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(未) Film Geek <2005/米> ★★★

film geekFilm Geek
2005/78min/アメリカ
コメディー
監督/脚本/編集:James Westby(長編監督4作目)
出演:Melik Malkasian, Ritah Parrish and John Breen
IMDb評価:6.1/10

社会度 ★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
ゴア度 ★

脚本 ★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★ 


film geek1映画をこよなく愛するスコッティはビデオレンタルショップでバイトをしている。お客に「タイトルがわからなくて…天国がついてたんだけど…」と聞かれると、“天国”が入っているタイトルだけをひたすら並べ上げることができる。さらに、お客の映画トークに口を挟んだり、聞かれてもいないのに自分の好きな映画の話を始めたり、しまいには“スコッティーの好きな映画”というコーナーを勝手に作ってしまう始末。とうとうバイトはクビになってしまった。他のビデオ店を回り、新しいバイト先を探すが、なかなか見つからない。仕方なく、在庫倉庫でのバイトを始めることにした…。

監督は、本作が4作目となるJames Westby。
出演は、James Westby監督作品でお馴染みのMelik Malkasian。
手作り感のある映像に、素朴な演技のため、素人さんが遊びで撮ったような雰囲気。本作が4作目とは驚き。

新しいバイト先でも、全く映画に興味のない人にも映画の話ばかり、しかも内容はマニアの領域。周囲はドン引きなことにも気が付いていない。バスで一目ぼれした女性と一度はデートするが、その後避けられていることにも当然気付いていない。隣人の女性なんか、挨拶したって目も合わせない。着ている服だっていつもビデオショップのユニホームのまま。クビになったのに、返さず着ているのである。

タイトルは“映画オタク”の意。でも、主人公は映画オタクといっても、データーベースを丸ごと暗記しただけの知識詰め込み型の生き字引。彼がする映画の話といったら、「あの映画は何年製作で、監督は誰誰、俳優は誰誰…」といった具合。頭にインプットされている膨大な情報をアウトプットするだけで、作品の考察をするわけではない。なぜ自分が女性から距離を置かれているのかとか、なぜ友達がいないのかも考えることもできず、周囲の気持ちを感じ取ることもできない。趣味でご立派な映画のホームページを作っているけど、訪問者数はごくわずか。ホームページの内容は映画の中では紹介はされていないけど、覗かなくても大方予想はつく。映画好きの私だって全く興味が湧かないつまんないサイトだと思う。

“映画は違う世界に行けるから好き”という劇中の本人のセリフ通り、彼が映画に求めているのはワクワク感とかハッピーエンド(私とは逆…)。そんな映画と同じ人生を夢見て、毎日映画と妄想の中で生きている。私だって映画のように事がうまく進めばいいのにって思うことはあるけど、現実はそうは甘くないことは誰でも知ってる。でも、スコッティーは自分の不甲斐なさに気が付いていない。コメディーらしいオチだったけど、かわいそうになってしまった。

<観賞> 2012/8/16

[サイト内タグ検索] 日本未公開
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(備忘録) そして、一粒のひかり <2004/米=コロンビア> ★★★

maria.jpgそして、一粒のひかり/Maria Full of Grace
2004/101min/アメリカ=コロンビア
ドラマ
監督/脚本:ジョシュア・マーストン
出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ベガ、ギリエド・ロペス、ホン・アレックス・トロ、パトリシア・ラエ

社会度 ★★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
邦題のセンス ★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★
演技 ★★


コロンビアの小さな田舎町。バラ農園で単調な仕事に従事する17歳の少女マリア。母や幼児を抱えた姉をはじめ一家の家計はマリアの収入に頼っていた。ところがささいなトラブルで仕事を失い、おまけに愛してもいないボーイフレンドの子を妊娠してしまったマリア。追い詰められた彼女は、最大5000ドルという巨額の報酬に心動かされ、“ミュール”という仕事を引き受けてしまう。しかしそれは、麻薬を詰めた小さなゴム袋を大量に飲み込み密輸する運び屋のことで、もし胃の中で袋が破れたら死んでしまうというあまりにも危険な仕事だった。@allcinema

面白かったんだけど、淡々としていて胸に迫るものがなく、調べてみたら監督はアメリカ人なのね。
コロンビアの少女を主人公にしたドキュメンタリー風だが、先進国視点で客観的すぎる。
いかにも作り上げました的なストーリーでリアルさにも欠ける。
アメリカ人監督による商業映画だね。
命がけで稼ぐ5000ドルという金額がコロンビアではどれほどの大金なのかも見えてこないから、単なる気楽なアルバイト程度にしか見えないし、少女たちの切羽詰まった様子も伺えない。心の成長と一粒のひかりを見せたいのはわかるが、マリアの選んだ生き方を推奨しているようにも見える。厳しい現実が伝わってこない。上っ面な感じは否めない。

<観賞> 2012/5/2

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(未) Speak <2004/米> ★★★☆

speak.jpg
Speak
2004/89min/アメリカ
ドラマ、青春
監督/脚本:Jessica Sharzer(長編監督デビュー作)
原作:ローリー・ハルツ・アンダーソン「スピーク」主婦の友社
出演:クリステン・スチュワート、ハリー・ハーシュ、スティーブ・ザーン 
IMDb評価:7.7/10


共感度 ★★★
社会度 ★★★
哲学度 ★★
涙催度 ★★★



高校生になる直前の夏休み、友人宅でのパーティである事件が起こった。メリンダは警察に通報したが、実際には未成年の飲酒で友人たちが摘発されてしまった。友人たちには裏切り行為だと勘違いされ、新学期を迎えても誰も口を聞いてくれない。真相を話すことよりも黙秘することを選んだメリンダはどんどん孤立してしまう。しかし、ある美術教師との出会いでメリンダの心境が変わり始める…。

speak1.jpg主演は「トワイライト〜初恋〜」のクリステン・スチュワート。「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターの娘役を演じた2年後に主役、しかもこんなに素晴らしい演技を見せるとは。14歳で、あどけなさが残る。
原作本は日本のみならず数カ国で翻訳されているが、信じられないのが、普遍的なテーマでありながら本作はどこの国でも一般公開されていないこと。

夏休み明けの新学期から描かれる。メリンダは皮肉っぽくて、可愛げがないが、どこか憎めないキャラクター。しかし、メリンダがなぜみんなに無視をされ、こんなにつらい思いをしているのかわからないまま物語は進行する。パーティでの出来事が回想シーンとして丁寧に描かれ、何があったのかじんわりと明かされていくにつれ、1人で抱え込んでいる姿には自然と涙が流れる。事件前と後のメリンダは全くの別人のようで、沈黙で痛みを表現する演技は見事。

メリンダほどの経験はないにしても、友人に無視をされるといった経験はきっと誰にでもあるのでは?辛ければ辛いほど人には話しにくくなる。話せるぐらいだったらとっくに話してるわけで、話せないから余計に辛くて。沈黙を選んでしまうのは、その方が楽だということもあるだろう。1人で抱え込み、殻に閉じこもってしまうメリンダのキャラクターにはものすごく共感。

speak2.jpgメリンダは美術の授業の課題に出された“木”を描き続ける。没頭できる何かを見つけることも大切なのだろう。没頭することは、嫌なことを忘れられる時間でもあったが、絵を描く才能を見事に開花している。そんなメリンダを温かく見守ってくれた美術教師は変わり者と言われているフリーマン先生。皮肉にも変わり者とレッテルを貼られている先生との出会いできっかけを掴み、自分らしさを取り戻していく様を描く。
さらに両親から美術道具セットのプレゼント。娘の変化に気付いていないようで実はちゃんと見ている両親からのクリスマスプレゼントになんだかじんわりとさせられた。

いじめの対象となった子と親しくすれば、自分も仲間外れになってしまうことを恐れ、皆メリンダとは距離を置くようになってしまっている。横目でチラチラ見る子もおり、気にかけているようにも見えるが、集団心理は怖い。しかし、本作は良き理解者がたった1人いることで前向きにもなれること、聞く耳を持つことの大切さを教えてくれている。一歩踏み出して見ると思っていたより簡単だったり…とわかっていてもいざ行動するのは難しい。

結末はどうやら本とは違うらしく、意外だったが、ほっこりさせられた。

<鑑賞> 2011/11/9
[サイト内タグ検索] 日本未公開

(未) Sweet Jane <1998/米> ★★★☆

sweet_20111126154616.jpg
Sweet Jane
1998/83min/アメリカ
ドラマ
監督/脚本:ジョー・ゲイトン(Joe Gayton)
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、サマンサ・マシス
IMDb評価:7.3/10


社会度 ★★★
哲学度 ★
涙催度 ★



swwet1_20111126154616.jpgヘロイン中毒のジェーンは入院中に医師からHIVに感染していることを告げられる。病院を抜け出し街を歩いていると誰かに付けられていることに気が付いた。その少年トニーはジェーンが天使に見え、ついてきた来たという。まだ14歳なのに身寄りがないと知り、行動を共にする…。

監督のジョー・ゲイトンは「ファースター 怒りの銃弾(2010)」「過ぎゆく夏(1992)」の脚本家でもあり、監督作品は本作が3作目となる。監督作品に劇場公開作はない。
出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、「ブロークン・アロー(1996)」「アメリカン・サイコ(2000)」のサマンサ・マシス。

トニーは14歳にしてエイズ患者。HIVは父親から母親に、そして息子トニーにも感染してしまったという。父親の苦しむ死に際を目の当たりにし、母親の亡くなる姿を見たくなく、逃げ出してきたという。14歳にしてそう遠くない将来に訪れる死を覚悟し、絶望的に生きる少年である。一方ジェーンは街角に立ちお客の相手をする売春婦。関係を持った男の名前を書き出すように病院で言われるが、職業上いつ誰から感染したのか見当もつかない。偶然にも引き合わせた2人のHIV感染者の心の交流を描く。

出演者はほぼ2人で、ほとんど何も起こらず、会話だけでストーリーは展開していく。トニーを演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットの実年齢が17歳とは思えないほど童顔だが、演技は既に成熟している。偶然にも最新作「50/50」では余命を宣告されたガン患者を演じているが、死を目の前にした恐怖という点では本作の演技の方がはるかに勝る。

ミステリアス・スキン」で興味を持ったジョセフ・ゴードン=レヴィット作品を最近観漁っているのだが、つらい過去を背負っていたり、病に苦しんでいたり、重すぎるのばかり。HIVの恐怖を知らしめる結末はあまりにも悲しくて涙すらでなかった。地味だが、一生忘れられない結末になりそう。

<鑑賞> 2011/11/25

50/50 <2010/米> ★★★

50.jpg50/50
2010/100min/アメリカ
ドラマ
製作/出演:セス・ローゲン
監督:ジョナサン・レビン
脚本:ウィル・レイサー
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲン、アナ・ケンドリック、ブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ・ヒューストン、マット・フルーワー、フィリップ・ベイカー・ホール
IMDb評価:8.3/10

哲学度 ★
社会度 ★★
涙催度 ★★★
ブラック度 ★

こんなに早く日本で公開されることもあるのね。
2011年12月1日より劇場公開。簡単に。

50-1.jpg「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レビットが主演し、ガンで余命宣告を受けた青年の姿を笑いや涙を交えて描くハートフルドラマ。

酒もタバコもやらない普通の青年アダムは27歳でガンを患い、生存率50%と宣告される。同僚や恋人、家族は病気を気づかってどこかよそよそしくなっていくなか、悪友カイルだけはガンをネタにナンパに連れ出すなど、いつも通りに接してくれていた。アダムはなんとかガンを笑い飛ばそうと日々を過ごしていくが、刻々と進む病状に次第に平穏を装えなくなってしまう。カイル役のセス・ローゲンが製作を務め、ガンを克服した親友の脚本家の実体験をもとに映画化した。@映画.com

監督のジョナサン・レビンは、「マンディ・レイン 血まみれ金髪女子高生(2006)」「The Wackness(2008)」に続く3作目で初の日本上映作品となる。出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、コメディアンで「グリーン・ホーネット」の脚本・主演を務めたセス・ローゲン。母親役には「アダムス・ファミリー」のアンジェリカ・ヒューストン。

50-2.jpg病気を宣告されて、周囲の人に言うタイプと言わないタイプがいるが、私は完全に後者。会社を辞めざるを得ない場合も、事実は隠し通すと思う。失恋とかでも傷が癒えてしばらく経ってからでないと人には話せないし、話さない。本作の主人公アダム27歳は突如癌の宣告を受け、会社や友人、恋人に話す、私とは違うタイプ。実は私も子どもの頃余命宣告を受けたことがある。完治した今でもその事実は両親以外知らない。アダムのように話せればもう少し前向きに暮らせたのではないか…少々羨ましくも思う。生存率50%からタイトル“50/50”が付けられている。癌と向き合う生活を時にはシリアスに時にはユーモラスに描いている。

アダムがガンに侵されていると知り、死に向き合う恐怖からアダムの前から姿を消そうとする者もいる中、一緒に戦おうと親身になってくれる者もいる。自分にとって誰が大切なのかを考えさせてくれるドラマだった。

演技に定評のあるジョセフ・ゴードン=レヴィットについては今更語ることはないが、脇役の素晴らしさも本作の成功に貢献している。特にセス・ローゲン。コメディアンなだけあって、何度笑わされたことか。気分が沈んでいる時にはほんと有り難い存在。

<鑑賞> 2011/11/24
[サイト内タグ検索] ジョセフ・ゴードン=レヴィット

(未) The Believer <2001/米> ★★★★★

believer.jpg
The Believer
2001/102min/アメリカ
監督/脚本/出演:ヘンリー・ビーン
出演:ライアン・ゴズリング、サマー・フェニックス、ビリー・ゼイン、テレサ・ラッセル、ギャレット・ディラハント
受賞:第17回(2001)サンダンス映画祭 審査員賞
IMDb評価:7.3/10


宗教度 ★★★★
哲学度 ★★★
社会度 ★
ゴア度 ★
嫌悪感 ★★


ダニエルは子どもの頃から弁が立ち、小学校でも先生に盾付いていた。成人した今ではスキンヘッドにナチのTシャツという姿で反ユダヤを掲げるネオナチのスポークスマンとして活動をしている。町でユダヤ人の姿を見かけると追いかけて、電車の中でも嫌がらせをし、その後暴行を企てていた。しかし時折、ネオナチの活動とは真逆の行動をしてしまうことがあり、仲間からも疑いをかけられるようになる…。

believer1.jpg監督のヘンリー・ビーンは、リチャード・ギア主演「インターナル・フェア」、シャロン・ストーン主演「氷の微笑2」の脚本を担当していた方で、本作が監督デビュー作となる。
主演は、「きみに読む物語」のライアン・ゴズリング。本作が映画初主演となる。

ダニエルの思想や歩んできた過去は回想シーンとして徐々に明かされ、なぜネオナチに傾倒していったのかが丁寧に描かれる。何より驚かされたのは、ダニエル自身がユダヤ人であるということ。本作は、監督自身がユダヤ人でありながらネオナチを素材にしたということが争点となり、サンダンスでの審査員賞を始め、海外で数々受賞したにも関わらず、アメリカでは一般公開されていないという事実がある。しかし特筆したいのは、ネオナチを素材にしているが、ユダヤ人やユダヤ教を批判した作品ではないということ。本作は、ユダヤ人がユダヤ人として生きることの葛藤を描いた作品である。

緊張感と説得力のある演技とストーリ展開には圧倒された。本作がもう少し社会的認知度の高い作品であったら、演じるライアン・ゴズリングの代表作になっていたことは間違いないだろう。初主演にしてもの凄い存在感を放っている。不動の人気は本作を観れば納得である。

believer2.jpg私も矛盾を感じつつの鑑賞で、中盤までの反ユダヤ的な行動やユダヤ教に対する批判的思想は、ユダヤ人でなくともあまり気分のいい展開ではない。しかし、親の期待に応えられず、敷かれたレールを外れ不良になってしまった青年の葛藤と捉えれば普遍的なテーマにも感じられ、終盤になるにつれて共感度が高くなる。ユダヤへの愛が感じられる内容だが、本作を批判している人たちは、最後まで観ていないのはないかとさえ感じてしまう。

大人たちの言うこと全てに反発するかのようにネオナチに傾倒したが、心のどこかではユダヤ教を否定しきれず、タリート(ユダヤ教の礼拝の時に男性が着用する、布製の肩掛け)を腰に巻いてTシャツで隠し、こっそり集会に通う姿も見られる。恋人がヘブライ語に興味を示したのをきっかけに、ユダヤ教への思いを一層強めるのであった。そして、ネオナチとユダヤとのジレンマに苦しみ抜いた末の結末はあまりにも哀しいが、観た者全ての心に響く印象的なシーンに導いている。

結末に触れています。
ダニエルはネオナチの仲間たちと共に集会の時間に合わせて爆弾を仕掛けていたのである。集会に参加していたダニエルは他の信者たちを一斉に外へ逃がし、自分1人が犠牲となった。そして、ひたすた階段を駆け上るダニエルに小学校の先生の姿が声をかける。「上に行っても何もないよ。」と。天国を目指しているのだろう。先生の言葉を振り払っても登り続けるダニエル。悔いるダニエルに酬いはあるのだろうか。

<鑑賞> 2011/11/21
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ライアン・ゴズリング

(未) A Bear Named Winnie <2004/加> ★★★

winnie.jpg
A Bear Named Winnie
2004/90min/カナダ
ドラマ、戦争
監督/脚本:ジョン・ケント・ハリソン
出演:マイケル・ファスベンダー、ギル・ベローズ、デヴィッド・スーシェ、、スティーヴン・フライ
IMDb評価:6.9/10



A.A.ミルン童話「クマのプーさん」の着想になった物語。
あまりにも有名な話なので、結末まで書いています。




winnie2.jpg第一次大戦中のカナダ。獣医のハリー・コルボーン中尉は、休憩のために下車した町で売られている小熊に出会い、20ドルで購入する。コルボーンの故郷であるウィニペグ(Winnipeg)からウィニー(Winnie)と名づけられた。大佐の命令で一度は森に返すが、戻ってきてしまい、一緒に渡英することになる。しかし、前線には連れては行けず、最終的にはロンドン動物園に預けられ、人気者となる。そこに「クマのプーさん」の原作者ミルン親子が遊びに来ていた。父親が息子にウィニーの生い立ちを話し聞かせる姿があった。

監督は「トロイ ザ・ウォーズ」のジョン・ケント・ハリソン監督。出演は「エンジェル」「イングロリアス・バスターズ」のマイケル・ファスベンダー、「名探偵ポワロ」でポワロ役のデヴィッド・スーシェ、「ショーシャンクの空に」のギル・ベローズ、「Vフォー・ヴェンデッタ」のスティーヴン・フライ。

winnie1.jpg癒された~。子ども向けのテレビ映画で、わかりやすいストーリー展開。背景が戦争といえど戦闘シーンもなければ、血も流れない。私のように汚れてしまった大人が見ると、突っ込みたい所もあるが、ツベコベ語るのは止めます。
名優が名を連ねるが、主演はクマのウィニー。愛くるしい仕草が何ともいえない。常にコルボーンの後をちょこちょこついて回っていて、一緒にベッドで寝る姿は恋人のよう。メイキング映像を見ると、ほんとに懐いているようで、繋ぎ合わせではなく、もしかしたら実際に撮っていたのかも。

実際はコヨーテが原因なのだが、馬が逃げてしまったことに濡れ衣を着せられてしまい、森に返すように命じられてしまう。コルボーンはルームメートと森の深い所まで行き、置き去りにするが、何度試みても戻ってきてしまった。仕方なく、大佐たちには内緒で一緒に渡英してしまう。しかし、さすがに前線には連れて行けないので、ロンドン動物園に預けることになった。動物園でも当初は凶暴だと決めつけられ、“危険”という看板まで貼りつけられたが、人間に育てられたウィニーはおとなしい。檻に落ちた子どもを襲うのではなく、顔をぺろぺろ舐める姿を見て、飼育員たちは安心するのであった。負傷したコルボーンが療養中、寝言でウィニーに名前を呼んでいたと知り、すっかり大きくなってしまったウィニーがお見舞いに来たりと、ウィニーはとことん愛くるしい。
ウィニーは亡くなる20歳まで動物園の人気者だった。

<鑑賞> 2011/11/18

(未) Manic <2001/米> ★

manic.jpg
Manic
2001/100min/アメリカ
ドラマ、犯罪
監督:ジョーダン・メラメッドJordan Melamed
脚本/出演:Michael Bacall
脚本:Blayne Weaver
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、ドン・チードル、エルデン・ヘンソン
IMDb評価:7.4/10

社会度 ★★
哲学度 ★
ゴア度 ★★
嫌悪感 ★★★



manic1.jpgライルは学校での喧嘩で相手に50針も縫わせる重症を負わせてしまった。大人たちはライルの言い分を聞こうとせず、そのまま精神病院に送ってしまう。ライルはセラピーを受けながら自分を見つめ直していく…。

監督は、ジョエル・シューマカー監督チェイス・クロフォード主演「トゥエルヴ(2010)」の脚本を担当したジョーダン・メラメッドの唯一の監督作品。出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィットとズーイー・デシャネル、「ホテル・ルワンダ」のドン・チードル。

これ、ポイントが全くわからなかった。ドキュメンタリー風に、精神病院の様子をひたすら垂れ流すだけの作品。本当に精神病の人もいるが、ほとんどの子は家庭環境が問題で、ドラッグや暴力に依存している子たち。自傷癖があり、リストカットを見せ合ったり、グループセラピーで境遇を告白しながら傷を舐め合う。普通に生活していたら想像もできないほど壮絶な人生を歩んできた子たちばかりで、すぐ感情的になり、観ている側も精神が病みそうになる。

実情を赤裸々に映すドキュメンタリーならばこういう展開も多少理解はできるが、問題定義だけで、監督の意図するものが何なのかもわからなければ、前向きな解決策も読み取れない。手持ちカメラの映像は臨場感があるのだが、酔ってしまう欠点もある。内容も内容なだけに、具合悪くなってしまった。トリアー監督の「イディオッツ」を彷彿とさせる作風で鬱に苛まれそうになる。

<鑑賞> 2011/11/17

(未) Roger Dodger <2002/米> ★★

roger.jpg
Roger Dodger
2002/106min/アメリカ
ドラマ、コメディ
監督/脚本:ディラン・キッド(監督デビュー作)
出演:キャンベル・スコット、ジェシー・アイゼンバーグ、イザベラ・ロッセリーニ、エリザベス・バークレー、ジェニファー・ビールス
IMDb評価:7.1/10


社会度 ★★★
哲学度 なし
共感度 なし
官能度 なし
ブラック度 なし


roger1.jpgニューヨークの広告会社でコピーライターをしているロジャーの所に 甥で16歳のニックが訪ねてきた。はやく童貞を卒業したく、手解きを受けに来たのである。金曜の夜、ロジャーは行きつけのバーや友人宅のパーティ、売春宿に連れ出し、ニックのお相手してくれる女性を探す…。

監督は「ルイーズに訪れた恋は…(2004)」のディラン・キッド監督の監督デビュー作。
「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグの映画デビュー作。「ソーシャル~」の捲し立てる口調にハマれなかったのだが、デビュー作からすでに頭角を現している。倍以上も年の離れた女性に熱弁をふるうあたり、ドン引きしてしまった。私は「ソーシャル~」が嫌いなのではなく、ジェシー・アイゼンバーグが嫌いなのかも…。

roger2.jpgロジャーは既婚者であり、女性経験豊富と自負している。持論のセックス論を理論的に並べ立ててはひけらかし、年下男性には慕われるが、女性には印象はよくない。説得力のある口調に説教をされている気分になり、私だったら、一緒に飲みたくもないし、寝たくないタイプ。

物語はほとんどロジャーの会話だけで成り立っていて、ロジャーの経験を基にしたセックス論を軸に展開していく。この手のことは成り行きに任せるのが一番で、16歳なのだからそんなに焦る必要もないとは思うが、ニックは必死で、ロジャーのプランを一つ一つこなしていくのである。

はやくバージンを喪失したいと焦る気持ちはよ~くわかるが、それを手助けするロジャーのやり方には共感できない。お酒の力を借り、勢いで事を運ばせようとしたり、友人に頼んでみたり、挙句の果てに最終手段は娼婦である。“セックスはどこにでもある”というのが彼の持論だが、どれも子どもが思い付くような方法であって、健全とはいえないし、ロジャーの思うように事は運ばない。大人なら、彼女を見つけるほうを伝授してあげるべきだと思うが、ロジャー自身も健全な道を歩んでこなかったのかもしれない。

結局、ニックはロジャーから学んだことはあったのだろうか…

<鑑賞> 2011/11/15
[サイト内タグ検索] 日本未公開

Mysterious Skin <2004/米> ★★★★

skin.jpgミステリアス・スキン/Mysterious Skin
2004/アメリカ
製作/監督/脚本/編集:グレッグ・アラキ
ドラマ、同性愛
原作:スコット・ヘイム
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブラディ・コーベット、ミシェル・トラッチェンバーグ、エリザベス・シュー
IMDb評価:7.8/10

2004年第61回ヴェネツィア国際映画祭
2005年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映

嫌悪感 ★★★
社会度 ★★★
哲学度 ★★
刺激度 ★★★★★


カンザスの田舎町の少年ニールとブライアンは幼少時代同じリトルリーグに入団していた。男性コーチは性的虐待をしており、2人はその犠牲となっていた。ブライアンはその時は記憶が曖昧で、宇宙人に誘拐されたと信じ込み、ニールは男娼となっていた…。

skin1.jpg監督は日系三世のアメリカ人、グレッグ・アラキ。主役ニール役には「(500)日のサマー」 や「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レヴィット。母親役にはエリザベス・シュー 。ブライアン役には「ファニ―ゲーム」のブラディ・コーベット。

同性愛やレイプを素材とした作品は人並みには観ているし、本作の概要も知っていたし、それなりに構えて観たつもりだったが、吐きそうになった。監督ご自身が同性愛者なだけあって、男性から見た男性の描き方のリアルさには、恐怖でおののいてしまった。しかしそれがまた癖になりそうな刺激。幼児性的虐待、エイズ、性病といった要素も加わり、本作の前に北野武作品をいくつか観たが、全て色褪せてしまうほどの問題作。グレッグ・アラキ監督には苦手意識があったのだが、本作は本人原作ではなく、他作とは作風が異なっていることを後になって知った。ジョセフ・ゴードン=レヴィットにも全く興味もなかったのに、不思議な魅力に執り付かれてしまった。(後日、出演作品アップ予定)当時23歳でありながら、14歳から成人までの役を見事にこなしている。

2人の幼少時代のリトルリーグの様子から丁寧に描かれる。コーチは子どもが好きなお菓子やおもちゃを用意し、数日間かけてじんわりと手懐けた後、行為に及ぶといったことを日常的にやっていた。子どもにしてみれば何をされているのか全くわからない。ニールに至っては行為はコーチのご褒美だと勘違いしてしまうという始末。回想シーンはどこかファンタジーのようなカラフルな世界になっており、ニールにとっては楽しかった出来事として記憶されいるのが恐ろしい。ニールは鮮明に覚えていて、ブライアンはうろ覚えになっている性的虐待の記憶が、2人の運命を翻弄していることだけは確か。性的虐待を受けた子どもがその後どう成長していくのかを描いた作品。

skin2.jpgニールの生き方が壮絶。コーチのせいで男性に目覚めてしまったニールは、男娼となり年上男性とばかり関係を持つようになる。その時に想像するのはコーチの姿であった。田舎町にそんなにゲイがいるとは思えないが、町の全ての男性と寝たとまで豪語している。やがて、更なる収入を求めてニューヨークに渡る。そして、客にコンドームを使うように言われ、コンドームの存在を初めて知るのであった。股間に痒みを訴えており、毛虱だろうか、その後治療を受けた様子もない。いかに危険な橋を渡って来たのかがうかがい知れる。幼馴染のウェンディに安全な仕事に就くようにとピザ屋店員の仕事を紹介してもらうが、すぐに男娼の仕事に戻ってしまうのであった。しかも、都会は田舎町とは違って一般的な性行為では満足できない客ばかり。その後どんな危険が待っているのか露とも知らずに。

やがて大人になり、実家に帰ると、ブライアンが待っていた。ブライアンは忌まわしい過去を記憶から消し去り、その空白は宇宙人にさらわれたからだと信じ込んでいたが、曖昧な記憶を埋めるためにニールに会いに来たのであった。

ニールに衝撃の事実を聞き、傷を舐め合う2人、その後どういう道を歩むのだろうか。一見対照的な2人であり、生き方も真逆であったが、絶望的ではなく、2人で乗り越えられそうな期待がやんわりと込められている。
幼児の性的虐待のシーンは編集を巧みに使い繋ぎ合わせたと知り、安堵。仮に映画だとしても子どもを犠牲にして性的虐待シーンを撮っていたとしたら、作品としてのメッセージ性を失ってしまうから。幼児虐待に強い批判的な描き方をしているが、同性愛者に対しての目線は温かい。

<鑑賞> 2011/11/11
[サイト内タグ検索] ジョセフ・ゴードン=レヴィット

(未) Wristcutters A Love Story <2006/米> ★★★

wrist.jpg
Wristcutters: A Love Story
2006/88min/アメリカ
コメディ
監督/脚本:Goran Dukic(長編監督デビュー作)
出演:パトリック・フュジット、シャニン・ソサモン、Shea Whigham、レスリー・ビブ
IMDb評価:7.5/10


社会度 ★★★
共感度 ★★
哲学度 ★
ブラック度 ★★



wrist1.jpg彼女にフラレ傷心のジアは自宅のバスルームで手首を切り自殺を図った。しかし、目を覚ました死後の世界は、自殺した人たちだけが住む世界だった。人々は普通に生活しており、ジアは“カミカゼ”というピザ屋でバイトを始めるが、生活はパッとしない。そんな時バーで知り合ったロック歌手ユージンから、ジアをフッタ彼女も自殺を図り、この世界にいると言うことを聞く。生きていくのが嫌で自殺を図ったのに、それでも尚また生かされていても夢も希望もなかったが、“生き甲斐”(死んでいるのだが)を見出したかのようにジアのスイッチが入り、ユージンと共に彼女を探す旅に出る…。死後の世界での異色なロードムービー。

監督はクロアチア人で、本作が長編デビューとなる。主演は「あの頃ペニー・レイン」のパトリック・フュジット。

wrist2.jpg人々が普通に生活し、インフラ設備も整っており、一見、何の変哲もない世界だが、何か変。一度は希望を失い自殺した者ばかりなので、活気はなく、顔色も悪いし、状況もひどい世界。しかも、自殺した時の姿そのままなので、頭に銃痕が残ってる人なんかもぞろぞろいる。ジアも手首に傷が残ったままである。自殺により自らの命を絶ったといってもただ異次元に移動しただけで、思い出はそのまま残っている。良き思い出もあれば、自殺に至るまでの辛い体験も全て記憶しており、何かがリセットされるわけではないから、思考も悲観的なままである。しかし、自殺という素材をこんなにコミカルに描いている作品は初めてで、発想が新鮮で面白い。この世界で暮らす人たちは人生には失敗したが、“自殺の成功者”であり、初対面の人たちとの会話は決まって自殺方法。自殺理由ははっきりいってそれほど深刻なものではないが、呆気らかんと話す自殺エピソードが面白い。

死後の世界は決してユートピアではなく、前いた世界のほうがよっぽどよかったとを後悔させられることになる。皮肉にも、自殺をして初めて気がつく。私たちも大切な人を失ってみて初めて有難みに気がつくってことがあるけど、気がついた時は後の祭り。自殺してもいいことはないよってメッセージがきちんと込められている。

面白いのが、実はリアルライフと繋がっているブラックホールなんかもあったりして、気持ちいいエンディングになっている。

<鑑賞> 2011/11/5
[サイト内タグ検索] 日本未公開

(未) Pu-239 (別題:The Half Life of Timofey Berezin) <2006/米> ★★★☆

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Pu-239/The Half Life of Timofey Berezin
2006/97min/アメリカ
ドラマ、コメディ
製作:スティーヴン・ソダーバーグ
監督/脚本:スコット・Z・バーンズ(Scott Z. Burns)
原作:Ken Kalfus (short story "PU-239")
出演:パディ・コンシダイン、Oscar Isaac、Valeriu Pavel Dan、ジェイソン・フレミング、ニコライ・リー・カース
IMDb評価:6.9/10

社会度 ★★★★★
ブラック度 ★★★
哲学度 ★★★



ロシアの原子力発電所で事故が起き、自動制御システムが作動し、作業員のティモフェイは閉じ込められてしまった。施設責任者はそれを知りながら助けることなく逃げてしまう。放射能を浴びてしまったティモフェイはシャワー洗浄し、数値を測るが正常範囲内であったと知らされ、書類にサインの上、解雇。しかし、実は規定値以上の量を浴びてしまったことを後から知ってしまった。体調にも変化が現れ始め、余命あとわずかだということを悟った。職を失い、このままでは妻と7歳の息子を養えない。ティモフェイは施設から“プルトニウム(Pu-239)”を盗み出し、売り捌くことで収入を得ようと考えた…。

pu1.jpg「コンテイジョン」「インフォーマント!」の脚本家スコット・Z・バーンズの監督デビュー作。スティーヴン・ソダーバーグが製作を務める。主演はイギリス人のパディ・コンシダイン

ティモフェイは段ボールに“Pu-239”とだけ書き、100g30,000ドルでブラックマーケットで売り捌こうとしていた。そのマーケットはあるギャングたちの縄張りで、ギャングの一員シヴは「プ(Pu)って何だ?」と話しかける。“Pu-239”と化学記号で書いてしまうと、分かる人には分かるが、分からない人には分からない。シヴはギャングの下っ端で、車のワイパーや飼い犬を盗んでは売り捌き、得た金はボスに取られる生活。一攫千金でギャングから抜け出したいと思っていた矢先でもあり、何だかよくわからない物を売ろうとしているティモフェイの手助けをすることにした。
全く違う道を歩んできた2人だが、共に息子がおり、家族には普通の生活を送らせてあげたいとただただ願う良き父であった。

pu2.jpgギャングたちの行動をコミカルに描いているが、プルトニウムが何なのか知らないが故の無知なる行動には顔が引きつってしまう。自身が被爆者であるにも関わらず、プルトニウムを売ろうというティモフェイの考えも到底理解できない。悪人の手に渡り、核兵器でも作られたら自分の二の舞になる被害者が続出することは明らかである。しかし、余命わずかだと悟った彼はそんなことどうでもよく、身近な物で金になる物であれば何でもよかったのであろう。

被爆したティモフェイは、毛が抜け始め、吐血し、鼻や耳からも出血、皮膚も爛れていた。製作は2006年。広島、長崎、チェルノブイリに関しても言及しており、明らかに放射能の危険性を訴える内容である。隠ぺい体質の国営企業、危険物質の管理の甘さ、犠牲となる作業員といった、今の日本では決して他人事ではない問題がいろいろと見えてくる。

ギャングのボスは、マックのポテトは6分後に廃棄されるが、それを拾えば7分後にはビジネスになるとも言っている。どこにビジネスが転がっているのかわからない。見極めるのも才能であると妙に関心させられてしまった。しかし、チョコレートに含まれるテオブロミン(Theobromine)が犬にとって強い毒性であることを知らなかった。チョコレート8ピース食べて死んでしまうアフガン犬のエピソードは身近な物にも危険が潜んでいることを暗示していたのだろう。取り扱い方によってはたとえ悪意がなくてもどんな危険を及ぼすのかわからない。プラトニウムも手に渡った人の知識や使い方によってどう扱われるのか…

<鑑賞> 2011/11/14

(未) Stephanie Daley <2006/米> ★★★☆

step_20111108221915.jpg
Stephanie Daley
2006/92min/アメリカ
ドラマ
製作/出演:ティルダ・スウィントン
監督/脚本:Hilary Brougher(監督2作目)
出演:アンバー・タンブリン、Timothy Hutton
IMDb評価:6.2/10


社会度 ★★★★
哲学度 ★★★
宗教度 ★
余韻度 ★★★



少女が血を流しながら雪の上を歩いている。
スキー場のトイレで嬰児(えいじ)の死体が発見された。

学校のスキー教室に参加していた16歳の女子高生ステファニーは殺人容疑と死体遺棄容疑で逮捕された。未成年の彼女には検察側のカウンセリングが付き、一体何があったのか調査が行われた。ステファニーはリフトで上に登り、いざ滑ろうとした矢先、激しい腹痛に見舞われ、トイレに駆け込む。ドアの隙間からステファニーの苦しむ姿が見えるが誰も気にはとめない。トイレの一室でこんなに苦しんでいる子がいることなど誰も予想せず、トイレでぺちゃくちゃとおしゃべりする少女たちがいる中、ステファニーは声を抑えながら出産してしまった。死体は彼女が産み落とした嬰児だった。しかし、妊娠しているとは知らなかった、そして、死産だったと主張する。ステファニー本人は本当に妊娠に気が付いていなかったか…本当に死産だったのか…カウンセラーは妊娠前後の出来事からを詳しく聞き出し、カウンセリングによって真相を暴いていく…。

step1_20111108221915.jpg女優のティルダ・スウィントンが製作とカウンセラーのリンディー役を務める。監督は本作が2作目となる女流監督、Hilary Brougher。日本での公開作、ソフト化作品はない。主演は「127時間」のアンバー・タンブリン。

一番の論点となるのは、ステファニーは本当に妊娠に気が付いていなかったかどうかである。もしかしたら、気付いていた上で今まで隠し通していたのかもしれない…。犯罪なのか事故なのか、緊張感のある見せ方で、かなりハラハラさせられた。
カウンセリングを行うリンディーは29週の妊婦であり、40代半ば。高齢出産への不安を抱え情緒不安定なリンディーと、妊娠していることを知らなかったと主張するステファニーを対照的に描く。
リンディーは待ち望んでいた妊娠であるのに対し、ステファニーは望んでいなかったとはいえ、あまりにも平然とした態度でのカウンセリングには少々違和感を感じる。印象的なのは、警察による誘導尋問的な取り調べではなく、カウンセラーによるカウンセリングの仕方である。いつ、どこで、誰と何があったのか、妊娠前後の出来事からを詳しく聞き出し、本人に思い起こさせると同時に、感情まで引き出し、嘘を見抜こうとしているのである。

step2_20111108221915.jpg1人での壮絶な出産が地獄であり、地獄の体験でもうすでに罪は償ったと言うステファニー。しかし、その地獄を招いたのは自業自得とも考えられる。
未成年の軽率な性交渉、避妊を怠ったこと、生理不順を気にしなかったこと…学校で性教育を受けていたとはいえ、カウンセリングから見えてくるのはそういった教育が全く無意味であることと避妊への無関心さ。日本は避妊は男性がするという認識が高いが、欧米はその辺も男女平等で、避妊方法にピルを選択する人のほうが多いと感じる。自分の身は自分で守るという意識も高い。ステファニーが避妊を怠ったという責任も大きいであろう。
本作で彼女の行動の是非をめぐるわけではないが、観る側にも自問を促し考えさせる展開を見せている。ステファニーの何が間違っていたのか、どうすべきだったのか明確な答えも提示されず、結末も観る側の解釈に委ねられている。

ティーンエージャーの妊娠ストーリーはありふれているが、私が知っているのはほとんどがハッピーエンドで、そんなに現実は甘くないのに、妊娠の先には幸せな結婚生活が待っていると勘違いしてしまうような作品ばかり。その点、本作は未成年が観るべき内容。どうせ妊娠なんかしないって軽く思っている未成年には特に観て欲しいが、おそらくいい年の大人しか観ないんだろうな。

<鑑賞> 2011/11/7
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ティルダ・スウィントン

ウェイバック 脱出6500km <2010/米> ★★

2012年9月8日公開予定

the way back
The Way Back
2010/133min/アメリカ=アラブ首長国連邦
アドベンチャー、ドラマ
製作/監督/脚本:ピーター・ウィアー
原作: スラボミール・ラウィッツ
出演:ジム・スタージェス、コリン・ファレル、エド・ハリス、シアーシャ・ローナン、マーク・ストロング、ドラゴス・ブクルグスタフ・スカルスガルド
IMDb評価:7.3/10

自然美 ★★★
哲学度 ★
社会度 なし
余韻度 なし
感動度 なし
スリル度 なし


the way back1時は第二次世界大戦。ポーランド兵士のヤヌスはスパイ容疑をかけられていた。ソ連兵に脅迫され妻は嘘の証言をしてしまい、シベリア強制収容所に送られてしまうが、収容所で出会った人たちとの脱出を図る…。

監督は「今を生きる」「刑事ジョン・ブック/目撃者」の名匠ピーター・ウィアー。スラボミール・ラウィッツ手記小説「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」の映画化である。
出演は「ラスベガスをぶっつぶせ」のジム・スタージェス、コリン・ファレル、エド・ハリス、「ラブリーボーン」「つぐない」のシアーシャ・ローナン。

the way back2第二次世界大戦中といえど、戦争の様子や尋問、拷問のシーンはほとんどない。収容所といっても、檻に囲まれているわけではない。脱獄しても、極寒のシベリアでどうせ生き延びれないから、平地にただポツンと収容所が建っているだけなのである。それでもヤヌスは脱出を図ることにした。逃げることは容易であり、シベリアからインドまでの4000キロに渡るサバイバルをメインに描いているのだが…

どうも演出が甘い。任務中も人がバタバタと凍死する環境であるのに、脱獄してから環境が緩やかに見えてしまう。南東へ向かっているのだから、寒さは和らぎ雪も解けてくるのはわかるが、少々過酷なハイキング程度にしか見えず過酷さが全く伝わってこない。本人が本を書いているのだから生き延びたのは分かりきっている。タイトルを見れば、シベリアからインドまで歩いたこともわかる。どうサバイバルしたのかが見せ場であるのだが、苦労が見えない。そもそもなぜインドを目指したのかもわからない。

極限の環境であるのにも関わらず、仲間意識が強く、相手を思いやる気持ちばかり強く、美化しすぎ。仲間割れといった醜い骨肉の争いもない。リアルさが感じられないのも演技ではなく演出のせいだろう。俳優の持ち味も引き出し切れていない。コリン・ファレルのこんなに存在感の薄い作品、初めて観たよ。エド・ハリスも大好きな俳優さんだけど、なんだかなぁ。名匠ピーター・ウィアー監督にしてはお粗末すぎる。どうせなら、もっととことん感動系にしたほうがよかったのでは?
ロシアの農夫、モンゴルの遊牧民、チベット族、紅茶栽培風景の登場でその土地特有の自然美は楽しめる。

<鑑賞> 2011/10/27

(未) Dakota Skye <2008/米> ★★★

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Dakota Skye
2008/89min/アメリカ
ドラマ、ロマンス
監督:John Humber(長編監督デビュー作)
脚本:Chad J. Shonk
出演:Scott F. Anderson、Matt Baker、Eileen April Boylan、Ian Nelson
IMDb評価:6.4/10


哲学度 ★★
普遍度 ★★★
催涙度 ★★
官能度 なし




dakota1.jpg17歳のダコタ・スカイはどこにでもいる普通の高校生だが、1つだけ不思議なパワーを持っている。それは人が嘘をつく時の本音がわかってしまうこと。進学や将来のことばかり気にしている同級生、仕事でいつも家にいない母親、関係は悪くはないけど、いつも嘘ばかりの彼氏ケビンにうんざりしていた。そんな時、彼氏の友人ジョナがニューヨークからやって来た。行動を共にするようになるが、彼の本音が読み取れない。パワーが薄れたのか、それとも嘘をつかない人なのか…。

監督は、ジョニー・デップ主演「ブロウ(2001)」、ジョン・トラボルタ主演「ソードフィッシュ(2001)」などにスタッフとして参加していた方で、短編監督2本を経て、本作が長編デビュー作となる。出演者もさほど有名な人はでていない。スーパーパワー系の話だとSF風だと思いがちだが、心情がよく描かれている良質なドラマ。

dakota2.jpg犬が病院に運ばれ、「大丈夫。きっと良くなるわよ。」と言われても、「もうすぐ死ぬわよ。」って本音が見えてしまう。セックス中、彼氏が「I love you」と言ってくれても、本心が「I love sex」だと見破ってからは冷めた表情。“嘘も方便”って言葉もあるし、必ずしも嘘が悪いとは思わない。でも人間ってどうしても本音と建前があって、社会にでると建前ばっかりでほんと嫌になることがある。歯の浮くようなことばかり言う人もいるし、この人の本心がわかったらどんなにいいだろうって思うことはある。主人公ダコタはそんな本音がわかってしまうというスーパーパワーを持っている。しかし、その能力が優位に働いているわけではなく、かえってこのパワーのせいで人を信じることができない。人間は皆嘘をつくって思い込んでしまっているため、いつも投げやりな態度で卑屈。可愛げがなく、夢も希望も見失いかけてしまっている。そんな時現れた彼氏の友人ジョナ。いつも調子のいい彼氏ケビンとは違って、真面目で誠実な彼に出会ってから、微妙な変化を見せ始める。ストーリーが素朴だからこそ際立つ2人の演技力。感情の微妙な揺れが見事に表現されている。

多感な年頃の青春ものではあるが、人の嘘を見破れるというスーパーパワーのお陰で、趣旨の異なる作品。特別な能力の有無に関わらず、人間関係に悩まされた事のある人なら共感ポイントがある普遍的な話。信じられる人を見つけるって大事だなって考えさせられた。

<鑑賞> 2011/10/16
[サイト内タグ検索] 日本未公開

ドライブ <2011/米> ★★★★

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Drive
2011/97min/アメリカ
アクション、犯罪、ドラマ
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
原作:James Sallisの同名小説
脚本:Hossein Amini
出演:ライアン・ゴズリングキャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、アルバート・ブルックス、ロン・パールマン
受賞:第64回(2011)カンヌ映画祭 監督賞 (その他ノミネート、受賞作品はこちら)
IMDb評価:8.7/10

嫌悪感 ★★★
映像美 ★★
社会度 なし
哲学度 なし


drive1.jpg主人公の男は、昼はハリウッド映画のカースタントマンとして働き、運転技術を買われ、夜は組織の逃走車両のドライバーの仕事をしている。隣に住む女性に恋をするが、彼女が陰謀に巻き込まれている事を知り、守るために体を張って危険を冒す…。

10本指に入るほど好きなニコラス・ウィンディング・レフン監督。日本での公開作はなくソフト化もたった2作であり、知名度が低いのは仕方ないとは思うが、今公開されているアメリカでもまだまだ無名に近いようでアメリカ映画には類を見ない作風が今更ながら話題を呼んでいる。カンヌで監督賞を受賞しているが、オスカーにも絡んできそうな勢いをみせていると素人ながらに感じる。作品賞、監督賞、主演男優賞あたりノミネートされるのでは?

監督にとって初のアメリカ映画であり、唯一脚本に携わっていない作品となるが、過去2作品「Bronson」「Valhalla Rising」と同様の作風であり、あたかも監督自身が脚本を書き上げたかのように消化し、独自の世界感を作り出している。次作とその次もライアン・ゴズリングを主演に迎えたアメリカ映画となるらしい。いち早く目をつけていたことに若干の優越感を感じつつ、デンマークから離れてしまったことは少々淋しい。

drive2.jpgはっきり言って、何度もアメリカで映画化されたようなカーアクションであり、ストーリ自体には新鮮味はない。この監督の魅力は平凡なストーリーをどう個性的に、そして主演俳優の潜在能力をいかに引き出すかである。「Bronson」でのトム・ハーディーや「Valhalla Rising」でのマッツ・ミケルセンが魅せてくれたようにライアン・ゴズリングも今までにない存在感を放ち、驚愕の一面を見せている。アクションスターとして名を馳せる日はそう遠くないかもしれない。
前半は、主人公と周囲の人たちとの交流や心情に重きを置いた人間ドラマがしっかり描かれる。後半では寡黙な主人公からは想像もできないほど目の離せない凶暴ぶりが怒涛のように押し寄せ、暴れぶりは相当の覚悟を要する。
ハリウッド映画のような派手な演出はないが、残酷さは脳裏に焼きつき嫌悪感たっぷりである。しかしながら、キレのある運転さばきや暴力描写ですら鮮やかでもあり、各シーンが芸術的に撮られ監督の個性が光る。女性とのロマンスに頼りすぎない展開もこの監督のスタイル。アメリカ進出に作風がハリウッド化してしまったのではいう懸念もあったが、心配無用だった。控えている監督×ゴズリングの2作品への期待も高まる。

<鑑賞> 理解度80% 2011/9/26

(未) ウェンディ&ルーシー <2008/米> ★★★★

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Wendy and Lucy
2008/80min
ドラマ
原作:ジョナサン・レイモンドの短編小説
監督/脚本:ケリー・ライヒャルト(Kelly Reichardt)(長編4作目)
出演: ミシェル・ウィリアムズ、ウォーリー・ダルトン、Lucy、David Koppell
IMDb評価:7.1/10


社会度 ★★
催涙度 ★
ゴア度 なし




wendy1.jpg仕事を求めて、愛犬ルーシーと車でアラスカへ向かうウェンディ。ところが途中のオレゴンで車が故障し、旅は一時中断。所持金を少しでも残しておきたい彼女はドッグ・フードを万引きしてしまい、警察に連行されてしまう。長い拘留後に彼女は釈放されるが、店の外に繋いでおいたルーシーの姿は消えていた。なけなしのお金で車を修理に出し、野宿をしながら必死に愛犬を捜すウェンディだったが…。@シネフィル

ケリー・ライヒャルト監督のオレゴン3部作の2作目。ミシェル・ウィリアムズ演じるウェンディーはホームレスの役柄であり、撮影期間中お風呂に入らず、ノーメイクで挑んだという。とことんシンプルさを追究したストーリーは彼女の演技なしでは成立しなかったと思わせるほどの演技を見せている。ルーシー役の犬は監督が飼われている犬であり、監督3部作の1作目にも出演している。

ウェンディーはとことん運が悪い。家もなく職もないのに、兼住居であり交通手段の車は故障し、唯一の心の支えである愛犬ルーシーもいなくなり、不安要素ばかりが積み重なる。それは個人主義集団のアメリカで生きる不安の象徴ともいえるだろう。ウェンディー+愛犬ルーシーの“旅の過程”に焦点を当てているが、困難でなかなか前に進めない。しかし、差し当たって大事件が起こるわけでもなく、生きていれば、この程度の困難はつきものである。誰にでも起こり得る出来事を解決する過程はごく普通だが、リアルなアメリカの姿が投影されている。

wendy2.jpg韓国映画で犬が登場すると、間違いなく催涙性が高く、みえみえの演出に嫌気がさすことが多い。アメリカだとディズニー系のような感動系(?)がすぐに頭に浮かぶが、泣く気にもなれないほど厳しい現実や個人の力ではどうにもならない人間の弱さを突きつけられる。ウェンディーの鼻歌以外音楽はなく、静かにしかも淡々とストーリーは進むが、女性1人で生きることの難しさや無防備でいることの危険さも伝わってくる。

監督は、05年のハリケーン・カトリーナで家や家族を失った人たちがゼロから再出発する人々のことを考えている時にこの物語に巡り合ったという。主人公ルーシーの背景は描かれず、災害の犠牲者なのかどうかもわからない。もしかしたら、大恐慌以来最悪と言われるアメリカの不況に大打撃を受け、職を求めてアラスカを目指しているのかもしれない。しかし、旅はここからという所でストーリは唐突に終わってしまう。
私の目には、ウェンディーは全てを失ったというより、全てを投げ捨てたキャラクターで、過去を断ち切り新たな生活を求めてアラスカを目指しているように映るが、解釈は観客の想像に委ねられている。

面白いのが、本作を憂鬱映画だという人が多いということ。私は過去の自分とは断ち切り、前に進もうとする姿に力強さを感じた。結末を前向きに捉えているが、本作で号泣したという人たちの琴線はどこだったのだろうか。

<鑑賞> 2011/9/5
[サイト内タグ検索] ミシェル・ウィリアムズ

【短編】 Plastic Bag <2009/米> ★★★★

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Plastic Bag
2009/18min/アメリカ
短編、ドラマ
監督/脚本:ラミン・バーラニ(Ramin Bahrani)
撮影:マイケル・シモンズ(Michael Simmonds)
声の出演:Werner Herzog
IMDb評価:8.0/10

社会度 ★★★
映像美 ★★★★

移民3部作「Man Push Cart(2005)」「Chop Shop(2007)」「グッバイ・ソロ(2008)」のあとに発表された短編。撮影は3部作を担当したマイケル・シモンズが担当。「Project Nim(2011)」という人間に育てられたチンパンジーのドキュメンタリー映画の撮影を担当された方でもあり、個人的に今注目している。

bag1.jpgスーパー等でもらうレジ袋。家へ持ち帰った後は、中に氷を入れて捻挫した足を冷やすのに使う人もいれば、犬の汚物入れに使ったりと買い物の後の使い道は人それぞれ。そこらへんに適当に放り投げられたものは風に流されるまま宙を舞い、木や排水溝に引っ掛かったり。自然界に還元されることなく袋としての役目を終える悲しい運命。
レジ袋の視点で描いた旅路と共に考えさせられるエコ。レジ袋から見た人間の無頓着で関心のなさを鋭く突いた作品。

最近、日本ではレジ袋をもらわない代わりにポイント還元や数円引いてくれるサービスをしてるスーパーもあるけど、国によっては全く配布していないところもある。フィンランドにいた時、国民1人1人の環境問題に関する意識の高さに関心しっぱなしだったけど、日本にいると、ついつい意識は薄らいでしまう。そんな自分をちょっと反省。

<鑑賞> 2011/8/11

[サイト内タグ検索] ラミン・バーラニ監督

グッバイ・ソロ <2008/米> ★★★★

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Goodbye Solo
2008/94min/アメリカ
ドラマ
監督/脚本:ラミン・バーラニ(Ramin Bahrani)
撮影:マイケル・シモンズ(Michael Simmonds)
出演:スレイマン・スイ・サバネ、レッド・ウエスト、ディアナ・フランコ・ガリンド、カルメン・レイバ
受賞:2008年ヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞
IMDb評価:7.4/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
映像美 ★★★




solo1.jpgアメリカ、ノースカロライナ州ウィンストン・セーラム。セネガル人ソロは、メキシコ人で妊娠中の妻キエラと9歳になるおませな義理の娘アレックスと3人暮らし。家族により良い生活をさせようと、航空機の客室乗務員になることを目標に、タクシードライバーとして生計を立てている。
ある夜ソロは、乗客である老いた白人ウィリアムに、2週間のあいだに山の近くまで連れて行くよう依頼される。ウィリアムの計画を悟ったソロは、彼をどうにか思いとどまらせようと考える。そんな中、客室乗務員の夢を妻に反対され家を出て、ウィリアムのモーテルに転がり込んだソロとウィリアムの間には、徐々に友情が芽生えてゆく。約束の日、山に向かうソロとアレックスとウィリアム。ソロはウイリアムを思いとどまらせる事ができるのか…?@シネフィルイマジカ                                              

イラン系アメリカ人の監督で、移民三部作を発表。本作は3作目。全て海外映画祭で受賞しており、インディペンデント映画界を担う存在として注目をあびている。日本での公開作はない。ソロを演じたスレイマン・スイ・サバネは元パイロットという経歴をお持ちの方。レッド・ウエストはエルビス・プレスリーの親友として知られているようで、彼と共にドラマや映画出演し、楽曲も提供している。

solo2.jpg家族のために夢に向かって生きている男性と自らの意思で人生の幕を閉じようとしている老人の話である。夢に向かう男の話はありふれているし、人種や世代、境遇の垣根を越えた友情が芽生える話もそう珍しい話ではない。心を閉ざしてしまっている老人の心をどう溶かすか、そして老人が匂わす“自殺”をどう引き止めるかがテーマである。

個人的にはソロのような人の私生活に踏み込んでくるタイプは好きではないが、それがソロの優しさであることが十分に伝わる好感の持てるキャラクター。自殺を思い留まらせるのに説教じみたものはなく、決して偽善者でもなく、家に招き家族を紹介したり、お気に入れの場所へ案内したりして友情の芽生える課程はごくごく自然。シンプルで静かなストーリーだが、特に終盤の展開運びが素晴らしい。霧が立ち込め、朝日が差し込む映像のキレイさも感慨深い。一般受けする内容ではないため誰にでもオススメできる作品ではないが、自殺により家族や知人を失った経験のある人は私のように求めていた答えを得られるかもしれない。

<鑑賞> 2011/8/11
[サイト内タグ検索] ラミン・バーラニ監督

エクスプローディング・ガール <2009/アメリカ> ★★★

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The Exploding Girl
2009/79min/アメリカ
ドラマ
製作/監督/脚本/編集:ブラッドリー・ラスト・グレイ
製作/編集:キム・ソヨン「彷徨の日々」「木のない山
出演: ゾーイ・カザン、マーク・レンドール、マリヤン・ウルバーノ
IMDb評価:6.4/10









exploding1.jpg大学が夏休みに入り、アイヴィーはニューヨークの実家に帰省する。幼なじみのアルもアイヴィーの家に身を寄せることになった。アイヴィーは彼氏のグレッグに電話をかけるがなかなか繋がらず、留守電にメッセージを残すことが多い。アルとパーティーにいったり散歩に行ったり過ごしていても、楽しめる気分になれない。そして、ある日グレッグに思いもよらないことを告げられる…。

余談だが、映画サイトにて「ソルト(Salt)」の監督と紹介されているものだから、アンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」だと勘違いしている人があまりにも多いのが面白い。作風の比較をしているブロガ-さんも発見。本監督の「ソルト(Salt)」はアイスランド映画、日本未公開。

exploding2.jpgグレッグは一度も登場することなく、携帯で話す声だけ。その声はどこかよそよそしく、何か言いたそうでもどかしい。アイヴィーはその様子を感じており、不安を感じていた。幼なじみのアルには想いを寄せている子がいて、その子の相談にも気分が乗らない。
アイヴィーは癲癇に苦しみ、薬を常用。母親の手助けなしではお風呂にも入れない。いつ発作が起こるかわからず、更にグレッグのことで感情的にも常に揺れている。タイトルはいつエクスプローディング(爆発する)するか分からない肉体的にも精神的にも不安定な境遇であることを示唆している。

恋に悩む女子大生を主人公に据えておきながら、恋愛話を主軸にせず、孤独や不安といった普遍的な心理を描くスタイルは奥さまキム・ソヨン監督に通ずる。
友情が恋愛感情に変わっていくのに気が付いていながら、素直に告白することもできないもどかしさ。一歩前に踏み出すことへの躊躇。デビュー作「彷徨の日々」 の主人公の少女と共通の心理との葛藤を描いている。カメラはアイヴィーの行動を追い続け、奥さま作品のようなクローズアップが多いというより、隠し撮りのような映像になっている。自然体でありながら、ここまで感情表現の繊細なアメリカ映画は記憶にない。終盤、幸せの象徴であるハトが飛び立つシーンの美しさとラストシーンは今まで観た映画の中でも上位に入る素晴らしさ。欲を言うと、キャラクター全てが良い人すぎるということがちょっと不自然でもある。

<鑑賞> 2011/8/10

(未) Happy Thankyou More Please <2010/米> ★★★☆

happy_20110801180714.jpg
Happy Thankyou More Please
2010/100min/アメリカ
コメディ、ドラマ
監督/脚本/主演:ジョシュ・ラドナー(Josh Radnor)
出演:マリン・アッカーマン、ケイト・マーラ、リチャード・ジェンキンズ、ゾーイ・カザン、トニー・ヘイル
受賞:2010サンダンス映画祭 観客賞
IMDb評価:6.9/10


普遍度 ★★★★★






happy1_20110801180714.jpgNYに住む作家志望のサムは30歳を目前とし、自身の人生を見つめ直していたが、気楽な独身生活から抜け出せないでいた。出版社との打ち合わせに向かう途中の地下鉄で少年ラシーンに出会う。電車の中で家族とはぐれてしまったのかと思ったら、既に6つのフォスターハウスを転々としてきたことを知り、数日間だけ自分の家で預かることにした…。

私には珍しいHappyムービー。派手さはないけど、恋や人生に悩む私と同世代の(若者?)6人が等身大で描かれている。本作の良い点は、少年との奇妙な縁をきっかけに、全てがポジティブな方向へ向かっていくこと。人との出会いっていいなぁと感じささせてくれたトム・マッカーシー監督(「扉をたたく人」)のデビュー作「The Station Agent」と同じ香りがする良作。「ママと恋に落ちるまで」のジョシュ・ラドナーが初監督、脚本、そして主演をつとめている。

happy2_20110801180713.jpgサムは地下鉄で見つけた少年ラシーンのせいで、打ち合わせを不意にしてしまった。もしかしたら、人生を大きく変えるチャンスだったかもしれないのに、サムはラシーンを責めることなく優しく接する。しかし、このラシーンのお陰で気になっていた女性と急接近するチャンスを得て、いい方向へ事が運ぶようになる。サムを取り巻く人々も幸せを掴むきっかけが舞い込み始める。

登場するのは20代、30代の男女6人+地下鉄で会った子ども。仕事も恋愛もうまくいかない男、自分を想ってくれる男性を素直に受け入れられない女、妊娠を彼氏に告げられない女…どこにでもいる男女で、同世代以上の人ならきっと共感できるキャラクターがいるはず。私は自分が悩んでいる内容とも重なり、あっという間に感情移入してしまい、台詞の一言一言がグサグサと心に突き刺さってきた。

幸せになるチャンスってどこに転がっているかわからない。ひょっとしたら手の届く所にあるのに気付かないだけかもしれない(これはこないだ占い師さんに言われたことでもあったりする)。他人に無関心な現代人への警告にも感じた。未成年の子どもを勝手に預かってしまったことの是非は別として、些細なことがきっかけで風向きが変わるってこともある。
“Go get yourself loved”一歩前に踏み出す勇気が大事だって教えてもらえた気がした。

<鑑賞> 2011/7/31

扉をたたく人 (原題:The Visitor) <2007/米> ★★★★☆

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The Visitor
2007/104min/アメリカ
ドラマ
監督/脚本:トム・マッカーシー「The Station Agent
出演:リチャード・ジェンキンスヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ
IMDb評価:7.8/10

邦題センス ★★★★
社会度 ★★★★

ヒアム・アッバスの他作品については こちら






トム・マッカーシー監督のデビュー作「The Station Agent」鑑賞にあたり、2作目である本作を再鑑賞。以前観た時は★3つ。以前全く響かなかったシーンの多くで琴線に触れた。2作品共通して主人公は、閉ざしてしまった心がある人との出会いをきっかけに心を開く。出会いっていいなと思わせてくれる作品。リチャード・ジェンキンスにアカデミー賞主演男優賞のノミネートをもたらした。内に秘めたものは大きいが、うまく表現できない不器用な男性を見事に演じている。ヒアム・アッバスの登場でさらに引き締まったように思う。visitor3.jpg

妻に先立たれ喪失感を抱きながら人生を歩んできた大学教授のウォルター。
周囲のことに関心を持たず、閉ざしてしまった心を開いたのは、異人種で異文化だった。好んでいたクラシックとは違うシャンべに興味を持ち始め、新しい世界への扉を叩き始める。明らかに歩んできた道の違うシリア出身の若者タレクとの友情が芽生える過程にはデビュー作「The Station Agent」同様監督の温かい眼差しを感じるが、個人的な問題から厳しい現実へと視点は掘り下げられ、痛烈な批判が込められている。

visitor2.jpgvisitor1.jpg
核心、結末まで触れています。
原題visitorとは“訪問者”という意味。ウォルターは亡き妻が愛していたピアノのレッスンを受けていたが、上達しなかった。それは“扉をたたいた訪問者”である先生を受け入れることができなかったのである。レポートを提出に来た学生もまた“扉をたたいた訪問者”であり、やはり冷たくあしらっていた。しかし、移民カップルが暮らす自分の別宅へ行き、扉をたたいたことで立場は逆転する。不法入国で拘束されているタレクを気遣い、足げなく拘置所へ通い詰め、自身が“訪問者”となるのである。そして殻を破り、“訪問者”のタレクの母を快く迎え入れるウォルターの変貌を見せることで、非人道的な行為で移民への扉を閉ざしてしまったアメリカ社会への問題提起をしているように思う。

タレクを心配し様子を見に来た母親を乗せたフェリーから、自由の女神と911によって失ったワールドトレードセンターの跡地を同時に映し出している。移民によって作り上げられたアメリカを象徴する自由の女神はもはや何を意味するのか。911によって移民に対する不信感は強まり、公平さを失った今自由がある国とは言い難い。アメリカへの扉をたたこうとする移民への自由が与えられる時は来るのだろうか。

タレクに対してどうすることもできなかった無力さの嘆きなのか、安全保障を謳いながら移民を排除する社会への怒りなのか、あるいは哀しみなのか、、、悲痛な叫びを訴えるように鳴り響くラストのシャンベの演奏に希望を託したい。

<鑑賞> 2011/5/16

(未) The Station Agent <2003/米> ★★★★

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The Station Agent
2003/89min/アメリカ
コメディー、ドラマ
監督/脚本:トム・マッカーシー(監督デビュー作)
出演:Peter Dinklage、パトリシア・クラークソン、Bobby Cannavale、ミシェル・ウィリアムズ
受賞:2003サンダンス映画祭 脚本賞、観客賞
IMDb評価:7.9/10


「扉をたたく人」のトム・マッカーシー監督のデビュー作。





station1.jpg小人症である青年フィンは、同じく鉄道を愛するアフリカ系中年男性ヘンリーの経営する鉄道模型店でひっそりと働いていた。しかし、店で突然ヘンリーが倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまう。フィンには、ニューファンドランドにある古い駅舎がヘンリーの遺産として残されたと知り、そちらへ移り住むことにした…。

小人症なため人々の好奇の眼にさらされ、孤独を好むようになってしまったフィン。唯一の友人ヘンリーが亡くなり、1人田舎の駅舎でひっそりと暮らそうと考えていた。しかし、駅舎の目の前に移動トラックのホットドッグ屋があり、その従業員ジョーはプエルトリコ系でお調子者。引っ越してきたと知って以来、毎日家に来たり、外出先にくっついて来たりと放っておいてくれない。そしてさらに、オリヴィアはフィンのあまりの小ささに気付かず思わず車で引いてしまいそうになったことを機に顔見知りになり、家に出入りするようになる。

station2.jpg中心となる人物は3人で共通点は何もないように見えるが、強いていえば孤独。その3人が出会い、徐々に親しくなっていく過程を流れに任せ描いているだけだが、そのほのぼのさがとっても心地良く、ユーモアに癒される作品。
フィンが鉄道マニアという設定がまたいい。橋を通過する列車を見るのに打って付けの場所を見つけ、持参した本を読みながら列車が来るのを待ったり、車を運転できないから線路の上を歩いたり、鉄道に関するウンチクがあったり…鉄道に纏わるシーンが盛りだくさんだが、田舎の綺麗な情景に溶け込んでいてマニアックさはなく、鉄道好きでなくても楽しめる。

身長の低さから小学生の女の子には子どもと思われ、なんで学校行かないの?なんて問い詰められたり、椅子に座ると宙に浮いてしまう足だったり、小人症ならではのシーンも織り込まれているが、決して偏見ではなく、温かい眼差しで描かれている。外見や性別、国籍によらず誰しもが抱える孤独や疎外感。人間関係が嫌になったり、時には鬱陶しく思えることもあるけど、やっぱり人と触れ合うのっていいよなぁって思わせてくれる作品。

<鑑賞> 2011/5/17

ローズマリーの赤ちゃん <1968/米> ★★★

rosemary.jpgRosemary's Baby
1968/136min/アメリカ
監督/脚本:ロマン・ポランスキー
製作:ウィリアム・キャッスル
原作:アイラ・レヴィン
撮影:ウィリアム・フレイカー
音楽:クリストファー・コメダ
出演:ミア・ファロー、ジョン・カサヴェテス、ルース・ゴードン
受賞:1968年 アカデミー賞 助演女優賞
IMDb評価:8.1/10


都市部に於ける共同住宅での恐怖を描く同義的作品として65年の「反撥」と76年の「テナント/恐怖を借りた男」と共に三部作の一角として位置付けられている。

ニューヨーク、マンハッタンの古いアパートに越してきた俳優志望のガイと妻ローズマリー。何かとおせっかいな隣人たちに感謝しながらも困惑し、新生活をはじめる。ある日ローズマリーは悪魔に凌辱される夢をみて妊娠が発覚する。それ以降、不可解な事件ばか起こり、隣人たちや夫の言動から、彼らはサタニスト(悪魔主義者)ではないかと疑いを抱きはじめる。

妊娠期は肉体的、精神的な変化があらわれ、神経過敏になったり、起伏が激しくなったりするものである。おせっかいな隣人、その養女の死因、タニス草のペンダント、アナグラムの謎、家具を移動させたカーペットの跡、友人から聞かされたよくない噂。妊娠期に輪をかけるように不安要素は襲いかかってくる。一番怖いと思ったのは夫のライバルの失明である。そのおかげで夫が主演をつかんだのは偶然だったのか、それとも夫が仕組んだことなのか。妊娠期の情緒不安定さをうまく使い、不可解な出来事を妄想か現実か曖昧に描く。ローズマリーの不安を象徴する夢のシークエンスは、ダレン・アロノフスキー監督の「ブラックスワン」でも同様な使われ方をしている。

「現代の大都会に潜む“悪魔”が市民の生活に忍び寄る恐怖を描いた」と監督は言う。やはり、それは彼自身が幼少時代に経験した不条理な世界と重なる。悪魔にも負けない母ローズマリーの強さは自身の母なのだろうか。

亡き2番目の妻シャロン・テイト惨殺事件との相関的因縁も囁かれ、舞台となったダコタハウスはジョン・レノンが80年に殺害された場所でもある。クリストファー・コメダの音楽が一層不気味を引きたてている。

<鑑賞> 英語字幕 2011/1/11
[サイト内タグ検索] ロマン・ポランスキー監督

1408号室 <2007/米> ★★★

1408.jpg1408
2007/104min/アメリカ
ホラー、スリラー
監督:ミカエル・ハフストローム「Evil
原作:スティーブン・キング
出演:ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン
IMDb評価:6.9/10

恐怖度 ★★★
刺激度 ★★★


<あらすじ>
超常現象を一切信じないマイク・エンズリンは、幽霊や怪奇現象が噂されるスポットを訪ね歩いては、その体験を文章にまとめるオカルト作家。ある日、そんな彼のもとに“1408号室には入るな”と書かれた謎めいたポストカードが届く。絵柄はニューヨークにあるドルフィン・ホテルのものだった。興味をそそられたエンズリンだったが、ホテル側は1408号室の宿泊に異常な拒絶反応を示す。支配人はエンズリンに、1408号室の宿泊客で1時間以上もった者がいないこと、その犠牲者は56人にものぼるという驚愕の事実を明かして、宿泊を思い留まるよう説得する。しかしそれを聞きますます興味をかき立てられたエンズリンは、支配人の再三の忠告を無視して、ついに1408号室へと足を踏み入れるのだったが…。(by allcinema)

<レビュー>
スウェーデン時代の「Evil」が思いのほか良く、同監督ハリウッド進出作を鑑賞。こんなに怖いとは知らず、何度か椅子から転げ落ちそうになった。「Evil」でも心に眠った感情を刺激させるような描き方をしているが、本作では「カウントダウン」「脱出不可能な閉鎖空間」「親族のトラウマ」「無限ループ」といった精神的なダメージを与え、歯止めのきかない精神崩壊は現実と幻想の狭間をうまく表現している。超常現象を信じないという設定も感情移入しやすく、普通っぽい風貌のキューザクが当たり役。密室での1人芝居が多く、演技が光る。堕落の底まで落とし込む二段オチに全てを明らかにしないのも面白い。

13階には部屋がないので実質的には13階に相当する1408号室。数字を足すと13になる。
その他にも、マイクが偶然開いた聖書のページは11,2章。最初の死者が出たのは1912年。スタンダードエディションのランニングタイムは104分8秒。ホテルの住所が2254番地。・・・といった13へのこだわりも一層恐怖心を煽る。

前半に比べると中盤からはちょっとやり過ぎ感がある。エンディングは2パターンあり、全く解釈が異なるものとなっている。

<鑑賞> 2011/2/6
[サイト内タグ検索] ミカエル・ハフストローム監督

ブルーバレンタイン <2010/米> ★★★★

愛が終わる傷み。恋愛を経験し、別れも経験したことがある人ならきっと何かを感じるはず。

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Blue Valentine
2010/112min/アメリカ
監督/共同脚本:デレク・シアンフランセ
出演:ライアン・ゴズリングミシェル・ウィリアムズ
IMDb評価:8.1/10


アカデミー賞 主演女優賞ノミネート作。2011年4月公開予定。過激な性描写を理由に「NC-17」のレイティングを与えられたが、「R」への引き下げを求め、本編を修正することなくレイティングを変更させることに成功している。日本ではどうなのでしょうか。そんなに過激だとは思わなかったけど。

つい自分と重なってしまう瞬間が何度も訪れ、心臓をえぐり取られたような気持ちになった。あまりにも切ない。ここまで男女の恋愛を冷静に見つめた作品はあっただろうか。恋愛を経験し、別れも経験したことがある人ならきっと何かを感じるはず。

<鑑賞> 2011/1/30

(未) Winter's Bone (原題) <2010/米> ★★★☆

オザークの現実。17歳の少女には重すぎる運命。どう抜け出すのか?

winter.jpgWinter's Bone
2010/100min/アメリカ
ドラマ、ミステリー
監督:デブラ・グラニク
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、ケヴィン・ブレズナハン
受賞:サンダンス映画祭 審査員賞/脚本賞受賞
   ゴッサム賞:作品賞受賞 
IMDbでの評価:7.5/10

社会度 ★★★★
陰湿度 ★★★
サスペンス度 ★

オスカー作品賞と主演女優賞ノミネートされているが、残念ながら配給はまだついていない。好きな部類の映画だはあるし、ジェニファー・ローレンスの演技も今後への期待が高まるけれど、そんなに騒ぎってるほどでもないような・・・サスペンスとして観てしまうと山場に欠け、社会派ドラマとしてどこまで読み取れるかどうかがポイントな気がする。

<鑑賞> 2011/1/29

127時間 <2010/米> ★★★★★

127 hours
127hours
2010/94min/アメリカ
アドベンチャー、伝記、ドラマ
監督/脚本/製作:ダニー・ボイル
脚本:サイモン・ビューフォイ
原作:アーロン・ラルストン『アーロン・ラルストン 奇跡の6日間』
撮影:エンリケ・セディアック
音楽:A・R・ラフマーン
出演:ジェームズ・フランコ、トリート・ウィリアムズ、ケイト・マーラ
IMDb評価:8.3/10(Top212)

<あらすじ>
登山家アーロン・ラルストンが体験した実話を監督ダニー・ボイル、ジェームズ・フランコ主演で映画化したサスペンスドラマ。03年、当時27歳だったアーロン(フランコ)は一人でユタの険しい谷へロッククライミングに行くが、誰も通りそうにない谷間で落下し、右手を岩に挟まれてしまう。そこから5日間、身動きの取れなくなったアーロンは必死に脱出をはかるが……。ボイル監督とともに脚本を手がけたのは「スラムドッグ・ミリオネア」のサイモン・ビューホイ。(by 映画.com)

<レビュー>
事実を基にしているので、結末には触れていますが、核心は濁しています。ご自身の判断で読み進めてください。
単独クライマーのアーロンは、経験による自信があり自身の腕前を鼻にかけるような所があった。自転車のハンドルにカメラを設置し自身の解説付きで録画したり、岩に衝突転倒した時ですらカメラに収めている。道中で知り合った女性にも自らガイドをかってでては、クライミングの腕前を披露したりしている。ところが、腕に自信のある彼も人気のないところで転落し、谷底で右腕を岩に挟まれ、身動きが取れなくなってしまう。必死で叫んでも誰の耳にも届かない。
127時間とはその脱出までに要した時間である。アメリカ人であれば誰しもが結末まで知っているらしい話をどう描くか、なぜ彼がそこまで決断したのかに興味があり鑑賞した。

人間とは常に試練があり、その都度どう立ち向かうか自身で決断しなくてはいけない。身動きが取れなくなった彼を観ながら、もし自分だったらどうする?と考えてみた。私だったら自分ではなす術がなく、救出もされず、誰にも告げずに来てしまったことを悔やみながら衰弱死していると思う。ところが、彼の取った行動には驚かされることばかりであった。

もともと何でもビデオや写真に収める癖のあったアーロンは、事故に至った経緯や両親へのお別れの言葉等をカメラに向かって話し始めるのである。死を意識した遺言のようにも受け取れる。人は死を目前にすると、走馬灯のように思い出が蘇るというけど、彼も然り。良き思い出だけではなく、行き先を誰にも告げなかったこと、甘く見くびり軽装で来てしまったこと、最低限の水しか持ってこなかったこと、、、など後悔の念も頭を過る。ところが、
「考えてみたんだけど、この状況を選択したのは自分なんだ。この岩は何千年も前から自分を待っていたんだ。全ての自分の行動がこの状況を導いたんだ。」というアーロン。軽率だった自分を戒めるかのように状況を分析している。一時は焦燥するが、すぐに冷静さを取り戻したアーロンは前半のアーロンとは別人のようである。
私にはなく彼にあったものとは、生きたいというエゴではなく、この戒心があったからこその最後の決断だったのである。人間として素晴らしい人物だと思った。彼は、脱出後の現場を写真に収め、「Thank you」と言い放ったのである。

カメラワークも素晴らしい。右手が挟まれ、動きのない主人公を描くのは退屈になりかねないと思ったけど、3タイプのカメラを駆使した(技術的なことはぜんぜんわからないけど)とのことで、すごい臨場感あふれた映像になっている。残量の少ない水筒の底から映し出す水を欲する彼の口元や舌の映し方や、ソフトのコンタクトレンズの渇きを唾液で湿らすといった細かいシーンも楽しめる。

問題の脱出シーンは、私はほとんど直視できず。観客で病院に運ばれた方もいるとか。スクリーンでは絶対に観れない。撮影もワンカットだそうで、演技も素晴らしかった。

幻聴、幻想の中、自分を見失わないように戦い続けたアーロンを演じたジェームズ・フランコの演技、カメラワーク、脚本、音楽すべてにおいて完璧だと思った。
ポスターの構図は実際の映像とは異なる。命のタイムリミットを示す砂時計のようでもある。

<鑑賞> 韓国語字幕 2011/1/20

(未) Amreeka (原題) <2009/米> ★★★

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Amreeka/شيرين دعيبس‎
2009/96min/アメリカ
コメディー、ドラマ
監督/脚本:Cherien Dabis
出演:Nisreen Faour、Melkar Muallem、ヒアム・アッバスLemon Tree」「シリアの花嫁
受賞:2009年カンヌ映画祭 国際批評家連盟賞
ノミネート:2009年 インディペンデント・スピリット賞 作品賞、脚本賞、主演女優賞
IMDb評価:6.9/10

監督はパレスチナ系アメリカ人。タイトル「Amreeka」とはアラビア語で「アメリカ」のこと。監督自身の経験を基にした、パレスチナからアメリカへの移住奮闘記である。

ムナはイスラエル占領下地区で母親と息子ファディと暮らすシングルマザー。息子にはよりよい教育を受けさせたく私立高校に通わせているが、イスラエル軍の検問所を通って車で送り迎えをしなくてはならない。この地では明るい未来は望めないと思った母モナはずいぶん前にアメリカ永住権(グリーンカード)に応募していた。ほとんど忘れかけていた頃に当選の手紙が届く。母は兄に任せ、アメリカ移住を決意する。

アメリカにさえ行けば全てが報われると思っているムナ。「生活が変わったらからダイエットできると思うわ。」「ディズニーワールドは近いのかしら?絶対に行かなきゃ!」なんて旅行気分。職探しもパレスチナでの銀行員だった職歴も優位に働くと思うのもあまりにも幼稚。税関のボディーチェックをされている際、お菓子の缶の中身を聞かれた息子はわからないと答えてしまい没収されてしまう。そこには全財産が入っていたと後で母に聞かされ、母子は愕然とする。しかしながら、全ては無知で浅はかなムナが招いたことである。
幸い、アメリカに長く住む姉のラグダに間借りするので住居は困らない。散々就職活動した挙句海外での職歴が全く当てにならないことにようやく気付いたモナは、仕方なくハンバーガーショップで働き始める。見栄を張って、姉家族には銀行に就職が決まったと嘘までつき、ハンバーガーショップでも大奮闘する。

モナの奮闘記から始まった本作は徐々にアメリカの実態を浮き彫りにしていく。当時はイラク戦争中。中東出身というだけで脅迫の手紙が来たり、車に落書きされたり、学校で絡まれたりする。アメリカ生活が長い姉夫婦は慣れてしまってる人種差別にもモナは果敢に挑もうとする。無知で無関心なアメリカ社会での不条理にも前向きに立ち向かっていく姿がコメディータッチで元気になれる。
最初は、おそらくポジティブというべきなんだろうけど、“なせばなる”ではなく、“なるようにしかならない”一種の放棄をポジティブに捉えているモナの考え方に全く共感できなかったのに、いつしか不思議と応援してしまうほど愛着が湧いていた。

<鑑賞> 英語字幕 2011/1/16
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ヒアム・アッバス

(未) Graphic Sexual Horror (原題) <2009/米>

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Graphic Sexual Horror
2009/84min/アメリカ=スウェーデン
ドキュメンタリー
監督:Barbara Bell、Anna Lorentzon
脚本:Barbara Bell
出演:Peter Ackworth, Claire Adams and Cyd Black
IMDb評価:6.2/10

SM度 ★★★★★
嫌悪感 ★★★★★

会員数は全世界で35000人を誇るアダルトサイトinex.com。今は閉鎖されているが、97年から2005年まではSMプレイを生中継動画配信をしていたサイトである。本作はそのメイキング映像や関係者のインタビューをおさめたドキュメンタリー。
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まずは服を着たままでリハーサルや打ち合わせを入念に行い、本番に臨む。手足を縛りつけ檻に閉じ込め、水に沈めたり、、、どう表現したらいいのかわからないプレイがテンコ盛り。快楽殺人を実況で観ているような感じで、死者が出たと聞いても全く不思議ではないほどのハードすぎるプレイ。このハードさがマニアにはたまらないんだろうけど、観ていてあまり気分のいいものではない。犯罪に繋がったりはしないのだろうか。
モデルたちは素人の子たちで、明らかに日本人か韓国人の子もいる。お金のためにやる子もいれば、好きでたまらないという子もいる。モデルがきっかけでプレイにハマり、そのままスタッフとして働き出した子もいるほど。趣向は人それぞれだけど、一体何に魅了されたのかは全くわからなかった。
しかし、一番驚いたのはこのサイトの創立者の発言である。横須賀で偶然見た何かのショーで、女性たちを縛るロープテクニックやショットの構図に衝撃を受け、自分がアメリカに持ち込んだのだと。はだける着物の上からロープで縛りつけられた女性たちの写真が映し出され、日本の技術は素晴らしいと絶賛している。あたかも日本がオリジナルな言い方をしていた。知らないだけで日本にもこういうサイトあるんでしょうね。

<鑑賞> 2011/1/17
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