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(未) Import Export <2007/オーストリア> ★★★★☆

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Import Export
2007/135min/オーストリア
監督:ウルリヒ・ザイドル Ulrich Seidl
出演:エカテリャナ・ラックEkateryna Rak、ポール・ホフマンPaul Hofmann、マイケル・トーマスMichael Thomas
IMDb評価:7.1/10

純愛度 なし
官能度 ★★
衝撃度 ★★★
感動度 ★★
社会度 ★★★★

惜しくも逃してしまったがパルム・ドールにノミネートされた一方で、あるアメリカの雑誌では最も最低な一本にも選ばれていた。タイトルから推測して、貿易関係か人身売買の話だと思い込んでいたが、ポスターに映るのは女性の裸。しかも、PCのキーボードとマウスが傍らに。。。
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ウクライナの女性オルガは看護師をしながら赤ちゃんと母親と暮らしている。支払われる給料は3割に減らされ、生活は厳しくなり、ヴァーチュアル・セックスの仕事を始めてしまう。そのシーンがポスターになっているのだ。PCの向こう側の男性に言われるがままに自慰行為をやって見せている最中だ。便利なPCが世の中ではこんなことにも使われているということすら知らず仰天させられた。更に驚かされたのは演じたエカテリャナ・ラックは演技経験のない素人で、看護師だということ。ヌードどころか女性にとって一番恥ずかしい所まで見せてしまうのでポルノ女優かと思った。根性がすごい。結局、プライドは捨てられず、この仕事もすぐに辞めてしまう。そして、赤ちゃんと母親を残し、友人がいるオーストラリアへ出稼ぎに行くのだ。よりよい生活を求めて。住み込みの家政婦をやるがすぐクビにされ、最終的には老人ホームの掃除婦におさまる。そこで生きる目的を失った老人との出会いで人生の目的を見出していく。
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この映画にはもう1人主人公がいる。オーストリアに住む男性ポールだ。警備員の仕事がクビになり、父親の仕事を手伝うことに。ゲーム機を運ぶ仕事でウクライナを訪れる。廃墟のような団地で微々たる賃金で売春行為をする若者たちの悲惨な光景を目の当たりにする。ホテルのバーにいる女性たちもやはりそういった職業の人たちが客引きをしている。女遊びが大好きな父親にとっては天国だが、ポールはそんな人生にうんざりし始めてた。我慢しきれず、ホテルを後にし、職探しに出かけるのだ。よりよい生活を求めて。

ウクライナからオーストラリアへ行ったオルガ。オーストリアからウクライナへ行ったポール。この2人は出会うことはなく、同時進行で描かれていく。2人の願いは同じなのだ。よりよい生活だ。「Import Export」はこの2人のことだったのだ。うまいタイトルをつけたものだ。セックスと死というテ-マの中で孤独、焦燥、理想とのギャップ、葛藤、現実の厳しさが残酷に描かれている。

印象的なのがダンスシーンだ。オルガと死を目の前にした老人。誕生日プレゼントをおねだりするポールの母。ポールとバーで知り合った女性。父親の元を去ったポール。異なる環境での4度のダンスは残酷な現実な中で見出した小さな希望として私の目には映った。 

ポール役の青年ポール・ホフマンも演技経験のない素人だそうだ。両親に捨てられ、14歳の時からホームレス暮らしだとか。妙に説得力があったのは彼の環境によるものだったようだ。この役と同様によりよい生活を求めていたのかもしれない。

<鑑賞>英語字幕 2010/10/30


[サイト内タグ検索] 日本未公開 ウルリヒ・ザイドル監督
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ロゼッタ <1999/ベルギー> ★★★

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Rosetta
1999/93min/ベルギー=フランス
監督/製作/脚本:リュック=ピエール&ジャン=ピエール・ダルデンヌ
出演:エミリー・ドゥケンヌ、ファブリッツィオ・ロンギーヌ、アンヌ・イェルノー、オリヴィエ・グルメ
受賞:1999カンヌ映画 パルム・ドール/女優賞
IMDb評価:7.3/10

純愛度 なし
衝撃度 ★★★
感動度 ★★★
社会度 ★★★

<あらすじ>
酒浸りの母親とトレーラーハウスで生活するロゼッタ。働いていた工場から突然解雇された彼女は、新しい仕事を探すが見つからない。そんな時、ワッフル・スタンドの店員リケが、仕事に空きができたことを知らせに来る。

<レビュー>
ロゼッタが工場をクビになるところから映画は始まる。必死に抗議するところをみると、理不尽な理由による解雇だったようにみえる。父親はいない。アル中の母親はたった一本のビールを求めて体を売るような生活を送ってる。17歳のロゼッタが生計を立てているのだ。職探しで町を彷徨う。
思い通りにならない人生、頑張っても報われない毎日、頼りにならに母親、厳しい現実、、一体どこから歯車が狂い始めてしまったのかが言及されていないので気になる所だが、翻弄されている人生へのロゼッタの絶望、怒りや悲しみが切ない。

林に隠した長靴に履き替え、空き瓶で作った仕掛けでの魚釣り。食事らしい食事もない。冬なのに薄っぺらい服装。勝気な性格。現実から目を背けずに立ち向かう姿は若さがゆえなのか、片意地を張っているようにもみえる。もう少し肩の力を抜いてみると楽になるのにと思ってしまうが、ここまで最悪な環境を経験したことがないからそう言えるのかも。決して母親のようにはなるまいと決意で歯を食いしばり、社会に立ち向かうロゼッタがなぜか段々愛おしくなってくる。手持ちカメラ、至近距離での撮影は彼女の息づかいまでが聞こえ、行動を共にしているかのような錯覚さえ感じてしまう。決して涙を見せなかった彼女もラストシーンで泣き崩れた。ダルデンヌらしいバサっと切ったようなエンディングにも小さな希望が見える。

パルムドールを逃したブリュノ・デュモン監督の「ユマニテ」と比較したくて連続で鑑賞した。どちらも素人起用で地味な作品だが、難解で重すぎる。重いのが好みな私でもさすがに疲れた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/27

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ユマニテ <1999/ベルギー> ★★★☆

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L'humanite/Humanity/ユマニテ
1999/147min/ベルギー=フランス
監督/脚本:ブリュノ・デュモン
出演:エマニュエル・ショッテ、セヴリーヌ・カネル、フィリップ・テゥリエ
受賞:1999年カンヌ国際映画祭グランプリ/主演男優賞/主演女優賞
IMDb評価:6.7/10

芸術度 ★★★
衝撃度 ★★★
感動度 ★★
宗教度 ★★★★
性描写 ★★★★★(キレイという意味ではなく、多いという意味)

<あらすじ>
無垢でナイーブな刑事を主人公に、事件の捜査を脇において、彼の日常と、彼が思い寄せる女性とその恋人とのとの奇妙な関係を描いた異色の刑事ドラマ。北フランスのバイユール。ある日、少女の強姦殺人事件が発生する。捜査を担当するのは、無垢でナイーブな、およそ刑事らしくない男、ファラオン警部補。妻を事故で亡くし、母親と暮らす30代のファラオンは近所に住むドミノに思いを寄せていたが、彼女には恋人がいて、ファラオンは辛い現実を受け入れるのみだった……。

<レビュー>
主演の男女優は素人ながらカンヌで主演男女賞を受賞したことが大きな話題となった。何度観ても難解だ。
ブリュノ・デュモン監督の出身地である北フランスのバイユールが舞台。素朴で、殺伐とした所だ。その地で草むらに放り出された少女の死体。強姦され剥き出しになった下半身を映し出すオープニングから衝撃が走る。その直後、刑事のファラオンは好意を寄せている女性のセックスシーンを目撃してしまう。死をもたらしてしまった性器と性的欲求を発散する性器という極端な2つの性器はファラオンの目にはどう映ったのだろうか。

幾度となくセックスシーンがあるが、どれも肉体と肉体のぶつかり合いで、官能さはなく、動物の交尾のようだ。素人起用なので、自然というべきなのかもしれないが立ち振る舞い方なども荒く、安定していない。一方、キリストや絵画ミレーの構図、有名な写真の構図を効果的に使うなど、芸術的なセンスも垣間見れる。立ち寄った美術館で比較していた2枚の絵画は、生と死。性器同様、至る所にコントラストが際立っている。
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犯人は最後に判明するが、ほとんどその解決とかはどうでもいいかのように無視されまくっている。他人の痛みに共感して涙を流し、相手をやさしく抱きしめるファラオンは現代のキリストのようだ。宗教的要素が強いようにも思えるが、宗教映画ではないようにも思える。町に教会はあるが、出入りする者は誰もいないのだ。ドミノは教会を横目に興味はない様子で通り過ぎる。もはや宗教では救えないのだ。殺伐とした中で唯一の光がファラオンのような存在なのかもしれない。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/27
[サイト内タグ検索] ブリュノ・デュモン監督
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地球で最後のふたり <2003/タイ=日=蘭=仏=シンガポール> ★★

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Last Life in the Universe
2003/107min/タイ=日本=オランダ=フランス=シンガポール
監督/脚本:ペンエーグ・ラッタナルアーン
撮影:クリストファー・ドイル
出演:浅野忠信、シニター・ブンヤサック、ライラ・ブンヤサック、松重豊、竹内力
受賞:2003年ベネチア国際映画祭 コントロコレンテ部門 主演男優賞
IMDb評価:7.7/10

純愛度 ★
芸術度 ★★★
衝撃度 ★
感動度 ★★
社会度 なし

<あらすじ>
バンコクの日本文化交流センター働くでケンジは、病的なほどの潔癖症で、身の回りの全てを清潔に保ち、周囲との関わりを避けるようにして生きていた。そして、毎日のように自殺を試みようとするのだった。そんなケンジのもとに日本でトラブルを起こしたヤクザの兄・ユキオがやって来た。一方、外国人向けのクラブで働くノイは男のことで妹ニッドと激しくやり合う。興奮し車から飛び出したニッド。すぐそばには、川に身投げしようとするケンジの姿があった。その直後、ニッドは車にはねられてしまう。それを目撃したケンジは動揺するノイに付き添い病院に向かう…。

<レビュー>
タイ・バンサーンが舞台。自殺することばかり考えている主人公ケンジは神経質で潔癖症。無機質で整理整頓し過ぎた部屋で、社会との交わりを極端に拒む生活を送っている。あることがきっかけで出会ったタイ人女性は、片付けが苦手で部屋は荒れ放題で勝気な性格。全く正反対の二人だが、兄弟の死と孤独という共通点があった。どういうわけだか同居生活を始めることで二人の心が通じ合い、お互いの色に染まっていく過程を描いている。片言の英語と日本語で不器用ながらも歩み寄る姿に温か味は感じるが、盛り上がりもなく、長~く感じてしまった。劇中に登場する「さびしさの彼方を」という絵本に描かれている地球最後の一匹になってしまったヤモリの悲しみと比較させるかのように、ヤモリがちょろちょろしていたが、もう少しインパクトのある映像のほうが私は好きだ。
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タイが舞台なので、ゴミゴミしたような雑踏や暑苦しさを想像していたが、むしろ北欧映画のようなのんびりした時間の流れ方に拍子抜け。しかし、身を任せてみると、心地よくなってくる不思議な映像ではあった。現実離れしていて幻想的で夢なのか現実なのかわからないフワフワとした感覚は私には死後の世界にも見えた。死んだはずの妹や兄が幻想的に登場するのだが、何を意図しているのか読み取れなかった。ラストシーンもよくわからず。

私にとって初の浅野忠信作品であった。記者会見をたまたま見る程度で、ドラマも他の映画も観たことがない。物静かな役なので、演技のうまさは私にはよくわからなかった。ベネチアを皮切りにサンダンスなどでも彼の演技と作品が高く評価され、20カ国以上で上映されたとのこと。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/23
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(未) Katalin Varga <2009/ルーマニア=UK> ★★★★★

Katalin.jpgKatalin Varga
2009/82min/ルーマニア=UK
監督:Peter Strickland
出演:Hilda Péter、Norbert Tankó
受賞:2009ベルリン映画祭 銀熊賞他3受賞
言語:ルーマニア語、ハンガリー語
IMDb評価:7.1/10

ミステリー度 ★★★
衝撃度 ★★★★
宗教度 ★★★


***第59回 ベルリン国際映画祭受賞作***  
金熊賞: 「悲しみのミルク」 - クラウディア・ローサ監督
銀熊賞:
審査員グランプリ:「Gigante」 - アドリアン・ビニエツ監督、「Alle Anderen」 - マレン・エイド監督
監督賞: アスガー・ファルハディ - 「彼女が消えた浜辺」
女優賞: ビルギット・ミニヒマイアー - 「Alle Anderen
男優賞: ソティギ・クヤテ - 「London River」
脚本賞: アレサンドロ・キャモン、オーレン・ムーヴァーマン - 「The Messenger」
芸術貢献賞: 「Katalin Varga(本作)」
アルフレード・バウアー賞:「菖蒲」 - アンジェイ・ワイダ監督、「Gigante」 - アドリアン・ビニエツ監督
***********************

英題も原題と同じ「Katalin Varga」だった。タイトルだけでは一体どんな映画なのかさっぱりわからない。中国語タイトル「カタリンの秘密」をみて、初めて名前だっと気付く。じゃあ一体カタリンの秘密とは?そんな思いで観始めた。

冒頭から説明不足のままストーリーはどんどん進んでしまう。無駄な描写を排除し、あまり観客にやさしい作品ではないが、終始カタリンの表情に何かが起こりそうな雰囲気を漂わせており、逆に好奇心を掻き立てられる。
Katalin1.jpgKatalin2.jpgKatalin3.jpg
ハンガリー語を話すルーマニア・トランシルバニア地方が舞台。緑あふれ、見渡す限りとてもきれいな田園風景が広がる。そこで夫と息子オルバンと3人暮らしをしている。しかし、オルバンの父親は夫ではないのだ。そのことは1人の友人にしか話していない事実だったが、いつの間にか小さな村中に噂は広まっていた。事実を知ってしまった夫は、息子とともに追い出してしまう。途方に暮れたカタリンにはもはや復讐心しかなかった。レイプをし、妊娠までさせた男たちへの復讐だ。
レイプの復讐を題材とした作品はいくらでもあるが、本作は少し違う。レイプという悲劇が引き起こす更なる悲劇の中で一体何が罪なのか自問自答させられる。レイプを赦せなかったカタリンも罪なのか?赦せず追いだした夫もまた罪なのか?どこかで赦しを得ていたらここまでの悲劇は起こらなかったはず。結局、復讐から復讐しか生まれてこないのだ。しかし、これが人生だ。

テーマは贖罪。たとえレイプ犯であっても、今は人道的に生きていたら、あなたならどうしますか?

イギリス映画っぽいと思ったら、監督はハンガリー在住のイギリス人であった。本作が長編デビューというから驚き。2万5千ポンドという超破格な低予算に更に驚いた。無駄を排除した作りは低予算がゆえのことだったようだが、うまい具合に好奇心を掻き立てていたようだ。復讐方法にもアイデアが詰まっており、そうきたか!と関心させられる。予算切れのために制作中断を余儀なくされたそうだが、こうやって無事に完成し、世界各国の映画祭で上映されたことをうれしく思う反面、アジアでは全く上映されていないことを残念に思う。
最近観た中で一番感慨深い作品であった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/23

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アドルフの画集 <2002/ハンガリー=加=英> ★★★

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2002/108min/ハンガリー=カナダ=イギリス
監督/脚本:メノ・メイエス
出演:ジョン・キューザックノア・テイラー、リーリー・ソビエスキー
IMDb評価:6.6/10

邦題のセンス ★★
芸術度 ★★
衝撃度 ★
感動度 なし
催涙度 なし

<あらすじ>
1918年ドイツのミュンヘン。第一次世界大戦に敗戦し、人々は混乱とバブル経済の中で新しい時代を模索していたが、多くの帰還兵達は職も住むところもなく、途方に暮れていた。若き日のアドルフ・ヒトラーもその一人で、身寄りもフィアンセも失ってしまった彼は孤独と困窮の中で自分の芸術を探していた。そんな折に出会った裕福なユダヤ人画商は、アドルフに絵画の道を歩ませようと尽力する。しかしアドルフは、ユダヤ人排斥の演説を生活のため軍から引き受け…。

<レビュー>
アドルフ・ヒトラーが独裁者になる以前は画家を志していたことは周知の事実だが、そのヒトラーが独裁者に至るまでをフィクションで描いている。ヒトラーの才能を見抜き、画家まで育て上げようとしたユダヤ人男性マックス・ロスマンは架空の人物だそうだ。架空とはいえ、この人次第で歴史の1ページが変わっていたかもしれないというところに面白さがある。
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建築画家というだけあって建築物の画が多いそうだが、愛犬家としても知られる彼は犬の画も多く残している。どれも独創的ではなく写実的な画ばかりだ。専門的なことはわからないけど、好きか嫌いかと聞かれたら好きな画だけど。。。

実際のヒトラーは、徴兵検査を受けるものの栄養不足のため徴兵義務を逃れている。演じたノア・テイラーも顔色が悪く、貧相。再現に成功していると思われる。視力の問題で、政治家になるか画家もしくは建築家になるか悩んでいたそうだ。本作では視力の話は一切なく、架空の人物マックスに委ねられた形になっている。
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迫力のあるラストの演説は見逃せない。独裁者への第一歩になってしまったのかと思うと身震いがするほど説得力があった。しかし、ドイツ語でやるべきだったのでは?皆、クセのある英語を話し、ネイティブではないことを表現したかったのかもしれないが、全編英語にはかなりの違和感を感じた。

<鑑賞> CSにて 2010/10/19
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HANAMI <2008/独> ★★★

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Kirschblüten - Hanami
2008/127min/ドイツ
監督:ドーリス・デリエ
出演:エルマー・ヴェッパー、ハンネローレ・エルスナー、入月絢、ナディヤ・ウール
言語:ドイツ語、英語、日本語
IMDb評価:7.5/10

バイエルン地方の片田舎に住む夫婦が主人公だ。夫のRudiと妻のTrudiは、旅に出る。まずはベルリンの長男夫婦を訪ねるが、迷惑だったようだ。あまりいい顔はされない。面倒をみてくれるのは長女の恋人だけだった。久しぶりに海が見たくなった妻の提案でバルト海沿岸を旅することになったが、妻はホテルで急死してしまう。悲しみに打ちひしがれる父を口では心配はするが、面倒を見ようとする者は誰もいないのだ。
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いつも隣にいてくれたことを当たり前のように思っていたり、日本の舞踏を習うことを反対したり、夫も今となっては後悔ばかりが募る。そこで、かねてから行ってみたいと妻が言っていた東京を訪ねてみることにした。末っ子が住んでいる新宿にしばらく居座る。
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歌舞伎町、桜、富士山といった日本を象徴するものがドイツ人の視点で描かれるのも興味深い。風俗店は余計だったようにも思えるが。偶然立ち寄った公園(たぶん井の頭公園)で舞踏を踊る少女に出くわす。妻が習いたいと言っていた舞踏だ。母親の死をきっかけにこの舞踏を始めたという少女ユウ。舞踏というのを私は初めて見た。着物を着崩したような着方で、メイクも踊りも独特。沖縄の音楽に合わせて踊っている。自分が踊っているのではなく、影が踊っているのだという。そして、影は死者を意味するとか。誰にでもある影はある。みな死者と共存している。死者は心の中に生きていることを意味するのだそうだ。

日本文化を通して感じる生と死、家族の在り方。富士山と影富士の描写とか、はかない人生を象徴するかのような桜など哲学的で、今まで味わったことのない感情に胸が締め付けられた。

未見なので比較はできないが、小津安二郎監督の映画「東京物語」をモチーフにしたとのこと。日本を舞台にした作品は3作目だそうで、よっぽど日本が好きな監督さんらしい。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/20
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ホーム我が家 <2008/スイス=仏=ベルギー> ★★★★

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Home
2008/97min/スイス=フランス=ベルギー
監督:ウルスラ・メイヤー
出演:イザベル・ユペールオリヴィエ・グルメ、アデライード・ルルー
言語:フランス語
IMDb評価:6.8/10

衝撃度 ★★★
感動度 ★★
社会度 ★★★★
ユーモア度 ★★★

見渡す限り何もない所ににポツンと一軒。そこに一家は暮らす。アスファルトで塗装された道路もなく、お父さんの車の通り道が自然と道になったのだ。郵便配達、ピザ屋さん、そして、子供たちもその道を通る。

ある日、息子が「庭に誰かいる」と言う。この一言で不吉な予感を察知した。次の日、清掃員やら大きなトラックがドカドカとやってきて庭においてあった空気で膨らませるプールやら椅子やらを片付け始めたのだ。おそらく無許可だと思われる。一家には何が起ころうとしているのかわからないのだ。ラジオをつけ、情報を収集し始める。すると、なんと目の前にハイウェイを建設するという計画だったのだ。あれやあれやという間にハイウェイ建設完了。普段行き来していた道が見事に遮断されてしまったのだ。
車が少ない朝はハイウェイを横切って通学、通勤する。しかし、午後んいなると交通量は増え、帰宅時は迂回してトンネルを潜らなければならない。大きい買い物をしてしまった時なんかは夜中の交通量が途絶えた時を見計らって、ハイウェイを横切る生活。騒音、排気ガスもすごい。夏休みシーズンにもなれば、瞬く間に渋滞し、庭にはゴミが投げ込まれる。ハイウェイによって一家の生活は一変してしまったのだ。
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笑いの絶えなかった一家から笑顔は消え、口論が増えてしまった。皆神経過敏になり、狂気的になっていく。破壊されていく家族の再生物語だ。

出演者は一家の5人のみ。舞台もこの家だけだ。一切の無駄を排除し、シンプルな仕上がりになっている。しかし、アイデアが豊富で飽きずに観られる。人々の利便性を考えた上でのハイウェー建設だったはずなのに、一家を脅かしてしまった皮肉的な現実。ユーモアたっぷりでファンタジー仕立てだが、実際は人事ではない。

オリヴィエ・グルメ目当てだったが、期待以上の作品だった。監督にとって初の長編映画とのこと。次回作が待ち焦がれる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/22
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228. (未) 7月32日 <2010/韓> ★★★☆

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制作:2008/韓国封切:2010/96min/韓国
原作:コ・ウン 1977年「満月」
監督/脚本:チン・スンヒョン
出演:パク・ウンス、キム・ジョンギュン、ソン・ヘリム、キム・ミンギ

衝撃度 ★★★★
社会度 ★★
感動度 ★
催涙度 ★

<あらすじ>
1987年7月31日,チャン刑事に追われたマンスは,連れていた5歳の娘を知り合いの売春宿に任せる。マンスは,明日連れにくるという約束をして売春宿を出るが,ほどなく警察に逮捕され,その渦中にチャン刑事は,マンスが振り回した刃物にあたり身体障害者となる。チャン刑事は,マンスに対する復讐として売春宿にいるマンスの娘コンニムを捜し出して,島へ売ってしまう。成人したコンニムは,お金のために自分を売り飛ばした破廉恥な父を探して殺すと言って,ドンウクの助けを借りて島の外へ脱出する。

<レビュー>
7月31日の夜。刑事に追われていたマンスは知り合いのいる売春宿に5歳の娘を預ける。
「いつ迎えに来るの?」「明日必ず迎えに来るよ」
カレンダーで今日が7月31日だと確認した娘はまだ5歳なので「明日の7月32日に迎えに来てね」と無邪気に言う。存在しない日は永遠に来ないであろうとも知らずに。それがタイトルになっているようだ。
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マンスのせいで身体障害者となってしまった刑事は復讐のために娘コンニムを島に売り飛ばしてしまう。コンニムは全て父親が仕組んだことだと思い込み、憎み続け、自暴自棄な人生を送ることになってしまったのだ。しかし、父からもらったオルゴールだけは手放せずに持ち続けているのだ。複雑な心境の中で、愛情と憎悪は表裏一体であることがわかる。常にそばで見守ってくれるコジャの存在も大きい。母親が売春婦であったことから、コンニムと母親を重ねてみているのだ。

服役を終えた父マンスは決して娘を忘れることはなかった。娘の人形を握りしめ、顔写真入りのチラシを街で配る。運命というべきなのか、父親と娘の食い違ってしまった人生はあまりにも悲しすぎる現実だ。ラストシーンでのマンスの思い。余韻が心に痛い。

2008年制作で2010年にやっと公開した作品だ。私が待ち焦がれていた作品の一つであった。低予算と知っていたが、主演がパク・ウンスとは驚きだ。残念ながら韓流スターではないので、日本劇場公開はまずないだろう。さすがの存在感を放つ。その他全て無名の俳優ばかりだが、娘コンニム役のソン・ヘリムの体を張った演技は素晴らしかった。
売春宿といえば、キム・ギドクの「悪い女」「悪い男」を彷彿させるが、そこまでの毒はない。キム・ギドク監督のような作品に慣れてしまうと、もうひとヒネリあっても良さそうな気はするが、飽きることなく楽しめた。無事に韓国公開してほんとによかったと思う。お蔵入りさせるにはもったいない作品だ。

<鑑賞> 字幕なし 2010/10/19
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(未) You Will Be Mine (原題Je te mangerais) <2009/仏> ★★★★

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Je te mangerais
2009/95min/フランス
監督:ソフィー・ラロワ
出演:ジュディット・デイヴィス、イシルド・ルベスコ、ヨハン・リベロー
IMDb評価:5.8/10

実家暮らしだったマリはピアノを学ぶために親元を離れ、幼馴染エマの大きなアパートでお世話になる。父親は既に亡くなっており、直後に母親は出て行き、エマは広~いアパートに一人暮らしだったのだ。孤独な日々を送っていたエマにとって、マリとの共同生活は楽しくて仕方なかったのだ。「お互い男性を連れ込むのはやめようね」とエマはマリに言う。この言葉が全ての始まりだった。原題「Je te mangerais」は直訳すると「I wolud eat you」になるが、英題は「You Will Be Mine」になってしまっている。いずれにしても、独占欲の強い恋愛ストーリーだということは安易に想像がつくタイトルだ。

次第にマリはエマの唇やうなじに怪しげな視線を向けるようになる。男性が女性を見るような視線だ。気になっている様子だが、観ているこちらも展開が気になる。しかし、マリはレズビアンではないようで、男友達を連れ込む。翌朝、エマは「約束忘れたの?あの男は誰?エッチしたんでしょ?」と問い詰めてくる。このあたりからエマの束縛が始まるのだ。お互い謝り、仲直りをした二人はクラブに出かけるが、マリはレイプされそうになるところをエマに助けられる。恐怖で泣きじゃくるマリを優しくなだめるエマ。そのままいい雰囲気になり、唇を重ねてしまうのだ。先に進もうとするエマだったが、「これ以上は無理」と突き放す。
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もうその気はないと告げるが、一度唇を許しただけでマリは自分の物だと思い込むエマ。怖い。
半ば強引に押し倒し、「私の物だと言って」と押さえつける。女性同士でもレイプだ。夜もベッドに忍び込むほどの執着。エマを受け入れられず、逃げ出したいマリは、ピアノのレッスンに身が入らない。

女性を愛してしまったエマが悪いのか?女性を受け入れられなかったマリが悪いのか?被害者は果たしてどちら?
独占、嫉妬、執着といったエマの行動は寂しさがゆえに引き起こしてしまったのではないだろうか?

フランス映画って大概は多くが語られず想像に委ねられる描き方が多い気がするけど、この作品はあまりにもストレートすぎて驚いた。ここまで人を愛すること、愛されたことがない私には少々羨ましくも見えたけど、恋愛にここまでエネルギーを注ぎたくはないかな。息切れしてしまう。でも、かなり面白かった。
DVDはUK版のみのようだ。DVDのタイトルは「Highly Strung」だ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/17
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(未) 【短編】Lucky Blue <2007/スウェーデン> ★★

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2007/28min/スウェーデン
監督/脚本:Håkon Liu
出演:Tobias Bengtsson、Tom Lofterud
IMDb評価:7.5/10

夏休みのキャンプ場が舞台。毎年来ているオレの隣に挨拶に来たお隣さん家族。その中にケヴィンはいた。目があった瞬間からお互い何かを感じていたようだ。それ以降互いが気になって仕方がないのだ。オレはケヴィンのトレーラーに遊びに行くとケヴィンは青い鳥を飼っていた。手の平にのせようとカゴから出すや否や外へ逃げていってしまった。
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その夜、泳ぎに行った湖で妙な雰囲気に。そしてキスをしてしまう。次の日、ケヴィンは酔っていたからだと言い訳をし、オレを避けるようになる。オレは毎年恒例のカラオケ大会で歌で気持ちを伝えることにしたのだ。ようやくオレの気持ちに応えてくれたケヴィン。その時、青い鳥がカゴに戻っていた。

<鑑賞>英語字幕 2010/10/16
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(未) Granny <2003/露=仏> ★★★☆

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Бабуся/ Babusya
2003/97min/ロシア=フランス
監督・脚本:リディア・ボブロヴァ
出演:ニナ・シュビナ、アンナ・オフィシャニコフ、ヴラジミル・クラコフ
IMDb評価:7.0/10

世界的評価も高く、割と有名な映画だとは思っていたので、日本公開していると思い込んでいた作品。どうりで日本語の記事がないと思った。日本でも受け入れやすい題材とは思うが、スルーしてしまっているようだ。

ロシア語のタイトル「Babusya」はおばあちゃんのこと。ロシアの田舎に住むバブシャは1人で3人の息子と2人の娘を育てた。子どもたちはみな成長し、バブシャの元を離れる。一人きりになった彼女は家を売り、娘夫婦のところに身を寄せるが、しばらく妹のところへ行ってくれと言われる。必ず迎えに来ると口では言うが、一体いつになるのやら。実妹の家でお世話になりながら迎えを待つのだ。

そこへ手紙が送られてくる。心弾ませ手紙を読むが、迎えの知らせではなく、娘の死を知らせる手紙だった。更に妹が入院することになってしまった。息子はアル中のため、もうここにはいられなくなってしまった。娘の家に戻ろうとするが、娘が死んでしまっては引き取る理由はすでにない。新しい女性と生活を共にし、バブシャのことなんか人事だ。他の子どもたちを訪ねるが、やはり引き取ってくれる者はいない。挨拶すらしない娘婿もいるほどだ。散々たらい回しにされ、ようやく行き着いた最後の家。娘はチャチャン紛争の犠牲者なのだ。口が利けず、話は理解しているらしいが、表情一つ変えずにいる娘のせいで、家庭はギクシャクしている。バブシャは申し訳なくなり、家を後にするのだ。しかし、その後奇跡が起こったのだった。

小津監督の「東京物語」をモチーフにしたとのことだ。高齢者問題はロシアも日本も同じようだ。こうやってたらい回しにされ、結局は孤独死を迎えてしまう老人が多いのかと思うと胸が痛い。このバブシャはどうなったのだろうか。結論は観客の想像に委ねられている。ロシアの雪景色が更に物悲しく見せている。

<鑑賞>英語字幕 2010/10/16



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(未) Out of the Blue (原題La Surprise) <2007/仏> ★★★★

La Surprise/ Out of the Blue
2007/90min/フランス
監督:Alain Tasma
脚本:Dominique Garnier
出演:Mireille Perrier、Rachida Brakni
IMDb評価:6.1/10

フランスのテレビ映画。その他、UKとUSAの映画祭のみの上映だ。かなりマイナーな映画な上、日本語での記事はないようだ。結末まで書いてしまいますので、鑑賞予定の方はご注意を。

原題「La Surprise」の驚きは何なのかだけに興味が湧き、予備知識なしで鑑賞。大学生の娘がいる母親マリオンは夫との別居を決意する。お互い結婚記念日を忘れてしまうようなら、一緒にいる意味がないと思ってしまったようだ。恋人がいるわけでもなく、1人暮らしを始めるのだ。妹の紹介で新しい女友達クラウドができた。年は離れているが、行動を共にすることが多くなった。タイトルから禁断な恋が始まるであろうことは予測できていたが、あらすじを全く知らなかった私にとっては思わぬ方向へと展開は進む。

マリオンはクラウドのことが気になって仕方がない。携帯を握りしめ、かかってくるのをひたすら待ったり、これが恋なのか何なのか自分でもわからない。2人でいる時はよそよそしくもあり、付き合い始めたばかりの少女のようだ。シーンを重ねるごとに二人の距離は近づき、自然と唇を重ねてしまう。そして、クラウドの一言「足の間にとても興味があるの」

クラウドは元々レズビアンであったが、マリオンはストレートな女性だ。やはり戸惑いを隠せない。クラウドとしばしの間距離を置くが、やはり一緒にいたいという気持ちが次第に膨れ上がり、体を重ねてしまう。自然の成り行きでクラウドに魅かれてしまったマリオン。同姓への目覚めは誰にでも起こり得ることがわかる。

同性愛の映画は数多くあるが、ストレートからの目覚めを描いた作品は私は初めて観た。同性愛って異質に感じてしまうが、好きになった相手がたまたま同性だっただけで、この作品を観る限りはごくごく自然な恋愛だ。彼女を受け入れることで、マリオンからは幸せが滲み出ている。一番の難関かと思われる家族へのカミングアウトもさりげなくこなしてしまっている。
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ストレートからの目覚め。それは微笑ましいLa Surpriseであった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/15

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約束の葡萄畑 -あるワイン醸造家の物語 <2009/ニュージーランド> ★★★

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The Vintner's Luck
2009/126min/ニュージーランド=フランス
監督/脚本:ニキ・カーロ
原作:エリザベス・ノックス
出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ヴェラ・ファーミガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
IMDb評価:5.9/10

<あらすじ>
最高のヴィンテージワインを造る事を夢見る農夫ソブラン(ジェレミー・レニエ)は、ある真夏の夜、ザス(ギャスパー・ウリエル)という名の天使に出会う。ソブランは恋人セレステ(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)への愛や人生の悩みをザスに打ち明け、彼らは1年後の再会を約束する。1年後に再会したザスは、毎年同じ日の夜に会うことを条件に、ソブランへのワイン造りに関する助言をするが・・・。

<レビュー>
「全ての苦労が味を凝縮している。喜びの年か失意の年か。答えはワインの中にある。」とまでいうソブラン。ただの葡萄農夫ソブランが醸造家になるまでの人生を描いている。土の味を自分の舌で確認し、接ぎ木をし、新芽に布を巻いて霜から守り、自身の情熱、人生を注ぎ込むワイン作りは子育てと同じだ。ワイン作りは経験や勘を超越したスピリチュアルが必要であることを意味していたのだろうか?作り手の生き様だけではなく、家族の幸せをもが味に反映することを天使ザスから学ぶ。天使が現れ、心のブレがワインの出来具合を大きく左右しているのだ。
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男爵夫人にワインの味の極意を教えるシーンにはねっとりとした官能さが迸る。ワインの味を表現できないという夫人に目隠しをし、手の感触を表現させる。そして、匂い、味を確かめさせ、表現力を更に深める。そして、ワインのテイスティング。「あなたと同じ味がする」と。作り手全ての苦労が味に凝縮されており、パリ育ちの夫人にもその味を認められたのだ。庶民の嗜好品だったワインがパリでも通用する芸術品にまで認められることを意味している。

四季折々の葡萄農園は額に納まった絵画のようである。美しすぎる映像の中で織り成すワインの奥深さは大地の恵み、苦労の汗、人生の哀しみが満ち溢れる画面からも感じ取れる。個人的にはワイン製造工程のほうに関心があったが、葡萄作りに重点が置かれている。ソブランはワイン作りは子育てと同じだと言っているが、子育てよりも子作りというべきではなかったのだろうか?何もない大地に苗を植えるところから始めた葡萄作りこそ子作りと同様だ。だからこそ、必要以上に子作りに励み、葡萄作りに重点を置いてストーリーにしたのではなかろうか?葡萄を足で踏み潰しながらの子作りシーンは少々余計だった。そして、終盤の天使の決断にがっかり。天使らしく最後まで神秘的でいて欲しかった。

<鑑賞> 試写会にて 2010/10/13
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(未) Kid svensk <2007/フィンランド=スウェーデン> ★★★

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Kid Svensk/ Aavan meren tällä puolen
2007/90min/フィンランド=スウェーデン
監督/脚本:Nanna Huolman
出演:Miia Saarinen、Milka Ahlroth
IMDb評価:6.1/10

フィンランドは世界一偏差値の高い国である。以前はそうではなかった。うつ病により自殺者が多く(確か世界一位)、教育制度を見直したそうだ。特に語学教育には力を入れている。小学校で英語をマスターし、中学校で英語、高校では第3ヶ国語(多くがロシア語かドイツ語)を学ぶ。スウェーデン語を話せないフィンランド人に会ったことはない。本作はフィンランドからスウェーデンに移住した母娘の物語である。母エステアはスウェーデン語が話せない。時代背景は1980年代ということで、教育を強化する以前のようである。

夫の死で気力を失ってしまった母はスウェーデン語を学ぶ意欲もなく、地域に溶け込めないでいる。娘キルシはコンテストで優勝した際、コメントを求められるが答えられない母をもどかしく思っていた。12歳という多感な年ごろということもあり、母娘関係もギクシャクしていくのだ。夏休みの間、フィンランドに戻ることになり、幼馴染のエステアと息子ジャンペが迎えに来る。子ども同士も幼馴染であり、母よりも共に過ごす時間が徐々に増える。体の変化も見られ、性に興味を持ち始める年頃でもある。淡い恋心が芽生え始める。母娘の縺れは明らかにコミュニケーション不足だ。母は恋人がおり、自分がいない方がママは幸せなのではないか?と考え始めてしまう。しかし、それが引き起こす悲劇から二人の絆は強くなるのだ。
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監督自身の経験を基に作られた映画だとか。フィンランドを代表するアキ・カウリスマキ監督のような独特な手法ではなく、かなり観やすい作品だ。国籍によらず、誰しもが思春期に経験する普遍的な悩みを描いており、誰しもが共感できだろう。キルシのひと夏の経験。それはほろ苦く、大人への第一歩となった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/13
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NAKED マン・ハンティング <2007/スペイン> ★★★

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El rey de la montaña/ King of the Hill
監督:ゴンサロ・ロペス=ガジェーゴ
脚本:ハビエル・グジョン
出演:レオナルド・スバラグリアマリア・バルベルデThe Weakness of Boshevik
IMDb評価:6.3/10

元恋人に会いに行くキム。途中立ち寄ったガソリンスタンドで少女の万引きを目撃してしまう。口止めのためにトイレで結ばれるが、財布をすられてしまう。誘惑に負けてしまった男の弱みに興味を引き付ける導入部。あらすじを知らずに観た私は期待度も高まる。彼女を追いかけるが、その矢先何者かに銃で撃たれてしまう。通りがかりの人に助けを求めようとしたが、その人こそが撃った張本人だったようだ。車で必死に元来た道を戻るが、急ぎ過ぎたあまりその人を引き殺してしまった。しかし、逃げることが先決。その途中、財布を盗んだ少女に出くわす。この森の異変に気付いていた彼女と共に森を抜け出そうと試みるのだ。
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常に何者かがライフルで狙っている。何が目的なのか、相手が何者で何人なのか全くわからず、出口のない森での逃亡劇。二人の顔をアップした映像が多く、森の全体像も全く見えないこちらも緊迫感は体感できる。中盤までは面白く観れたが、段々展開が読めてしまう。極限状態の精神的ダメージにもっと焦点を当てて欲しかった。ハンターの正体ももっと衝撃が必要だった。

ちょっと調べて見たら、人間狩りを題材にしたサスペンスの3部作目だそうで、邦題もネタバレしている。1,2作目も観ていないし、原題しか知らなかった私はまさか人間狩りが題材だったとは思いもよらず逆に楽しめた。邦題を知っていたら、面白さも半減していただろう。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/12

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蛇男 <2007/仏> ★★★☆

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Le Serpent/ The Snake
2006/121min/フランス
監督/脚本:エリック・バルビエ
出演:イヴァン・アタル、クロヴィス・コルニアック、オルガ・キュリレンコ

<あらすじ>
自らを陥れようとする謎の男の登場によって、理由も分からぬまま人生の破滅へと追い込まれていく主人公の姿を描いたフレンチ・サスペンス。主演はイヴァン・アタルとクロヴィス・コルニアック。監督は「赤と黒の接吻」のエリック・バルビエ。資産家の娘である妻と離婚協議中のファッションフォトグラファー、ヴァンサン。そんな彼の人生を破滅へ追い込もむべく執念を燃やす謎の男、プレンデール。彼は、美女ソフィアをモデルとしてヴァンサンの事務所に送り込み、ある恐るべき計画を実行に移すが…。

<レビュー>
年配の弁護士に若い女性を相談に行かせ、誘惑させる。隠しカメラで撮影した写真でゆするつもりなのだ。6万ユーロを恐喝する私立探偵社の男たちが現れる。その女性は離婚調停中のヴァンサンの前にも現れ、あれこれ罠を仕掛けてくる。ヴァンサン本人のみならず、観ているこちら側も理由がわからないから余計に怖いし、精神的苦痛もかなりのものだ。
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邦題の「蛇男」とは少々敬遠しがちだが、蛇のように執念深い男のことであった。この邦題で損をしているだろう。もったいない。ヴァンサンはただでさえ子どもの親権で悩んでいたが、蛇男の罠のせいで更に泥沼化していくのだ。周囲の人々も巻き込まれていく。巧妙な罠はお見事だ。何年もこの機会を狙い、綿密に練っていたのだろう。何重にも張り巡らされている罠をどう潜り抜けるのか?一体何が原因なのか?謎解き物としては少々物足りないし、展開が読めてしまうが、フランス映画としてはかなり重厚なサスペンスだった。動機が単純なのが残念。罠だけではなく、動機ももう少し凝られていたらかなりの見応えはあったはず。

<鑑賞> CSにて 2010/10/12
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デビルズ・バックボーン <2001/スペイン> ★★

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El espinazo del diablo
2001/106min/スペイン=メキシコ
制作/脚本/監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:エドゥアルド・ノリエガ、マリサ・パレデス
IMDb評価:7.6/10

<あらすじ>
スペイン内戦下の小さな村。両親を失い、サンタ・ルチア孤児院にやってきたカルロス。彼に与えられた12番のベッドは、不運な死を遂げた少年、サンティのベッドだった。その日から、カルロスは奇妙な声や物音を聞くようになる。怯えながらも、サンティに興味を抱くカルロス。やがて彼は、サンティが何者かに殺された事実を知るのだった。

<レビュー>
30年代内戦下のスペイン、人里はなれたところにある孤児院が舞台。皆戦争孤児なのだ。庭の中心で不発弾が半分埋め込まれている。そこに置き去りにされた新たな戦争孤児カルロスは霊の存在に気付き始め怯える日々が続く。徐々に状況を理解するにつれ、霊の正体サンティについて興味を抱き始める。
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病ゆえに産まれてくることのできなかった胎児をラム酒漬けにした瓶がなんとも不気味だ。その一体は背骨が浮き出ている。これがタイトルの由来になっている。これらの胎児もサンティも戦争の犠牲者なのだ。その怨念がカルロスに助けを求めていたのだった。ホラー映画という宣伝文句の割にはさほど怖くない。戦争がもたらした悲劇を描いており、国内向けといった印象だ。戦争事情を知っていたら私の理解度も高まったであろう。勉強不足を痛感させられた。

内戦を描くスペイン映画が今なお数多くある。それほど秘められている物とは何なのだろうか。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/10
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めがね <2007/日> ★★★

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2007/106min/日本
監督/脚本:荻上直子
出演:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ
IMDb評価:7.4/10

<あらすじ>
人生の一瞬に立ち止まり、たそがれたい。何をするでもなく、どこへ行くでもない。南の海辺に、ひとりプロペラ機から下り立った女・タエコ。その小さな島は不思議なことだらけ。見たこともない不思議な『メルシー体操』なるものを踊る人々、いつもぶらぶらしている高校教師・ハルナ、笑顔で皆にカキ氷をふるまうサクラ、飄々と日々の仕事をこなすハマダの主人・ユージ…。マイペースで奇妙な人々に振り回され、一度はハマダを出ようとするが、自分なりに「たそがれる」術を身につけていくタエコ。そして、タエコを追ってきたヨモギを含めた5人の間には奇妙な連帯感が生まれていく。しかし、その時間は永遠には続かない……。

<レビュー>
便利なものに囲まれ、何不自由なく暮らせる現代。今までずっと都会暮らしのほうが絶対にいいと思っていた。
私はこの映画の公開時にタエコと同じような経験をしている。長期出張で不本意に行かされたフィンランドの田舎町は観光地もなく、あるものといえば静寂と自然だけ。人々は皆マイペース。東京から行った私はいつもイライラ。しかしいつの間にか住めば都になっていたのだ。自然に耳に入って来る小鳥のさえずり、そよ風だけに耳を傾ける生活も悪くないと思えてくる。あいにく、フィンランドで携帯は絶対に圏外にならない。どんなに山奥でも。海の上でも。遭難にあった時すぐさま救助を求められるようにだ。この地での携帯は命をつなぐツールにもなっているのだ。
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タエコがなぜ来たのか、何をしに来たのか多くを教えてくれない。そんなことどうでもいいのだ。ふと立ち止まって見ると忙しい生活では見えない物が見えてくるから。人間にとって自分にとって何が大切なのか気付かせてくれるだけで、来た価値はあるはず。
人生の休息。たそがれるとは?それは、現代人にとって一番の贅沢。

<鑑賞> CSにて 2010/10/10
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家政婦ラケルの反乱 <2009/チリ> ★★★★

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2009/95min/チリ=メキシコ
監督/脚本:セバスティアン・シルバ
出演:カタリナ・サアベドラ、クラウディア・セレドン、マリアナ・ロヨラ
受賞:2009年マイアミ国際映画祭最優秀脚本賞、2010年ゴールデングローブ賞外国語映画部門ノミネートほか
IMDb評価:7.5/10

<あらすじ>
ラケルは、バルデス家で20年以上も働いているベテランの家政婦。無愛想だが黙々とよく働くラケルに一家は厚い信頼を寄せている。そんなラケルの身体を思いやった主は、若い家政婦を助手として雇うことにする。だが、自分の居場所を奪われることを恐れたラケルは、若い家政婦たちを苛め、次々に追い出してしまう。困った主は、ラケルよりも年上の家政婦を雇うことにするが、それが思わぬトラブルを生んでしまう。

<レビュー>
サンダンス映画祭での評判を耳にして以来、期待度大だった本作をついに鑑賞。いつもの如く、鑑賞後に邦題を知ったわけだが、反乱って表現はどうなんだか!?いい映画には間違いないんだけど、やっぱり邦題に疑問が募る。

ラケルが1人での夕食姿。プレステ3が欲しいなんて子どもの会話が隣から聞こえてくる。ラケルは住み込みの家政婦さんで食事は別なのである。なんだか味気ない。その様子がそのまま広告ポスターになっている。23年もバルデス家に仕え、バルデス家が自分の家族だと言っている。ラケルにとってバルデス家が全てなのだ。恋人はおろか、友達もいない。趣味に勤しむ余裕なんかもない。孤独や疎外感が滲み出ているのだ。しかし、41歳の誕生日を祝ってくれるようなご家族だ。奥さんも食器洗いなどを手伝ってくれるし、子供(男の子たち)も懐いている。最近体調のすぐれないラケルを気遣い、もう1人の家政婦さんが雇われることになる。仕事量が減って楽になると喜ぶかと思いきや、自分の居場所がなくなってしまうような不安を感じていた。
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入れ替わり立ち替わり新しい家政婦さんが来て、ラケルの居場所を死守するための行動がどんどんエスカレートしていく。子供じみた反乱でもあるが、ここにしか居場所のないラケルは必至だ。笑いを誘うシーンも随所に散りばめられており、飽きさせない演出、演技力は見事。一体何人変わっただろうか。最後の家政婦さんは少々違っていた。唯一ラケルの悩みを理解してくれていたのだ。ラケルも徐々に心を開くのであった。

かつての奴隷制度が影響しているのだろう。監督自身も25年以上住み込みの家政婦さんがいらっしゃったということで、これが現実かと思うと彼女たちの人生って一体何なんだろう。自らを犠牲にし全てを捧げて一生を終えてしまう。しかし、ラゲルは明るくなっていた。前向きなラストに安心した。ラケル役の女優さんの表情の変化が素晴らしい作品だった。繊細な心の持ち主なのだ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/10
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神の子どもたちはみな踊る <2008/米> ★★★

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All God's Children Can Dance
2008/85min/アメリカ
原作:村上春樹
監督:ロバート・ログバル
出演:ジョアン・チェン、ジェイソン・リュウ、ソニア・キンスキー、ツィ・マー
IMDb評価:4.6/10

<あらすじ>
ロサンゼルスに住む若者ケンゴ(ジェイソン・リュウ)は、宗教活動に情熱を注ぐエキセントリックで美貌の母・イヴリン(ジョアン・チェン)との二人暮らし。イヴリンはケンゴを全身全霊で愛し、「神の子」だと言って育ててきた。恩人であり職場のボスでもあるグレン(ツィ・マー)とも距離を置いた付き合いしかできず、恋人のサンドラ(ソニア・キンスキー)が結婚したいと願っても、「神の子」であることを理由にそれをはねのけるケンゴ。人生に踏み出せぬ彼の前に、ある日、耳の欠けた男が現れる。それは、本当の父かもしれぬ男。必死に彼の後を追うケンゴは、思いも寄らぬ体験をする‥。

<レビュー>
村上春樹の小説をモチーフとしているのでメインはアジア人器用を希望したと言う監督。主人公はケンゴ。明らかに日系人という設定なのにアジア人出演者はみな中国系でちょっと違和感がある。更に、挿入歌のバックでラジオから微かに流れるのは韓国語のニュース。舞台がコリアタウンだからだ。アメリカ人から見たら日本も韓国も中国も全てひっくるめてアジアなんだろうが、ごちゃごちゃな多国籍にちょっと違和感を感じる。
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息子のベッドに下着姿で潜り込む母、勤務時間中にヌード写真を送り、部屋に呼び出す彼女。ケンゴの頭の中はセックスのことばかり。カメラも必要以上に下半身を映し出す。彼女の口から出た言葉も過激だ。あまり気分がいい映画ではない。とはいえ、類にない独特な世界観と謎めいたケンゴに目が離せなくなった。

徐々に彼の過去、真実、内面を明らかにしていく。必死で父親らしき男を追い掛けるケンゴだが、その末に彼は一体何を得たのか?答えは観客に委ねる形で終わっている。私は答えは出ていない。謎めいたケンゴは更に謎に包まれてしまった。消化不良だ。ストーリーに関係のない人物は一切排除されているからなのか、時間の概念がないからなのか、非現実的で、世の中全てが静止しているかのような錯覚に陥る。不自然に感じるシーンは多くあったが、あえてそういう世界観を演出していたのかも。解釈の幅がありすぎる多くのシーンに意見は分かれそう。鑑賞前にアメリカでの悪評を散々読んだ。少なくともハリウッド映画や商業映画ではない。日本でもヒットするとは思えないな。なんで今更日本公開なんだろう!?
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<鑑賞> 2010/10/9

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レ・ミゼラブル <2000/仏> ★★★★★

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Les misérables/レ・ミゼラブル/ ああ無情
2000/計4回376min/フランス=イタリア=スペイン=ドイツ=アメリカ
監督:ジョゼ・ダヤン
出演:ジェラール・ドパルデュージョン・マルコヴィッチヴィルジニー・ルドワイヤンシャルロット・ゲンズブール
IMDb評価:7.7/10

19世紀フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの傑作。全4話6時間に渡るフランステレビシリーズ化を鑑賞。今まで観た中で一番面白く、6時間を一気に観てしまった。あまりにも有名すぎるこのストーリーを今更言及する必要なんてないだろうが、無知な私は恥ずかしながらストーリーをほとんど知らなかった。映画は何度かチャレンジしたがいつの間にか寝ているし、本も読みかけてはいるが挫折しているからだ。

一片のパンを盗んだ罪で投獄されたジャン・バルジャン(ジェラール・ドパルデュー)の一生を描いている。投獄を繰り返すものの19年の服役を無事終え釈放されたバルジャン。立ち寄った司教宅で銀食器を盗み、また捕まってしまう。しかし、司教は差し上げたものだと主張し、何のお咎めもなかった。それどころか、司教は銀のロウソク台まであげてしまう。正直より慈悲だと言うのだ。バルジャンは司教の慈悲に心打たれ、清く正しく生きることを決意した。

その後のバルジャンは慈悲の心に溢れていた。ボロボロの人生で輝く宝石はコゼットだけだと孤児コゼットを宝のように育て上げた。司教からいただいた恩を返すかのように生きてきた。しかし「一度でも犯罪を犯した者の更生はありえない。彼らが悔いるのは捕まったことだけだ。」と信じるジャベール警部(ジョン・マルコヴィッチ)はバルジャンを追い続けていた。しかし、バルジャンに命を救われたことに感銘を受け、捕えることをやめてしまった。なぜなら、バルジャンは立派に更生していたからである。ジャベールは自問自答し続けた。「更生した者を捕えることが罪なのか、犯罪者を取り逃がしたことが罪なのか」結局、自分も罪を犯してしまったのである。そして、冬の冷たい川の中に身を沈めるのであった。

身を削って娘コゼットに仕送りをし続け、命を落としてしまった母フォンティーヌ。フォンティーヌから金をせびっていた非道なテナルディエ夫妻と娘たち。コゼットに一目惚れをしたマリウス。学生思想犯たちによる暴動などのエピソードも織り込まれている。主人公のジャン・ヴァルジャンは、犯罪者と言われながらも、後にパリ警察の密偵となったフランソワ・ヴィドックがモデルだと言われている。マリユスは若き日のユーゴー自身。コゼットは彼の妻と愛人がモデルだとか。

ドパルデューはかねてからこの作品への出演を熱望していたが、時間的制約のある映画では改変、短絡を余儀なくされる。原作を忠実に再現するために長編ドラマを希望したとか。フランス版は6時間、アメリカ版は3時間。日本で発売されているDVDとNHKで放送されたのはアメリカ版である。アメリカ版はあらすじを知らないと何がなんだかわからないだろう。私は日本語吹き替えにて6時間のほうを鑑賞。初心者には6時間のほうが適切であろう。

泥棒でも人道的に生き抜いたバルジャン。永遠に変わることのない無償の愛そのものだった。

<鑑賞> CSにて日本語字幕 2010/10/7
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トリコロール 白の愛 <1994/仏> ★★

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TROIS COULEURS BLANC
1994/92min/フランス=ポーランド
監督/制作/脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
出演:ジュリー・デルピー、ズビグニェフ・ザマホフスキ

<あらすじ>
フランス国旗の3色、青(自由)、白(平等)、赤(博愛)をテーマに、3人の女優を主演に据え、ポーランドを代表するキェシロフスキ監督が撮った連作の第2作。パリで美容院を経営するポーランド人のカロルは、フランス人の妻ドミニクに一方的に離婚を言い渡される。大きなトランクを片手に、片言のフランス語で街をさまよっていた彼は、同郷の中年男性ミコワイと意気投合、彼の協力でポーランドへの密航に成功する。両替屋の用心棒となり、ひょんなことから大金を手に入れた彼は、自殺願望のあるミコワイと奇妙な友情を築いていく。新しい生活を始めながらも、いつまでも妻への思いを断ち切れないカロル。そんな中、彼はある計画を思い付くが……。

<レビュー>
トリコロール3部作の2作品目。「平等」を表す白をテーマカラーとしている。ところどころで鳩の羽ばたき音が効果的に使われている。

性的不能を理由に離婚裁判。カバン一つで放り出されてしまった主人公のカロル。不能であることを世間にバラサレ恥はかくし、金もない。フランス人女性はセックスに寛容なのは有名だが、ここまでしなくも、、、と思ってしまうが、珍しい話ではないようだ。地下鉄が白い光に包まれる。カロルの頭の中は真っ白になり途方に暮れているのだ。光の取り込み方が巧い。そんな時に出会ったミコワイという男性。ある男の自殺を手助けして欲しいと持ちかけられ、お金のなかったカロルはスーツケースに隠れ、ミコワイの手荷物としてパリからポーランドへ渡るのだ。

紆余曲折はあるものの、カロルは、ポーランドで起死回生を図る。裏切られ、傷つけられ、愛情と表裏一体にある憎悪。その間で悩むカロルの行動は予想外の展開へ。その果てには一体何が?観客に委ねられている。セックスで達した時にも白い光が現れる。平等に与えられた権利とでも言いたいのだろうか。ストーリーよりも内面を映像で表現している映像のほうが印象に残る作品だ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/28

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プチ・ニコラ <2009/仏> ★★

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Le Petit Nicolas
2009/91min/フランス
監督/脚本/脚色:ローラン・ティラール
原作: ルネ・ゴシニー / ジャン=ジャック・サンペ
出演:ヴァレリー・ルメルシェ、カド・メラッド、サンドリーヌ・キベルラン、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン

<あらすじ>
天真爛漫(らんまん)な小学生のニコラ(マキシム・ゴダール)は、大好きな家族と友達に囲まれ楽しい毎日を送っていた。そんなある日、両親の会話を耳にした彼は、母親にもうすぐ赤ん坊が生まれると勘違いする。弟が生まれたら自分は捨てられるかもしれないと思い込んだニコラは、いたずら友達と一緒にとんでもないことを思いつくが……。

<レビュー>
1959年から1960年代前半にかけて発表された、同名の絵本が原作。

「大人になったら何になりたい?」
「何になりたいかわからないんだ。だって今の人生が楽しくて何も変わって欲しくないから。」
愛くるしい笑顔から満ち溢れている彼の幸せ。おすそわけして欲しいとさえ思う。

飛び出す絵本のページめくりが愛らしいタイトルコール。そのまま絵本に引き込まれたかのような気持ちにさせてくれる温かさ。ノスタルジックな街並みや衣装、全ての美術品も童話のような可愛い作り。きっと大人でも楽しめるはず。
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取り巻く環境は同じ学年の男の子たち。食いしん坊のおデブちゃんや、居眠りな子、ちょっと生意気なメガネ君など、日本のアニメなんかと同じようなキャスティング。赤いベストのニコラは、赤ちゃんが産まれてきたら自分は捨てられるかもしれないと思い込んでいるニコラはみんなにお悩み相談する。個性溢れる子ばかりなので、創造力も豊か。様々なアイデアがでてくる。学校の校庭やトイレ、秘密基地に集まっての作戦会議がかわいい。たとえ嫌なことでもママが喜ぶことは全て取り入れ、ママのご機嫌取りに勤しむ。次の日はみんなに結果報告。そしてまた作戦を練り直すといったことの連続。決して大人たちを困らせているつもりはないが、周囲の大人たちはキリキリ舞い。そんな小さなエピソードが随所に散りばめられている。

でも、一番面白かったのはパパの上司夫妻を食事に招いたシーン。大人たちだって子供じみた行動をしているのがまた笑いを誘っている。

こんな平和な世の中だったらどんなにいいだろうに。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/7

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(未) Wrong Side Up <2005/チェコ=独=スロバキア> ★★★

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Príbehy obycejného sílenství / Wrong Side Up
2005/100min/チェコ=ドイツ=スロバキア
監督:ペトル・ゼレンカ
IMDb評価:7.5/10

パーティで酔った男は、次の日ポケットに女性の髪が入っていることに気付く。前日の出来事は覚えていないので、一体誰の髪なのかも思い出せない。そこで、証拠隠滅に牛乳で煮てしまうところに、元カノからの怒りの電話だ。どうやら姪っ子の髪を切ってしまったらしい。母親は訴えるだという。

自分の周りで尋常ではないことが起こるのは彼女と別れたせいだと考える男がヨリを戻そうする奮闘記である。

確かに彼を取り巻く人々はどこか変だ。「妻へのスカートを選んでくれ」とお願いしてくる上司は真顔でマネキンを妻だと主張している。2階から落とされ、壊れてしまった妻をきちんと埋葬までするのだ。人に見られないとできないと言う隣の主婦は赤いシーツ持参で部屋を訪ねてきた。そして彼の前で夫婦の営みを始めてしまう。電話機をカバンに入れて持ち歩いている友人もいる。父親はドアを開けてままの個室トイレで用をたすし、母親は献血が趣味だ。
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とはいえ、彼自身もかなり可笑しな人物だ。髪を牛乳で煮る行為も尋常ではないが、フォークリフトで堂々と車道を運転して元カノの自宅を訪ねるのだ。

タイトルの「Wrong Side Up」とは、上下逆といった意。最後に彼女への荷物が上下逆となり国際便に誤って乗ってしまうというオチは面白かった。結局何を言わんとしていたのかイマイチ掴めず。。。大絶賛する記事をいくつか読んでしまい、期待大で観てしまった。文化の違いなのかツボの違いなのか今まで例にないタイプのブラックコメディーだった。チェコ語がわからなくても、早口言葉だったり、同じ韻を踏む表現っぽいのがでてきているのが音でわかる。台詞にも面白さがあるんだろう。字幕では味わえないのが残念。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/6
[サイト内タグ検索] 日本未公開
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16歳の合衆国 <2002/米> ★★★★★

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The United States of Leland/16歳の合衆国
2002/10min/アメリカ
製作:ケヴィン・スペイシー
監督/脚本:マシュー・ライアン・ホーグ
出演:ドン・チードル、ライアン・ゴスリング、クリス・クライン、ジェナ・マローン、レナ・オリン、ケヴィン・スペイシーミシェル・ウィリアムズ
IMDb評価:7.1/10

哲学度 ★★★★★
暗喩度 ★★★
衝撃度 ★★

<あらすじ>
16歳の少年リーランドはある日突然、知的障害を持つ少年ライアンを刺し殺してしまう。殺された少年はリーランドの恋人ベッキーの弟。リーランド自身も一緒に遊ぶなどよく面倒を見ていた。周囲の誰もが衝撃を受ける中、彼は逮捕され、矯正施設へ収容される。しかし、殺人の動機については決して何も語ろうとしない。教官を務めるパールは、聡明でとても殺人を犯すようには見えないリーランドに強い興味を抱く。売れない作家でもあるパールは、彼の心の奥底を解明することで本が書けるのではないかと期待し彼に近づく。そして、野心を秘めつつリーランドのカウンセリングを始めるだったが…。

<レビュー>
CSでたまたまやっていた作品。青春ものに興味はないが、ケヴィン・スペイシー制作なので興味が湧き鑑賞することに。久しぶりにガツンとやられた。

16歳の普通の少年がなぜ恋人の弟を殺してしまったのか?
実際に少年院で教師経験をもつ監督の処女作だ。犯罪の“心理”が描かれている。
矯正施設で教師をしているパールは少年リーランドに興味を抱き、自身の小説の題材にと考えていた。話をするうち、犯罪の”理由”を知りたいと思うようになり問いただすが、リーランド本人も殺害の理由がわからないし、記憶にもないと言う。そこで始まったカウンセリングで彼の過去や真相、心理が明らかになっていく。

「人生は記憶の断片の集合体だが、決して記憶の総和とは一致しない。」私が感銘を受けた劇中の台詞だ。記憶を辿り、犯罪の真相に迫ろうとするが、記憶とは断片的なもの。パズルのように組み合わせてもすべて当てはまるわけではないのだ。過去を語ること、事実を突き止めることがいかに無意味かということが言える。犯罪心理解明の難しさはここにあるのだろう。

一体彼に何があったのか?何が犯罪を招いたのか?無意味にも見えるカウンセリングからも自ずと見えてくるものはある。彼という人間だ。「恋をすれば孤独や絶望がわかる」というリーランドは悲観的で、人の感情に敏感な少年だ。感情を押し殺し、見たくないものは見ないようにしてきたという。偽善者ぶる周囲の人々のことだ。

自分の心ですら感心のない父親は息子の心にも関心がなかった。人生の過ちを犯したのだ。彼女は麻薬という過ちを犯している。カウンセリングのパールだって浮気という過ちを犯している。「悪は善を確認するための行為」だとも言うリーランドの背後には過ちを犯した人たちばかりだった。殺人とまではいかない罪にしても、なぜ過ちを犯すのか?人間を形成しているのは、環境、人間関係、記憶=過去、、、などのいろんな断片的な要素が複雑に絡み合っている。心理にはそういった断片が複雑に絡まっており、理由は一つではない。家庭崩壊、殺人、麻薬、、、アメリカのみならず日本でも問題になっていることだが、明確な回答は自分にしかわからない。自分を形成している断片に問いただせねば答えは導けないのだ。

彼の犯罪の理由も、悪と善への言及も宙に浮いたような状況の中で迎えたラストシーン。理由はともあれ、犯罪は悪なのだ。

タイトルの「合衆国」とは「アメリカ合衆国」のことではなく、断片バラバラのものが集合体になっている状態を象徴的に表しているのだ。州で形成されているアメリカ合衆国のように、心も人間も断片的要素で形成されている。しかし、人生は断片の総和より大きいのだ。

<鑑賞> CSにて 2010/10/6

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子供の情景 <2007/イラン> ★★★

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Buda as sharm foru rikht/ Buddha Collapsed Out of Shame
2007/81min/イラン=フランス
監督: ハナ・マフマルバフ
製作: メイサム・マフマルバフ
IMDb評価:6.9/10

<あらすじ>
破壊された仏像が瓦礫となって残るアフガニスタンのバーミヤン。そこで暮らす6歳の少女バクタイは学校に通うことを夢見ていたが、実際は鉛筆とノートを買うお金も持っていなかった。バクタイは文房具を買うお金を稼ごうと待ちに卵を売りに出かけるのだが……。

<レビュー>
「子供の情景」って有名な曲がありますよね。今調べたら、ロベルト・シューマンの作曲したピアノ曲の代表作のひとつだとか。イラン映画は宗教的背景から子供出演が多い。そして、素朴で純粋なものばかり。本作もそんなのを想像しながら観始めたが、とんでもない衝撃作だった。

初盤はただただ学校に行って勉強したいと願う少女バクタイと隣に住む少年アッバスのやり取りが微笑ましい。学校に行くならノートと鉛筆が必要だと教えてくれたアッバス。お母さんが外出でお金が手元にないバクタイだが、家にあるものを何か売ってお金つくれば?とアッバスの助言に、家にあった卵を売りに町へ出かける。寓話風に描かれ、微笑ましい。イスラム社会の日常、過酷な環境が垣間見れるのも魅力だが、中盤から場面は一変する。
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学校へ向かう途中、バクタイは出くわした子供たちの戦争ごっこに巻き込まれてしまう。石打ちの刑など実際にある刑罰まで真似し、何人もの少女を人質にとっていた。子供たちの遊びから背後にある「戦争」、いかに子供たちが戦争と隣り合わせで生きているかが浮かび上がってくる。純粋で、是非がわからない子供たちの鋭い観察力にも驚かされる。実際の戦闘風景はないし、血も流れないが、ニュースなんかよりよっぽど暴力的だ。
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「自由になりたければ、死ね!」
アッバスの言葉に凍りついてしまった。大人たちが身勝手に作り出した世界で生きなければならない子供たち。バクタイのキラキラした瞳に映る情景。大人が子供に与えてしまった現実に胸が痛む。

<鑑賞> CSにて 2010/10/5
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トリコロール 青の愛 <1993/仏> ★★★★

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TROIS COULEURS BLEU/
1993/99min/フランス=ポーランド=スイス
監督/制作/脚本: クシシュトフ・キエシロフスキ
出演: ジュリエット・ビノシュ

<あらすじ>
フランス国旗の3色、青(自由)、白(平等)、赤(博愛)をテーマに、3人の女優を主演に据え、ポーランドを代表するキェシロフスキ監督が撮った連作の第1作。“青“をテーマにした本作のライトモチーフはヨーロッパ統合。ヨーロッパ統合のシンボルとなるシンフォニーを依頼されている世界的に有名な作曲家と、その妻、そして娘の3人を乗せた車が道路脇の木に激突し炎上。奇跡的に妻のジュリーだけが助かった。夫と娘の死を恨み、厭世的になる彼女は、夫が遺した欧州統合のためのシンフォニーの断片を捨て去ろうとするのだが、夫に愛人がいたことを知ったことから、再び生き直す決意をする……。

<レビュー>
交通事故により夫と娘をなくし、失望感からどう立ち直るのか。やはりテーマは「運命と偶然」だ。それに翻弄されながらも、乗り越えていこうとする様を描いている。「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。 」と唱える監督だが、この作品では、生きるとは何か。人間は喪失感から何を求めるか。愛とは何か。と問い続ける。夫の死後に知った愛人の存在、さらに妊娠を知ってしまった時の憎悪と嫉妬。孤独の中でどう立ち向かうか。さらに問い続ける。内面をとことん追究している。

美と感情を大事にする監督らしく、映像へのこだわりも強く感じる。テーマの色である青の使い方がほんとに巧い。青という色は寂しさを感じさせる寒色で、青いプールで泳ぐ姿は失望感を効果的に演出している。しかし、海や空といった広い意味での自由を感じさせる色でもある。
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コーヒーに角砂糖を染み込ませるシーンなんかも絵のように映し出す。ネズミのお産のシーンと愛人の妊娠を重ねたような描き方は憎いほど巧い。「ふたりのベロニカ」よりずっと好きだ。白の愛と赤の愛も観直してみることにする。

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/27

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この道は母へとつづく <2005/ロシア> ★★★

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ITALIANETZ/ THE ITALIAN/ この道は母へとつづく
2005/ロシア 
監督:アンドレイ・クラフチューク  
出演:コーリャ・スピリドノフ、マリヤ・クズネツォワ、ダーリヤ・レスニコーワ
IMDb評価:7.5/10

<あらすじ>
極寒のロシア。フィンランドとの国境近くの孤児院に一組のイタリア人夫婦が養子を求めてやって来る。裕福な家庭の養子となることは、孤児たちにとって唯一の希望の光だった。孤児院にとっても、斡旋業者から渡される手数料は大きな魅力だった。そして、6歳の少年ワーニャが選ばれ、正式な手続きが済み次第、イタリアへ引き取られていくことに。そんなある日、先に養子に出されたワーニャの親友ムーヒンの母親が、捨てた我が子を取り戻しに来て院長に追い返されるという騒動が起こる。ワーニャは同じことが自分の母親にも起こりはしないかと想像した途端、実の母に会いたい気持ちが抑えられなくなってしまう。そして、独学で文字を覚えると出生記録を盗み読み、わずかな手がかりを頼りに母を見つけ出すため、ついには孤児院を脱走するのだったが…。

<レビュー>
孤児輸出大国といえば、韓国、中国、インド、そしてロシア。韓国映画には孤児院を題材とした話はあまりにも多すぎる。ロシアはどうだろう?私にとっては本作が初となる。

前半は孤児院の様子が延々と描かれる。驚くべき縦社会が存在する。盗みで独立生計をたてているお兄さんグループに支配され、肩身の狭い思いをしているワーニャたち。里親に出されなければここで一生を過ごし、お兄さんたちのように盗みをしていく運命だ。実話を基にしている映画らしいので、これが実態かと思うと恐ろしい。
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ワーニャはイタリア人夫婦への養子が決まっていたが、正式な手続きには数カ月かかるらしい。その間、実母のことが気になって仕方がない。養子に行った後、実母が会いに来たらどうしようと不安にかられる。そしてついに、孤児院と抜け出し、母親探しの旅へ。孤児院という環境で育ったからか、たくましい。どんな境遇でも、切り開くのは自分なんだと痛感させられる。
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誰もが期待しているようなラストシーンではなく、催涙性はない。ドキュメンタリー出身の監督はあくまでもリアリスティックさにこだわり、社会問題の孤児問題を提起している。
一番親を必要とする時期、与えられた環境でたくましく生きる子供たち。ワーニャの行動力は並大抵のことじゃない。同じ地球に生まれながら不自由なく暮らして私たちのほうが大切なものを忘れてしまっている。

邦題について。絶句した。いつものことながら知らずに観てよかった。解釈や想像の自由を制限させるようなものやネタバレしている邦題も少なくない。明らかにこの作品は後者だ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/3
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ふたりのベロニカ <1991/仏> ★★★

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La Double Vie De Veronique
1991/92min/フランス=ポーランド
監督/脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:イレーヌ・ジャコブ

<あらすじ>
同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた二人──一方はポーランドの小さな田舎町で、もう一方はパリ郊外で。名前も同じベロニカ。双子のような瓜二つの容貌と同じ癖を持ち、ともに音楽の才能に恵まれていた。そして先天的に心臓を患っていることも共通していた。二人はお互いを知らずに暮らしているが、どこかに自分とそっくりなもう一人の存在を感じている。ある日、ポーランドのベロニカが心臓発作で死んでしまう。その痛みを感じとるパリのベロニカ。彼女のまわりで起こり始める不思議なできごと──死んだ彼女に導かれるように、まるで二人分の命を生きるかのように、パリのベロニカは本当の恋を見つけるのだった。

<レビュー>
一貫して「運命と偶然」をテーマにしている監督だが、本作でもそれを強く感じた。同じ年、同じ日、同じ時刻に生まれた二人が瓜二つの容貌。同じ癖、同じ名前。そして共に音楽の才能に恵まれるなんてことがほんとにあるのだろうか?全ての出来事があたかも運命で導かれるかのようで、何度も鳥肌がたった。
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まずはポーランドのベロニカの話から始まる。彼女の神々しい歌声が指揮者に認められるが、晴れの舞台で心臓発作に見舞われ、短い生涯を終えてしまう。
そして、舞台はフランスのベロニカへと移る。運命に導かれているのか、不思議なできごとが次々と起こるのだ。送り主不明からの一本のテープ。そこには雑踏、駅のアナウンス、カフェの定員の声だけが録音されていた。消印を見るとパリ・サンラザール駅となっており、運命のように惹きつけられたベロニカはサンラザール駅のカフェにたどり着く。そしてそこにはある男がいた。彼もベロニカが来るであろうことを予感していたのだ。非現実的ではあるが、これも運命なのだろうか?
ポーランドのベロニカの存在に気付いているのかいないのか定かではないが、感じているような雰囲気は節々に読み取れる。
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それにしても、難易度はかなり高い。私がまだ未熟ということかもしれない。行間を読み切れたら自ずと答えも導けるのかもしれないが、理解に苦しむシーンばかりだった。しかし、ガラス越しのショット、音楽効果、木漏れ日のショットなどの美しさは芸術品であることは間違いない。

主演のイレーヌ・ジャコブは初出演であるにもかかわらず、カンヌで女優賞を受賞している。これもまた運命か?

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/2
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