが、鬱病に苛まれていた。ジャスティーンは式の間も奇妙な行動を起こし始め、無事に結婚式を終えようと姉クレア夫婦は力を尽くすが、虚しくも結婚は解消となってしまう。そして、ついにメランコリアが地球に最も接近しようとする日が近付く…。

melan1.jpgラース・フォン・トリアー監督のカンヌ映画祭コンペ入りは9作目となる。2年前に「アンチクライスト」で騒然とさせた監督が、本作の記者会見における不適切発言で追放を言い渡されるという異例の事態が起こった。「アンチクライスト」を観てしまったことに激しく後悔し、この監督作品はもう観ないと心に誓ったはずなのに、話題性に負けやっぱり観てしまった。毎回物議を醸し出すだけあって、やはり強烈。前作のような大胆な性描写や暴力描写はなく趣の異なる作風だが、奥底にある暗部を抉り取るような精神状態の描き方はこの監督にしか成し得ないと感じさせる鬼才ぶり。

偶然にも今年のカンヌでは“魂の救済”を題材にした作品が2作品あった。マリック監督「ツリー・オブ・ライフ」では生命の始まりにまで遡り、本作では地球の終末論からその解釈に迫る。アプローチの仕方がまるで違うことは興味深い。個人的には「ツリー・オブ・ライフ」は難解すぎて、記事も書けずじまいであり、本作のほうが私好み。監督の発言が明暗を分けたのであれば、実に残念。

冒頭から監督ならではの映像美が炸裂している。茫然としたジャスティーンの背後には、死んだ数々の死んだ鳥たちが空から降ってくる。馬が倒れ込み、無数の蝶が舞い荒れ狂う。そして、とうとう惑星メランコリアが地球に衝突し、砕け散る…スローモーションの映像は不吉な前兆を暗示させ、不安感を煽る。冒頭から強烈であるが、バックに流れるワーグナーの“トリスタンとイゾルデ”と綺麗な景色が独特な映像感覚を引き立てている。

melan2.jpgパート1「ジャスティーン」、パート2「クレア」の2部構成となり、パート1では結婚式の模様を、パート2では結婚解消からメランコリアが衝突し、この世の終わりを告げる瞬間までを描いている。惑星が素材となりSFにカテゴライズされているが、本質はメランコリアと地球が衝突する出来事ではなく、この世の終わりを迎えようとする瞬間、人々はその事実をどう受け止めるのか、中心人物の精神状態や魂の救済を監督ならではの手法で浮き彫りにしていく。

盛大でゴージャスな結婚パーティーだが、どこか重苦しく暗雲が立ち込める。ウエディングドレスに身を包み、若くて美しいジャスティーンだが、時折顔を曇らせ、裏の感情が見え隠れするのである。次第に鬱の部分が露わになり、奇妙な行動を取り始める。パーティーに集う癖の強いキャラクターを演じる層々たる主演者も見所の一つであるが、ジャスティーンを演じるキルスティン・ダンストの熱演あってこその作品である。監督の不適切発言で一時は危ぶまれたカンヌ映画祭での女優賞をもぎ取っただけの価値はある。フルヌードで挑んだキルスティン・ダンストの役者魂もすごいが、鬱に苛まれ、破壊されゆく精神はそのままパート2になだれ込み、観る者の心を鷲掴みにする。メランコリアとは“鬱病”という意味もあることを初めて知ったが、ジャスティーンの行動や言動はまるで観る者も共に鬱状態へと誘う催眠術のようでもあった。エスカレートする行動は自暴自棄ともいえるが、魂が救済された瞬間、その催眠術は解かれ、心がす~っと軽くなり、解放された思いがした。

唐突とも思える話の設定ではあるが、究極の極限状態で人間は何を思うか…未曾有の災害に見舞われた瞬間、自分は何を感じたかを振り返ってみれば、近い答えは出されるのではないか。
焦燥する者、絶望を感じる者、孤独を噛み締める者、そして魂の救済を求める者。本作でも様々な精神状態が描かれる。あまりにも壮絶なストーリーに身を削られるような思いで魅入ってしまったが、ここまで感情が揺さぶられる作品は、そうそうお目にかかれない。

<鑑賞> 英語聞き取り度70% 2011/9/29
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2011年 第64回カンヌ国際映画祭コンペ部門、ある視点部門 ノミネート・受賞作品

第64回カンヌ国際映画祭(5月11~22日)コンペティション部門、ある視点部門の受賞結果が発表された。(5月22、23日)

キム・ギドク監督の復帰&受賞が何よりもうれしい。昨日の朝結果を知り、興奮がまだ冷めない。
そして、大好きなデンマークのニコラス・ウィンディング・レフン監督、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の受賞。。。日本上映するかは疑問だが、待ち遠しい限り。
キルステン・ダンストの女優賞受賞も喜ばしい。
ラース・フォン・トリアー監督の発言、弁解、カンヌ追放騒ぎが気になる所だが、撮り続けてくれることを願いたい。
好き嫌いは別として、映画界には絶対必要な人材だとは思うから。

*「タイトル」監督名/国名 (★:Koo評価、満点5つ星)

【コンペティション部門】
Driveニコラス・ウィンディング・レフン監督/デンマーク 監督賞 ★★★★
「Footnote」ジョセフ・コーテス監督/イスラエル 脚本賞ジョセフ・シダー
「朱花の月」河瀬直美監督/日本
「一命」三池崇史監督/日本
「The Kid With A Bike」ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督/ベルギー グランプリ
「House of Tolerance」ベルトラン・ボネロ監督/フランス
「Le Havre」アキ・カウリスマキ監督/フィンランド 国際批評家連盟賞、エキュメリック賞次点
「Once Upon a Time in Anatolia」ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督/トルコ グランプリ
メランコリアラース・フォン・トリアー監督/デンマーク 女優賞キルステン・ダンスト ★★★★★
「Michael」マルクス・シュラインツアー監督/オーストリア
「Pater」アラン・カバリエ監督/フランス
「Polisse」マイウェン監督/フランス審査員賞
「The Skin I Live In」ペドロ・アルモドバル監督/スペイン
スリピングビューティー禁断の悦び」ジュリア・リー監督/オーストラリア★★★☆
「The Source」ラデュ・ミヘイレアニュ監督/ルーマニア
「This Must Be the Place」パオロ・ソレンティーノ監督/イタリア エキュメリック賞
「ツリー・オブ・ライフ」テレンス・マリック監督/アメリカ パルムドール賞(最高賞) ★★★★
「We Have a Pope」ナンニ・モレッティ監督/イタリア エキュメリック賞
少年は残酷な弓を射る」リン・ラムジー監督/イギリス ★★★★☆

【コンペ外上映作品】
「The Beaver」ジョディ・フォスター監督
「The Artist」ミシェル・アザナビシウス監督 男優賞ジャン・デュジャルダン
「The Conquest」グザビエ・ランジュ監督
「パイレーツ・オブ・カリビアン 生命(いのち)の泉」ロブ・マーシャル監督

【ある視点部門】
「The Hunter」 Bakur Bakuradze/ロシア
「Halt auf freier Strecke」 アンドレアス・ドレーゼン/ドイツ ある視点賞(最高賞)
「Hors Satan」 ブリュノ・デュモン/フランス
「Martha Marcy May Marlene」 Sean Durkin/アメリカ
「Les Neiges du Kilimandjaro」 ロベール・ゲディギャン/フランス
「Skoonheid」 Oliver Hermanus/南アフリカ
「The Day He Arrives」 ホン・サンス/韓国
「Bonsái」 クリスチャン・ヒメネス/チリ
「Tatsumi」 エリック・クー/シンガポール
アリラン」 キム・ギドク/韓国 ある視点賞(最高賞) ★★★★★
「Et maintenant on va ou?/Where do we go now?」 ナディーン・ラバキー/フランス エキュメリック賞次点
「Loverboy」 カタリン・ミツレスク/ルーマニア
哀しき獣(原題:黄海)」 ナ・ホンジン/韓国 ★★★
Miss Bala」 Gerardo Naranjo/メキシコ ★★★★
「Trabalhar Cansa」 Juliana Rojas,Marco Dutra/ブラジル
「永遠の僕たち Restless」 ガス・ヴァン・サント/アメリカ
「L'Exercice de l'État/The Minister」 ピエール・ショレール/フランス 国際批評家連盟賞
「Toomelah」 Ivan Sen/オーストラリア
Oslo, 31. august」 Joachim Trier/ノルウェー ★★★★
Elena」アンドレイ・ズビャギンツェフ/ロシア 特別審査員賞 ★★★
「Au reoir」ムハマド・ラソウロフ 監督賞


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[ 2011/05/23 16:20 ] ★映画関連★ 映画賞 | TB(0) | CM(2)

アンチクライスト <2004/デンマーク=独=仏=スウェーデン=伊=ポーランド> ★★★

anti.jpg2009/108min/デンマーク=ドイツ=フランス=スウェーデン=イタリア=ポーランド
監督/脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール
IMDb評価:6.8/10

難解度 ★★★★
宗教度 ★★★★★
芸術度 ★★★★
残酷度 ★★★★★
衝撃度 ★★★★★
官能度 ★

<あらすじ>
愛し合っている最中に愛する息子を事故で失った夫婦。深い悲しみと自責の念からしだいに神経を病んでいく妻。セラピストの夫は自ら妻を治療しようと試みる。催眠療法から、妻の恐怖は彼らが「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋からきていると判断した夫は、救いを求めて楽園であるはずのエデンにふたりで向かうが、事態は更に悪化していく。現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは……?

<レビュー>公開前なので、ネタバレなしです。
話題の一つになっているモノクロのプロローグ。激しいセックス中、子どもが窓を乗り越え転落し、死んでしまうという内容。スローモーションで酔いしれてしまいそうな映像感覚だけど、直前に運悪く観てしまった韓国映画「パジュ」と同様の内容で、観るのを中断してしまっていた。気を取り直して観直したけれど、目を疑う性描写や目を覆いたくなる暴力シーンが満載で、終了後しばらく一体何が起こったのかわからず茫然としてしまった。鑑賞直後には心臓をえぐり取られたような気分で嫌悪感しか残らなかったが、あまりにも難解なので、鑑賞後時間をおいてから分析するといろんなものが見え始めてくる。
anti3.jpganti2.jpganti1.jpg
この難解を紐解くにはキリストについて考える必要がある。妻が「自然は悪魔の教会だ」というように、森は悪魔であって、そこに暮らすことによってキリストの呪縛からの解放・救済を求めているのだ。喪失感をセックスで埋めようとするが、救済は得られない。夫はキリストの象徴だと考えると、妻の行動も辻褄があってくる。そして、邪悪なものを吐き出そうとするのが、剥き出しの性となっているような気がする。あまりにも露骨な性描写はポルノ俳優が演じているらしいが、ゲンズブールも下半身丸出しの姿だったり、自慰行為まで披露してしまっている。ポスターにもなっている大木の根元でのセックスシーンも描写としてある。

映画はプロローグ、悲嘆、苦痛、絶望、3人の乞食、エピローグの6章から構成される。モノクロであるプロローグとエピローグは正気な姿が描かれ、カラーである他の4章では狂気の恐ろしく、痛い姿が描かれる。世界の創造主としての神よりもむしろ悪魔を描いており、人間の内に秘めた嫌な悪な部分をまざまざと見せ付けられてしまった気分にさせられた。

  プロローグとエピローグでの挿入歌「泣かせてください」の歌詞が興味深い。
 
  過酷な運命に泣かせてください
  そして、自由に焦がれることをお許しください
  悲しみが私の苦悩の縄を
  断ち切ってくれますように
  どうかお願いですから

  ジャコモ・ロッシ作詞 ヘンデル作曲 オペラ「リナルド」より

この歌詞に全てが集約されているようで、身震いがした。2シーンでエキストラが出演するが、台詞がある出演者は夫婦2人のみ(息子もあったかも)。2人芝居とは思えない重厚感、全く飽きさせない展開、スピード感もあり、難解度が高いにも関わらず、悔しいことに目が釘付けになってしまった。動物たちにも紐解く鍵が隠されているようにも思えるが、私の能力を遥かに超えているためよくわからなかった。日本劇場公開版は104分となっている。4分のカットは性描写なのだろうか。

<鑑賞> 2010/11/25

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