カテゴリー  [ ・ポーランド(PO) ]

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ブリューゲルの動く絵 (原題:The Mill and the Cross) <ポーランド=スウェーデン> ★★★☆

the millブリューゲルの動く絵/The Mill and the Cross
2011/92min/ポーランド=スウェーデン
ドラマ
製作/監督/脚本/撮影/音楽:レフ・マイェフスキ(Lech Majewski)(監督8作目)
出演:ルトガー・ハウアー、マイケル・ヨーク、シャーロット・ランプリング
言語:英語
IMDb評価:7.2/10

第24回(2011)東京国際映画祭の特別招待作品
2011年12月17日より渋谷ユーロスペースにて公開

芸術度 ★★★★★
映像美 ★★★★
哲学度 ★★
宗教度 ★★★
邦題のセンス ★★★

the mill1舞台は16世紀のフランドル地方のアントウェルベン(現在のアントワープ)。村の中心にある岩山の上には巨大な風車が建っている。明け方早く、石臼で穀物が挽かれ、風車が回り始める。一日の始まりを知らせるものであった。農民たちは畑を耕し、女性たちは家事を始める。ある日、赤い服の騎士たちが1人の若い男性を木の上にくくりつけた。カラスが寄って集り、男性の肉を啄ばむのを妻は嘆き見ているだけ。異端者だと言われた男性を助ける者もいない。画家ブリューゲルはそんな村の日常の風景をスケッチし始める…。

ビーテル・ブリューゲルは現在のベルギーにあたるブラバント公国に生まれ、16世紀中頃に活躍した画家である。代表作は「バベルの塔」など。画家ピーテル・ブリューゲルが背景を語りながら自身作品 「The Way to Calvary(十字架への道/十字架を担うキリスト)」を完成させていく過程を描く。ブリューゲルの作品は、細部まで丹念に描きこまれ、歴史的に忠実に再現されていると言われているが、まさに歴史的、宗教的背景が紐解かれている作品になっている。

監督はポーランド人のレフ・マイェフスキ。詩人や舞台監督としても活躍している方である。ジュリアン・シュナーベル監督の「バスキア」の脚本としても有名。
ブリューゲル役は「ブレードランナー」のルトガー・ハウアー、キリストの母マリア役はシャーロット・ランプリングが演じる。

the mill2絵画が動いた!
色彩やタッチ、構図にいたるまで絵画に忠実で、まるで本物の絵画に人々が入り込んでしまったような不思議な錯覚に陥る。この監督の作品は数作品しか観たことがないが、作風はどれも同じ。だが、本作の完成度は驚くほど高い。美術館が大嫌いで、絵画に酔いしれるという趣味が全くない私でも、映像に魅入ってしまった。聞こえる音は生活音ばかりで、台詞はほとんどない。ブリューゲルの独り言のようなつぶやきが若干の補足説明となっている。
しかし、映像があまりにも圧巻で、何を言っていたのか耳にも入ってこないのが正直な感想。同じような絵が続くので、少々眠気を誘う時があるが、絵画に詳しくない人でも楽しめる映像展開になっている。

ブリューゲルの生きていた16世紀の農夫たちの日常生活から始まるが、時代はキリストの受難にまで遡る。キリストは十字架を担いでゴルゴタの丘へ向かい、それを横目に悲しみに暮れる母マリアの姿がある。1週間の様子が描かれ、絵画に描き込まれていく。そして、時代は更に飛び、現代へ。「十字架を担うキリスト」が飾れている現代のウィーン美術館へとカメラは移る。隣に飾られている「バベルの塔」が、美術館のホール全体が映し出される。あたかもタイムトリップをしたかのような感覚。

<鑑賞> 2011/11/2
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(未) Angel <2000/ポーランド> ★★★

angelus.jpg
Angelus/ Angel
2000/110min/ポーランド
コメディー、伝記
監督/脚本/セットデザイン:レフ・マイェフスキ(Lech Majewski)(監督6作品目)
IMDb評価:7.5/10

映像美 ★★★★★
哲学度 ★
シュール度 ★★★

マイェフスキ監督最新作「ブリューゲルの動く絵(The Mill and the Cross)」、12月公開予定


teofil1.jpg現在のポーランド南西部からチェコ北東部(プロイセン王国時代の行政区画も含めればドイツ東部のごく一部も)に属する地域の歴史的名称シレジア初のコメディーとなる。

シレジアの1920-60に実在したコミューンでのオカルト現象を、ある画家たちは絵画に残していた。その中には世界的に有名なTeofil Ociepkaや Erwin Sowkaも含まれる。その絵画にあたかも息を吹き込んだかのように、シレジア地方に住む炭鉱夫の日常生活を叙事詩的に描きながら、主人公のナレーションと共に絵画に秘められた思いを謎解いてゆく。
teofil4.jpg












←↑Teofil Ociepkaや Erwin Sowkaの作品



angelus1.jpg絵画が見事に3D化され、映像はより誘惑的になっている。これでもかと思うほど裸の女性がでてくるのは、そういう絵画が多かったからのようである。絵画のとおり、登場する女性も見事にふくよかである。

部屋の壁には必ず絵がかかっており、絵柄と同じことを再現するといった凝りよう。景色のショットもまるで美術館の絵画のようである。
ハチ除けマスクをずっとし続ける男、太陽を浴びると髪が増えると信じている男、ハワイの女性は皆裸だと信じ、妄想に明け暮れる男、頭を冷やすために窓を開け、そのまま寝てしまい、頭に雪を積もらせる男、逆立ちして本を読む男、、、オカルト現象の再現なだけあって、どこか可笑しい男たちのシュールな行動が延々と続く。ほんの数分で出演者が入れ替わり立ち替わり、しかも台詞がない場合も多い。各ショットは綺麗なのだが、そんなシーンが延々と100分も続くと一体何を意図しているのか全くわからない。不自然に突如現れる天使も一体なんだったんだ?

ポーランドの評論家によると、中央ヨーロッパの魂が描かれているらしい。あいにく字幕ではわからないが、現在のポーランド語とは異なる言語が使われているようで、言葉遊びも楽しめるとか。ヒトラーやスターリンも登場し、歴史的背景を知っているかどうかで理解度はかなり異なると思われる。絵画の予備知識も必要であろう。

ニューヨーク近代美術館等の美術館でも上映されている。
angelus3.jpgangelus5.jpg

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/4

初版:2010/10/5
最新版:2011/11/2

[サイト内タグ検索] 日本未公開 レフ・マイェフスキ監督

(未) Uwiklanie <2011/ポーランド> ★★

uwi.jpg
Uwiklanie
2011/121min/ポーランド
犯罪、ロマンス
監督/脚本:ヤツェク・ブロムスキ(Jacek Bromski)
出演:Piotr Adamczyk、Tomasz Augustynowicz、Matylda Baczynska、クシシュトフ・ピチェンスキ
IMDb評価:7.5/10


制作国を聞いただけで観たくなってしまう国の一つが、ポーランド。
知っている俳優さんも数人でているので飛びついてはみたものの…。
記事は簡単に。





uwi1.jpgある3人の男女は精神的な病を抱えており、同じ医師のもとで合宿しながらセラピー治療を受けていた。トラウマを克服させるためにそれぞれにある役を演じさせ、録画しながら劇を作り上げていっていた。一日を終え、それぞれ部屋へ戻る3人。個人的に付き合うことも許されていないため、次の朝まで顔を合わせることはない。翌朝、集合時間の8時になっても1人が現れず探しに行くと、ダイニングで死んでいた…。

監督は、ポーランドでは中堅のようだが、日本では“EUフィルムデーズ 2009”にて「神さまの小さなお庭で(2007)」(未見)が上映されたのみ。コメディーを得意とする方のようで、シリアスな作品は珍しいとか。

uwi2.jpg日本とは事件解決方法が違うようで、捜査官と刑事が双方で事件解決に臨んでいる。その捜査官と刑事が元恋人で、殺人事件をきっかけに再会を果たしてしまう。どうもお互いに未練を残したまま別れてしまったようで、ネチネチした関係。事件を理由に何度も顔を合わし、やっぱり…。ロマンスのほうに重きをおいているため、謎解きが疎かになってしまっている。捜査官と刑事の職業的構図も見えない。事情聴取も、「誰が犯人だと思うか?」と唐突な聞き方をしているのには驚いた。

過去に起きた殺人事件やら、陰謀やら複雑に絡んでいて、見せ方次第では社会派サスペンスとしてかなり見応えがあったように思う。ロマンスのほうにスポットを当てず、もう少し事件の全貌を丁寧に描く必要がある。なんだかよくわからないまま終わってしまった。歴史を感じさせる重厚感のある建物やおしゃれなカフェ以外、印象に残っていない。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/15


ログアウト (英題:Suicide Room) <2011/ポーランド> ★★★★

room.jpg
Sala samobójców/Suicide Room
2011/110min/ポーランド
ドラマ
監督/脚本:監督・脚本 ヤン・コマサ(Jan Komasa)
出演:ヤコブ・ギエルシュザル、ロマ・ガシオロウスカ、Agata Kulesza、クシシュトフ・ピチェンスキ
IMDb評価:6.6/10


社会度 ★★★★
哲学度 ★★
ゴア度 なし




room1.jpg明るく友好的な性格のドミニクの周りにはいつも友達が絶えない。裕福な家庭に育った彼は両親にオペラやバレエの公演に連れて行かれるが全く興味はない。家庭のことはお手伝いさんがやり、両親はハイソな人たちとのパーティーやらで不在が多く、ドミニクのことを何も知らない。実はゲイであるドミニクは柔道の授業の寝技で思わず射精してしまう。周囲の友人たちにからかわれ、恥ずかしくすぐさま家に帰るが、ネット上ではその話で持ち切りとなってしまった。ネット中傷に耐えられなくなったドミニクは部屋に閉じこもり、不登校になるが親は気付かない。何日も部屋にこもったままのドミニクを心配しているのは家政婦だけ。両親に相談したくても、ろくに家に帰ってこない。警察に連絡し、ドアを開けてもらうと、リストカットをしたドミニクが横たわっていた…。

ポーランド映画というと、監督の高齢化が進み、未だに戦争による翻弄を描いたものが多い気がする。日本と同じでポーランドも戦争を知らない世代が多くなり、忘れ去られようとしているという。もちろん忘れてはいけない歴史を描いてくれる高齢の監督には敬意を示したいが、ようやく現代を生きる新世代が現れた印象。現代のワルシャワを舞台に、ネット社会が子どもに及ぼす影響の怖さを描いている。監督は1981生まれで私と同世代。子どもの時ネットや今のような小型携帯はなく、大学生の頃ようやく普及し始めた。はっきり言って親の目が届かない所で何でもできてしまう。近年、日本でもネット絡みの犯罪やトラブルが多いが、国は違えど同じ問題提起をしている。

room2.jpg両親はダブル不倫で家庭を省みない。お金だけ与えていれば子は立派に育つと思っている。それなのに、社交界には連れて行き、仲の良い家族を装う偽善者。一見幸せそうに見えても、みんな悩みや秘密を抱えているんだよね。
一方ドミニクは、寝ても覚めてもスマホやネットに依存している現代を象徴するような高校生。学校でもPCを広げて、仲間たちと動画サイトを見て楽しんでいる。
両親にゲイであることをカミングアウトをし、歯車が狂い始めてしまった直後の柔道授業での事件。引きこもりを心配してくれるのはお手伝いさんだけであった。幸いこの時の自殺は本気ではなく、未遂に終わっているが、なぜ自殺行為に至ったのかを親は考える必要があることを訴えている。

中傷に傷つき部屋に引きこもるドミニクはネット上でアバターを作成し、ある女性とチャットを始める。そのチャットルーム名“Suicide Room(自殺ルーム)”がタイトルの由来になっている。チャットルーム名も刺激的だが、ネットケーブルだけで繋がっている人間関係の怖さを容赦なく描いている。現実に起こり得る話だからこそリアルで、ゾッとする結末に慄いてしまった。私が知らないだけで、既に邦画でも描かれていそうな題材ではあるが、日本のみならず世界共通の社会問題。希薄になった人間関係、子どもに耳を傾けない大人、話を聞いてくれる人としかコミュニケーションを取らない若者への警告でもある。

room3.jpg
ネット上のアバター2人がキスをしながら水中に沈む幻想的なシーンで日本の歌が使用されている。
Chouchou(シュシュ)という2人組音楽ユニットの曲「sign 0」だそうだ。メロディーだけでなく、漂流している若者たちの思いを代弁しているかのような歌詞も映画の内容とマッチしていて不思議な空間となっていた。

<鑑賞>英語字幕 2011/9/6

「sign 0」の歌詞
例えば今世界が終わり私の名がかき消されたら 探して空を探して風を

夢に見たのは青色の鳥落とした羽かき集めたわ 探して記憶を残して明日を

ああ目を閉じて浮かぶのはあの時見た最後の月 覚えていて夜が明ける前に来て私の名を呼んで

夢に見たのは満開の花甘い香りを閉じ込めたわ 残して声を残して言葉を

ああ甘い夢見ているわもうずっとずっと いつかの月に照らされた光の線に沿って

ああ今夢の続きを見ている




[サイト内タグ検索] クシシュトフ・ピチェンスキ

パサジェルカ <1961/ポーランド> ★★★★

pasazerka.jpg
Pasazerka/Passenger
1963/64min/モノクロ/ポーランド
ドラマ、歴史
監督/脚本:アンジェイ・ムンク
出演:アレクサンドラ・シュロンスカ、アンナ・チェピェレフスカ、ヤン・クレチマル 
受賞:カンヌ映画祭 国際映画批評家連盟賞、栄誉賞
ヴェネツィア映画祭 イタリア批評家賞
言語:ポーランド語、ドイツ語
IMDb評価:7.7/10

社会度 ★★★★
ゴア度 ★★
緊迫度 ★★★
オリジナル度 ★★★★★




pasazerka2.jpg第二次世界大戦中アウシュヴィッツ強制収容所の看守だった女性リーザは、戦後結婚し、船で新婚旅行に向かおうとしていた。すると、船中には、強制収容所にいた囚人マルタによく似た女性を見つける…。

ワルシャワ蜂起にも参加したというアンジェイ・ムンク監督。本作完成前に交通事故で亡くなってしまい、同世代の友人たちが監督の意を継いで仕上げた未完の遺作。回想部分はほぼ取り終え、残っていた船中でのシーンはスチールで補足されている。尻切れトンボとも言えるかもしれないが、逆に暗示的な終わり方になっている。

前にも他の記事で書いたことがあるが、好き嫌いと良し悪しが一致するとは限らない場合がある。ポーランド映画の多くはいい作品が多いが、好きかどうか聞かれると答えに詰まってしまうものも少なくない。本作は間違いなく秀作であるが、また観る勇気はない。

pasazerka1.jpg隠していた自分の過去(アウシュヴィッツ強制収容所の看守だったということ)を夫に独白するという形でストーリーは進んでいく。回想シーンは実際にアウシュヴィッツでロケを敢行している。残酷な迫害も当たり前の光景であるかのようにさらっと描かれるが、主観的ではなく冷徹である。強烈な説得力がある。
支配者リーザと被支配者マルタ。絶対的な関係であるが、リーザはマルタには人間的な対応を心掛けていた。しかし、マルタは常に反抗的であった。結果としてマルタを屈服させようと取った行動が自分を苦しめることになる。彼女との出来事をひとつひとつ思い返し、愛憎や罪の意識などの心理的葛藤や混乱を掘り下げていく。

リーザはマルタに対し人間的な対応をしているつもりではあったが、実際はそうではなかったのだろう。リーザの意識とマルタの受け取り方は全く異なる。やはり人間は正当化するのである。船中で見かけた女性がマルタなのか否かはどうでもいい。題材や映像はかなり重いが、ふとした瞬間で不意に思い返される封印していた記憶や罪の意識を巡る普遍的な人間心理を描いているといえる。

<鑑賞>シネフィル・イマジカの録画にて 2011/6/25
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(未) Joanna <2010/ポーランド> ★★☆

joanna.jpg
Joanna
2010/ポーランド 
ドラマ、戦争
監督/脚本:フェリクス・ファルク(Feliks Falk)
出演:Urszula Grabowska、スタニスワヴァ・チェリンスカ、キンガ・プレイス
受賞:ポーランド・アカデミー賞(イーグル賞)主演女優賞、助演女優賞
言語:ポーランド語、ドイツ語、フランス語
IMDb評価:6.6/10

ゴア度 なし
社会度 ★★★
緊張感 ★




joanna1.jpgナチス占領下のポーランド。ユダヤ人のローザと母親は喫茶店を出ようとするとある男性に話しかけられた。子どもに聞かせたくない話だと思い、ローザには教会で待つよう指示する。喫茶店で働くジョアンナは勤務後、教会へお祈りにやってくると、1人母を待つローザを見つける。喫茶店でローザの母とある男性が話をしていたのを知っており、一緒に母親の行方を探してあげることに…。
joanna2.jpg



母親が見つかるまでローザを引き取ることにしたが、ユダヤ人の子どもを匿っていることを知られるわけにもいかず、孤児院でボランティアの仕事をしていると嘘をつき、親戚から子ども服や人形といったものをかき集める。両親にもほんとのことが言えず、人目を気にし、独特な緊張感が走る。
ジョアンナの夫は戦争に行ったきり安否がわからないままだった。希望を捨てずに待ち続けていたが、やはり誰かの支えを必要としていた。見ず知らずの子どもでも救うことで、自身の存在意義を見出そうとしていたのかもしれない。ローザもまだ小さいのに事情を理解しており、子どもらしい無邪気さがない。かわいそう。

裏切りや密告、拷問シーンもあるが、深くは追究されていない。戦争経験がない若い世代の方が監督かと思いきや、今年70歳の方。全てが想定内に収まっており、なぜ今さらこの程度の内容のものを製作したのか頭をかしげてしまう。想像力に委ね過ぎているところがあり、真実を伝える気迫とか使命感みたいのが伝わってこない。
ポーランド映画や戦争映画をあまり観ない人対象といった作りで、アンジェイ・ワイダが苦手な人には観やすいのかも。それなりに楽しめたが、私の満足度は低い。はっきり言って、「カティンの森」を観た方がいい。

<鑑賞> 英語字幕 2011/7/5
[サイト内タグ検索] 日本未公開

ダークハウス/暗い家 <2009/ポーランド> ★★★

dark house
Dom zly/Dark House
2009/109min/ポーランド
犯罪、ドラマ、スリラー
監督:ボイテク・スマルゾフスキ
出演:アルカデュシ・ヤクビク、マリアン・ジエドジエル、バルトウォミエイ・トパ
受賞:
2009 ポーランド映画祭 監督賞、編集賞
2009 ワルシャワ映画祭 観客賞
IMDb評価:7.4/10


社会度 ★★★★
個性度 ★★★
陰湿度 ★★★★
衝撃度 ★ 



dark house2妻の突然死で傷心のシロドンはアルコールに依存してしまう。そんな生活から抜け出すべく、人里離れた農家を訪れ一夜を過ごすことにした。農夫は密造酒を作っており、あまりのおいしさに密造酒販売での一攫千金を持ちかけるが、その晩に痛ましい事件が起こってしまった。それから4年後、手錠を掛けられたシロドンは廃墟となったその家に連れてこられ、現場検証が始まるが…。

いったいここで何が起こったのか…
社会主義体制末期のポーランドを舞台にした殺人ミステリーだが、本質は上層部の圧力による不正隠ぺい、仲間同士の裏切りといった社会主義における現実を浮かびあがらせていく。

dark house1“1978年の事件発生”と“1982年の現場検証”の2つの時間を交互に並行して描かれる。78年は夜、82年は昼という設定が巧妙。78年は、共産党時代の最後の“暗い時代”であり、夜という設定。82年は、戒厳令下の時代だが、すでに後の民主化運動で主導的な役割を果たす労働組合「連帯」が結成され、国民が民主化運動に向かいつつあった時代でもあり、昼という設定。1963年生まれの監督さんなので、時代の変化を肌で感じていたのでしょう。二つの時代には明らかな境界線があり、普通のサスペンスとは一味異なった緊張感が漂い、陰湿で張り詰め過ぎた空気感には恐怖さえ感じ疲労困憊。



ポーランド映画を観ていてよく思うのが、“好き嫌い”と“良し悪し”は必ずしも一致するわけではないということ。ダークな作品が好きな私でも本作にはかなりの負担を感じ、何回挫折したかわからない。ポーランドの歴史的背景に興味がある人にしか良さは伝わりにくいけど、間違いなく良い映画だとは思う。長い歴史の中で幾度の不幸を乗り越えてきた心情が少しだけ理解できた気がした。

<鑑賞> 英語字幕 2011/4/26
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SFバイオワールド/女帝国の謎 <1983/ポーランド> ★★★★

sexmission.jpg
SFバイオワールド女帝国の謎/Seksmisja/Sex Mission
1983/120min/ポーランド
SF、コメディー
監督:ジュリアス・マチュルスキ (Juliusz Machulski) 
出演:オルジード・ルカセウィッツ殺人に関する短いフィルム」「尋問」「カティンの森」「Geeneral Nil」
イェジ・シュトゥールデカローグ10話」「トリコロール 白の愛
IMDb評価:7.8/10


邦題のセンス なし
ブラック度 ★
コメディ度 ★★★
隠喩度 ★★★
官能度 ★



1991年「不死への道」として冬眠カプセルが発明され、ノーベル賞を受賞した。アルベルトとマックスが被験者として3年間冬眠することになった。しかし、その間に戦争が勃発し、発見され解凍されたのは、53年の時を経た2044年だった。そして、男はバイオ兵器により絶滅し、女だけの国家となっていた…。

sexmission2.jpg1981年の戒厳令施行によりポーランドでは国内で公開・輸出が禁止されていた。1983年7月 戒厳令全面解除されたが、外国での映画製作を余儀なくされた監督も多くいた一方で、娯楽映画が量産されたという。娯楽色が強く、キェシロフスキ監督やワイダ監督好きには支持されにくいかもしれないが、自国産の映画を製作するための苦肉の策だったようにも思える。かなりのおバカ映画だが、社会風刺をユーモラスに描いている。第二次世界大戦後、女性や子供ばかりが残され、長らく男性不在、父親不在だったポーランドの歴史を皮肉っている。

地上は放射線に汚染されていると信じられており、地下国家が築かれていた。人工単為生殖によって子孫繁栄させ、女だけの世界を形成している。男がいないのだから、裸で歩きまわることへの羞恥心も全くなく、プールも全裸で泳ぐといった世界。もちろんセックスの概念もなく、男性性器を見ても何なのか検討もつかない。子供にパパのことを尋ねても、逆に「パパって何?」と問い正されてしまう。そんな世界で解凍されてしまったアルベルトとマックスは法廷での裁判で、去勢か死滅かの決をとられる。去勢されるぐらいなら死んだ方がマシだと考えたのが功を奏す。sexmission1.jpg

原題「Sex Mission」のSexは“性別”という意味と“セックス”の両方の意味をかけていて、オチもよくできている。 日本ではホラーに分類されているようだが、「トリコロール 白の愛」で性的不能だったイェジ・シュトゥールの魅力全開のコメディーである。女性が観ても不快感はなく、邦題でかなり損をしている傑作。
日本版VHSは90分だが、私が観たのはロシア版120分。テレビでも放送されたことがある。

<鑑賞> 英語字幕 2011/4/20


THE レジェンド -伝説の勇者- <2003/ポーランド> ★★

regend.jpg
Stara basn. Kiedy slonce bylo bogiem
戦争、アクション、ファンタジー
2003/103min
製作/監督/脚本:イェジー・ホフマン
製作:イェジー・R・ミハルク
原作:ヨーゼフ・イグナツィ・クラシェフスキ
脚本:ヨーゼフ・ヘン
撮影:パーヴェル・レーベシェフ
出演:ミハウ・ジェブロフスキー、マリーナ・アレクサンドロワ、マウゴジャータ・フォレムニャック、ダニエル・オルブリフスキー、ボグダン・ステュープカ
IMDb評価:5.3/10

ポーランドを代表する監督さんということで鑑賞。かなりマイナー作品かと思いきや、日本発売しているとのことで、日本にはファンが多いということだろうか。



regend1.jpgポーランドは10世紀まで地方ごとにいくつかの西スラヴ人の公国によって分割支配されていた。10世紀後半にピャスト家がポラニェ族をまとめ、周辺諸部族を統一して、今日のポーランドの基盤を作り上げている。10世紀のポーランド建国において、その中心となったのがポラニェ族の豪族ピャスト家の一族だった。この一族によって開かれたポーランド最初の王朝をピャスト王朝という。権力を築きあげたのはピャストの息子シェモヴィトや、その子レシェクたちであり、世代を重ねるごとにその権力は大きくなり、レシェクの孫のミェシュコがポーランド統一を完成させていった。本作はピャストの息子シェモヴィトが、悪い国王ポピエルを倒すまでを描いている。

legend2.jpg
前王の死後、その息子二人が幼かったため、彼らが成長するまで弟のポピエルが継ぐことになる。しかし、元奴隷の妻にそそのかされ、彼女との間に作った息子を王位に即けようと悪だくみを始める。ポピエルの蛮行に気付いたピアストンは彼の元を去ったが、王からの追っ手に森の中で襲撃され、ヴァイキングのお守りを身につけていた狩人シェモヴィト(ミハウ・ジェブロフスキー)に助けられた。土地の有力者ヴィーシュの娘に恋したシェモヴィトは、彼女のために戦いに参加していくことになる…。


キリスト教が布教される前で、部族はそれぞれの神を信仰していた。部族ごとに違う習性やお祭りがあったり、魔女のおばあさんの媚薬や巫女さんの登場は雰囲気があってよかったが、演出が古く、私の趣旨には合わず。どこの国にもある部族争いなので、時代背景を知らなくてそれなりに楽しめるが、知ってると知らないとでは理解度に差は出るでしょうね。私は完全に知識不足。前半は面白く観れたが、段々出演者が増えるにつれ誰と誰が味方なのかごちゃごちゃになってしまった。名前も耳馴染みがなく、覚えきれない。

<鑑賞> 英語字幕 2011/4/14
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菖蒲 <2009/ポーランド> ★★★★

tatarak.jpg
菖蒲/Sweet Rush/Tatarak
2009/85min/ポーランド
ドラマ
監督:アンジェイ・ワイダ「カティンの森」「大理石の男
原作:イワシュキェーヴィッチ同名短篇小説
出演:クリスティナ・ヤンダ尋問」「デカローグ第2話」「大理石の男」、Pawel Szajda、Roma Gasiorowska
受賞:第59回ベルリン国際映画祭 アルフレード・バウアー賞
IMDb評価:6.6/10

映像美 ★★★★
哲学度 ★★★
衝撃度 ★
社会度 ★

カティンの森」に続くワイダ監督最新作


*****第59回 ベルリン国際映画祭受賞作*****  
金熊賞: 「悲しみのミルク」 - クラウディア・ローサ監督
銀熊賞:
審査員グランプリ:「Gigante」 - アドリアン・ビニエツ監督、「Alle Anderen」 - マレン・エイド監督
監督賞: アスガー・ファルハディ - 「彼女が消えた浜辺」
女優賞: ビルギット・ミニヒマイアー - 「Alle Anderen
男優賞: ソティギ・クヤテ - 「London River」
脚本賞: アレサンドロ・キャモン、オーレン・ムーヴァーマン - 「The Messenger」
芸術貢献賞: 「Katalin Varga
アルフレード・バウアー賞:「菖蒲(本作)」 - アンジェイ・ワイダ監督、「Gigante」 - アドリアン・ビニエツ監督
***************************

tatarak2.jpg小さな町医者夫人マルタは不治の病に侵されているが、本人は告知を受けていない。ワルシャワ蜂起で亡くした息子を未だ思い続けるある日、生きていれば同じ世代の青年ボグシに出会う。次第に魅了され、川辺で逢引きをするが…。

本作は、原作小説の映画化「菖蒲」と監督自身も登場するそのメイキングシーン、そして女優クリスティナ・ヤンダの私生活のモノローグ(独白)の多重構成となっており、一見チグハグに思えるが見事に調和している。一番面白かったのは川辺でのメイキングシーンだったが、心に響いたのはモノローグだった。

女優クリスティナ・ヤンダの夫で撮影カメラマンのエドワード・クロシンスキーはワイダ監督とも馴染みが深い。ワイダ監督「約束の土地 Ziemia obiecana(1974)」、トリアー監督「Europa(1991)」、 キェシロフスキ監督「トリコロール 白の愛(1994)」、ロルフ・シューベル監督「暗い日曜日(1999)」などの撮影を担当した。2008年に病気で亡くなり、本作の撮影が延期になったという記事を以前どこかで読んだが、死をテーマとした本作でぜひとも夫のことを語りたいというヤンダの願いから、モノローグ部分を追加したという。台詞は彼女自身が書き上げ、部屋の中で延々と闘病生活から死まで語られる。英語字幕をひたすら目で追うのは正直つらかったが、3つの死の中で一番説得力があった。

tatarak1.jpgワルシャワ蜂起で亡くした息子。不治の病に侵されている夫人。そしてヤンダの夫。生きるということと表裏一体である死の影を漂わせながら、静かに綴られていく。“映画”部分は暖色を主体とした色調で悲壮感はなく、菖蒲が咲く川辺でゆらゆらと揺らぐ水面の映像が印象的。トキメイテいる時の女はほんとに美しい。写真の2人から死の文字は見えてこない。

一方、“モノローグ”部分はベッドと椅子しか置いていない殺風景な部屋でモノトーン。ポスターでも使われている。窓から差し込む光からは温かみを感じるが、現実をガツンと付きつけられたような衝撃を受けた。

tatarak3.jpgカティンの森」のようなタブー視された戦争ものの後に、本作のような文芸作品を撮るにはどう気持ちを入れ替えているのか。映画「菖蒲」をどんな心境で作ったのだろうか、という点にも興味があった。クリスティナ・ヤンダ主演でただの文芸作品に終わるわけがないが、彼女のモノローグがなかったら凡作で終わっていたように感じる。
現在85歳のワイダ監督。ワイダ監督作品はまだ数本しか観ていないが、本作は全く違う印象を受けた。かつてのような社会に刃向かう力強さはなくなり、勢いが衰え、丸くなったというか、監督自身役目を終え、穏やかに死を見つめ始めているのではないか。そんな心の内を覗いてしまったような気持ちにさえなった。
EUフィルムデイズで上映され、配給はまだついてないようだ。

<鑑賞>英語字幕 2011/4/11

カティンの森 <2007/ポーランド> ★★★★

katyn.jpgKatyn
2007/122min/ポーランド
ドラマ、歴史、戦争
監督/脚本:アンジェイ・ワイダ
原作:アンジェイ・ムラルチク
脚本:ヴワディスワフ・パシコフスキ / プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
撮影:パヴェル・エデルマン
音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ キャスト
出演:マヤ・オスタシャースカ、アルトゥール・ジミエウスキー、マヤ・コモロフスカ、ヴワディスワフ・コヴァルスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヌタ・ステンカ、 オルジード・ルカセウィッツ
IMDb評価:7.1/10

2008アカデミー賞外国語映画賞の最終ノミネート作品
2008ドイツのベルリン国際映画祭にて特別上映
2008サンクトペテルブルグ国際映画祭にてクロージング上映

残酷度 ★★★★★
社会度 ★★★★★
 
急に観直してみたいという感情に掻き立てられた4月10日は偶然にも飛行機事故の1周忌であった。記事はこちら
ちょうど一年前の2010年4月10日、ポーランドの大統領専用機が墜落した事件で、レフ・カチンスキー大統領(当時)を含めて、搭乗していた96名全員が死亡した。当時、ポーランド代表団は、スモレンスク州で行われていた「カティンの森」事件追悼行事に参加する予定だった。この飛行機事故はまだ記憶に新しいが、さすがに日にちまでは覚えていなかった。偶然とはいえ、背筋がぞっとした。

katyn2.jpg1939年9月、ポーランドは西からドイツ、東からソ連に侵攻され、両国によって分割されてしまう。ソ連によって占領された東部へ、夫のアンジェイ大尉を捜しに妻のアンナと娘がやって来た。アンナは捕虜になっていた夫に再会するも、目の前で収容所へと移送されていく。やがて独ソ戦が始まり、1943年、ドイツは占領したカティンの森で虐殺されたポーランド将校たちの遺体を発見する。しかし、アンナは夫の死を信じられない。@goo映画

「カティンの森事件」とは、第二次世界大戦中にソ連のグニェズドヴォ近郊の森でポーランド軍将校、国境警備隊員、警官、一般官吏、聖職者がソ連の内務人民委員部によって銃殺された事件。1943年4月、不可侵条約を破ってソ連領に侵攻したドイツ軍が、元ソ連領のカティンの森の近くで、一万数千人のポーランド将校の死体を発見した。ドイツは、これを1940年のソ連軍の犯行であることを大々的に報じた。
その後ドイツが敗北し、大戦が終結した1945年以後、ポーランドはソ連の衛星国として復興の道を歩み始めた。そしてソ連はカティンの森事件をドイツ軍の仕業であると反論し、事件の真相に触れることはタブーとなった。苦難を乗り越え、大戦から生き残った軍人や国民、カティンで親族を失った遺族らには厳しい現実が待ち受けていたのである。@Wikipedia

katyn3.jpgドイツ軍に追われた人々と、ソ連軍に追われた人々がポーランド東部のブク川で鉢合わせになる冒頭シーンから尋常でない緊張感が漂う。ソ連へ連行される直前の夫アンジェイをようやく見つけ出した妻アンナは逃亡を持ちかけるが、軍への忠誠を誓ったアンジェイは後ろ髪を引かれる思いで列車に乗ってしまった。目の前で収容所へと移送されていく夫を見送る妻の姿は凛としていた。

ワイダ監督の父がこの事件の犠牲となっており、本作の大尉の妻アンナには、夫を待ちながら49歳で亡くなった自身の母親の姿が投影されているという。国が分断されると同時に引き裂かれた家族の思い。軍への忠誠を誓う男たちも辛い立場であるが、待ち続け、残される女たちも辛い。新聞の死亡者リストに夫の名がないことを確認しても、生きている保証もないが、死んだという確証もない。絶望の淵に立たされながらもドイツ軍に屈服せず凛とする妻たちには心打たれる。
生き残ってしまったことに苛まされ、自ら命を絶つ大尉の親友。ソ連軍によって白い部分を破り捨てられ、赤軍旗にされてしまった紅白2色のポーランド国旗。誰も抵抗せずにただ見ているだけの人々。戦争が終わった後も抑圧され続け、惑い、抵抗し、妥協し、そして苦悩は続くのである。

katyn1.jpgカチンの森で発見されたポーランド軍将校の遺体は4,243体。その多くは職業軍人ではなく、徴兵に応じた弁護士や高校教師、操縦士、技術者たちだった。ポーランド社会の中核をなす知識人層であり、復興を担うであろう人材ばかりだったことがわかる。戦後、家族のもとに帰ってきた兵士は、ポーランド軍将兵全体のわずか10%に過ぎず、ソ連の収容所から消えたポーランド軍将兵は、およそ25万人に上るという。社会的弱者の女性や子供ばかりが残され、戦後長らくソ連に依存せざるを得なかったポーランドの歴史を物語っている。

ワイダ監督作品には祖国への思いが溢れ、ほんとに勇気のある監督さんだとは思う。しかし、自身も犠牲者であり、人一倍強い思いを持っているがゆえにより一層残酷になってしまった感は否めない。ソ連軍による射撃シーンは直視できないほど残酷だが、同じ人間でありながらあそこまで感情を一切出さず、流れ作業的に撃ち殺せるものだろうか。非ポーランド人として客観的に観ると、ソ連軍の描き方があまりにもステレオタイプ過ぎる。ロシア人監督にも同テーマの作品を撮って欲しいと思うが…。

<鑑賞> 英語字幕 2011/4/10

エッセンシャル・キリング <2010/ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー> ★★★★★

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エッセンシャル・キリング/Essential Killing
2010/83min/ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー 
スリラー、戦争
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:ヴィンセント・ギャロ
言語:(資料上)英語、ポーランド語、アラビア語
受賞:
ヴェネチア映画祭審査員特別賞/主演男優賞受賞他
ポーランド・アカデミー賞/作品賞・監督賞・編集賞・音楽賞
IMDb評価:6.6/10

芸術度 ★★★★★
哲学度 ★★★★★
残虐度 ★★
宗教度 高いと思われる



***第67回ヴェネツィア国際映画祭***
金獅子賞: 「SOMEWHERE」- ソフィア・コッポラ
銀獅子賞(監督賞): アレックス・デ・ラ・イグレシア - 「Balada triste de trompeta」
ヴォルピ杯(男優賞): ヴィンセント・ギャロ - 「エッセンシャル・キリング
ヴォルピ杯(女優賞): アリアン・ラベド - 「Attenberg
審査員特別賞: 「エッセンシャル・キリング」 - イエジー・スコリモフスキ
マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞): ミラ・クニス - 「ブラック・スワン
金オゼッラ賞(脚本賞): アレックス・デ・ラ・イグレシア - 「Balada triste de trompeta」
金オゼッラ賞(撮影賞): ミハイル・クリチマン - 「Овсянки」
*********************

<あらすじ>
アフガニスタン駐留の米軍に捕えられたモハメドは、ヨーロッパの秘密の拘置所に送致される。しかし乗っていた車が衝突し、自由の身となったモハメドは、雪に覆われた森に逃亡する。そこは彼が知る砂漠の故郷とはかけ離れた世界だった。公式には存在していない軍に容赦なく追跡されるモハメドは、生き残るために殺すことを迫られる。 @ TIFF

<レビュー>
killing1.jpgとんでもないもの観てしまった。(いい意味で)
無駄な台詞を排除して、必要な台詞だけに絞った作品は数多くあるけれど、本作の主人公には台詞らしい言葉が一切なく、聞こえてくるアメリカ兵や地域住人の台詞にはストーリーを理解する上で重要となる台詞はない。その結果として、ポーランド語(資料にはポーランド語と記載されているが、ロシア語に聞こえる)とアラビア語の台詞に字幕はついていない。まともな台詞がないかわりに、とことん追究した映像には台詞以上にパワフルな説得力とギャロの存在感があり、釘付けになる。


killing2.jpgテロリストとして米軍に捕えられ送致されるという設定だが、そもそも彼は本当にテロリストなのか否か、判断に値するだけの情報は与えられない。そもそもイスラム原理主義やらテロリストへの批判や是非を問うものでもない。車の衝突のおかげで逃亡するチャンスを得たものの、一体今どこの国にいるのか(地域住人の話す言語から推測はできるが)もわからない。どの国出身で、どこへ向かって逃げているのかもわからない。しかし、一つだけ確かなことがある。生き延びるということ。逃亡者として生き延びるためにはやむを得ない殺人もある。

それが、本作のテーマであり、タイトルとなっている「エッセンシャル・キリング(不可欠な殺人)」である。

息をのむほど美しい自然の中での不可欠な行為の中にはサバイバル生活も含まれる。飢えを凌ぐために、赤ちゃんにお乳をあげるママのおっぱいにしゃぶりつくシーンには絶句。雪景色や白馬の白に映える赤。不可欠な殺人の被害者から滴り落ちる鮮血ですら美を感じてしまうのは罪だろうか。

人は何のために生きるのか。なぜ人を殺してまで生きようとするのか。
画面いっぱいに広がる美しい自然を前に、人間の根本的な問いかけにいい答えが見つからない。逃亡生活における彼の行為は弱肉強食を生き抜く動物に見えなくもない。ともすれば彼の一連の行為は動物の本能か。そして、答えが出ぬまま向かえるラスト。この結末にしばらく動けなかった。モハメドという名からイスラム教信者であろうが、イエスキリストのような容姿も何か意図しているのかもれない。殺人は不可欠であったにしても、やはり罪ということだろうか。いつまでも残るこの余韻は観てはいけなかったような気分にさえなる。

<鑑賞> アメリカ版 英語以外も字幕なし 2011/3/7

夜の第三部分 <1971/ポーランド> ★★★

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Trzecia czesc nocy
1971/105min/ポーランド
監督:アンジェイ・ズラウスキ「ポゼッション」「悪魔」「私生活のない女」「狂気の愛」「私の夜はあなたの昼より美しい」
脚本:ミロスラフ・ズラウスキ 、アンジェイ・ズラウスキ
出演:マウゴジャータ・ブラウネック、レシェック・テレシンスキ、ヤン・ノビツキ
IMDb評価:7.3/10

難解度 ★★★
隠喩度 ★★★★★
残酷度 ★★
衝撃度 ★★★
狂気度 ★★★

あまりのイカレっぷりに度肝抜かされた「ポゼッション」のアンジェイ・ズラウスキの処女作を鑑賞。作家であり脚本家であった父ミロスラフの自伝的な小説を父子で共同脚色。師匠のアンジェイ・ワイダが監修している。2作目「悪魔」で公開禁止、国外追放された監督だが、処女作からかなりきわどい。感動的であるはずの出産シーンもグロテスク。
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妻子を殺され、自身もゲシュタポに追われる主人公。偶然同じコートを着ていた男性が身代わりとなり射殺されてしまうが、奥さんが妻と瓜二つであった。身代わりになってしまったことへの罪悪感からか、シラミ培養の人体実験で生活費を稼ぐ。。。
第二次大戦下のポーランドを舞台に、1人の男が辿る数奇な運命を通して、故国が置かれてきた不条理な現実に迫った本作。強烈な印象に残ったのがシラミである。当時、シラミを媒体として流行していったチフス。アンネ・フランクの死因でもあった。片面がメッシュのマッチ箱サイズのケースには無数のシラミが入っており、太ももやふくらはぎにゴムでくくりつけ自分の血を吸わせる。そうやって培養させたシラミを抗チフス剤開発に役立てていたのである。
シラミとは、一生人間に寄生し、環境にあわせて生態をも変えるとか。恐ろしい。人間を翻弄している不条理なポーランド社会への皮肉であり、隠喩であることは明らかである。

ふたりのベロニカ」「ポゼッション」そして本作。1人二役のポーランド映画である。ドッペルゲンガーと解釈する方が多いようですが、私は違うような気がする。でも何を意図していうのかまだわからない。時間をかけて紐解いていきたい。

<鑑賞> 英語字幕 2010/12/11
[サイト内タグ検索] アンジェイ・ズラウスキ監督

大理石の男 <1977/ポーランド> ★★★

dairiseki.jpg
Czlowiek z marmuru/ Mans of Marble/ L'homme de Marbre
1977/165min/ポーランド
監督:アンジェイ・ワイダ
出演:イエジ・ラジヴィオヴィッチ、クリスティナ・ヤンダ尋問」「デカローグ第2話
受賞:カンヌ映画祭 国際批評家賞
IMDb評価:8.0/10

難解度 ★★★
隠喩度 ★★★★★
社会度 ★★★★

<あらすじ>
映画学校の生徒アグニェシカは、1950年代の労働英雄の姿をテーマに卒業映画を作ろうとしていた。そんな中、博物館の倉庫でかつての労働英雄ビルクートの彫像を発見し、ビルクートの当時の状況やその後を知ろうと関係者への聞き込みを行うことで物語が展開する。

<レビュー>
クリスティナ・ヤンダのデビュー作。回想シーンが多いので出番は多くはないが、デビュー作にしてすごい演技力、存在感を放つ。

社会主義の理想そのもののはずだったビルクート。彼のドキュメンタリー映画を作ろうとしてたアグニェシカは当時の彼を知る者へ聞き込みを開始する。英雄としてもてはやされる一方で妬む人も多くおり、押し潰されていく悲劇が関係者への聞き込みで明らかになっていく。しかし大学や政府は過去が明らかになることを恐れ、撮影中止、機材の貸し出し禁止の処分を下す。
映像は50年代当時のフィルムと現在のフィルムが交互に流される。当時のポーランドの大統領とスターリンの写真が並んでいる映像もある。

理想ともてはやされ、理想に潰されたビルクート。監督の真意は、背景となるスターリニズム全盛時代への批判であって、一体国の掲げる理想とは何なのか?を皮肉たっぷりに綴っている。「連帯」結成前の作品であるにも関わらず、エンディングシーンの舞台がレーニンのグダニスク造船所前というのも意味ありげである。

それにしても3時間とは長い!何回途中挫折したことか。歴史の裏の事実を描いたのであろう本作は自分の勉強不足を再認識させられるだけだった。国際的評価は驚くほど高い。学生時代、歴史を勉強しなかったことが悔やまれる。もう少し歴史に興味が出てきたら観直してみよう。

政府の厳しい検閲でエンディングの削除を余儀なくされた本作。削除分はわざわざ続編「鉄の男」に収録させたとか。おそらく削除分が一番見応えがあるのでしょう。

<鑑賞> 英語字幕  2010/11/31

【短編】Factory <1971/ポーランド> ★★★

Fabryka
1971/17min/モノクロ/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
IMDb評価:5.9/10

工場にフォークリフトを導入するかどうかを検討する会議から始まる。工場の一室で行われているが、参加者は皆作業着ではなくスーツを着ている。後半になってやっと対顧客とのプロジェクト会議であったことがわかる。
どうやらここの製品が納期遅延しているらしく、延滞金も要求されている。輸送方法の変更も謀るつもりのようであった。

ポイントは全員がスーツ着用だということ。工場関係者が誰1人会議に参加していないことを意味している。工場労働者には意見を述べることも許されていないし、労働者へのシワ寄せもどうでもいいのでしょう。
現場を知らない官僚たちのみで決定づけられる表面的で絶対的な構造はポーランド社会への皮肉でもあることが観て取れる。
前職でこういう会議ばかりしていたので自分の仕事を覗いているようでもあった。退屈な作品だったけど、客観視できただけでも観る価値はあったかな。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/16
[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

デカローグ第10話+まとめ <1989/ポーランド>★★★

Dekalog, dziesiec
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:イェジ・シュトゥール、ズビグニェフ・ザマホフスキ
IMDb評価:8.4/10、9.2/10(全体)

第8話でうれしそうにゾフィアに切手を見せに来た老人の葬儀から話は始まる。葬儀で2年ぶりに顔を合わせた息子2人は遺品整理のために父のアパートを訪ねる。殺風景で質素なのに、防犯装置に厳重な金庫を完備した不釣り合いな部屋で、金庫を開けると大量の切手コレクションしか入っていなかった。父親が一生をかけて収集したものだが、興味のない者にとってはただの紙切れに過ぎず、兄弟は処分しようと考える。しかし、「この一枚でフィエットが買える、この一枚では家が買える。」とある収集家に言われ、兄弟2人の目の色は変わる。
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普通の話なら、全て売りさばいて豪遊するだろうが、本作がそんな単純な話であるはずがない。兄弟は、切手の魅力にとりつかれ、子どもの頃冷やかな目で見ていた父親と同じ道を踏み出してしまうのだ。コレクションの価値を更に高めようと不足分を買い足し、ドーベルマンを飼い防犯も強化する。更に驚くべきとんでもない手段で連作を入手する。

息子2人が収集を受け継ぐことは死んだ親にとっては喜ばしいことだろうが、収集ばかりにうつつを抜かし家族を省みなかった姿まで受け継いでしまった。妻子はほったらかしで没頭してしまうのだ。妻子には愛想つかされ、さらに、ある出来事をきっかけに兄弟関係にも亀裂が入り始める。物に執着したがために希薄していく人間関係をコミカルに描いている。この10話のみが喜劇となっている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15

<まとめ> ネタバレなしです。
7話は編集でカットされてしまったが、10話以外の全話に登場する人物がいる。
第1話では焚き木をするホームレス、第2話では病院の従業員、第3話ではタクシードライバー、第4話ではボートを運ぶ青年、第5話では建築現場で働く青年、第6話では買い物バックを運ぶ青年、第7では話駅員、第8話では講義を傍聴する学生、第9話では自転車に乗る青年。台詞はなく、重要な場面で登場人物とすれ違うだけだが、神のような存在感を残している。またミルクもよく使われ、印象深い。
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「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。」これもキェシロフスキ監督が残した言葉である。登場人物たちは、運命に翻弄される人間の孤独と苦悩の中で厳しい試練を与えられている。

不倫、盗み、殺人、ウソ。罪を犯す人物像はもともとは旧約聖書で描かれていた人々だ。誰もが本当はわかっているはずなのに、気付かなかったり忘れていたことを改めて気付かせてくれる。本作はそんな作品だった。個人を冷徹に描き、誰も責めない。補足的なナレーションもなく、観る側の想像に委ねられる描き方は、性別や年齢、境遇によって解釈や感じ方が異なるでしょう。

スタンリー・キューブリックは生前、「この20年間で一番素晴らしい映画」だと絶賛していた。きっとこれからも残る名作となるでしょう。



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デカローグ第9話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, dziewiec
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.2/10、9.2/10(全体)

9条「隣人の妻を欲してはならない。」をテーマにした第9話「ある孤独に関する物語」について。

「何人と性交渉を持ったか?」「8~15人」
「奥さんは魅力的か?」「うん。とても」
「それなら別れなさい」

医師に性的不能を告知されるシーンからスタートする。家に戻りベッドの中で夫は妻に、「愛人を作ってもいい」とさえ言う。「下半身だけが愛じゃない」という妻におそらく安心しただろうが、実はすでに若い男と不倫関係にあったのだ。何となく匂いを嗅ぎつけた夫は、電話に盗聴器をつけ証拠をつかもうとする。
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不倫の事実を知り絶望の淵に立たされた夫は離婚を決意するが、妻は愛人と別れ、夫とやり直したいと言う。愛人とは性欲を満たすためだけの関係だったのだ。愛人に別れを告げるが、彼にはその気はない。気晴らしのために1人で行ったスキーにも愛人はついて行ってしまった。それを夫は勘違いをし、夫婦の運命は思いもよらぬ方向へと進んでしまう。夫は妻の不倫を責めることなく、孤独の殻に閉じこもってしまうのだ。一度狂ってしまった歯車はどうなってしまうのか?
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車の助手席前のグローブボックスが閉めても閉めても開いてしまうのだ。中には愛人が残したノートが入っていた。別れたくても別れられない愛人との関係を暗示してたのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/14
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デカローグ第8話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, osiem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:7.9/10、9.2/10(全体)

8条「隣人に関して偽証してはならない。」をテーマにした第8話「ある過去に関する物語」について。

教授ゾフィアはワルシャワの大学で倫理学を教えている。講義を聴講したいとうアメリカから来た女性研究者を学部長から紹介される。研究者エルジュビエタはゾフィアの全著作の翻訳者であり、かつてゾフィアがアメリカを訪ねた際、案内をしてくれた人だった。
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この日の講義は、「デカローグ第2話」をテーマとした内容だった。自身の都合で子どもを産むべきか、おろすべきかを医者の判断に委ねるという話だ。「子どもの命が大切だ」という教授の言葉にエルジュビエタが口を開き、第二次世界大戦中のユダヤ人のある少女の話を始めた。ナチス時代のワルシャワで、命を守るためにその少女はある家庭にかくまわれ、カトリック洗礼の受けた。その家庭の夫婦が名付け親になることを一旦は承諾したが、結局は拒み、外出禁止の時間帯に少女は外へ出されてしまった。そしてナチス軍に捕まり収容所へ送られたという。

教授ゾフィアはすぐさま自分のことだとわかった。少女を外へ放り出した張本人だったのだ。そして、あの時の少女が研究者のエルジュビエタのことだったのだ。収容所は死を意味するのに、生きていたのだ。

実はこの出来事は誤解が招いてしまったことだったのだ。全ての事情を話しエルジュビエタの赦しは得られたが、未だ過去から立ち直れず、赦してくれない者もいる。ゾフィアとエルジュビエタが仲良さそうに歩いている姿を見て、気に入らない顔もしているのだ。誤解であったとはいえ、罪を赦すことは難しい。しかしながら、倫理学を教えていても、矛盾した行動を取らざるを得ないこともある。人間の弱さなのか、境遇なのか、はたまた偶然なのか。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15
[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

デカローグ第7話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, siedem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.0/10、9.2/10(全体)

7条「盗んではならない。」をテーマとした第7話「ある告白に関する物語」について。

マイカは16歳で娘アンカを出産するが、母親エヴァは自分の子として戸籍に入れてしまう。実父というのはマイカの国語教師で、その高校の校長は母親だったのである。母親は孫を自分の籍に入れ、その教師を辞めさせることで、この不祥事をねじ伏せ、体裁を保ったのだ。

「アンカは私の娘。マイカはあなたの娘」と夫に言う母親。校長としての地位もある彼女は、自分の思い通りにならないマイカに落胆すると同時に、孫アンカを自分の設計通りに育てようとしていた。この6年間、マイカは我が子に一度もママと呼ばれず娘と母親の関係を羨み、ついに自分が本当の母であると告白することにする。劇だか何かの練習中に忍び込んで娘アンカを連れ出してし、実父の元に向かったのだった。

実父はアンカを見るやいなや、すぐ自分の娘であることに気がついた。マイカはカナダへ行く予定だったから3人で暮らすつもりはなかったのだろう。わざわざ実父に合わせた理由はよくわからなかった。逆探知されないよう、マイカは公衆電話から家へ電話をかける。誘拐犯がマイカであることに動揺する母親に対し、父親は娘はマイカに返すべきだという。
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育ての親と産みの親という2人の親。大人の都合で起こした行動が後先、子どもにどう影響するのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/10

↓以下、ネタバレします。
[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

デカローグ第6話 および 愛に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★★

ドラマDekalog, szesc/映画 Krótki film o milosci
1989/58min,86min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:グラジナ・シャポウォフスカ
IMDB評価:8.5/10(ドラマ)、8.3/10(映画)9.2/10(全体)

6条「姦淫してはならない。」をテーマとした第6話「ある愛に関する物語」および映画「愛に関する短いフィルム」について。

孤児院で育ち、友人の母親と住むトメクは郵便局に勤めている。夜8時半に目覚ましをかけ、電気を消した部屋にこもる。向かいの棟に住み、8時半に帰宅する女性マグダを望遠鏡で覗き見するためだ。覗き見行為は1年にも及んでいるという。下着姿、牛乳をこぼしたこと、泣いていたこと、彼氏との営み、彼氏との喧嘩。部屋でのできごと全てを知っているのだ。初めは自慰行為の対象としてとして覗いていたが、彼氏との抱擁に嫉妬してしまうほどマグダへ気持ちは膨らんでいく。そして、会いたいという気持ちから偽造の入金書を作成し、自分が働いている郵便局に足を向かせるように仕向けるのだ。しかし、不審に思った郵便局はマグダを詐欺師扱いをしてしまう。そして、怒って郵便局を後にしたマグダを追いかけ、トメクは自分がやったと自白するのだ。そして、牛乳配達のバイトを始めて、彼女の家へ配達することを日課にする。
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毎朝の配達で顔を合わせ、とうとうデートに誘うことに成功したトメクは、覗き見をしていること、下着姿を見てかつて自慰行為をしていたこと、全てありのままに話してしまう。女性経験のない無垢なトメクはマグダにとって新鮮だったのか、怒るどころか、彼を部屋に招き入れてしまう。そして、お風呂上がりのマグダは彼に太ももを触らせる。そして、トメクは服を着たまま、、、あまりの恥ずかしさにトメクは家を飛び出すのであった。
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この映画は10代の頃に一度観たのだが、トメクがなぜ走って去って行ったのかがわからなかった。年齢を重ねてようやく理解できることも増えてくるが、こういった男性の行為もその一つだ。誰にでもある失敗なのかよくわからないし、どれだけ恥ずかしいことなのかもわからないが、ここまで赤裸々に掘り下げた作品には出会ったことがない。

映画版とドラマ版では結末が異なる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9

↓以下ネタバレします。


[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

デカローグ第5話 および 殺人に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★

ドラマDekalog, piec/映画 Krótki film o zabijaniu
1989/56min,84min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:オルジード・ルカセウィッツ
IMDB評価:8.4/10(ドラマ)、8.2/10(映画)、9.2/10(全体)

5条「殺してはならない。」をテーマとした第5話「ある殺人に関する物語」および映画「殺人に関する短いフィルム」について。

核心にまで触れています。
ゴキブリ、ネズミの死骸、猫の首吊り、人間の首だけの飾り物。はやくも冒頭から死にまつわる描写。首吊りをしている猫はネズミを殺した猫なのだろうか。これから起こることをはやくも暗示しているのだ。
dekalog51.jpg
当てもなく街を彷徨う青年ヤツェック。やっと弁護士になれた青年ピョートル。団地に住む中年のタクシー運転手。共通点のない3人が犯行当日に街の中で偶然にも出会ってしまったのだ。ヤツェックが殺人の準備をしていたカフェに、ピョートルは恋人といた。晴れて弁護士になれたことを喜んでいたのだ。その後、偶然にも乗ってしまったタクシーの運転手が犠牲者となってしまう。弁護士ピョートルはヤツェックの弁護が初仕事となる。3人の運命が偶然の出来事で交錯する。
dekalog52.jpg
タクシーの洗車が終わるまで待っていた客(第2話の夫婦)がいたのに拒否して出発してしまったり、若い女性に色目を使ったりとイヤな男ではあったが、野良犬にサンドイッチを分けてあげるやさしい一面もあった。何とも運の悪い男だ。

殺人シーンは残酷でかなりリアルで、嫌な気分にさせられるので覚悟したほうがいい。カフェで用意した紐で絞殺するのだが、なかなか手強い。湖に引きずられながらも、妻の名前を必死で叫ぶ姿が脳裏に焼きついて離れない。「殺人は究極の暴力だ。」と考える監督は容赦なく、残酷なシーンを突き付けてくる。

判決は死刑を宣告された。死刑執行直前、ヤツェックはピョートルにおそらく初めて胸の内を語る。殺人に及んだ経緯、家族のこと、妹の死の背景、母の心配、自分の墓の心配。犯行前、初対面の少女たちに笑顔で接していたヤツェック。妹と重ねてみていたのかもしれない。妹思いだった一面も垣間見れ、それほど冷淡な男ではなあったのかもしれない。

「法とは人間がお互いの関係を調整するために作った理念である。犯罪を防止するためだけではない。法によって下された刑罰は法ではなく、復讐だ。本当に無垢なる人々が法を作っているのか?」
弁護士でありながら自問し続けるピョートルは死刑の是非について悩んでいた。そんな時に聞かされたヤツェックの本音。もしかしたら他に彼を救う方法があったのではないか、と自責の念に駆られるピョートルであった。

殺人を殺人で裁く矛盾。監督は、「死刑実行も殺人だ。」と唱える。恐怖で怯えるヤツェックの死刑シーンも残酷な殺人そのものとして描かれていた。
dekalog53.jpg
予算工面のための映画化に監督自身が選んだのは本作だった。映像は終始暗く、薄気味悪い。赤、青、黄のフィルターをかけ、怪しいを演出したとのこと。空虚で物悲しく、逃れられない閉塞的なポーランド社会をも描きたかったのだろう。

なお、ドラマ版には、ピョートルが恋人に弁護士試験に合格したとの報告、ヤツェックがピョートルに話す胸の内はカットされている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9


デカローグ第4話 <1989/ポーランド> ★★★★★

Dekalog, cztery
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:ヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛
IMDB評価:8.4/10、9.2/10(全体)

4条「あなたの父母を敬え。」をテーマにした第4話「ある父と娘に関する物語」について。

父親の死後開封するようにと書かれた手紙を娘は開けてしまう。この手紙はもともとは母親が亡くなる時に描いたもので、娘が大きくなったら読ませ欲しいということだった。娘が10歳になった時にはまだ小さすぎると思い、15歳になった時にはもう遅すぎると思った父は、更に封筒に入れ、自分の死後に読ませようと考えていたのである。
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手紙の内容は、父親は実父ではないという内容だった。父親は手紙を読んだのかどうかはわからないが、内容は察しており、心のどこかで自分が健在中に娘に読んで欲しいという思いがあったようだ。なぜか?娘を異性として意識していたからではないだろうか?心のどこかで、結ばれることを望んでいたのではないか?実父だという確信もなかったのではないか?娘に運命を託す父親には恐れも感じるし、理性と本心で揺れ動く葛藤がひしひしと伝わってくる。

手紙を読み父親が実父ではないと知った娘の発言には衝撃を受ける。「他の男と寝る時、お父さんに罪悪感を感じる」というのだ。そして、もはや親としてではなく、男として意識している父親の前で裸になり、父親を誘惑するのだ。愛を選んでしまうのか?それとも20年間の親子の絆を選ぶのか?

終盤でどんでん返しがあり、真実が明らかになっていく仕掛けはお見事。ラストの落とし所も巧妙。昔、男女の駆け引きに使われていたEaster Monday(水をかけ合う)を思わせる冒頭も、男女関係を暗示していたのだろう。実は自分なりに解釈するのに一番時間がかかったのがこの第4話であり、私にとって一番の傑作でもあった。親子を異性として意識すること自体が罪に思えるが、親子、血の繋がり、愛することとは一体何なのか?親子のもどかしさを見ていて、そんな疑問が生じた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8

↓以下ネタバレします。

デカローグ第3話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, trzy
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:7.6/10、9.2/10(全体)

3条「主の日を心にとどめ、これを聖とせよ」をテーマとした第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」について。

1話に出ていた父親が冒頭にでてくる。アパートの入口で主人公のヤヌーシュとすれ違い挨拶を交わす。
子どものためにサンタクロースに扮しプレゼントを配るヤヌーシュ。家族で過ごしていたクリスマスイヴに元恋人のエヴァから電話がかかってくる。夫が行方不明だから一緒に探して欲しいとのことだ。ヤヌーシュは車が盗まれたから、とウソをつき家を出る。
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思い当たる所を2人で方々探し回る。交通事故があったと聞いては死体安置所に死体確認へ行ったり、自宅へ戻ったり、留置所まで見に行ったり、一晩中振り回され、最後に行き着いた駅である事実が明らかになっていく。
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<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

↓以下、ネタバレします。

[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

デカローグ第2話 <1989/ポーランド> ★★★★☆ 編集あり

Dekalog, dwa
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:クリスティナ・ヤンダ尋問
IMDB評価:7.9/10、9.2/10(全体)

2条「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」をテーマとした第2話「ある選択に関する物語」について。

ワルシャワの病院に勤める医師は、団地のとある階に住む。ある朝、上の階に住んでいる女性が訪ねてくる。医師は夫の主治医で、夫の回復の可能性を聞きたかったのだ。その理由は、夫の親友との間の子どもを身籠り、夫が生き延びるようなら中絶するし、もう長くないのなら産もうと考えていたからだ。年齢的にもこれが最後の出産のチャンスだ。しかし、医師はわからないと言う。妻と娘を亡くしているので、死に対しては人よりも特別な思いがあるのだ。
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不倫しているとはいえ、まだ愛する夫の回復を願う反面、死んでくれれば赤ちゃんを産めるのに、と葛藤の中での彼女の決断は中絶だった。夫の主治医にその旨を伝えると、医師はついに口を開いた。夫はもうすぐ死ぬのだと。だから、中絶はするなと。しかし、これは阻止さえるための医師のウソだったのだ。そうとも知らずに産むことを決意する。

医師の判断に委ねた結果は果たして正しかったのか?医師のウソを知った時に判断を悔いることになるのか?それとも、それでも良かったと思うのか?もし逆の選択をしていたら、どうなっていたのだろうか?十戒的に考えると正しい決断をしたかのようにも思えるが、結果的には果たしてどちらが幸せだったのだろうか?この話は第8話の倫理性を問う講義の中でも引用されている。
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ジュースの中で溺れたハエがもがき苦しみ、必死でストローを這い上がろうとするシーンが印象的。人間への教訓だ。甘い誘惑に負けると後悔することになると。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/3

↓以下、ネタバレします。

デカローグについて+第1話 <1989/ポーランド> ★★★☆ 編集あり

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Dekalog, jeden
1989/53min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:8.2/10、9.2/10(全体)

<デカローグについて>
トリコロール3部作監督で知られるクシシュトフ・キェシロフスキ監督のポーランド時代のドラマである。旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条の戒律をテーマに、ワルシャワの団地に住む人々をそれぞれ独立した10話で描いている。各話の登場人物がすれ違うのも面白い。

旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条とは、、、
1.わたしのほかに神があってはならない。
2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
4.あなたの父母を敬え。
5.殺してはならない。
6.姦淫してはならない。
7.盗んではならない。
8.隣人に関して偽証してはならない。
9.隣人の妻を欲してはならない。
10.隣人の財産を欲してはならない。

第1話「ある運命に関する物語」53分
第2話「ある選択に関する物語」57分
第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」56分
第4話「ある父と娘に関する物語」55分
第5話「ある殺人に関する物語」57分
第6話「ある愛に関する物語」58分
第7話「ある告白に関する物語」55分
第8話「ある過去に関する物語」55分
第9話「ある孤独に関する物語」58分
第10話「ある希望に関する物語」57分

「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

1981年というと、戒厳令施行によりポーランド国内で映画の公開・輸出が禁止されていた(1983年7月 戒厳令全面解除)。1982年、弁護士で作家のクシシュトフ・ピェシェヴィチと出会い、脚本の共同執筆を開始した。その第1作として「終わりなし」(84)を完成させる。そして1987年、ピェシェヴィチの発案で「デカローグ」に着手。まずテレビ局に話を持ち込むが、十分な予算をもらうことはできなかった。そして、予算を補うために2本を映画化するということで別予算を得ることに成功した。監督自らの希望で第5話が「殺人に関する短いフィルム」(87)、映画担当者の判断で第6話が「愛に関する短いフィルム」(88)となったのだ。当初は10話を10人の監督に依頼するつもりだったがシナリオを見て結局はキェシロフスキ監督がメガフォンを取ってしまった。1989年ヴェネチア映画祭国際映画批評家連盟賞、1988年ヨーロッパ映画グランプリを受賞している。

その後1991年には初のフランスとの合作「ふたりのベロニカ」を発表。1993~1994年にかけて、「トリコロール」3部作をヴェネツィア、ベルリン、カンヌ映画祭に連続出品。次回作に世界中の期待が集まる中、1996年3月13日、突然の心臓発作により54歳の生涯を終える。

<レビュー>
まずは、この1条「わたしのほかに神があってはならない。」をテーマとした第1話「ある運命に関する物語」について。

団地の一室に住むある男性クシシュトフは大学教授で数学を教えている。息子パベルも時々授業を傍聴したりする。家では息子に問題を出しては算数や科学を学習させたり、パソコンで計算させている。普段遊んでいる湖の氷の厚さの算定もその一つだった。その日の気温などの条件を入力しては、氷の耐荷性を計算するのだ。その日も、息子の体重の3倍まで耐えられるという自分の理論には絶対的な自信があった。しかし、万年質のインクがこぼれ、クシシュトフは理屈では説明のつかない不吉な予感を感じるであった。
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伯母は信仰心が強いが、クシシュトフは神を全く信じていない。全ての出来事が理屈で説明がつくと思っているのだ。しかし、直観的な不吉な予感を拭い去ることができず教会へ足を運び神にすがろうとするが、理屈で説明のつかないことに葛藤が生まれるだけだった。

犬の死を目撃した息子との死に関する親子の会話。伯母との神に関する会話。結局はこの時に息子の運命は決定づけられていたのか?息子と遊んでいた友人が事故のことを何かを知っていそうで親に口止めをされいる。結局、どういう状況だったのか曖昧なままストーリーは終わる。運命は神のみぞ知るのだ。結局、人間の作る出す物に絶対はなく、自然の摂理・神には勝てないのだろうか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/30
[サイト内タグ検索] クシシュトフ・キェシロフスキ監督

(未) 【短編】Talking Heads <1980/ポーランド> ★★★

talking heads
Gadajace glowy
1980/16min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
IMDb評価:7.8/10

「あなたは誰ですか?いつ産まれましたか?人生に何を望みますか?」

1歳の赤ちゃんから100歳のおばあちゃんまで、3つの同じ質問を投げかけ、年齢順にその答えを流すだけのドキュメンタリー。皆の回答を聞きながら、自分の答えを考えてみたが、「あなたは誰ですか?」という質問への答えが見つからないし、まだわからない。私と同様に「わからない」と答える人もいたが、営業職だとか教師だといった職業を答える人もいれば、保守的だとか内向的だといった性格を答える人もいた。

興味深かったのは、最後の質問だ。様々な世代、性別でありながら、答えは似通っている。世界平和、皆が幸せになること、今がずっと続くことを願う人が数多くいるのだ。共産主義や歴史的背景がそういう思想を導いているのか?望んでいると同時に恐れでもあるのかもしれないと感じた。
日本で同じ質問をしたらどんな答えが返って来るだろうか?自己満足を満たすだけのエゴな答えが多いのではないだろうか?
最後の100歳のおばあちゃんの答えは、「もう望むものは何もない」だった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/11

尋問 <1989/ポーランド> ★★★★★

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Przesluchanie /Interrogation
1982(公開1989)/118min/ポーランド
監督/脚本: リシャルト・ブガイスキ
製作: タデウシ・ドレヴァノ
製作総指揮: アンジェイ・ワイダ(ノンクレジット)
出演:クリスティナ・ヤンダデカローグ第2話」、アダム・フェレンツィヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛」、アニエスカ・ホランドオルジード・ルカセウィッツ
受賞:1990 カンヌ映画祭 主演女優賞
IMDb評価:8.3/10

芸術度 ★★
社会度 ★★★★★
衝撃度 ★★★★★
感動度 ★★★
催涙度 ★
演技力 ★★★★★

<あらすじ>
キャバレー歌手アントニーナは、身に覚えのない容疑で投獄。公安から執拗な尋問を受け、それは恐るべき拷問へと変わる。彼らは彼女に知人を陥れる嘘の証言を強要。頑としてそれを受け入れない彼女に地獄の日々が7年もの間続く…。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

<レビュー>
たまたま出くわした映画が、いい意味でとんでもない作品だった。ポーランド映画数本しか観たことがなくても見たことのある顔ぶれが名を連ねていた。主人公アントニーナと獄中仲間であった女性を驚くべきアニエスカ・ホランドが演じていた。クシシュトフ・キェシロフスキ監督の助手や監督としての彼女しか知らなかったが、かなりの存在感がある。何よりも主人公のクリスティナ・ヤンダの体を張った迫真の演技に圧倒させられる。「デカローグ第2話」とは全く違う役柄で同一人物だとは気付かなかった。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したのにもうなずける。惜しくもパルムドールは逃してしまった。

本作は1982年に完成していたが、1981年の戒厳令施行によりポーランド国内で公開・輸出が禁止されていた。1983年7月 戒厳令全面解除されたが、8年後の1990年、カンヌにて公式初上映された。

キャバレー歌手アントニーナは仕事後、ファンだという男性2人と飲みに行く。ものすごいピッチで飲み続けたアントニーナは見事に酔い潰れてしまった。そして、翌朝目覚めると、そこは牢獄であった。一緒に飲んでいた男性2人が連れてきたのだ。

50年代のスターリン体制下という時代背景である。身に覚えのない容疑でも不当に逮捕されてしまうとんでもない時代だ。そんな時代をたくましく生きた人々の苦痛は計り知れない。

アントニーナもなぜ投獄されたのか全くわからず尋ねるが、逆に過去に関係を持った男性の名前を洗いざらい全て言わされる。その中の一人であるオルツカは国家反逆罪の容疑をかけられており、たった一度関係を持ったアントニーナを共犯と仕立てようとしていたのだ。国家反逆罪を立証する自白をさせ、都合良く仕立てられた調書にサインをさせようとする。「国家の安全のためなら友達をも犠牲にしなければならない場合もある。自白さえすれば、罪は軽くなる。」とまでいう取調官。無実だということは承知しているということだろう。
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同じく投獄されている者たちもやはり不当逮捕であった。共産党のある者は、党の命令でアメリカ人を国家施設に案内してしまったことが、諜報活動に手を貸したことになるという理由であった。自白をさせるために、人権を無視した暴力的な拷問が繰り返し繰り返し行われる。犬のように扱われたり、独房で水死させられそうになったり、ピストルで頭をぶち抜かれた死体を見せられ、次はお前だと脅かされたり、よく次から次へと思いつくものだと関心してしまうほどあらゆる手段で自白、署名を強要するのだ。拷問に耐えられず自白してしまう者も少なくないであろう。裏切り、裏切られ、皆人間性を失っていくのだ。しかし、アントニーナは決して人間の尊厳を見失うことはなく賢明に立ち向かい、無実であることを訴え続けた。

耐え抜きながらアントニーナは毎日夫のことを思っていた。ついに面会に来てくれたのだが、別れを告げられてしまった。関係を持った男性遍歴を知ってしまった以上、離婚せざるを得なくなってしまったのだ。生きがいを失ってしまったアントニーナは手首を噛みきって自殺を図ってしまう。出血多量で亡くなったかと思ったが、どうにか一命はとりとめ、病室房に送られる。そこへかつての取調官タデウシュがお見舞いにやってくる。彼はアントニーナの意思の強さに魅了されており、手を挙げることはなかった人である。クリスマスだったその日に2人は結ばれたのであった。やがて獄中出産し、子供は孤児院に預けられる。

↓以下、ネタバレします。

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