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ロスト・イン・北京 <2007/中国> ★★★★

lost in beijing
蘋果/LOST IN BEIJING
2007/109min/中国
監督/脚本: リー・ユー(李玉)(監督2作目)
出演:ファン・ビンビン、レオン・カーフェイ、トン・ダーウェイ、エイレン・チン、ツアン・メイホイツ
IMDb評価:6.9/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 ★
民族度 ★★★
邦題センス ★★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★


lost in beijing1北京に出稼ぎにきてマッサージ師として働くピングォには、窓拭きをしている夫アン・クンがいるが、既婚者は雇わないという店のため夫がいることを隠していた。ある日、友人と飲んで酔ったピングォは、店の社長室でオーナーと関係をもってしまい、ビルの窓拭きをしていた夫がその現場を目撃。そのことからピングォは結婚していることがばれて解雇されたうえ、しばらくして妊娠していることがわかり……。@映画.com

監督は、「ブッダ・マウンテン」のリー・ユー。本作が唯一のソフト化作品である。
出演は、ファン・ビンビン、「愛人/ラマン」のレオン・カーフェイ、「レッドクリフ」シリーズのトン・ダーウェイ、「ヤンヤン 夏の想い出」のエイレン・チン。

勤めるマッサージ店のオーナーに犯された人妻が妊娠したことから巻き起こる騒動を描いた作品。金が物をいうゆがんだ現代社会を克明に、かつブラックに皮肉っている。扇情性が高く、中国国内では上映が禁止(DVDは17分のカット)になった問題作でもある。私はノーカット版の香港版鑑賞し、どれだけすごいのかと思ったら、性的描写はほんのごく一部に過ぎない。しかも、映っているのは太ももやお腹、背中などで、オールヌードはない。ファン・ビンビンとレオン・カーフェイの強姦シーンが本国では問題になったと聞いていたが、着衣のままだった。しかも、自業自得であり強姦とは言い難いシーン。むしろ問題なのは、医師が賄賂をもらうシーンのほうだと思う。中国では扇情性ばかりに着目されてしまうのが残念であり、金への執着が引き起こした人間性の喪失を鋭く描いた社会派ドラマである。

lost in beijing2妊娠したことをネタに金をせびろうとする夫、後継ぎ欲しさに金で解決しようとするオーナー。格差社会における金の亡者であり、愚か者によって事態は信じ難い方向へ加速していく。金と男に翻弄される女の物語ともいえよう。でも、中国が舞台であるとなると、なんだかしっくりきてしまうのは偏見だろうか。後味の悪さもアイロニーが効いていてよかったと思う。妻が強姦されるところを、窓拭きの仕事をしていた旦那が偶然目撃したというのはあまりにも出来過ぎた偶然ではあるが、見応えのある内容だった。欲を言うと、 ピングォの心理をもう少し掘り下げて欲しかった。

<観賞> 2012/8/24

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美しい夜、残酷な朝 <2004/日=韓=香> ★(日)/★★★★(韓)/★★★★★(香)

美しい夜、残酷な朝美しい夜、残酷な朝
2004/125min/日本=韓国=香港
監督:三池崇史「box」、パク・チャヌク「cut」、フルーツ・チャン「dumplings」
出演:
「box」 長谷川京子、渡部篤郎
「cut」 イ・ビョンホン、カン・ヘジョン、イム・ウォニ
「dumplings」 ミリアム・ヨン、レオン・カーフェイ、バイ・リン
IMDb評価:7.1/10
社会度 ★(日)/★(韓)/★★(香)
哲学度 ★★/★★★/★★★★
宗教度 なし
官能度 なし/なし/★★
民族度 なし/★★/★★★★
ゴア度 ★/★★★★/★★★

脚本 ★★/★★★★/★★★★
演出 ★★/★★★★/★★★★
演技 ★/★★/★★★
 

美しい夜、残酷な朝1日本・韓国・香港の共同製作で手掛けられた異色オムニバス。3人の奇才監督がそれぞれ独自の世界観で、人間の愛憎や狂気、欲望を美しくもグロテスクに描く。
 「box」――謎多き女流小説家・鏡子には、かつて父親代わりの男、曳田の寵愛を一身に受けた双子の姉を焼死させたという秘密の過去があった。そして、その男の行方をいまも探し続けていた…。
「cut」――若くして成功を収めた映画監督リュ・ジホ。彼がある夜帰宅すると、見知らぬ男が妻を人質にしていた。そしてさらに、恐ろしい選択を強要される…。
「dumplings」――元女優のリー夫人は、夫との愛が冷めていく一方、永遠の美を追求していた。財力とコネを駆使し、やがて大陸からやってきた謎の女メイが作る美と若さの特製餃子にたどり着くが…。@allcinema

監督は、「着信アリ」の三池崇史、「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク、「メイド・イン・ホンコン」のフルーツ・チャン。

まず、ジャケットに文句を言いたい。発表当時は第一次韓流ブーム真っ只中であり、イ・ビョンホンファンを意識したがゆえなのであろう。いかにもイ・ビョンホンが主演であるかのようだが、本作はオムニバスであり、独立した3作が収録されている。長谷川京子との共演もない。

オムニバスの面白さは同一テーマで監督のカラーの違いを見比べることができる点でもあるが、全くアプローチの仕方が異なる3者3様の世界観が楽しめる。それぞれ雰囲気があり、カラーの違う映像美を比較するのも面白い。

2美しい夜、残酷な朝日本編「box」
“美しい夜、残酷な朝”というタイトルが一番しっくりくるのだが、他2作が強烈なゆえ、なおさらインパクトが薄い。映像は幻想的で美しいが、静寂すぎてあまりにも退屈。妖しげで悲壮感漂う割には、心理描写が弱く、オチも曖昧。恐怖も伝わってこなかった。

韓国編「cut」
イ・ビョンホン演じる主人公は映画監督。映画の撮影とは違い、「カット」がかからない復讐劇が始まる。子供を殺さなければ、ピアニストの妻の指を「カット」するという理不尽な犯人の要求に始まり、思わぬ方向へ行く展開のうまさにはうならされる。犯人役イム・ウォニのコミカルな演技も緩衝材になっていて面白い。スプラッターありでゴア度は高く、イ・ビョンホン目当てで観てしまうとその手の作品が苦手な人には耐えられないかもしれないが、チャヌク監督ファンの期待は裏切らない作品。長編だとくどくなりそうなので、オムニバスでちょうどいいのかも。

香港編「dumplings」
飽くなき欲望への風刺劇。90分の長編を先に観てしまったため、比較してしまうと物足りなさも感じるが、3作品の中で一番好きな作品。心理的に一番怖く、生々しい。しばらく餃子は自分の手作りしか食べられそうにない。
長編のレビューはこちら

<観賞> 2012/8/15

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(未) 餃子 (英題:Dumplings) <2004/香港> ★★★★★

本作は日本未発表だが、終盤の展開とエンディングの異なる短編は、「美しい夜、残酷な朝(2004)」に収録されている。レンタルしてます。

dumplings.jpg 餃子/Dumplings
2004/91min/香港
ドラマ、ホラー
監督:フルーツ・チャン
撮影:クリストファー・ドイル
出演:ミリアム・ヨン、レオン・カーフェイ、バイ・リン
IMDb評価:6.8/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★★
宗教度 なし
官能度 ★★
民族度 ★★★★
ゴア度 ★★★

脚本 ★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★


元女優のリー夫人は、ある情報を聞きつけ、ある団地の一室へやって来た。怪しげな部屋に住む謎の女性は、自分のほうがずっと年上だという。そして、キッチンへ行き、餃子を作り始めた。ここは餃子屋なのである。リー夫人は不安げな表情で餃子を食べながらも、それからも何度か訪れるようになった…。

監督は、「メイド・イン・ホンコン (1997)」「ドリアン ドリアン (2000)」「美しい夜、残酷な朝 (2004)」のフルーツ・チャン。
出演は、「私の胸の思い出(2006)」のミリアム・ヨン、「愛人/ラマン(1992)」のレオン・カーフェイ、「クロウ/飛翔伝説 (1994)」「アンナと王様 (1999)」「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー (2004)」のバイ・リン。

dumplings2.jpg赤いパンツスタイルに赤い弁当箱を持った女性が税関を潜り抜けるシーンからスタートする。薄汚れた集合住宅に住むその謎の女性は、中国本土であるものを調達し、それを弁当箱に入れ、香港に持ち込んでいるのである。一番上の段にはハムエッグが入っており、税関で呼び止められチェックされても誰も不審には思わない。お目当てのものは下の段に入っており、それを使って作る餃子が世界で一番高く、美の秘訣だと巷で噂になり、リー夫人もその餃子を求めて訪ねてきたのであった。

見た目は食欲のそそる餃子。食した夫人がコリコリとした触感は何かと尋ねると、「骨よ。もう手足も耳も形成されているもの。」と答える。5~6カ月の赤ちゃんの肉が一番栄養があり、オスが貴重だというが、何の肉なのかは教えてくれない。60代なのに30代にしか見えない女性自身がいい広告塔。そんな人を見てしまったら、食材がどうであれ食べずにはいられない。毎回、違うメニューを出すから飽きずに食べ続けられ、5か月もすると見違えるほど若返ると言う。一方で、旦那は精力剤として孵化寸前のゆで卵を食べている。これもまたグロテスク。

dumplings3.jpg人間の飽くなき欲望、美を追求するあまり生み出す恐怖を独自の世界観で描いている。リー夫人の夫にはまだ20代の若い愛人がおり、もう一度夫を振り向かせたいという夫人の切ない女心が背景にある。夫婦で若さを追い求める姿は滑稽でもあり、金で全てが買えると思っている資本主義への痛烈な批判でもある。

グロテスクでありながら、妖艶。目の覚めるような色彩感覚。足元から撮られる独特なアングル。耳障りな機械音。香港の薄汚い集合住宅という異空間も意味深でさらなる恐怖を煽っている。道端での顔の無駄毛処理や、ベランダでの洗濯物など、香港らしい情景も現実味を増していてよかった。恐怖を煽る独特な映像だけでなく、ストーリーも風刺が効いててかなり面白かった。

中華包丁での大胆な調理法。餃子の皮まで手作りであり、かなり本格的。一流店に劣らないほど美しい水餃子や小籠包が振舞われる。熱さのあまり、落としてしまった水餃子は植木鉢の土に埋められた。肥料となり綺麗な花を咲かせるという。

一体、この女は何者なのか、餃子の中身は何なのか…「もしかしたら…いや、まさか!?」と頭の中がかき乱される展開。いろんなところに細かい伏線が張られ、かなり上質(人は悪趣味というのかもしれないが)なサスペンス形式で進んでいく。

dumplings1.jpg肉の正体、本作と短編の結末箇所は白字になっています。ご自身の判断で反転して読み進めてください。

肉の正体は、中絶で取り出した赤ん坊であり、中国本土の病院で調達していたのである。自身も元医師であり、部屋で中絶を行うこともあった。中国では、女の子を堕ろすことはあっても男の子は少ないため、貴重価値があがっていたのである

本作の結末は、夫の不倫相手が妊娠5か月だと聞き、中絶させ、食すというのに対し、短編では、夫人自身が妊娠し、自分で取り出し食くしてしまうという結末。いずれにしても、狂気に満ち、若さへの執着が強く感じられる結末になっている。短編と本作の大きな違いは、本作のほうで夫の不倫エピソードが一つ増え、比重が高くなっている点であり、抜け出せない欲望が渦巻いた展開になっている。
食材を刻むシーンがグロテスクなため、こういうタイプの映画が苦手な人にはキツイかもしれないが、私にはたまらない秀作だった。

<観賞> 2012/8/15


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