カテゴリー  [ ★韓国映画レビュー(Korea)★ ]

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(未)重さ <2012/韓国> ★★★

the weight
Weight
2012/107min/韓国
ドラマ
監督/脚本:ジョン・キュファン
出演:チョ・ジェヒョン、パク・チア
IMDb評価:6.6/10


社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 ★★
官能度 ★(ヌードあり)
民族度 ★★
ゴア度 なし

脚本 ★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★ 


the-weight1.jpg 主な舞台となるのは、地下にある死体安置所。主人公の働くところである。運ばれてきた遺体を拭いて、綺麗にお化粧をして、棺桶に入れ、新たな旅立ちに備えるのが彼の仕事である。一方、彼の弟は女性になることを願い女装をしているが、まだ性転換手術は受けていない。生と死の狭間で揺り動く兄と女性と男性の狭間で揺り動く弟を描く。

二人は孤児院出身であり、幼少時代に養子に出されている。その時のトラウマも含め、幼少時代のフラッシュバックを効果的に挿入している。何と言っても本作の特徴はアート的な映像美。安置所での仕事風景ですら、魅せられる。人間の欲望をも巧みに映像化している。

the-weight2.jpgタイトルは“重さ”。おそらく生や性の重さのことを言っているのであろう。重い題材でありながら、明るいタッチで描いたブラックコメディー。「おくりびと」と比較している海外の記事をいくつか目にしたが、主人公の職業が似通っているだけで、共通点は一切ない。本作は明確なストーリーどころか、人間の欲望・愛・孤独を抽象的に、しかしながらユーモラスに描いた作品である。

注目すべき点は、キム・ギドク作品でお馴染みだったチョ・ジェヒョン、パク・チアの二人を主演に迎えた点でもある。本作の作風はギドクというよりはフィンランドのカウリスマキに近いドライなブラックコメディーだが、全く異なった作品での二人の共演も興味深い。

2014/6/8
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野良犬たち <2014/韓国> ★★☆

Wild_Dogs_-_Korean_Movie-p1.jpg
Wild Dogs/ 野良犬たち
2014/99min/韓国
ドラマ
監督:ハ・ウォンジュン
出演:キム・ジョンフン、ミョン・ゲナム、チャ・ジヒョン、イ・ジェポ、キム・ソンギ

2014年8月23日公開予定

社会度 ★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
ゴア度 ★★

脚本 ★★ 
演出 ★★
演技 ★★★ 

Wild-Dogs-2013-Movie-Image-650x432.jpg
「宮 Love in Palace」で知られる人気俳優キム・ジョンフン(John-Hoon)主演で、2012年に韓国で実際に起こった事件をモチーフに描かれた社会派サスペンス。自堕落な生活を送る三流記者のソ・ユジュンは、ある日、職場の先輩ヒョンテの妻で不倫相手のジョンインに別れを告げられる。先輩のヒョンテを殺してでも彼女を手に入れたいと考えたユジュンは、取材先にいるヒョンテを追いかけ、山奥にある「犯罪のない村」と言われるオソリを訪れるが、そこにいるはずのヒョンテの姿は見当たらない。その村には、病気の母娘が親切な村人たちの世話になりながら暮らしていたが、ユジュンは次第に村人たちの間に不穏な動きがあることに気が付く。@映画.com

不倫相手から別れを告げられ、納得のいかないユジュンは、不倫相手の旦那を殺しに、彼の取材先を訪れる。そこで起きたおぞましい出来事を描くだけの至ってシンプルなストーリライン。出演者は10人にも満たない。

舞台は人里離れた山奥の「犯罪のない村」。とはいえ、おぞましい殺人事件から始まる。犯人たちの顔はビニールシート越しで見えないが、村には“何か”があることを終始匂わす演出がなされており、本当の舞台は「犯罪のない村」ではなく、「犯罪が明るみにならない村」である。
よそ者であるユジュンを歓迎せず、記者であることを知ると過敏になる住人たち。“何か”を隠す住人たちの行動は緊迫感が漂うが、この手は韓国映画お得意のネタでもあり、展開は簡単に読めてしまうのが残念なところ。

元アイドルのキム・ジョンフンが演じた意外性と、シンプルながらもクライマックスに向け加速していく展開は十分楽しめたが、もうひとひねり欲しかったところでもある。

2014/6/15

[サイト内タグ検索] ミョン・ゲナム

(未) タッチ <2012/韓> ★★★★☆

touch.jpgタッチ/터치
2012/99min/韓国
ドラマ
監督:ミン・ビョンフン(監督4作目)
出演:ユ・ジュンサン、キム・ジヨン
IMDb評価:データーなし

社会度 ★★★★
哲学度 ★★★★
宗教度 なし
官能度 ★
民族度 ★★★
ゴア度 ★

脚本 ★★★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★★★


touch1.jpg重度のアルコール中毒であるドンシクは、医師からきつく飲酒を止められている。友人の誘いも頑なに断っていたが、契約更新に必死になっており、学校の理事長の誘いだけは断ることができなかった。その日の帰り道、飲酒運転で生徒をひき逃げしてしまう。結局、警察に逮捕され、妻は示談金を支払うためにやむを得ず老人患者の性的要求を受け入れてしまった。それも病院にバレ、職を追いやられてしまう。さらに家に帰ると、とっくに帰宅しているはずの娘がいない。近所を探し歩くと、娘のぬいぐるみを持っていた学生を見つけ、後をつけていったら、見知らぬ家の箪笥の中に娘がいた。見つかりホッとしたのはつかの間、体中に落書きをされていた…。

監督は本作が4作目となるミン・ビョンフン。全作品が独立映画であり、日本での上映・ソフト発売はない模様。
出演は、ホン・サンス監督作品でお馴染みのユ・ジュンサン、「私たちの生涯最高の瞬間(2007)」「私の妻のすべて(2012)」のキム・ジヨン。

touch2.jpg夫ドンシクは元国家代表射撃選手であり、今は中学校の射撃部のコーチ。妻は、病院で老人の介護。夫は過去の栄光にすがり、妻は生計を得るために危ない仕事にまで手を出している。そんな一家の絶望への転落と再生を描いた作品。身近なところに潜む事件の危険性も示唆している。

ストーリーの中心となるのはごくありふれた家族であり、現実的なドラマだが、見せ場となるエピソードの豊富さとスピーディーな展開で、ぐいぐいストーリーに引き込まれる。これでもかというぐらいの悲劇が一気に一家を襲いかかり、崩れていく姿、精神的に追い詰められていく姿には息をのむ。しかし、どん詰まりでありながら決して悲観的ではなく、現実を受け止め、めげずに立ち向かおうとする懸命な家族の姿には好感。

しばし、野生の“鹿”が登場する。住宅街に突然現れ、不自然に見えがちだが、不思議と作品に溶け込んでいる。おそらくここでの“鹿”は“希望”や“奇跡”を暗喩しているのだと思う。どん底まで落ちた一家の前に現れた“鹿”は救世主となり、訪れた“奇跡”は生きる意味を教えてくれた気がした。

<観賞> 2012/12
[サイト内タグ検索] 日本未公開

嫁入りの日 <1956/韓国> ★★★

嫁入りの日
嫁入りの日/ 시집가는 날 /The Wedding Day
1956/77min/韓国
ドラマ
監督:イ・ビョンイル(監督2作目)
出演:チョ・ミリョン、キム・スンホ、キム・ユソン、チェ・ヒョン


社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★★
ゴア度 なし

脚本 ★★★ 
演出 ★★
演技 ★★★


2嫁入りの日19歳になる娘カプンに縁談話が舞い込んできた。隣町に住む良家だと知り、父親はすぐにでも娘を継がせようとする。そして、一家は有頂天になっていた。ところが、ある男性が訪ねてきて、「娘さんの結婚相手は生まれつき足が不自由だ」と聞かされる。今更縁談を断るわけにはいかず、父親は使用人イップンを身代わりに結婚させることにした…。

監督は、「自由結婚(1959)」のイ・ビョンイル。
出演は、キム・ギヨン監督「陽山道(1955)」、シン・サンオク監督「ロマンス・パパ(1960)」「ロマンス・グレー(1963)
」、キム・スヨン監督「血脈(1963)」のキム・スンホ。カン・デジン監督「朴さん(1960)」「荷馬車(原題:馬夫)(1961)」のチョ・ミリョン。

嫁入りの日1一家は下級両班であり、人物を確認することなく家柄だけで娘の縁談を進めてしまった。人間の世俗的な欲望、愚かさをアイロニックに描いた風刺劇。と同時に、使用人のシンデレラストーリーでもある。“蛇の夫の物語”という口承民話をモチーフとして脚色したとのこと。作風としてはシン・サンオク監督に近い。異様なまでの家柄へのこだわりは現在の韓国ドラマにも通ずる。

郷土色が濃く、村全体の反応もよく描かれており、良家へ嫁ぐことへの関心の高さも伺える。一度は有頂天になっていたが、落胆する一家の姿は滑稽。

ところで、病身舞(ピョンシンチュム、병신춤)という言葉を初めて知った。ハンセン病患者、小人、身体障害者、せむしなどをまねた、朝鮮の踊りだという。婚約者の足が不自由だと聞き、歩く姿を真似るシーンが登場するが、あまり気分のいい描き方ではない。皮肉的な展開は面白かったが、差別と捉える人も少なくないであろう。作品としても価値を下げざるを得ない。

<観賞> 2012/10/20 youtube韓国映像資料院チャンネルにて  
[サイト内タグ検索] キム・スンホ

建築学概論 <2012/韓> ★★★★

建築学概論건축학개론/建築学概論/Architecture 101
2012/118min/韓国
ロマンス
監督: イ・ヨンジュ
出演: オム・テウン、ハン・ガイン、イ・ジェフン、スジ、チョ・ジョンソク、コ・ジュニ
IMDb評価:7.2/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
ゴア度 なし
韓流度 ★

脚本 ★★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★★

活気はあるがはにかみやの20歳、建築学科の学生、スンミンは 建築学概論の授業で初めて会った音楽学部の学生、ソヨンに恋をした。一緒に宿題をすることになり次第に心を開いて親しくなるが、気持ちをうまく表現できない純情なスンミンは言葉に出来ない思いを心に秘めたまま、小さな誤解のせいでソヨンとは疎遠になってしまう。

35歳、建築家のスンミンの前に15年ぶりに、ふいに現れたソヨン。当惑を隠せないスンミンにソヨンは自分のための家の設計を頼む。プライドを賭けた最初の作品としてソヨンの家を建てる事になったスンミン、家が完成するまでの間、もしかしたら恋だったのかもしれない学生時代の記憶が蘇えり、ふたりに新しい感情が湧き上がる…@innolife

建築学概論1監督は、「不信地獄(2009)」でデビューしたイ・ヨンジュ監督の2作目。
出演は、「シルミ島(2003)」「ネバーエンディング・ストーリー(2012)」のオム・テウン、「マルチュク青春通り(2003)」のハン・ガイン、「Bleak Night(2010)」のイ・ジェフン、アイドルグループmiss Aのスジ。

監督が工学部出身ということを活かした独自の感性により、家を建てる過程と恋愛を築く過程を重ねる見せ方が期待を遥かに超える秀作だった。家を建てる時に土台が重要であるのと同じように、恋愛においても初恋が基本となっているのかもしれない。その初恋で、喉にひっかかった魚の小骨のようにずっと気になっていた些細なすれ違いの原因を紐解いていく作品。

ソヨンが実家の建て直しをスンミンに依頼をすることでストーリーは進行していく。15年ぶりの再会した2人は徐々に思い出話をするようになり、15年前に何があったのか徐々に明かされていく。時間軸が入り乱れているが、リンクしていてとてもわかりやすい構成。現在と過去は異なる出演者が演じているが、違和感がないほどキャラクター像を消化している。

建築学概論2軸となるストーリーは、大学生の時の初恋を振り返るという至ってシンプルであり、ありふれた素材。ところが、ベタなメロドラマとは一線を画し、浮ついた恋愛というよりむしろ、もどかしさや苛立ちといった側面にスポットを当て、繊細かつ上品に描いている。90年代前半を舞台としており、私より少し上の世代ではあるが、世代を問わず、恋愛に苦しんだことのある人なら感情移入しやすい等身大のストーリー。2人の計算のない駆け引きにはぐっと引き込まれる。

2人で新しい家の設計を一緒に考えていく工程は、それぞれの好みを知ることでもあり、愛を育てていくことにも確かに似ている。ほぼ完成の段階で、設計を変えてでもピアノを置きたいというソヨンの依頼は、他の人とのゴールイン間近でもやり直せるかどうか暗喩していたのだろう。観終わった後、小骨がす~っと取れたと同時に、強烈な切なさと後悔に苛まれた。

<観賞> 2012/11/23
[サイト内タグ検索] イ・ジェフン オム・テウン

ピエタ <2012/韓> ★★★★☆

pieta.jpgPieta/ピエタ
2012/104min/韓国
監督/脚本:キム・ギドク (監督18作品目)
原作:パク・イニョン
出演:チョ・ミンス、イ・ジョンジン 
受賞:
2012年ヴェネチア映画祭 金獅子賞
2013年アカデミー賞外国語映画賞 韓国代表作
IMDb評価:7.2/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★★★★
宗教度 ★
官能度 ★(ヌードなし)
民族度 ★★
ゴア度 ★★(直接描写なし)
脚本 ★★★★★ 
演出 ★★★★★
演技 ★★★★★

2013年(第85回)米アカデミー賞 外国語作品についてはこちら

************第69回 ヴェネチア国際映画祭受賞作************
金獅子賞:「Pieta」(韓国)キム・ギドク監督
銀獅子賞:「The Master」(米) ポール・トーマス・アンダーソン監督
審査員特別賞:「Paradise:Faith」(オーストリア=仏=独)
優秀男優賞:フィリップ・シーモア・ホフマン/ホアキン・フェニックス(「The Master」、米)
優秀女優賞:ハダス・ヤロン(「 Fill the Void」イスラエル)
最優秀新人賞:ファブリッツォ・ファルコ(Dormant Beauty」/「E Stato Il Figlio」、伊=仏)
優秀脚本賞:オリヴィエ・アサイヤス「Something In The Air」(仏)
優秀技術賞:ダニエーレ・チプリ「E Stato Il Figlio」(伊=仏)
*****************************************


身寄りがなく孤独に育ってきたカンドは非情なやり方で債務者たちから借金を取り立てる高利貸しとして生きてきた。そんな彼の前に、ある日“母親”だと名乗る女が現れる。女の正体を怪しみ混乱に陥るカンドは、生まれて初めて自分を訪ねてきた“母”に異常な執着を見せ始める。そうしたある日、女は姿を消し、まもなくカンドと彼女の間の残忍な真実が明らかになる。
決して許されることのない二人の男女。神よ、彼らに慈悲を。 @innolife

監督は、韓国の鬼才キム・ギドク監督。「アリラン」に続く18作目であり、日本公開も決定している。
出演は、新人ではなくそれほどヒット作はないものの着実に演技を積んできたチョ・ミンスとイ・ジョンジン。今後の活躍に注目したい。 

pieta2.jpg主人公は町工場一帯で取り立て屋として働くガンド。債務者たちの支払いが滞れば、自分の機械で手足を切断させ、保険金で支払わせるという卑劣なやり方でお金を巻き上げる、血も涙もない男である。身寄りはなく、死んだと思っていた母が目の前に現れ、狂う人生を描いている。シンプルなストーリーに最低限のキャストとセリフでありながら、母子の危うい関係が作品に緊張感を与え、またまた強烈な作品に仕上がっている。監督は一貫して暗欝な側面にスポットを当てているが、正直、以前の作品のような怒りをぶつけるような作品ではなく、丸くなったという印象を受けた。テレビインタビューなどほどんど受けなかった監督が、テレビ出演を快く引き受けていることにもつながっているのだろう。映像センスと見事なキャスティング、演技力で、感情を揺さぶる作品をこれからも期待したい。

舞台はソウル清渓川という町工場の一角。プレス、切断、板金、金型といった工業器具が並ぶ町工場一帯、かつては韓国産業発展に大きく貢献した地でもある。監督自身も16歳から20歳までこの地で機械工の見習いとして働いていたそうだ。 再開発のために、一帯が撤去される直前の撮影だったという。資本主義社会を真っ向から否定し続けている監督らしい抜群のロケーションだと思った。資本主義社会の裏で金属のゴミ山や廃墟、寂れ果てた一帯の殺伐さもまた作品に強烈な印象を残している。本作、ベネチアでの受賞のおかげでヒットしていたにもかかわらず、上映を打ち切ったのも、スポットが当たっていないが素晴らしい低予算映画が埋もれてしまわないようにという監督の配慮だという。主演の2人もノーギャラでの出演で、素晴らしい演技を見せている。

pieta1.jpg “ピエタ”とは、イタリア語で“悲哀"という意味。キリストの遺体を膝に抱いて嘆くマリア像のことを言うそうだ。その姿がポスターにも使われている。あるインタビューで監督は、“お金中心の資本主義社会の中で人々の信頼が消え、不信と憎しみで破滅に向かい墜落する私たちの残忍な自画像に対する警告映画”だと言及している。
必然的に自虐的な生き方を選んでしまったカンドは負債者たちに怪我を負わす加害者であると同時に、母親に捨てられた被害者でもある。この町工場も栄えた時代があった半面、資本主義の恩恵も受けず、犠牲となっている地。そして突然現れた母親も被害者であり、徐々に加害者へと変貌していく姿が後半の見せ場となっている。毎度のことながらセリフは少なく、抑揚のある表情での演技が卓越している。時々浮かべる笑みの不気味さ。不可解な行動。最後まで観て始めて理解できるストーリー運びにもため息。終盤のすさまじさはギドク監督だからこそなせる技。ギドク作品は観終えた時にどっと疲れがでるのだが、本作は初めてすぐにもう一度観たいと思った作品。金獅子賞も納得の傑作であった。
表裏一体である加害者と被害者。全ての人が神の慈悲を得られるのだろうか…。

<観賞> 2012/11/26


[サイト内タグ検索] キム・ギドク監督

(未) 証 <2011/韓> ★★★★

証
A confession
2011/96min/韓国
ドラマ
監督/脚本:パク・スミン
出演:クォン・ヒョクプン、イ・ジュスン、イ・デヨン

社会度 ★★★
哲学度 ★★★★★
宗教度 ★★★★★
官能度 なし
民族度 ★★★★
ゴア度 ★★

脚本 ★★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★★★


初老で一人暮らしのパク・トンジュンは友人の女性に教会で一緒にお祈りをしましょうとずっと誘われている。トンジュンはキリスト教信者であるが、今まで一度も教会へ出向いたことがない。ところがチラシを見ると、かつて一緒に仕事をしていた男が牧師になり、講演が予定されていることを知った。ずっと避けていた教会へ足を運び、その男に会うことにした…。

監督は、本作がデビュー作となるパク・スミン。
出演は、ポン・ジュノ作品に数多く出演しているクォン・ヒョクプン、パク・チャヌク作品でお馴染みのイ・デヨン。

証1無名監督のデビュー作、しかも独立映画でありながら、中堅実力派俳優が2人も出演していることに驚き、真意を自分の目で確かめてみることにした。

裏社会で日雇い暮らしをしているトンジュン。熟年カップルの恋愛話が静かに始まったかと思うと、現在と過去が行き来し、過去との対峙やトンジュンの葛藤が中心に描かれる。教会へ誘ってくれる女性と一緒にいる時だけ穏やかで、仕事となると人柄がまるで違う。一見するとどこにでもいるような初老トンジュンは一体何者で、過去にどんな罪を犯してきたのか、なぜ今のような生活をしているのか、サスペンス調に明かされていくが宗教的に紐解かれていくゆえ、解釈が難しい箇所も多く、語るのも難しい作品。この先、何度か観て理解を深めていく必要があるだろう。

ストーリーの核となる人物はトンジュン、元仕事仲間で牧師になった男、友人女性の息子の3人。
何らかの罪を犯した人物であり、それぞれの立場や視点で罪への意識が語られていく。

証2“罪と許し”をテーマとし、3人を通して伝わってくるのは、“罪を犯したら、誰が許すのか?人間なのか、神なのか。”“過去に犯した罪が祈りで救われるのか?”という問いかけ。祈りで救われると思っている者、自分には祈る資格すらないと考える者、3者3様の答えが提示される。

神が人間を見放したのではなく、人間が自分自身を見捨てたという事実が説得力をもって描かれる。結局は、事を解決するのは宗教ではなく、自分自身であるということ。それに気付かない者は地獄に落ちる現実の残酷さ。観るだけでもかなりのエネルギーを要した。これがデビュー作だとは信じられない完成度はイ・チャンドン監督「シークレット・サンシャイン(原題:密陽)(2007)」を彷彿とさせ、それ以上に挑発的で野心的。一般的に好まれる内容でもなければ、共感できる要素も一つもない。説明不足と思う部分も多いのだが、その分引き寄せられ完全にのめり込んでしまった。内臓を引っ掻きまわされる感覚、久々に味わった。

<観賞> 2012/8/12


[サイト内タグ検索] 日本未公開

地獄花 <1958/韓> ★★★☆

地獄花
地獄花/지옥화/The Flower in Hell
1958/86min/韓国
ドラマ、犯罪
監督:シン・サンオク(監督7作目)
出演:チェ・ウニ、キム・ハク、チョ・ヘウォン
IMDb評価:6.7/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 ★
民族度 ★★★
韓流度 ★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★★


ドンシクは軍隊を無事に終え帰郷すると母の具合がよくない。ソウルへ行ったまま消息を絶ってしまった兄ヨンシクを探しに上京し、兄探しを続けた。占い師には「兄さんとはすぐ会えるが、すぐ別れることになるだろう」と予言された矢先、ようやく兄を見つけ出すことができた。米兵相手の娼婦ソニヤと付き合っており、米軍の物資を盗み横流しするような生活を送っている兄は母に合わせる顔がないと言い、帰郷を拒む…。

監督は、「離れの客とお母さん(1961)」「真由美(1990)」のシン・サンオク監督
出演は、シン・サンオク作品でお馴染みのチェ・ウニ

地獄花1軍隊を終えたグンシクは兄とは違う顔立ちで娼婦たちの人気者となっていった。兄の恋人ソニヤもその一人でやがて三角関係の泥沼化していくこととなる。ソニヤの妹的存在のジュディもドンシクのことを気に入ってしまう。ジュディは両親を戦争で亡くし、仕方なく娼婦として働いていた。登場人物はみな様々な事情を抱え、娼婦やチンピラとして生きる道を選ばざるを得なかった人たち。ヨンシクだって、好きで米軍の物資を盗み横流しをしているわけではないが、他に生きる術がない。それぞれ今の生活から抜け出すチャンスを狙っているがままならず、理想と現実の狭間で揺れ動く姿は現代にも通ずるテーマでもある。

戦争の混乱期を背景とし、戦後の町並みや生活の様子が興味深い。すごい問題作だといろんなところで読んだと記憶しているが、本当にシン・サンオク作品なのかと疑ってしまうほどマイルドな展開に拍子抜けしてしまった。登場する女性は全て娼婦で、当時としては破格的な内容であることは明らかだが、80年代の作品と比較してしまうと社会への批判的要素が感じられず、シン・サンオクらしい毒もなく、至って普通だった。

<観賞> 2012/6/8 youtube韓国映像資料院チャンネルにて 

[サイト内タグ検索] シン・サンオク監督 チェ・ウニ

(未) SleepingBeauty <2007/韓> ★★★☆

Sleeping Beauty
SleepingBeauty/슬리핑 뷰티
2007/110min/韓国
ドラマ
監督:イ・ハンナ
出演:イム・アヨン、キム・チャヨン、イ・ナリ
IMDb評価:5.0/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
ゴア度 ★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★


1話:My Cousi/私のいとこ
祖母の葬儀のため久しぶりに田舎に帰る。従兄と部屋でゲームをしたり、学校の校庭で自転車乗りを教えてもらったりして過ごしていた。夜中に2人で学校に忍び込み、じゃれ合っているうちに…

2話:The Hibernation/冬眠
結婚もしていないため、夫も子供もいない。すでに母は亡くなっており、父と2人暮らし。認知症のため、下の世話、お風呂も入れてあげなければならない。体を洗ってあげている時、父は下半身を触ってくれとせがんできた。その時は拒否したが…

3話:The Princess of Forest/森の姫
朝鮮族出身の17歳の少女は、生活が苦しいため、韓国へ養女へ出された。子供を3人亡くしている家庭で、大事に育てるという言葉を聞いて、母は安心して預けたが、少女は家へ着いて早々に家事を言い渡される。そして、あばあちゃんと一緒に寝ようとしたが、義父の部屋に呼ばれる。無理やり押し倒され、処女を喪失し、妊娠までしてしまった…。

Sleeping Beauty1独立した3話のオムニバス。異なる女性3人を主人公とし、1話では未成年、2話では老人、3話では養父の性をリアルにかつ衝撃的に描いている。性をテーマにしているが扇情性はなく、むしろ女性の悲しみや焦燥感、絶望に胸が締め付けられる息苦しい作品だった。

実はポスターには、「イ・ハンナ監督は“女キム・ギドク”だ」というメインフレーズがつけられている。こう書かれてしまうとキム・ギドク好きとしては否応にも過度の期待をしてしまい、観る前から無意識にハードルを上げてしまうわけで、こういう宣伝は好きではないのだが…。本作は観る人を選ぶ作品ゆえ、ターゲットを絞るという意味では、あながち方向性は間違っていない。未成年観覧不可という点と女性への嫌悪感、痛みを伴う愛という意味では“キム・ギドク”風かもしれない。

時折、ギョッとしたショットに驚かされるのだが、それでも全体的には抽象的で、説明不足と感じる箇所も多い。2話と3話はインパクトのある題材で、社会の片隅を見つめる視線の鋭さは感じるものの、残念ながらメッセージ性が弱い。ラストに向けて加速するわけでもなく、どこか緩さが感じられ、もう少し強調させるエピソードが必要に思う。

セリフは少なく、表情も乏しく、抑揚もない。更に、指先の動きなどから心の微動を読ませたり、女性監督らしい繊細さが仇となっているような気もする。片田舎の知られざる社会事情を切り取ることには成功しているとは思うが、同情するだけでなく、そこから一歩踏み込んだ女性を観てみたいものだ。次作に期待。

<観賞> 2012/8/10

[サイト内タグ検索] 日本未公開

(未) 心臓が躍る (原題:심장이 뛰네) <2011/韓> ★★★

my heart beats
심장이 뛰네 /My Heart Beats
2011/105min/韓国
ドラマ
監督:ホ・ウニ
出演:ウォン・テヒ、ユ・ドンスク、カン・ソッコ
IMDb評価:6.2/10

社会度 ★★
哲学度 ★★★
宗教度 なし
官能度 ★★★
民族度 ★

脚本 ★★ 
演出 ★★★
演技 ★★


37歳の独身女性ジュリは、大学の英文科の教授をしている。新しい授業を増やすこととなり、教授たちとの話し合いでジュリが務めることとなった。その授業とは“フェミニズム映画”について。同僚の女教授からアダルトビデオを参考にするといいというアドバイスをもらい、動画サイトで観てみることにした。どうゆうわけだか体が火照る。そして、なんとエンドロールに流れた会社は友人が社長をしている会社だった。さっそく友人に連絡し、アダルトビデオへの出演依頼をしてみた…。

監督は、本作が長編デビュー作となる。出演は、「憎くてももう一度2002」のウォン・テヒ。主演を演じたユ・ドンスクは、本作出展したローマ国際映画祭からの帰国後、呼吸困難で病院へ搬送され、「新型インフルエンザによる肺炎呼吸困難症候群伸筋炎」により2010年11月11日にこの世を去ってしまった。ご冥福をお祈りいたします。

my heart beats1男性教え子を性の対象としてみたり、若いカップルを恨めしそうに見たり、男性の下半身に視線がいってしまったり、家で体位の研究をしたり、ジュリの頭の中はセックスのことでいっぱいだった。地味なタイプではあるが、容姿が特に劣るわけではない。奥手だったのか、理想が高いからなのかはわからないが、寝たいと思う男性に出会えておらず、未だに男性経験はないという。そんなジュリがザクロを貪り食うシーンからストーリーはスタートする。ザクロといえば、性欲増進させる効果のある果物。男性経験のない女性がアダルトビデオに出演するまでの話をリアルかつ大胆描いたエロティシズム作品。

40歳前後の女性は子供を産む最後のチャンスでもあり、一番性欲が強いと聞いたことがあるが、女流監督による、女性の性的欲求に着眼した点は興味深い。さらに、監督の実体験に基づくというからさらに驚き。

my heart beats2至って平凡な人生を送って来たジュリがアダルトビデオに魅了され、人生の転機をむかえるという話が主軸になる。大学で講義を受けているかのようにいくつかの章にわかれており、つまらない日常生活、アダルトビデオに魅了され必死でダイエット、ビデオへの出演を断られ社長を必死で説得、出演決定し体位の研究、そして本番…といった具合に描かれる。アダルトビデオを素材としているが、華やかな世界の描写ではなく、ジュリの日常の変化に重きを置いている。

初めての出演ということだけではなく、男性経験がないジュリはベッドの上でどう振舞っていいかわからない。男優がうまくリードするが、ジュリはぎこちなく、撮影は何度も中断するが、次第に慣れ、悦びを得るまでの姿を丁寧に描いている。撮影は何日かに分かれており、ジュリは日に日に魅力的になっていくのがわかる。大学へ着ていく服も地味だったものからどんどん垢抜けていくのだった。仕事だと割り切り台本通りに淡々とこなしていた相手役の男優も次第に心を通わせるようになていく姿にはジュリの明るい未来をも感じさせる。仮面を被り、素顔が見えないながらも2人の感情の移り変わりが取るように伝わってくる演出もデビュー監督のものとは思えない。

しかしながら、なぜゆえに自身の出演を決意までさせてしまったのか経緯が作品からは見えてこない。普通の女性ならアダルトビデオへの出演は一大決心であり、ジュリのどこにそんな行動力があったのか。女として一花咲かせたいという女心は私にも理解できるが、発想があまりにも極端すぎるため、もう少し心境を掘り下げて欲しかったところではある。

セックスが好きすぎてこういう世界に飛び込むという話は聞いたことがあるが、借金の肩代わりでもないのに処女喪失させてしまうことにも共感しがたい。しかし、人にどう思われようと自分がやりたいことをやってしまう勇気を羨ましくも思う。もしかしたら一歩踏み出す勇気を描いた、普遍的なメッセージを込めた作品だったのかもしれない。

<観賞>2011/7

[サイト内タグ検索] 日本未公開

競馬場へ行く道 <1995/韓> ★★★

競馬場に行く道
競馬場へ行く道/The Road to the Racetrack
1991/138min/韓国
監督/脚本:チャン・ソヌ(監督4作目)
原作:ハ・イルジ
出演:カン・スヨン、ムン・ソングン、キム・ボヨン   

社会度 ★
哲学度 ★★
宗教度 なし
官能度 ★
民族度 ★★★
韓流度 ★★★

脚本 ★★ 
演出 ★★
演技 ★★


フランスから5年ぶりにR(男)が帰国した。フランスで3年半同棲していたJ(女)が空港へ出迎えに行く。1年ぶりの再会を持ち詫びていたRとは裏腹に、Jの表情は冴えない。Rはフランスにいた時のようにセックスを求めるが、拒否されてしまった。R一人をモテールに残し、Jは帰るが、翌朝、また車で迎えに来た。食事はするがセックスはひたすら断るJに飽き飽きし始め、Rは“競馬場に行く道”というタイトルの小説を書き始めることにした…。

監督は、「華厳経(かげんきょう)(1993)」「LIES嘘(1999)」のチャン・ソヌ。
出演は、「シバジ(1986)」「ハラギャティ(波羅羯諦)(1989)」のカン・スヨン、「グリーン・フィッシュ(1997)」「秘花 ~スジョンの愛~(2000)」のムン・ソングン。

競馬場に行く道12人は会って食事をし、決まってホテルへ行く。男は女を求めるが、女は寸前の所で拒絶し始める。“次会った時に”と言ってその場をしのぐが、何度会っても同じことの繰り返し。新しい男ができたのかと尋ねても、違うという女。一体何のために会っているのか男にはわからなかった。ところが、突然結婚するからもう会えないと言い出す。しかし男は諦め切れない。

実は男には妻子がおり、数年前から離婚を申し出ていたが妻は応じようとしない。帰国後真っ先に離婚の話を切り出すが、妻に分かれる気はさらさらない。一方、結婚を予定している女のほうも別れたくないと言い始める。しかし、セックスは拒み続ける。よりを戻したい男と、セックスを拒否する女の会話を延々と垂れ流すだけで、かなりストレスフルであり挑戦的な作品。

女は文才がなく、フランス留学時代に論文を男に書いてもらい学位を取得したという経緯があった。学位を取ってしまった今となってはもはや男は用無しであり、さっと手を切りたいのが本音なのであろう。韓国への帰国後セックスを拒む理由にも納得できる。男も妻との離婚に関わらず女と定期的に会えればいいと思っているはずである。最後の驚くべきどんでん返しへ向けて、人間のいやらしい側面を見事に昇華させていく。

本作を観ていて思ったのは、ホン・サンス監督の作風に似ているということ。世界的に評価されているホン・サンス監督だが、発表はむしろこちらのほうが先である。最後のどんでん返しで全てが納得のいく結論付けがなされている分、私はこちらを評価したい。

<観賞> 2012/6/10

[サイト内タグ検索] ムン・ソングン

ただ君だけ <2011/韓> ★★★

6月30日ロードショー

always.jpgただ君だけ/오직 그대만
2011/105min/韓国
ドラマ
監督/脚本:ソン・イルゴン(監督作品6作目)
出演:ソ・ジソプ、ハン・ヒョジュ、カン・シニル、パク・チョルミン、ユン・ジョンファ、オ・グァンノク 

社会度 ★
哲学度 ★★
宗教度 なし
官能度 なし
民族度 ★★★
韓流度 ★★★

脚本 ★★ 
演出 ★★
演技 ★★★


always1.jpgかつては将来を有望視されたボクサーだったチョルミンは、過去のある事件がきっかけで心を閉ざして生きていた。そんなチョンミルの前に、目が不自由だが明るく愛くるしい女性ジョンファが現れ、チョンミルは少しずつ心を開いていく。やがてジョンファが失明した事件と自分の過去の行動とに接点があったことを知ったチョンミルは、ジョンファの目の手術代を稼ぐため別人になりすまし、高額な賞金が得られる賭博試合に出場することを決めるが…。@映画.com

監督は、「羽根(2004)」のソン・イルゴン。
出演は、「映画は映画だ(2008)」のソ・ジソブ、TVドラマ「春のワルツ」「華麗なる遺産」のハン・ヒョジュ。

always2.jpg「羽根」では雰囲気のある独特な作品を見せてくれたソン・イルゴン監督。アート系作品を得意とする監督であり、一味違った純愛を期待していたが、完全な万人向けの商業映画になってしまっている。独特の世界観はなく、ミュージックビデオのような無難なストーリー展開に少々物足りなさを感じる。見え過ぎた過度の演出はなく、ソ・ジソブの抑制した演技も素晴らしく、透明感あるハン・ヒョジュもぴったりの配役だが、そもそもこの二人が引き寄せ合うという設定がしっくりこない。
無理やり恋愛ものにはめ込もうとしている後半は失速するし、無難なところに落とし込んでしまった結末。韓流映画を観ている人なら最後まで予測のできるストーリー展開。インパクトのないストーリーライン。監督への期待度が高かった分、不満が募る。

<観賞> 2012/6/5

[サイト内タグ検索] ソ・ジソプ

桑の葉 <1985/韓> ★★★★

桑の葉桑の葉/뽕/Mulberry
1985/114min/韓国
エロス、ドラマ
監督:イ・ドゥヨン(監督47作目)
出演:イ・ミスク、イ・デグン、イ・ムジョン
IMDb評価:6.1/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
官能度 ★★★
民族度 ★★★★
韓流度 ★★★

脚本 ★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★★


桑の葉11920年代、半島のある寒村。村一番の美人アンヒョプ(イ・ミスク)は賭博好きで年に数回しか家に帰らない夫サムボ(イ・デグン)に金を渡すために、桑の実の収穫を引き受けるが、村の男たちはそんな彼女に言い寄り、彼女も良心の呵責を感じながらも生活の苦しさから金と引き換えに体を許していく。しかしそれが村の女たちの知るところとなり、長老が追放を告げにいくが、彼女の魅力の前に骨抜きにされ、引き下がってしまう。そんな中、アンヒョプにしつこく言い寄りながら相手にされないサムドル(イ・ムジョン)が腹立ちまぎれに全てをサムボに話してしまう…。
@goo映画(結末削除)

監督は、「避幕(1980)」「糸車よ糸車よ(1984)」などのイ・ドゥヨン監督。本作はシリーズ化され、3までリリースされている。
主演は、「冬の旅人(1986)」「情事 an affair(1998)」のイ・ミスク

米一升と引き換えにブドウ畑で体を売っていたところを村人に見られており、娼婦だと村中に噂が広まる。女性たちは冷ややかな視線を送る一方、男たちは言い寄って来る者が多い。お金だけではなく、妻の指輪や桑の葉と引き換えに体を求めてくる。食べるものにも困っていた日帝時代を背景としている。生活のために体を売るが、賭博好きの夫に持ち逃げされる妻の生き様をユーモラスに、かつエロティックに描いた作品。アンヒョプ演じたイ・ミスクは50代になった今でも美しいが、本作では清楚なイメージ。

桑の葉2男女の営みを表現するのに水車が用いられたり、局部を葡萄の葉で隠したり、想像力に委ねる演出。コリアン・エロスといわれるジャンルに分類されたり、日本のレンタル店でもそういったコーナーに置いてあるようだが、映像的にはどちらかといえば女性向き。当時は扇情的な演出がセンセーショナルとなったが、実は抗日活動を風刺しており奥が深い。エロスを全面に押し出していながらも、暗喩的な表現方法が評価を押し上げているのでしょう。“桑の葉を摘みに行こう”とは抗日活動家の隠語であり、劇中のセリフでもよく用いられている。

核心に触れています。ご自身の判断で反転して読み進めてください。
賭博好きの夫の行動を憲兵が常に監視しており、実は抗日活動家だということが後半で示唆されている。その夫の手に渡るお金とは妻が体と引き換えに手にしたお金。村人たちも知らず知らずに抗日活動に加担しているという皮肉。

<観賞> 2012/6/7 youtube韓国映像資料院チャンネルにて  
[サイト内タグ検索] イ・ミスク

愛人 もうひとりのわたし (原題:バニッシング・ツイン) <2000/韓>★★

twin.jpg愛人 もうひとりのわたし/배니싱 트윈/Vanishing Twin
2000/93min/韓国
ドラマ、恋愛
監督/脚本:ユン・テヨン
脚本:ソン・ドス
出演:チ・スウォン、ク・ピル、キム・ミョンス、シン・ヒョンジュ、イム・ジウン

社会度 なし
哲学度 なし
宗教度 なし
官能度 ★★★
民族度 ★
邦題のセンス ダメ。愛人って何?

脚本 ★ 
演出 ★★
演技 ★

twin1.jpgユジンは弁護士の夫と6歳の娘ミンジと幸せに暮らしていた。姉はアメリカに暮らしており、夫にもまだ紹介していなかった。その姉夫妻が久々に韓国に帰国するという。嬉しい反面、何か不安を感じるユジンだったが、夫はやっと姉と会えることを心待ちにしていた。ところが、義兄ジノが1人で帰国し、姉は自殺したと告げられる。やがて月日は経ち、友人がチャット相手から聞いたという狐の話を話し始めた。それはユジンが姉から聞いた話と同じであった。姉との関係を直観したユジンはその男性とコンタクトを取り始め、姉の自殺の原因を探り始める…。

監督は、イム・グォンテク監督やパク・チャヌク監督の助監督を経て本作がデビュー作となるユン・テヨン監督。出演は、「トゥー・カップス(1993)」「愛するのにいい日(1995)」のチ・スウォン、本作が俳優デビューとなるモデル出身のク・ピル、「Mirror 鏡の中(2003)」キム・ミョンス。

twin2.jpg原題“バニッシング・ツイン”とは、妊娠中、双子のうちの一人が子宮内で消えてしまう現象を表す医学用語だという。双子の姉の自殺の謎を探るにつれ、秘められた過去が明らかになるという心理ミステリーで、“バニッシング・ツイン”が紐を解く鍵となる。あまり知られていない医学用語に基づくアイデアはすごく面白いと思うのだが、サブストーリーやキャラクター設定が曖昧。
姉の夫の存在やチャットの相手が警察に追われている理由など、濁したまま収束し、闇に葬った感は否めない。

現実なのか妄想なのかを曖昧にさせる心理ミステリーのほうが面白味が増したようにも思えるが、セックスシーンの多さを負担を感じてしまった。製作はセックスを主体とした低予算映画を得意とするY2シネマ。監督と製作側の意向の違いがそのまま作品に反映されてしまったようだ。

<鑑賞> 2012/3/10
[タグ未指定]

ムサン日記~白い犬 <2011/韓> ★★★

キム・ギヨン監督、ちょっと休憩…

musan.jpgムサン日記~白い犬/무산일기 
2010/韓国
ドラマ
監督/脚本/出演:パク・ジョンボム(デビュー作)
出演:カン・ウンジン、チン・ヨンソク、ソ・ジンウォン
IMDb評価:6.8/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★
宗教度 ★
民族度 ★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★

2012年初夏、公開予定

musan1.jpgスンチョルは脱北し、ソウルでポスター貼りの仕事をして生計を立てている。よりよい仕事に就こうと刑事の紹介で面接を受けに行くが、身分がバレテしまいなかなか職にありつけない。家の近所の教会に通うようになり、スギョンという女性に出会い、好意を抱くようになる。父親とカラオケボックスを経営していることを知り、偶然を装ってアルバイトを始めるが、トラブルを起こしてしまう…。

監督は、イ・チャンドンの助監督を経て本作がデビューとなるパク・ジョンボム氏。製作費はたった8000万ウォンの大学院の卒業作品であり、監督、脚本、主演の三役をこなしている。一緒に暮らしていたことのある脱北者の友人スンチョルが癌で亡くなり、心の重荷を軽減させるために、以前から構想を練っていた4本の短編映画をつなげて長編化に至ったという。見聞きした体験に基づいた作品。
次回作は地方からソウルへ来て、苦悩の末自殺した友人を題材にした作品だという。興味深い。

musan2.jpgムサン(茂山)とは中国との国境にある町で、脱北を目指す人が多く集まる町だという。主人公スンチョルの出身地でもあり、中国経由で脱北した経緯が劇中で説明されている。自由を求めて命をかけて韓国にやって来たが、住民登録番号を見れば脱北者であることは一目瞭然。下3ケタの125という番号を知られるや否や、決まりかけた仕事も断られてしまうのが現実。ポスター貼りの仕事でもボスの扱いはあまりにもひどい。生活基盤が整っていなければ資本主義での生活は貧困極める。ソウルにおける脱北者の立場や偏見、孤独や現実の厳しさをリアルに描いた作品。

アルバイト先で起こしたトラブルはスンチョルの優しさがゆえであった。事実をわかってもらえることなくクビになってしまう。真面目に生きようとすればするほど損を見る人生はあまりにも理不尽。教会に通い始めたのは宗教にすがろうとしたのか、友達作りのためなのかはわからないが、誰でも自由に出入り出来る教会の入口が社会の入り口を示しているように感じた。

舞台の一部となるのは南大門や東大門といった日本人韓国客が必ずといっていいほど訪れる場所。観光客や地元の人で賑わう街がスンチョルの視点からはあまりにも殺伐としており、私たち日本人が見る景色とだいぶ違う。
青年の後姿からは孤独しか見えてこない。唯一心を許す友達は拾った白い犬だけ。しかし、不思議と悲壮感はなく、スンチョルは常に前を向き、必死で生き残ろうとする姿に心打たれる。

脱北者を描いた作品を観ていつも思うのは、脱北したからといって必ずしも幸せを手にできるとは限らないということ。スンチョルは幸せだったのだろうか・・・ご冥福をお祈りします。

<鑑賞> 2012/3/13
[タグ未指定]

異魚島 <1977/韓> ★★★

iodo.jpg異魚島/이어도/Io Island
1977/110min/韓国
ドラマ
監督:キム・ギヨン
出演:イ・ファシキム・ジョンチョルパク・チョンジャパク・アム、クォン・ミヘ、チェ・ユンソク   
IMDb:6.2/10
第28回ベルリン国際映画祭出品作品

社会度 ★★★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★
鬼才度 ★★★
脚本 ★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★

iodo1.jpg現在…
ソウルの観光会社は済州島に新たな観光ホテルを建設した。そのキャンペーンとして記者たちを乗せた行き先不明の観光船が出港された。船に乗って告げられた行き先は“異魚島”。済州島の近くにあり、異魚島を見ると帰ってこれなくなるという伝説があった。その伝説の真相について乗客の2人は口論になっていた。すると、その1人ナムソクが失踪するという事件が起こった。チュンギョルは参考人として警察の事情聴取を受けるが、証拠不十分のため一旦釈放される。自らの容疑を晴らすため、ナムソクの出身地を訪ね、失踪原因と異魚島の伝説について調べ始める…。

回想…
男たちは漁に出たきり、船は帰ってこず、ナムソクは島唯一の男性となっていた。自分もこのままでは異魚島に命を取られてしまうと恐れたナムソクは恋人に必ず戻ると言い残し、島を去っていた。ソウルで大学を卒業し、アワビの養殖を始めるために帰郷する。一度は成功するものの、環境汚染で全滅し、繁殖方法を模索するが、ままならず、またソウルへ戻り新聞記者を始めていた。そして、観光船で失踪してしまった…。

監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の22作目。ギヨン監督には珍しい文芸作品。鬼才度は低めだが、医学の道を歩んだ経歴を感じさせる生物学的なテーマであり、私を虜にさせた一本である。
ギヨン作品の多くに出演し、眼力のあるイ・ファシパク・チョンジャが酒場役とムーダン役を演じ、ハマり役。癖のありすぎるキャスティングも見どころであり、タイトルに“女”が入っていないが、女性の苦悩をとことん掘り下げている。

iodo2.jpg失踪したナムソクは済州島近くの小さな島の出身であり、チョンギョルともう1人の男性はその島を訪ねた。生前のナムソクを知る人たちを一軒一軒訪ね、聞き回るうちに、ナムソクの過去と異魚島伝説が明らかになるというミステリー作品。
失踪原因の謎解きが主軸となり、男たちはどうなったのか、ナムソクの恋人は誰だったのか、恋人はその後どうなったのか、女たちの生活ぶり…など、現在と回想、幻想が入り乱れた構想になっており、あまり観客にやさしい作品ではない。映画字幕による2度目の鑑賞だが、あまりにも壮絶な人間ドラマなため、どれも現実とは考えにくく、どこからが幻想なのか自分なりの解釈に至っていない。

済州島同様、漁業が盛んな島であり、女たちは海女として海に潜り、男たちは漁船に乗って漁にでて生計を立てていた。しかし、漁に行ったきり船は帰ってこず、ナムソク1人を残し島に男はいなくなってしまっていた。島に残された女性たちは“異魚島”を見たから戻ってこれないという伝説を信じ込んで暮らしていた。長い部族社会で生きていたムーダン(巫女)の伝統と伝説が作り出した歪んだ社会を背景としている。

テーマは、“繁殖”。チュンギョルの妻は不妊に悩んでおり、精子を冷凍保存し、人工授精するというエピソードが冒頭から使われている。ナムソクの出身島でも男不在のため、子孫繁栄に苦しめられていた。子孫繁栄のために連れてこられた男性たちは、ムーダンから海女を数人ずつ割り当てられ、妊娠させる対価として彼女らの稼ぎで遊んで暮らしている。監督自身も妻から経済的援助を受けながら映画製作をしていたということもあり、やはりギヨン作品での男女の立場は普通の視点とは違う。女たちが男を求め、奪い合う姿は執念というより女性同士の意地のようにも感じるが、子を授かることができず、いわば女性としての役目を果たせない女性たちの苦悩を掘り下げている。アワビの養殖が環境汚染のために失敗し、新たに模索する姿も、そんな苦しむ女性たちの苦悩を反映させている。

印象的なのがムーダンの存在である。島での重要事項は全てムーダンの祈りによって取り決められ、翻弄されている女性たちの姿が強烈に描かれている。パンソリの力強い歌声がストーリーを引き立てていて、何よりも生命力の強さを感じさせる赤のチョゴリが艶めかしい。

<鑑賞> 2010、2012/3/13
初版:2010/6/20
最終版:2012/3/15

陽山道 <1995/韓> ★★★☆

yong.jpg
陽山道
1955/90min/韓国
ドラマ、ロマンス
監督:キム・ギヨン
出演:キム・サンファ、チョ・ヨンス、キム・スンホ、パク・アム
IMDb評価:5.8/10

社会度 ★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★★
鬼才度 ★★★

脚本 ★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★

yong1.jpg年頃のスドンとオクランは将来を約束していた。しかし、両班の息子ムリョンがオクランに一目惚れをし、2人の関係を壊し、オクランを奪おうとする。スドンとオクランはこっそり結婚を済ませようとしたが、ムリョンの手下に知られてしまい、喧嘩の末、スドンは誤ってその手下を殺してしまった。牢屋にぶち込まれるが、オクスンはスドンを救い出すため、ムリョンとの結婚を承諾してしまう…。

監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の2作目。現存する最も旧いフィルムとされていたが、デビュー作「死の箱(1955)」もフィルムが発見されたようで、何らかの形で観れる日が来ることを切望。
本作に至っては大きく欠損している箇所はなく、繋ぎ目の粗さは多少あるが、音声が途切れる程度でストーリーを追う上ではさほど支障はない。

yong2.jpg舞台は朝鮮王朝時代。封建社会を背景とした三角関係の末の悲劇を描いている。平民をストーリの中心に置き、両班との身分差や理不尽な社会も浮き彫りにしている。半世紀以上も前の作品であることを考慮すると、かなり型破りなストーリーであり、2作目にしてすでにギヨンワールド炸裂。

抱擁のシーンはあってももちろんラブシーンはない。この時代の婚前カップルに肉体関係はないと推測されるが、オクランに迫り拒否されるといったシーンもあり、2人の恋仲の深さや奥ゆかしさが感じられる。ところが、純愛をベースとしていながら、ギヨンの手にかかると清らかさも甘酸っぱさもなく、あたかも不倫の泥沼の末の悲劇のような展開。両班のせいで2人の運命は引き離され、泥沼化していく様とオクランの心情をクドいほどに掘り下げていく。

“陽山道(ヤンサンド)”とは、日本語で検索すると焼き肉店しかヒットせず、知り合いの韓国人に聞いても答えは様々かつ曖昧。掘り下げて調べてみたら、古くから歌われている京畿地方民謡だそうで、男女カップルの間に両班が入り込み、泥沼化していく三角関係の末の悲劇を歌った歌だという。まさに歌通りのストーリーだが、おそらくギヨン監督らしい濃い味付けにはなっているのだろう。劇中でもサムルノリやカヤグムの演奏が効果的に使われ、パンソリの独特な歌声が感情起伏の激しいストーリー展開を盛り立てている。歌詞が理解できればもっと感情移入できたかと思うと、少々悔やまれる。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/2
[サイト内タグ検索] キム・ギヨン監督 パク・アム

殺人蝶を追う女 <1978/韓> ★★★★

nabi.jpg殺人蝶を追う女
1978/110in/韓国
ホラー、SF
監督/脚本:キム・ギヨン
脚本:イ・ムヌン
出演:キム・ジャオク、キム・ジョンチル、キム・マン、ナムグン・ウォン、イ・ファシ、キム・マン、パク・アム
IMDb評価:6.7/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★★★
宗教度 なし
民族度 ★★
鬼才度 ★★★★
脚本 ★★★★ 
演出 ★★★
演技 ★★

ストーリー① (①と②は結末に触れています)
学生のヨンゴルは友人たちとピクニックに来ていた。蝶を追いかけて捕まえると、ある謎の美女に出くわす。オレンジジュースをご馳走になったが、その美女は自殺願望がある女性で、毒が盛られていた。誰でもいいから一緒に死にたかったと言う。幸い、ヨンゴルは一命を取り留めたが、その後、自分も自殺願望が芽生えてしまった。自殺を試みようと思った矢先に、見知らぬ中年男性が“意思”という本を売りにやって来た。その男は生きる“意思”について語るが、自殺をしようとする者にはそんな話は響かない。口論の末、ヨンゴルはその男を殺してしまった。ところが、翌日もその男はやって来た。その後何度殺しても、その男は蘇る。最後には、骸骨の姿で「生は意思だ~!」と叫びながら、灰になって行った。

ストーリー② (①と②は結末に触れています)nabi2.jpg
ヨンゴルは友人たちと洞窟へ出かけ、白骨体を見つける。こっそり家へ持ち帰ると、命が吹き込まれ、謎の美女が現れた。両親が決めた相手との結婚したくなく、死を選んだが、人間の肝臓を食べれば、またこの世に戻ってこれると言う。ヨンゴルの肝臓を欲しいとせがむが、ヨンゴルは頑なに拒んだ。その代わり一緒に暮らすために、アルバイトとして家で米菓子(円盤型)を作ることにした。機械を稼働し、ポン、ポン…と次々と作られた米菓子が宙を舞う中、2人は結ばれた。しかし、ヨンゴルの肝臓を諦めた美女は、再び骨にもどってしまった。

ストーリー③
ヨンゴルは彼女の骨を持って、考古学の教授を訪ねる。すると、教授の娘は①で毒入りオレンジジュースを飲ませた美女の友人だった。彼女の死がきっかけで教授の娘も自殺願望が芽生えていた。一方ヨンゴルは、3人の死をきっかけに生きる活力にみなぎっていた…。

nabi1.jpg監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の22作目。主演はギヨン作品3作目となるキム・ジョンチル。ドラマ「私の名前はキム・サムスン」「コーヒープリンス1号店」など日本でもお馴染みのキム・ジャオクが教授の娘役として出演している。ギヨン作品には欠かせないイ・ファシパク・アムもかなりクセのある役柄で強烈な印象を残している。

展開は初期のポランスキー監督を彷彿とさせ、ストーリーは江戸川乱歩、演出はアンジェイ・ズラウスキ監督といったところだろうか。私が観たギヨン8作品の中で一番カルト的でシュールで、ブラックユーモアに溢れる。検閲を通過させるためなのか、他の作品にはなかったどこか隠喩的表現方法であるが、ギヨンらしい独特な感性でキャラクターそれぞれの死生観を掘り下げていく。米菓子が宙を舞う中でのセックス・シーンは噂に聞いていた通りの名珍場面だった。
キム・ギドク監督も「悲夢」でラストに蝶を用いているが、本作でも蝶は死の世界へと誘う役目を持っており、“殺人蝶”といった独特な表現を用いている。教授の娘の趣味が蝶の標本だったり、教授は考古学の権威だったり、死を意識させる演出もギヨン作品らしい。“殺人蝶を追う女”とは自殺願望がある女のことである。

現実なのか、夢なのか、はたまた妄想なのか…解釈は観る側の想像に委ねられているが、結局のところ、そんなのはどうでもよく、ギヨン作品では珍しく清々しい爽やかなエンディングとなっている。独立しているように見える3つの話だが、女性たちの死生観を通して、1人の青年が失いかけた“生きる意思”を見出す過程を描いており、全体を通じて、心の更生と希望が感じられる展開になっている。

キム・ギヨン監督作品を観ていつも思うのは、かなり発想がぶっ飛んでいて、開いた口が塞がらない状態になるのだが、実は至って真面目なことを言わんとしているということ。何度も生き返る男をねちっこく描くくどさは伝えたいことが明確であることの裏返しでもあるのだろう。男は“生きる意思”を力説しているが、「“意思”次第で、人生には生きる意味ができる」というメッセージは、いつの時代でも通ずる普遍的な問いかけであり、自殺者が多い韓国の作品となると更に感慨深いものがある。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/6

玄海灘は知っている <1961/韓> ★★★★

KMDbの今月の特集(無料配信)はなんとキム・ギヨン監督。しかも11本も。どれだけ待ち焦がれていたか。
鑑賞済み4本も含め、全作観る気満々でいるのだが、内臓を引っかき回される感覚…「陽山道」と本作のたった2作でかなり気が滅入った。
この調子で11本も立て続けに観たら、ノイローゼになりそうだけど、こんな貴重な機会を見逃すわけにもいかないし…
おそらく全作観て、全作記事書きます(or書き直します)!ので、他の作品のアップはしばらくない、と思います。

genkainada.jpg
玄海灘 은 알고 있다 /玄海灘は知っている
1961/韓国
恋愛、戦争
監督: キム・ギヨン
出演: コン・ミドリ、キム・ウンハ、イ・サンサ

社会度 ★★★
哲学度 ★★
宗教度 なし
民族度 ★★★★★
鬼才度 ★★★★

脚本 ★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★★


太平洋戦争の真っ只中の1944年。多くの朝鮮人学生たちが志願兵として半ば強制的に徴兵された。その中にいたア・ロウンは名古屋の日本軍輸送部隊に入隊した。ある日、秀子という日本人女性と出会い、恋に落ちてしまった。日本人と朝鮮人の恋愛など許されるはずもなく、秀子の母親はひどく反対した。しかし、秀子の妊娠を知り…。

genkainada1.jpg監督は韓国映画界を代表する怪物キム・ギヨン監督の10作目。パク・チャヌクやキム・ギドクといった世界的映画監督を輩出する下地になっていると言われている。長らく失われていたフィルムが次々と発見されたり、復元がされたり、観る機会が増えるのはファンとしては有り難いこと。本作に至っては東京国際映画祭時、2か所の音声と映像の欠落箇所はがあり字幕補足とのことだが、私がIMDbで観たのは音声だけの欠落が2か所で字幕なし。欠落映像が復元されたのか、そのままカットされたのかは不明。いずれにしても観れたことに感謝。

日本軍に入隊させられた朝鮮人兵士の視点から旧日本軍や日本を見つめた作品。私にとって7本目のキム・ギヨン作品であり、今までは女性を主人公にした作品ばかり観てきたが、本作のような男性を主人公にした作品は初めてであり、ユーモアを感じたのも初めてかもしれない。
前半は輸送部隊での様子がメインだが、中盤からは日本の一般家庭を舞台とし、日本人と朝鮮人の壮絶な恋愛ストーリーに移行していく。日本軍からの差別、戦争、恋愛といった苦難にも立ち向かっていく青年のたくましさが前向きに描かれている。

genkai2.jpgほとんどが日本人という設定だが、全員が流暢な韓国語を話しているため、誰が日本人約で誰が朝鮮人役なのか見分けがつき難い。ア・ロウンに靴の底についた犬のフンを舐めさせたり、暴力シーンもあり、民族差別的な発言も多少あるが、下っ端に対するイジメと捉えることもでき、反日だと気分を害することはなかった。日本に対する批判というよりは戦争そのものを訴えているような気がした。北朝鮮映画のように日本人全てが悪人として描かれていないことにも好感。

秀子があまりにも積極的で奥ゆかしさはどこにもない。この時代の日本人女性とは程遠いキャラクター設定ではあるが、ギヨン監督が描く女性像が常に魔性の女であることを考慮すると、比較的控えめということだろうか。

唐突に挿入される空襲や空爆の様子が何ともリアル。拍車がかかる終盤の展開の凄まじさは毎度のことだが、ラストは地獄絵図そのもの。とんでもない恐怖のクライマックスを見せつけられた。この2人の恋の行く末は、“玄海灘は知っている”…のか。

<鑑賞> KMDb、今月はキム・ギヨン11作品が無料配信 2012/3/4
[サイト内タグ検索] キム・ギヨン監督

301 302 <1995/韓> ★★★★★

301302.jpg
301 302
1995/100min/韓国
ミステリー、スリラー
原作:チョン・ジョンイル 「料理士と断食家」
脚本:イ・ソグン
監督:パク・チョルス
助監督:パク・ヨンフン
出演:パン・ウンジン、ファン・シネ  
IMDb評価:6.7/10

社会度 ★★★
哲学度 ★
宗教度 なし
民族度 ★★
衝撃度 ★★★★

脚本 ★★★★★ 
演出 ★★★★
演技 ★★
編集 ★★★★

料理が得意で異常なほどに情熱を傾けているユニは、夫に毎晩手の込んだの手料理を振る舞っていた。食事の度に感想を求められる夫はそんなユニに嫌気がさし、若い女と不倫を始めてしまう。ユニは夫の帰りが遅い時は2人分食べてしまうという生活を繰り返し、過食症となってしまっていた。偶然夫の不倫現場をみてしまい、腹いせにとったある行動が原因で離婚をすることとなり、とあるマンションの302号室で1人暮らしを始めていた。ある日、隣の301号室にモデル並みにスリムな女性ソンヒが引っ越してきた。自分のように太らせてやろうと、毎日食事を運ぶようになった…。

301302-2.jpg監督は、韓国を代表する映画監督パク・チョルスの19作目。主演は、「学生府君神位」のパク・ウンジン、「産婦人科」のファン・シネ。パク・チョルス監督でお馴染みの2人である。初めて世界に配給された韓国映画でもあり、日本では当時VHS(字幕版と吹き替え版)が発売され、DVDもでている模様。個人的には、世界に誇る韓国映画の1つだと思っているが、好き嫌いが大きく分かれる作品でもあり、おそらく世間ではこういう映画を趣味の悪い映画というのだと思う。キム・ギドクやパク・チャヌク、ギャスパー・ノエあたりが好きな人にだけ強くオススメします。

肉屋の娘で家で起こった出来事がトラウマとなり、食もセックスも拒絶する拒食症の301号室の女。
料理を得意とし、食とセックスに異常な情熱を傾ける過食症の302号室の女。
生い立ちも性格も好みも対照的な2人を比較させるかのように描き、孤独という共通点が2人を結びつけていた。情が芽生え、初めは自分のように太らせることが目当てだったが、生い立ちを聞くにつれ拒食症を治そうとする優しさが招いた悲劇。現代にも通ずる“過食症”と“拒食症”をテーマに社会の歪みを独自の切り口で描いた作品。物語は、301号室に住むソンヒが行方不明となり、302号室のユニの部屋に警察が訪ねてくるところから始まる。料理の得意なユニは鶏のから揚げでもてなし、301号室のソンヒとのことを語り始める。回想シーンがメインとして描かれ、301号室のソンヒと302号室のユニを中心とし展開していく。

301302-1.jpg料理好きで、新しい食材を試してみたいという好奇心をうまく利用した大胆なストーリー展開はかなりの衝撃で、心の闇を抉り出すような感覚を覚えるが、本作の一番の特徴はカメラワークといっても過言ではない。韓国映画は他国のより食事シーンが多く、食へのこだわりも強いと感じるが、本作は食を題材にしていながら、目でも楽しい料理を作る調理風景は、解剖実験を見ているかのよう。スーパーに陳列された野菜や果物、パック詰めされた精肉ですらかなりグロテスク。食事中の口元のクローズアップを多用しているが、目を背けたくなる気持ち悪さがあり、一気に食欲が減退する。しかしながら、ホラー映画を観たくなるのと同様、興奮が掻き立てられ刺激される感覚はクセになる。結末はあまりにも衝撃だが、それ以上の余韻と切なさを残している。結局は何にも解決されていない皮肉そのものが現実なのだろうか。

<鑑賞> 2010/6/25、2012/2/20
初版:2010/6/25
最終版:2012/2/27
[タグ未指定]

トガニ 幼き瞳の告発 <2011/韓> ★★★★☆

togani.jpg
るつぼ/도가니/Silenced
2011/125min/韓国
ドラマ
原作:コン・ジヨン(孔枝泳)
監督/脚本:ファン・ドンヒョク (監督2作目)
出演:コン・ユ、チョン・ユミ、キム・ヒョンス、チョン・インソ、ペク・スンファン、チャン・グァン、キム・ミンサン、イム・ヒョンソン
IMDb評価:7.0/10

社会度 ★★★★
哲学度 ★★★
催涙度 ★★
宗教度 なし
民族度 なし


2000年から5年間、光州の仁和学校(聴覚障害者学校)で巻き起こった性的暴行事件。作家コン・ジヨンは2008年にこの事件を小説化して、世の中を驚愕に陥れた。その当時ポータルサイトの連載物としてスタートしたこの小説は、途方もないアクセス数を記録して話題の中心となり、2009年には読者らの反応で本が出版された。そして2年が過ぎた今、俳優コン・ユによって映画化されるに至った。コン・ジヨン作家は「執行猶予で釈放された彼らの軽い刑が手話で通訳された瞬間、法廷は聴覚障害者が出す聴こえない叫びで埋め尽くされた」という1行の新聞記事に「占領された」とし、彼女の執筆意図を明らかにしたことがある。@innolife

togani2.jpg久々に重厚感のある韓国映画。監督は、「マイ・ファーザー」に続く2作目となるファン・ドンヒョク。原作は「私たちの幸せな時間」のコン・ジヨン。主演は「コーヒープリンセス1号店」のコン・ユ。正直、あまり好きではないというか興味がなかった俳優さんだったが、本作で一気に株上昇。真摯な態度と誠実さに心打たれた。

原題“トガニ(日本語では、るつぼの意)”の意味を韓韓辞書で引いたのを訳してみると
①貴金属を溶かす器
②多くの人の感情が非常に興奮したり緊張した状態を比喩的に言う言葉
③膝るつぼの略
④牛の尾についた肉 …といった意味がある。

日本では“興奮のるつぼ”“熱狂のるつぼ”といった使い方をするが、韓国でも同じような使い方をするようである。

togani1.jpg舞台はある聴覚障害者学校。純真無垢な子どもたち、しかも聴覚障害児ということを悪用し、校長や教師たちが非人間的な性暴行と虐待を犯した実際の事件を描いた作品。生徒たちの異変に気付いた新任教師が真実を突き詰めるという話だが、腸が煮えくりかえるとはこういうことを言うのだなというのが率直な感想。作家コン・ジヨン氏によると、②の意味で付けたタイトルとのことで、言葉に言い表せない憤りと感動といった様々な感情の“るつぼ”が押し寄せる内容だった。

事件そのものも卑劣だが、明るみになりかけた事件がもみ消されていく過程には誰しもが怒りが込み上げてくるだろう。公になっていないだけで、韓国に限った話ではない。コン・ユ演じる美術教師が自身の立場を省みず奮闘する姿、体験したことを告白した子どもたちの勇気に感動した。様々な感情が押し寄せてくる演出もさることながら、表情と手話で感情表現を可能にさせた子どもたちの演技が素晴らしく、クライマックスとなる法廷シーンでは涙が止まらなかった。

貴金属を溶かす器とは言わば何でも溶かすことができて、跡形もない状態にしてしまう。その時の掻き乱される感情が派生し、②の意味ができたのではないかと思っている。学校という名の“トガニ(器)”で想像すらできない悲痛なことが繰り広げられ、その事実がお金、権力によって溶かされ、抹消されていく社会を比喩的に皮肉ったタイトルとも言えるのではないだろうか。

<鑑賞> 2011/12/24
[タグ未指定]

(未) 願いを言ってみて <2011/韓> ★★★

negai.jpg
소원을 말해봐
2011/韓国
犯罪、エロス
監督/脚本/編集:パク・ボムス
出演:イ・テヒョン、シウォン、ハル



社会度 ★★
哲学度 ★★
官能度 ★
不快度 ★★
ゴア度 なし



negai1.jpg合コン帰りの女性2人はタクシーを拾う。助手席にあった栄養ドリンクを売り物だと勘違いし飲んでしまい、タクシーの中で寝込んでしまった。目を開けると、地下倉庫のような所に拉致監禁されていた。犯人はタクシー運転手。レイプの後いつも1つだけ願いを聞いてくれる。女性たちの要求は始めは食事やトイレといった生活最低限のものだったが、徐々にマットレス、雑誌、健康器具といった生活用品を要求するようになり、快適に過ごし始める…。

韓国に“エロ映画”というジャンルがあることを初めて知った。(韓国語でもエロという。)どうやら監禁強姦といった設定の日本のポルノのような映画のことを指すらしい。年齢制限はあるが、ポルノ映画ではない。韓国語の記事しか見当たらず、文面からどれも韓国人男性が書いていると思われるが、日本のポルノ映画が引き合いに出されたり、とにかく悪評ばかりが目立つ。ポルノのような性描写を期待したがゆえの酷評だと信じたい。
監督、俳優情報は見つからなかった。偶然にも少女時代の曲と同じタイトルだが、何の関連性もない。

negai2.jpg20歳の時に初体験を済ませたが、未だに女性心が理解できず、観察して、本を出したいと言う男は、女性を飼育するかのように倉庫にかくまう。完全に恋人だと錯覚し、女性が泣きわめく声を喘ぎ声だと勘違いし、排泄物の匂いに興奮するといった異常性も見せている。

監禁された女性はもともと友達同士で、同じ部屋の隅に鎖で繋がれ監禁されている。初めは互いに気遣いを見せていたが、徐々に嫉妬心が芽生え、願いを聞いてくれる男を取り合うようになる。“アジュシ(おじさん)”という呼び方も“オッパ(お兄さん)”に変わり、女性たちのほうから男を求めるようになった。嫉妬心からはライバル心が芽生え、関係は悪化していく。

主旨となるのは犯罪に走る異常な男性心理ではなく、むしろ監禁された女性心理に着目しており、ストックホルム症候群が及ぼす特殊な感情の変化の検証である。
確かに道徳的には問題はあり、女性としては全く共感できないが、ほぼ3人の出演で舞台もほぼ監禁倉庫のみでここまで膨らませた話には関心させられた。人間の精神状態を利用した本末転倒な展開も少なくともオリジナリティーがあり、韓国映画では久々に面白い掘り出し物だった。詰めが甘いと思われる点も多いが、最近の韓国映画はインディーズのほうが断然面白い。

<鑑賞> 2012/2/8
[サイト内タグ検索] 日本未公開

学生府君神位 <1996/韓> ★★★

学生
学生府君神位/Farewell My Darling
1996/119min/韓国
コメディ、ドラマ
監督/脚本/出演:パク・チョルス
出演:チェ・ソン、ムン・ジョンスク、クォン・ソンドク、チョン・ハヒョン、チュ・ジンモ、パン・ウンジン、パク・チェファン、チュ・グィジョン、ソン・オクスク 
IMDb評価:6.0/10


民族度 ★★★★★
宗教度 ★★★★★(仏教)
社会度 ★★★
ゴア度 ★(豚の捌き方がグロテスク)
ブラック度 ★★


学生2韓国のとある片田舎。父親は朝早く自転車でどこかへでかけるが、帰らぬ人となってしまった。親戚一同には電話で訃報が知らされ、みな葬儀に駆けつける。5日間に渡る地方固有で大規模な葬儀が始まる…。

韓国を代表するパク・チョルス監督の第20作目。出演はお馴染みのパン・ウンジンを始め、イ・マニ監督作品でお馴染みのムン・ジョンスク他、豪華な個性派俳優が顔を並べている。

父が亡くなるまでの経緯と、5日に渡る“お葬式”で親類縁者たちが繰り広げる騒動や人間関係をユーモラスにシニカルに描いた作品。タイトル“学生府君神位”は日本でいう戒名で、通常は故人の職業を書き入れるが、社会的地位のなかった人は“学生”を用いるようである。

学生1私が住んでいる地域(一応東京)も90年代後半まではほとんどが自宅葬で、近所の人たちが集まり煮物やおにぎりなどを作る光景を目にしていたが、まだ地方によってはそういう風習が残っている所はあるのだろうか。おそらく韓国も古いしきたりは薄れてきているだろう。もしかしたら韓国の若い人たちの中には初めてみる光景の人もいるかもしれない。日本よりも長い5日に渡る葬儀の一部始終が描かれ、興味深かった。印象としては日本の葬儀を時間をかけて丁寧に行うといった具合で手順はほとんど変わらない。プロセスの補足説明が入るので非常にわかりやすい。

主軸となるのは父親の葬儀であるが、サブストーリーとして描かれる人間模様がとにかく面白い。近所の女性たちは庭先で弔問客に振る舞う料理を作る。豚を二匹調達し、一匹をその場で捌き調理している間、もう一匹が逃げてしまったり、息子の1人がキリスト教信者で聖書を読み始めてしまったり、喫茶店の女たちが暴れまわったりと、1人の死を通して見えてくる人間ドラマを少々大袈裟ではあるが、韓国らしい情に溢れた作品となっている。

“おくりびと”の英題が“Depature”だったが、本作でも出発といった送り方をしているのが印象的。それにしても韓国女性は「アイゴ~アイゴ~」とほんとによく泣く。

<鑑賞> KMDBにて(12月無料配信でした…) 2011/12/4
[タグ未指定]

(未) 寄生霊 <2011/韓国> ★★

kiseng.jpg
寄生霊/기생령
2011/92min/韓国
ホラー
監督:コ・ソクジン(監督デビュー作)
脚本:キム・ユラ
出演:ハン・ウンジョン、ヒョミン、ノ・ミヌ、ファン・ジヒョン、イ・ヒョンソク


社会度 ★
哲学度 ★★
宗教度 ★
ゴア度 ★★




kiseng2.jpgある夫婦が残酷な死を迎えた。1人息子ビンは孤児になってしまい、叔父夫婦と妻の妹が移り住むことになった。時折見るビンの異常な行動や表情にただならぬ不安を感じ始めた矢先、妻とその妹は悪夢にうなされるようになる。そして、学校でビンをいじめているリーダー格の男の子が首をボールペンで刺されると言う事故が起こった。目撃者は多数おり、犯人はビンであったが、本人は自分でなく、ある男の子だと言い張る。しかし、そんな名前の男の子は学校にはいない。屋敷の隣にある鍵がかかっている小屋が気になり、鍵家さんを呼んで開けてもらうと、中にはお供え物や巫女の行いを記した書物などが保管されており、不吉な予感が漂っていた…。

監督は本作がデビューとなるコ・ソクジン監督。出演は、「神機箭」の ハン・ウンジョン、アイドルグループT-araのヒョミン、「霜花店」・ドラマ「パスタ」のノ・ミヌ。ヒョンミンは本作が映画デビューとなり、他のメンバーも友人役として出演している。

kiseng1.jpg小屋にあった資料には世にも恐ろしい事実が記されていた。ビンの両親はかつて子ども欲しさに巫女の力を借りて、その儀式を行っていた。儀式の犠牲になった魂が寄生霊となって彷徨うという話である。
母性本能といった欲望を利用した民俗信仰を紐解く展開は興味深く、オチの衝撃もなかなか面白い。演技にも問題はないのだが、韓国ホラーとしてはインパクトに欠ける物足りなさを感じた。おそらく演出の問題かと。T-araかノ・ミヌfan向けといったゆるい感じも否めない。

韓国の民俗信仰を題材にしたホラーは個人的には真実味があって好奇心やら恐怖心が掻き立てられるのだが、本作全く怖くなかった。切断された手足や頭部といった描写が冒頭からあるが、スプラッターもなければゴア度も低い。

<鑑賞> 2012/2/7

[サイト内タグ検索] 日本未公開

266. 二人の女 <2010/韓> ★★★

two.jpg
二人の女/두여자
2010/105min/韓国
ロマンス
監督/脚本:チョン・ユンス
出演:シン・ウンギョン、チョン・ジュノ、シム・イヨン



官能度 ★★★
哲学度 ★★★
社会度 ★★
民族度 ★




two2.jpg大学建築工学教授ジソクと産婦人科医ソヨン夫妻の10回目の結婚記念日。思い出のバーを貸し切り、妹夫婦とお祝いをしていた。ソヨンは夫のギターを弾き語りしようとケースを開けたら、コンドームが入っており疑惑を抱き始めた。夫婦間では使わないからである。ある日、夫の研究室を訪ねた際、ふとPCを覗いてしまった。ある学生からのチャットの内容に、夫の相手であると確信したソヨンは尾行を始め、ヨガの講師であることを知る。素知らぬ顔でジムに登録し、不倫相手と接点を試みる…。

監督は、「妻が結婚した」のチョン・ユンス。出演は、「花嫁はギャングスター」のシン・ウンギョン、「マイ・ボス・マイ・ヒーロー」のチョン・ジュノ、「パジュ」のシム・イヨン。

チョン・ユンス監督は、「今、愛する人と暮らしていますか?」では2組夫妻の四角関係、「妻が結婚した」では夫妻+男の三角関係、そして本作では夫婦+女の三角関係、どれも大人の交差する恋愛を描いている。3作品の中で本作が一番性描写が過激であり、結婚10年の夫婦とは思えないほど演出の凝ったベッドシーンには不自然に見えるが、仲の良さを強調したかったのだろう。3人のヌードをウリにしている宣伝方法にも首をかしげてしまうが、3作品の中では一番まともな倫理観のもとで展開していく。

two1.jpg韓国映画ではありきたりな三角関係であるが、時代の変化を感じる。妻は医師であり、金も名誉も手に入れている女性。別れても金銭的な苦労はしないという点においては男女平等であり、決して立場は弱くない。しかし、10年の結婚生活にも関わらず不妊という事実に妻は引け目を感じていたのかもしれない。不倫行為が許せず離婚を決意したというよりは、3人にとってどうするのが一番良いのかを冷静に見極めようとする姿には知性すら感じる。

妻は、夫とは別れることを前提に不倫相手に近づき、夫との情事を聞くわけだが、韓国特有の起伏の激しい感情のぶつかり合いではなく、冷静に不倫と向き合おうという姿勢を見せている。しかし、愛人と接点を持てば持つほど情が湧き、殺したいほど憎かった愛情に友情が芽生えてしまう。本作の主人公は“2人の女”であり、2人の友情が事を更に複雑にさせ、ストーリーにも面白さを持たせている。妻の職業、産婦人科医という設定が終盤でうまく使われており、それに恐怖をプラスさせている。夫への執念が導いた意外性のあるオチが私の評価を一気に高めている。

<鑑賞> 2011/11/1
[サイト内タグ検索] 日本未公開 チョン・ジュノ

265. 愛してる、愛してない <2011/韓> ★★★★

愛してる
愛してる、愛してない/사랑한다, 사랑하지 않는다
2010/韓国
ドラマ
原作:井上荒野(いのうえあれの)「帰れない猫」
監督:イ・ユンギ(監督5作目)
出演:イム・スジョン、ヒョンビン、キム・ジス、キム・ジュンギ、キム・ヘオク、ハ・ジョンウ


共感度 ★★
哲学度 ★★
社会度 なし
余韻度 ★★★



日本に出張に行く彼女ヨンシンを空港まで見送る車内、ヨンシンは平然と「家を出ていくわ」と切り出す。ある程度予測していたのか、「新しい男ができたのか?」と聞き返す彼氏ジソクに対し、ヨンシンは「知ってたでしょ」と切り返す。ヨンシンの新しい彼氏が迎えに来る日、ジソクは彼女のために最後のおいしコーヒーを入れてあげる。そして、大事にしていたマグカップを丁寧に梱包し、荷造りを手伝う。最後の食事のためにレストランを予約したが、猫が家に迷い込んでしまい、それを理由に家で過ごすことになった。そして、夕食にパスタを作り始めたが…。

愛してる1本国よりもヨーロッパで高評価のイ・ユンギ作品。平 安寿子「アドリブ・ナイト」「素晴らしい一日」に引き続き、日本の小説を原作としている。出演はほぼ2人のみ。(私が大好きでお目当てのハ・ジョンウは声のみの出演だった。)演技力なしでは到底間が持たない危険をはらんでいるわけだが、非常に奥深い作品に仕上がっている。演技に定評のあるイム・スジョンはもちろんのこと、ヒョンビンがここまでやるとは驚いた。本作を最後に入隊してしまったが、除隊後の活躍には注目したい。

顔色を覗うとか行間を読むといった監督独特の間が重要な役割であり、監督のスタイルを知らずにヒョンビン目当てで観てしまうと多くの人が睡魔に襲われてしまうでしょう。別れを切り出す序盤の車のシーンを過ぎてしまうと、台詞は極端に少ない。舞台となるのは2人が暮らす家の中のみで、生活音しか聞こえない。ラジオやテレビから流れるニュースもストーリーに関連しており、聞き逃せない。

荷造りをしながら共有した空間や思い出に思いをはせる2人。アルバムなど効果的に使い、回想シーンに頼ることなく2人が寄り添った月日を感じさせる演出がなされている。一度は別れを切り出したものの、「愛してる、愛してない、愛してる、愛してない…」と自分に問いかけ、答えを出そうとしているヨンシンの葛藤が静かに描かれる。

愛してる2タイトルの日本語訳は“愛してる、愛してない”が自然だが、サランヘヨ(사랑해요)ではなく、サランハンダ(사랑한다)が使われているところに注意すべきだろう。直訳は、“愛してるんだ、愛してないんだ”のほうが近い。「愛してる、愛してない…」と花占いで花びらを一枚づつめくるのではなく、「愛してるんだ。いや、愛してないんだ。いや。愛してる。…」と自身に言い聞かせ、もう一度思い悩む姿が感じ取れる。

声を荒立てて怒ることなく、いたって冷静なジソク。共に過ごす最後の日をいい思い出にしようと取り繕っていたように思う。一方、引き止めてもくれないジソクへの苛立ちを隠せないヨンシン。女って否定して欲しくて思ってもいないことを口走ってしまうことがよくある。「好き」って言って欲しくて、わざと「嫌いになった?」って聞いてみたりね。男女の違いがよく表現されているのが興味深い。

2人の沈黙を埋めるかのように降り続ける雨が切ない。原作「帰れない猫」(未読)の名残を感じさせるかのように猫も登場し、ヨンシンの心境を暗示させ、結末は観る側の解釈に委ねている。

印象的なのが、少ない台詞の中で頻繁に使われていた「ケンチャナヨ(괜찮아요)」という台詞。日本語に訳してしまうと“大丈夫”なのだが、ジソクが頻繁に使っていた“ケンチャナ”の一言一言にはもっと奥深いニュアンスがあり、懐の厚さや気遣いを感じさせてくれる。

<鑑賞> 2011/10/22

264. 情事 <1998/韓> ★★

affair.jpg情事/정사/An Affair
1998/韓国
ロマンス
監督:イ・ジェヨン(監督デビュー作)
脚本:キム・デウ
出演:イ・ジョンジェイ・ミスク、ソン・ヨンチャン、キム・ミン、チョン・ギョンスン、チェ・ウヒョク  
   
哲学度 ★★
社会度 ★
官能度 ★

簡単に。
日本でレンタルしてますが、VHSだけかも。


affair2.jpg37歳のソヒョンは平凡な主婦で、建築家の夫と10歳の息子と穏やかに暮らしていた。アメリカに暮らしている妹が婚約をした。式やら新居を探す時間のない妹は姉にその準備をお願いした。姉ソヒョンと妹の婚約者ウインと一緒に準備を進めていくうちには次第に…。

ぺ・ヨンジュンのデビュー作「スキャンダル(2003)」で知られるイ・ジェヨン監督のデビュー作。脚本を担当したキム・デウ氏は後に、「恋の罠(2006)」「春香秘伝 The Servant 房子伝(2010)」で監督を務めている。ソヒョン役は「スキャンダル」「お熱いのがお好き」のイ・ミスク、ウイン役は「ハウスメイド」のイ・ジョンジェ

affair1.jpgソヒョンは既婚者でウインより10歳も年上、しかも義理の姉になろうとする人である。未だ“姦通罪”がある韓国での不倫話なので、どんなお咎めがあるのかが観たくて鑑賞したが、そういう趣旨ではなかった。立場をちゃんとわきまえていながら、感情を抑えきれず“情事”にふけてしまう2人の心境を描く。

初めて会ったときからお互いを意識し、気持ちを抑えているのが見て取れる。ソヒョンは何不自由のない生活をしているが、結婚、出産を終えてからは、夫からは女として見てもらえないことに不満を持っていたように感じる。そんな時現れたウイン。タイトルから想像の通り、“情事”にふけてしまう話。法事や息子のバスケの試合を抜け出してまで会いに行ったり、ゲームセンターで情事にふけてしまったり、少々作り過ぎな展開ではあるが、叙情的で90年代の作品にしては扇情的。とはいえ、性描写は控えめで、当時はともかく今観ても新鮮味はない。

ソヒョンは自分を女として見てくれる人なら誰でもよかったような気がするが、ラストは2人の運命を感じさせる。でも、この結末、世の女性たちを不倫地獄に導いてしまわないだろうか。

<鑑賞> 2011/10/21
[サイト内タグ検索] イ・ジョンジェ イ・ミスク

263. ブラインド <2011/韓> ★★★★

blind.jpg
ブラインド/Blind
スリラー、ドラマ
2011/韓国
監督:アン・サンフン(長編監督2作目)
俳優:キム・ハヌル、ユ・スンホ、チョ・ヒボン



社会度 ★★
衝撃度 ★★
哲学度 ★★
ゴア度 ★




前途有望だった警察大生スアは不慮の事故で弟を失い、自身は失明をしてしまった。月日は3年経ち、スアは育った養護施設を訪れた帰りのタクシーで何かが車にぶつかった感覚を感じた。運転手は犬だと言い張るが、スアははっきり女性のうめき声を聞いていた。言い争いの末、運転手は目の見えないスアを1人残し立ち去ってしまった。
しかし、もう1人の目撃者がいた。キソブは自分の目ではっきり見たと証言し、感覚で記憶しているスアの証言とは食い違う。目の見えないスアの証言など誰も信用してくれないが…。

blind2.jpg韓国語の勉強を兼ねた暇つぶしで鑑賞したが、はっきり言ってほんとに面白かった。アン・サンフン監督の「アラン」に続く2作目となる。事件を解決する過程で、後天性障害を乗り越える姿が描かれる。
最近の韓国映画の傾向でもある派手すぎるアクションに頼り過ぎておらず、かつドラマな部分がしっかり描かれている。近年の韓国映画にしてはゴア度は低い。孤児院育ち、事故による後遺症、犬といった韓流作品が得意とする催涙性の高い素材を扱い、手に汗握るアクションが用意されており、いろんなジャンルがうまく融合されている。

自分のミスで弟を死なせてしまったことへの罪悪感、盲目になり今まで普通にできたことができなくなってしまったことへの苛立ち、序盤はスアの心境を重点にストーリーは展開していく。同情で涙を流させるような過剰な演出ではなく、むしろ強く耐え抜こうとするスアの姿に心打たれる。

blind1.jpg養護施設からの帰り道に遭遇した交通事故。目の見えないスアは目撃者にはなれず、何を話しても取り合ってくれない。ところが、あたかも見えているかのように刑事の特徴や癖、食べた物をずばり言い当て、担当刑事もスアの証言を信用せざるを得なくなる。
人間は何か失うと他の感覚が研ぎ澄まされるというが、スアも嗅覚と聴覚に優れており、車の匂い、シートの感触、運転手の腕時計の音、声を全て記憶していた。その記憶を掘り起こす作業で回想シーンが効果的に使われ、目撃者2人の食い違う証言が埋め合わされていく。

タクシーのひき逃げ事件はほんの一幕に過ぎず、同時に浮上してくるもう一つの事件。当然のことながら、スアは犯人に狙われるが、目の見えないスアは犯人がすぐ目の前にいることがわからない。携帯(多分iphone)の動画機能を駆使し犯人から逃げるシーン、電気を消して、犯人も目が見えない状態にさせ対等に対決するシーンは手に汗握る。序盤で描かれていた自分自身と戦うスアの姿はもはやない。障害を乗り越え犯人と戦う姿はたくましく映り、盲目であることさえも忘れさせる。

盲目のデメリット、メリットを活かしたしっかりした脚本で、マイナスポイントが見つからない。あまり好きではないキム・ハヌル、ユ・スンホのコンビだが、完璧なキャスティング。ますます青木さやかにしか見えないキム・ハヌルも難しい盲目の役で違った一面を見せている。まだまだ私には子役のイメージが強いユ・スンホも大人の演技で一皮剥けた印象。そして、刑事を演じるチョ・ヒボンの軽薄だが憎めないキャラクターが光っていた。スリラーでもお笑い要素が欠かせないのは韓流作品ではお決まりパターンだが、この方、出演数は多いものの、出番が少なく印象に残る作品が少ない。本作が良い転機になってくれることを願う。

<鑑賞> 2011/10/11
[サイト内タグ検索] 日本未公開 キム・ハヌル

262. 冬の蝶 <2011/韓> ★★★★

huyu.jpg
冬の蝶/겨울나비
2011/90min/韓
ドラマ
監督:キム・ギュミン(監督デビュー作)
出演:パク・ソヨン、チョン・スンウォン



催涙度 ★★
哲学度 ★★★
衝撃度 ★★★★
リアル度 ★★★






父親は病死し、11歳のジノは病気の母と2人暮らしをしている。友達ソンイルと山へ行き、まき木を集めては病気の母が市場へ売りに行き生計を立てている。そんなジノのささやかな願いは鶏肉を食べること。将来の夢は、一流の料理人になって、世界一おいしい鶏肉料理を母に食べさせることである。そして、ジノが最も恐れることは、病気の母が自分1人を残してこの世を去ってしまうことであった。いつものように友達が一緒に山へ行こうと誘いに来るが、ジノは冷たくあしらってしまう。朝食を食べたにも関わらず、少しでも空腹を満たそうとするソンイルのせいで、大事な母の取り分が少なくなるからである。
ところが、1人で山へ行ったジノは足を踏み外し山を転げ落ちてしまう…。

huyu1.jpg監督は脱北者で、「国境の南側」「クロッシング」、ドラマ「カインとアベル」などの作品にスタッフとして参加し、本作が監督デビューとなる。監督自身が実際に見聞きした実話を素材にしたノンフィクションだという。北朝鮮関連の話でハッピーエンドだとは思っていないが、驚愕の結末までもがまさか実話だったとは…。母子の日常生活を通して、深刻な食糧難を浮き彫りにし、結果招いてしまった親子の悲劇を描いている。年齢制限15歳以上だが、大人でも相当の覚悟が必要。

監督は、北朝鮮同胞の過酷な現実を見過ごすことはできない使命感から“北の現実”を描く作品をこれからも製作し続けると言っているが、観客の心を引き付ける事が出来るのは商業映画だけだとも言っている。次作は集客性の高い作品を目指しているという。私には共感しにくいご意見に首をかしげてしまうが、それだけ北への思いが人一倍強く、多くの人にも観ていただきたいのでしょう。

舞台は北朝鮮の黄海北道。質素な食事、殺風景な家、部屋の中心に飾られる将軍様の肖像画、警察の対応、市場の様子はとことんリアルさが追求されているが、残念なのが、言葉である。集中力を削がれるという理由から、台詞はあえて朝鮮語ではなく韓国語にしたというが、せっかくのリアルな演出が台無しになっているように思う。
食べるものがない北の地方住民は木の皮も喰いつくし、雑草すら生えていないと聞く。ジノが行く山は木が豊富で、まき木を見つけるのは容易である。切迫感が感じられない。冬の設定ではあるが、吐く息が白くないのも気になる所ではある。

huyu2.jpg詰めが甘いと感じる点はいくつかあるが、生活の厳しさや実態が容赦なく描かれている。許されざる保安員の態度もまた浮き彫りにしている。まき木を拾い集め帰路に帰る人々が必ず通る道には検問がある。2名の保安員が待機し、荷物検査をしている。いちゃもんをつけては人々からまき木を取り上げ、夜はその木でたき火をし、豊富な食事と酒にありつく姿は私が本で読んだ通りである。子どもが行方不明と知りながら協力してくれるわけでもない。本作では描かれていないが、賄賂なしで協力を仰ぐことは不可能なのだろう。本来なら住民の安全のために常駐してくれているはずなのに、むしろ生活を苦しめている矛盾した現実が覗える。

ジノはもちろん学校には行っていない。子どもには急すぎる山を登り、まき木を拾う仕事は決して楽ではない。帰路につくと、のこごりの刃を研ぎ、やっと夕食にありつくのである。そんな生活にも決して弱音を吐かず、常に病気の母を気遣い、鶏肉を食べることがひそかな願いであるジノは、毎晩布団の中で母と鶏肉話に盛り上がり、夢と希望に胸を膨らませるのであった。貧しいながらも2人で精一杯生き抜こうとする姿、お互いがお互いを気遣う姿には自然と涙が流れる。何の生活保障のない北朝鮮において微笑ましい家族愛だけが唯一の希望である。しかし、遭難したジノが何日も帰らない日が続き、母は正気を失う。砂をご飯と間違えて食べ、父親が鶏肉を食べている写真まで食べ尽くすのであった。極限の空腹の果ての結末には、(結末、反転しています)息子ジノを犬と間違えて殺傷し、煮込んで食べてしまうのであった。ジノが帰ってきたら食べさせようと残していたことから、幻覚症状だと認められたが、家族愛まで踏みにじってしまうほどの食糧難。社会体制への批判でもあり、告発でもある。意見のわかれる結末ではあるが、脱北者にしかわからないありのままの実情を描いてくれたことに今後の活躍にも期待したい。

冬に孵化してしまい羽ばたくことすらできずに一生を終えてしまう蝶がいることから、タイトル“冬の蝶”とは北朝鮮に生まれたことだけで幸せとは無縁の住民を連想させる。生まれ育った国で人生が決定づけられるのも運命である。将軍様を神だと信じ、肖像画に向かって祈っていた母が、国家の矛盾に気付く時が来るのだろうか。

<鑑賞> 2011/10/10
[サイト内タグ検索] 日本未公開

261. Bleak Night (原題:番人) <2010/韓> ★★★★☆

bleak.jpg番人 파수꾼/Bleak Night
2011/117min/韓国
ドラマ
監督/脚本:ユン・ソンヒョン(長編デビュー作)
出演:イ・ジェフン、ソ・ジュニョン、パク・チョンミン、チョ・ソンハ 
受賞:第15回(2010)釜山国際映画祭 ニューカレンツ賞
IMDb評価:6.7/10

社会度 ★★★
哲学度 ★★★
衝撃度 ★★
暴力度 ★
邦題のセンス ★★★

2011アジアフォーカス福岡映画祭上映作品


高校生のギテが死んだ。父親は息子に無関心で、死後机の中から写真を見つけるが、息子と映っているのが誰なのかもわからない。罪悪感からか、今更ながら息子について知ろうと立ち上がる。担任教師に友達の連絡先を教えてもらい、息子との空白を埋めるべく、友達に会うが、皆息子のことを話したがらない。親友は2人いたが、中学生からの同級生である1人は息子が亡くなる前に転校し、もう1人は葬儀にも来なかったという事実を知る。息子の死には何か隠されていると確信した父親は、その真相を探ろうとする…。

長編デビュー作とは思えないほど完成度の高い秀作。韓国でも3月に劇場公開されたばかりで、日本でもアジアフォーカスのみの上映だが、一般公開ないしソフト化はすべき作品。個人的には「冬の小鳥」「息もできない」に続く作品だと感じた。少年3人と父親の視点で展開していくが、少年3人の心理をメインにしすぎているため、父親の心理描写が見えてこない。敢えて避けたのかもしれないが、もう少しバランスを取ってもよかったように思う。監督は1982年生まれで、父親の心境がまだわからないというのが本心かもしれないが。

bleak1.jpg高校を舞台にしてはいるが、韓流ドラマのような学園ドラマでなければ、サスペンスのような事件の謎解きを主眼にしている作品でもない。次第に明らかになっていくのは青春と友情が破壊していく過程である。息子の死を不審に思った父親が立ち上がったことをきっかけに、ギテの死に対する少年たちの心理を掘り下げていく。

ストーリーはギテの死後から始まり、父親の真相探しと友人たちの回想シーンが交差する形で物語は進行する。父親のシーンは時系列ではあるが、回想シーンは時間軸が前後するため少々混乱する。なかなか全体的な人間関係が掴みづらいのが難点ではあるが、カット分割と編集が見事でいい緊張感を作り出している。

中心となるギテ、ドンユン、ヒジュンは学校でも放課後でもつるんで遊んでいる親友3人である。2人は中学からの親友で、1人は高校からの付き合いとなる。常に行動を共にしているからこそ言える冗談やイタズラがきっかけとなり、歯車は狂い始めていた。
ギテは父子家庭で、母親がいない劣等感から虚勢を張るようになり、仲間内ではリーダー格のような存在となる。おそらくタイトル“番人”とはグループ内に自然と出来上がっていった役割を言っているのだろう。ギテの行動はエスカレートし、イジメともとれる行動を取り始める。好きな女の子を取れらまいと取った行動も許される行為ではない。結果、権力は友情との引き換えとなっていたのである。

bleak2.jpg父親は息子の友人たちに会い、息子のことや学校での様子などをやさしく尋ねるが、友人たちの表情は曇っている。核心に触れようとすると返事はきまって「わかりません」であった。駆け引きや感情の爆発、すれ違いが互いに及ぼす悪影響が導いてしまった悲劇は少年たちの心の傷を更に悪化させるものとなっていた。仲間から手を切ろうとする者、自分の殻に閉じこもってしまう者、流れに任せようとする者…少年たちは様々な方法でそれぞれの道へ進み、事実を封印しようとしていた。回想される各エピソードの中であぶり出される心理には崩壊していく過程が絶妙に描き込まれている。それは、不安定で不器用、でも繊細な10代の危うい心理描写。やりきれない思いや閉塞感、息苦しさが重く圧し掛かる力強い作品となっている。現実離れしたイケメンばかりの起用ではなく、ほとんどが新人に近い等身大の少年たちの熱演により、すごくリアルな世界を作り上げている。

権力による支配、コミュニケーション不足による誤解、人間関係の崩壊は、別に韓国の高校生に限らず、日本の高校生、いや大人にも起こり得ることである。改めて人間関係の難しさを考えさせられた作品である。死因ははっきり言及されておらず、どこまで父親に話したのかも定かではない。だが、確かなメッセージとして誰しもが様々な思いを感じ取るであろう。

余談だが、海外の評論に目立った高評価はない。私も英語字幕鑑賞で感じたのが、本作のような細かい心理描写は英語での表現には限界があるということ。日本語ならばっちりハマる訳があるのに、この英語じゃ伝わらない!と何度も突っ込みを入れながら字幕を目で追った。かなり端折られた英訳で、微妙なニュアンスは伝えきれていないだろう。字幕翻訳者の力量にもよるだろうが、字幕によって印象が左右されることを改めて思い知った。原語で理解できるのが一番いいのだが…日本語字幕でもう一度しっかり観たい。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/1

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