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ポゼッション <1981/フランス> ★★★★

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1981/123min/フランス=西ドイツ
脚本/監督:アンジェイ・ズラウスキ
出演:イザベル・アジャーニ、サム・ニール
受賞:カンヌ映画祭 女優賞
言語:英語
IMDb評価:7.1/10

難解度 ★★★
隠喩度 ★★★★★
残酷度 ★★★★
衝撃度 ★★★★★
狂気度 ★★★★★

本作はイザベル・アジャーニ出演のフランス映画。存じ上げない監督さんだけど、名前を見てすぐにポーランド人だと思い、ちょっと調べてみた。アンジェイ・ワイダの助手を務めたこともあり、ソフィー・マルソーと婚姻関係にあったとか。フランス留学後アンジェイ・ワイダのもとで映画作りを学び、ポーランドでデビューをするが、2作目「悪魔」の過激な内容が問題となり、本国では公開禁止。自身は国外追放処分を受ける。そこで、フランスで映画を作り本作のヒットで名は世界中に広まった。もう一度ポーランドで映画を作ろうと試みるが、やはり政府中止命令を受け、その後もフランスを拠点にしている。

タイトルの「possession」とは所有、憑依、妄執。「所有」したいという欲望が「妄執」状態になり、「妄執」に「憑依」される妻をイザベル・アジャーニが演じる。このイザベル・アジャーニがとにかく凄く、「アンチクラスト」は比にならない狂いっぷり。こんな狂った映画は今まで観たことがない。焦点の定まらない目、悪霊にとりつかれたかのような目と行動。彼女自身、怖くて観れないとか。一人二役していることにも全く気付かなかった。かなりエグいシーンが多くホラー映画に分類されているが、パルムドールにノミネートされたことを考えるとただのホラー映画であるはずがない。
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舞台は冷戦下のドイツ。言及はしていないが、鉄線の国境が見えるからベルリンでしょう。夫が長期出張から帰るや否や妻は家を飛び出してしまう。夫は不倫が原因だと考え、探偵を使って不倫相手を探そうとするというお話。ごくありふれた話ではあるが、観たこともない衝撃的な展開に冒頭から開いた口がふさがらない状態にさせられる。イザベル・アジャーニが地下鉄で暴れ狂う姿、執念という体液を吐き出す映像はこの世のものとは思えないほど気味が悪いが、一見の価値あり。夫サム・ニールのイカれっぷりも見逃せない。

ポーランド映画(ポーランド人監督)には隠喩が多いらしいが、本作も然り。監督曰く、善が悪に支配されるという不条理な世界を意図していたとか。変革していこうとする国家の体制とかポーランド人としての心の叫びをも代弁しているようにも感じた。

最近気づいたことが、国外追放や製作を禁じられるような作品こそが面白いということ。北朝鮮映画「プルガサリ」もそうだが、強い真意を命がけで伝えようとしている。

つい数か月前まではポーランド映画もポーランド人監督も避けてきていた。10代の頃、アンジェイ・ワイダやクシシュトフ・キェシロフスキ作品がつまらなくて仕方なかったからであるが、年を重ねてようやくわかることが増えてきた。これからはポーランド人監督に注目してみようと思う。

惜しくもパルムドールは逃したが、女優賞は獲得している。更に興味深いのが、パルムドールを受賞したのはアンジェイ・ワイダの「鉄の男」だということ。昔つらんなくて途中挫折した記憶があるけど、また観直してみようかな。。。

<鑑賞> 2010/11/24

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アンチクライスト <2004/デンマーク=独=仏=スウェーデン=伊=ポーランド> ★★★

anti.jpg2009/108min/デンマーク=ドイツ=フランス=スウェーデン=イタリア=ポーランド
監督/脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール
IMDb評価:6.8/10

難解度 ★★★★
宗教度 ★★★★★
芸術度 ★★★★
残酷度 ★★★★★
衝撃度 ★★★★★
官能度 ★

<あらすじ>
愛し合っている最中に愛する息子を事故で失った夫婦。深い悲しみと自責の念からしだいに神経を病んでいく妻。セラピストの夫は自ら妻を治療しようと試みる。催眠療法から、妻の恐怖は彼らが「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋からきていると判断した夫は、救いを求めて楽園であるはずのエデンにふたりで向かうが、事態は更に悪化していく。現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは……?

<レビュー>公開前なので、ネタバレなしです。
話題の一つになっているモノクロのプロローグ。激しいセックス中、子どもが窓を乗り越え転落し、死んでしまうという内容。スローモーションで酔いしれてしまいそうな映像感覚だけど、直前に運悪く観てしまった韓国映画「パジュ」と同様の内容で、観るのを中断してしまっていた。気を取り直して観直したけれど、目を疑う性描写や目を覆いたくなる暴力シーンが満載で、終了後しばらく一体何が起こったのかわからず茫然としてしまった。鑑賞直後には心臓をえぐり取られたような気分で嫌悪感しか残らなかったが、あまりにも難解なので、鑑賞後時間をおいてから分析するといろんなものが見え始めてくる。
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この難解を紐解くにはキリストについて考える必要がある。妻が「自然は悪魔の教会だ」というように、森は悪魔であって、そこに暮らすことによってキリストの呪縛からの解放・救済を求めているのだ。喪失感をセックスで埋めようとするが、救済は得られない。夫はキリストの象徴だと考えると、妻の行動も辻褄があってくる。そして、邪悪なものを吐き出そうとするのが、剥き出しの性となっているような気がする。あまりにも露骨な性描写はポルノ俳優が演じているらしいが、ゲンズブールも下半身丸出しの姿だったり、自慰行為まで披露してしまっている。ポスターにもなっている大木の根元でのセックスシーンも描写としてある。

映画はプロローグ、悲嘆、苦痛、絶望、3人の乞食、エピローグの6章から構成される。モノクロであるプロローグとエピローグは正気な姿が描かれ、カラーである他の4章では狂気の恐ろしく、痛い姿が描かれる。世界の創造主としての神よりもむしろ悪魔を描いており、人間の内に秘めた嫌な悪な部分をまざまざと見せ付けられてしまった気分にさせられた。

  プロローグとエピローグでの挿入歌「泣かせてください」の歌詞が興味深い。
 
  過酷な運命に泣かせてください
  そして、自由に焦がれることをお許しください
  悲しみが私の苦悩の縄を
  断ち切ってくれますように
  どうかお願いですから

  ジャコモ・ロッシ作詞 ヘンデル作曲 オペラ「リナルド」より

この歌詞に全てが集約されているようで、身震いがした。2シーンでエキストラが出演するが、台詞がある出演者は夫婦2人のみ(息子もあったかも)。2人芝居とは思えない重厚感、全く飽きさせない展開、スピード感もあり、難解度が高いにも関わらず、悔しいことに目が釘付けになってしまった。動物たちにも紐解く鍵が隠されているようにも思えるが、私の能力を遥かに超えているためよくわからなかった。日本劇場公開版は104分となっている。4分のカットは性描写なのだろうか。

<鑑賞> 2010/11/25

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(未) Dead Man's Shoes <2004/英> ★★★★

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Dead Man's Shoes
2004/90min/UK
監督:シェーン・メドウス「This is England」
脚本:シェーン・メドウズス、パディ・コンシダイン
出演:パディ・コンシダイン、Toby Kebbell、Gary Stretch
IMDb評価:7.8/10

恐怖度 ★★★★
衝撃度 ★★★
暴力度 ★★

かなり訛りがひどく以前途中挫折してしまったものの、「気が滅入るランキング」26位に入っているのを知り、再挑戦。低予算、3週間という短い撮影期間で過剰な演出は一切ないのに、訛りも気にならなくなるほどの面白さ。脚本と演技力の素晴らしさでしょう。

「God will forgive them. He'll forgive them and allow them into Heaven. I can't live with that.
(神はお前らを赦し、天国へ行かせるだろうが、俺はそれでは生きてけない)」という台詞から始まる。

イギリス北部の片田舎。ある日、元軍隊のリチャードが町に帰還した。弟のアンソニーは精神障害者であり、物事の分別がつかない。それをいいことにギャング達は彼をおもちゃにしていたのである。性的虐待、麻薬強制、暴行。。。弟を犬のように扱ってきたギャング達に復讐するためにりチャドは帰還したのである。そしてリチャードの復讐が始まるのであった。

ギャング達は、リチャードの帰還を知り、表情を強張らせ、ただならぬ緊張感が流れる。そこまでの恐怖は何なのか、なぜここまでの復讐に燃えるのかは、フラッシュバックで徐々に明らかになる仕組みはお見事。最後の仕掛けにも見事に騙されてしまった。
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面白いと感じた理由は、ユーモアにも溢れていたからでもある。意味もなくガスマスクで突如現れたり、家へ侵入し、睡眠中にピエロさながらのいたずらメイクをしたり、レインボーカラーに髪を染めてしまったり、観る側も緊張感が途切れる瞬間がある。これらのイタズラはこれから起ころうとする恐怖の前兆であり、笑いと恐怖が交互に襲ってくるので余計に恐怖は増していく。いつ襲ってくるかのかわからない心情を面白くも見せている。そして、意外にも家並みや風景のキレイさと音楽の素晴らしさ。スリラー映画だということを忘れてしまうほど情緒に溢れる。

低予算の復讐劇。展開も結末も似たり寄ったりだと思っていたが、本作の練られた脚本には脱帽。ストーリーがあまりのも現実的なのが恐怖の一番の原因でしょう。ラストの落とし所もイギリス映画らしい秀逸。「なぜ親が子どもドラッグをやらせるのか?心をコントロールできるからだ。弱い人間がやることだ。」とリチャードは言う。無理矢理ドラッグをやらせ、コントロールすることは、ギャング達が弟アンソニーにしてきたことでもある。リチャードは復讐心に燃えると同時に正義とも戦っていた。ラストシーンでも彼の正義は強く感じる。「気が滅入るランキング」に入っていたが、私はむしろ人間臭く美しいと思った。

"In memory of Martin Joseph Considine"という言葉で本作は幕を閉じる。コンシダインのお父様だとか。シェーン・メドウズ監督と共に仕事を続けなさいというのが父の遺言だったそうだ。

本作のひどい訛りは舞台としているイングラン北部独特のもののようである。ひどいスコットランド訛りも混じっているし、スラングだらけなので、私が聞き取れたのはほんの3割程度だった。シンプルな骨組みにいたって単純なストーリーなので、おおまかなあらすじを押えておけば私程度の英語力でも十分楽しめる。よっぽどEnglish英語に自信があるなら別だが、英語字幕がついているだろうフィンランド、ドイツ、イタリア版をお勧めします。
ちなみに「Fuc●」は116回使われたそうです。

<鑑賞> 2010/11/27
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トンネル <2001/ドイツ> ★★★

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Der Tunnel/ The Tunnel
2001/150min/ドイツ
監督:ローランド・ズゾ・リヒター
出演:ハイノ・フェルヒ、ニコレッテ・クレビッツ
IMDb評価:7.9/10

社会度 ★★★★★
写実度 ★★★★
衝撃度 ★
感動度 ★

<あらすじ>
1989年11月9日、東西ドイツの統一と東側の民主化を求める市民の力により崩壊した“ベルリンの壁”。1961年に突如出現して以来、ドイツ分断の象徴だったこの壁に隔てられた愛する人を取り戻すため、危険を顧みず壁の下に145mのトンネルを掘り29人を東側から脱出させることに成功したという実話を映画化したサスペンス・ドラマ。
 1961年8月、ベルリン。一夜にして東西ドイツが分断されてしまう。西側への人々の流出を阻止するため東ドイツは東西ベルリンの境界線に壁を作ることを決定し、有刺鉄線を張り巡らし銃を持った兵士を監視に当たらせたのだ。これにより、それまで比較的行き来が容易だったために運悪くその時東西ベルリンに別々にいた愛する家族や恋人までもが引き裂かれることとなった。西ベルリンにいたハリー、マチス、フリッツィらは、東側に残してきてしまった大切な人を救い出すためにトンネルの建設を計画するのだった……。

<レビュー>
61年のある朝、ブランデンブルク門が東側の兵士によって封鎖されてしまう。はじめは銃を手にした兵士の人垣の壁だったが、有刺鉄線の柵ができ、レンガが築かれ、コンクリートの壁へと強固されていくと同時に進められたトンネルによる亡命計画。歴史に疎い私でも知っているトンネル「トンネル29」を題材にしている。29番目のトンネルだと思っていたが、29人の脱出が名前の由来であったということは知らなかった。1962年9月14日午後3時ごろ、計29人が西ベルリンへ脱出したトンネルが「トンネル29」だそうだ。分断された家族たちを西ベルリンに亡命させたいという思いから、ベルリンの壁の下に東西ベルリンをつなぐ長さ145mのトンネルを9ヶ月かけて掘り、29人を西側へ亡命させるまでを描いた、実話に基づいた作品である。

亡命手段の一つであるトンネル掘り。どこにスパイが潜んでいるかもわからないし、いつ誰に密告されるかもわからない。東側公安に察知され逮捕されれば、射殺なんてことも珍しくない。トンネルを掘ることも極秘に行う必要があったのである。掘る側の心理状態にはなかなかの緊張感がある。亡命希望者との連絡の取り方もスパイさながらである。信頼していた友人や家族が実は密告者だったという事実にも衝撃を受ける。当時の東ドイツの状況がうかがえ、リアリティさは秀逸である。
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困難を極めるトンネル掘り、亡命者との連絡、裏切り。それぞれに人間ドラマがある。彼らの動きを嗅ぎつけ追い詰めてくる保安官と国境警備隊とのやり取り、脱出劇はスリリング。

監督は「9割が実話で1割がフィクション」だと語る。映画ではなく、本国でのテレビ放送が目的であったためだろう。ドラマチックな展開はなく、写実的だという印象は否めないが、もしかすると生真面目なドイツ国民の趣向なのかもしれない。非当事者には少々物足りない演出に感じてしまった。酷い拷問だといいながら、服を脱がされる程度であって、ひどいに値するほどの拷問ではなかった。歴史的事実を知るには観る価値があるが、残酷なエピソ
ードがもう少しあったら2時間半という長さも気にならなかっただろう。
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壁を超え逃げようとした者を射撃した東側の兵士の表情が印象的。撃つ度に苦しい表情を見せている。国境警備隊という仕事とはいえ、やはり彼も人間なのである。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/20
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232. 豚が井戸に落ちた日 <1996/韓> ★

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豚が井戸に落ちた日/ 돼지가 우물에 빠진 날/ The day a pig fell into a well
1996/114min/韓国
原作:ク・ヒョソ 「面識のない夏」
脚本/監督:ホン・サンス
出演:イ・ウンギョン、キム・ウィソン、ソン・ガンホ

韓流度 なし
芸術度 なし
社会度 なし
感動度 なし
催涙度 なし
衝撃度 ★

<あらすじ>
立派な小説のひとつも出版できない30歳代の三流小説家キム・ヒョソプは, ポギョンという名の人妻と愛に陥っている。しかし,ヒョソプには,彼を尊敬し小説家の妻を夢見て何かと尽くすミンジェという女の子がいる。ポギョンの夫ドンウは,平凡なサラリーマン。小心者ながら潔癖症のドンウは,常に出先で妻のことが心配になる。ミンジェが切符売りをする映画館の職員ミンスは,彼女に片思いをしているが,その執着は異常だ。

<レビュー>
“韓国のゴダール”“エリック・ロメールの従弟”などと形容され大絶賛されるホン・サンス監督のデビュー作である。作家性と乾いた映像表現が高い評価を得ている。日本でも特別上映されることがあるからファンも多いのでしょう。私は苦手な監督なのですが、大絶賛の記事を読んではついつい観てしまい、その度に後悔させられる。もしかしたら昔の作品は今とは作風が違うかもと淡い期待を抱きながら観たが、デビュー作から一貫して同じスタイルを貫いてるようである。

冴えない小説家の男性。その不倫相手の女性。潔癖症で不倫妻を持つ旦那。小説家に思いを寄せる女性。オムニバス形式で4つの話は独立して進み、なかなか全体像が見えない。最後の最後でパズルのように明かされていく。とはいえ、あまりにも淡々と進み過ぎるストーリーは結局何が言いたいのかわからない。後からあらすじを読んで、そうだったのか。と納得させられるシーンが多い。

だらけた日常を、しかもどうでもいいことをねちねちと掘り下げていくスタイルは一貫している。出演者には当日台本を渡し、即興でやらせるのは有名だが、本作はあまりにも感覚的。毎度のことだが、いきなり挿入される激しいセックスシーンも意味不明。タイトルの意味は韓国語の慣用句かと思い調べたが結局わからない。

収穫は想定外のソン・ガンホの出演だった。ほんの少しの出演でも初々しい姿が見られただけでも観て損はなかったかな。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/21
[サイト内タグ検索] ホン・サンス監督
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そして、私たちは愛に帰る <2007/独=トルコ=伊> ★★★★

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AUF DER ANDEREN SEITE/THE EDGE OF HEAVEN
2007/122min/ドイツ=トルコ=イタリア
監督/脚本:ファティ・アキン 「愛より強く」「クロッシング・ザ・ブリッジ
音楽:シャンテル
出演:バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシル、ハンナ・シグラ
IMDb評価:7.9/10

邦題のセンス ★★★
芸術度 ★★★
社会度 ★★★
感動度 ★★
催涙度 なし

「生と死は隣あわせ、すべての死は生誕である」という死生観を持っているファティ・アキン監督。本作は「愛、死、悪」に関する三部作のうちの2作目である。原題の直訳は「向こう側に」「反対側に」であり、邦題の意味を考えるべくもう一度観直してみた。

トルコ人娼婦と過ごすトルコ系ドイツ人の父と大学講師の息子。その娼婦と反政府活動家としてトルコを逃れた娘。その娘と新たな友情を築いたドイツ人女性とその母。3組の親子がイスタンブールとドイツを行き来し、交差する運命は3部構成で描かれる。「生と死」「幸せと不幸せ」「出会いと別れ」は表裏一体だということを入り組んだ時間軸で展開すると同時に、EU加盟で揺れ動くトルコとドイツの関係までをも言及している。
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浜辺に寄せては返す波のように、人は「生と死」「幸せと不幸せ」「出会いと別れ」を繰り返す。しかし、喪失の中から人は希望を見出そうとする。それが邦題で言及している「愛」なのだろう。翻弄される運命の中での過ちを赦すことも「愛」なのである。そうやって人は「死と再生」を繰り返していく。「死」とは新たな人生の扉を開くのである。

国家間の関係が変わろうとも人と人との愛は変わらない。国家も文化も超越した親子の絆。赦しは前に踏み出す一歩となるのである。

民族音楽の使い方が絶妙。余韻を残す結末も何とも言えない感情が込み上げてくる。最新作「ソウル・キッチン」は11年1月22日劇場公開予定。待ち焦がれる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/16


[サイト内タグ検索] ファティ・アキン監督
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クロッシング・ザ・ブリッジ <2005/独=トルコ> ★★★☆

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CROSSING THE BRIDGE The Sound of Istanbul
2005/92min/ドイツ=トルコ
監督:ファティ・アキン「愛より強く」「太陽に恋して」「そして、私たちは愛に帰る
出演:アレキサンダー・ハッケ(アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン)、ババズーラ、アイヌール
IMDb評価:7.7/10

「この街には不思議な魅力がある。その魅力が何なのか謎なのだ。そこで謎の答えを探しに音楽を求めて旅をすることにした。」と語るのは進行役であり、ミュージシャンのアレキサンダー・ハッケ。この街とはイスタンブールのことである。本作と同じくファティ・アキン監督の「愛より強く」の撮影で訪れた際に魅了されてしまったらしい。イスタンブールとは、ヨーロッパとアジアの境界線であり、地中海と黒海を結ぶボスポラス海峡がある。そこにかかる大きな橋が本作のタイトルの由来だろう。
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イスタンブールを拠点に活躍する数組のミュージシャンが登場し、彼らの音楽とインタビューで綴られる音楽ドキュメンタリーである。エレクトロニカ、ロック、ヒップホップ、伝統民謡など、様々なジャンルに焦点を当てている。伝統音楽にルーツの異なるものを融合させたりして、絶えず新しいスタイルも生み出されているという。しかし、スタイルが異なろうと共通だと感じるのは彼らの強い精神であった。西洋主義、保守性、支配階級、弾圧などに対する反骨精神を強く持ち、魂の叫びとなって込められた歌詞にはトルコ特有の世界観が広がっている。
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あるミュージシャンは言う。「イスタンブールは72の民族が行き交じった大きな橋のような街。伝統と革新、富と貧困といった対極なものが混じり合っている。」と。

この街での共通のツールは音楽。その音楽が72もの民族を結ぶかけ橋となっている。これこそがイスタンブールの魅力であり、監督が意図したタイトルそのものだったのではないだろうか?

印象的だったのが、「路上に立てば皆平等。階層や貧富も関係ない。麻薬中毒者から身なりのいいビジネスマンまで人生や社会の矛盾に耳を傾ける。」という台詞である。金儲けがしたくて歌っているわけではない。伝えたいことを伝えているだけだと言う。

音楽の使い方に定評のあるファティ・アキン監督だが、彼が単に音楽を紹介するためだけのドキュメンタリーを撮るはずがない。劇中、「音楽は訪れた土地の文化の奥深さを語る。」という説明があるように、音楽を通じて文化について考えるのが監督の意図だろう。音楽ドキュメンタリーの枠を超えたファティ・アキン監督らしい作品であった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/19

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デカローグ第10話+まとめ <1989/ポーランド>★★★

Dekalog, dziesiec
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:イェジ・シュトゥール、ズビグニェフ・ザマホフスキ
IMDb評価:8.4/10、9.2/10(全体)

第8話でうれしそうにゾフィアに切手を見せに来た老人の葬儀から話は始まる。葬儀で2年ぶりに顔を合わせた息子2人は遺品整理のために父のアパートを訪ねる。殺風景で質素なのに、防犯装置に厳重な金庫を完備した不釣り合いな部屋で、金庫を開けると大量の切手コレクションしか入っていなかった。父親が一生をかけて収集したものだが、興味のない者にとってはただの紙切れに過ぎず、兄弟は処分しようと考える。しかし、「この一枚でフィエットが買える、この一枚では家が買える。」とある収集家に言われ、兄弟2人の目の色は変わる。
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普通の話なら、全て売りさばいて豪遊するだろうが、本作がそんな単純な話であるはずがない。兄弟は、切手の魅力にとりつかれ、子どもの頃冷やかな目で見ていた父親と同じ道を踏み出してしまうのだ。コレクションの価値を更に高めようと不足分を買い足し、ドーベルマンを飼い防犯も強化する。更に驚くべきとんでもない手段で連作を入手する。

息子2人が収集を受け継ぐことは死んだ親にとっては喜ばしいことだろうが、収集ばかりにうつつを抜かし家族を省みなかった姿まで受け継いでしまった。妻子はほったらかしで没頭してしまうのだ。妻子には愛想つかされ、さらに、ある出来事をきっかけに兄弟関係にも亀裂が入り始める。物に執着したがために希薄していく人間関係をコミカルに描いている。この10話のみが喜劇となっている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15

<まとめ> ネタバレなしです。
7話は編集でカットされてしまったが、10話以外の全話に登場する人物がいる。
第1話では焚き木をするホームレス、第2話では病院の従業員、第3話ではタクシードライバー、第4話ではボートを運ぶ青年、第5話では建築現場で働く青年、第6話では買い物バックを運ぶ青年、第7では話駅員、第8話では講義を傍聴する学生、第9話では自転車に乗る青年。台詞はなく、重要な場面で登場人物とすれ違うだけだが、神のような存在感を残している。またミルクもよく使われ、印象深い。
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「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

「身を切るような孤独を知っている者だけが、人生の美しさを真に享受することができる。」これもキェシロフスキ監督が残した言葉である。登場人物たちは、運命に翻弄される人間の孤独と苦悩の中で厳しい試練を与えられている。

不倫、盗み、殺人、ウソ。罪を犯す人物像はもともとは旧約聖書で描かれていた人々だ。誰もが本当はわかっているはずなのに、気付かなかったり忘れていたことを改めて気付かせてくれる。本作はそんな作品だった。個人を冷徹に描き、誰も責めない。補足的なナレーションもなく、観る側の想像に委ねられる描き方は、性別や年齢、境遇によって解釈や感じ方が異なるでしょう。

スタンリー・キューブリックは生前、「この20年間で一番素晴らしい映画」だと絶賛していた。きっとこれからも残る名作となるでしょう。



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デカローグ第9話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, dziewiec
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.2/10、9.2/10(全体)

9条「隣人の妻を欲してはならない。」をテーマにした第9話「ある孤独に関する物語」について。

「何人と性交渉を持ったか?」「8~15人」
「奥さんは魅力的か?」「うん。とても」
「それなら別れなさい」

医師に性的不能を告知されるシーンからスタートする。家に戻りベッドの中で夫は妻に、「愛人を作ってもいい」とさえ言う。「下半身だけが愛じゃない」という妻におそらく安心しただろうが、実はすでに若い男と不倫関係にあったのだ。何となく匂いを嗅ぎつけた夫は、電話に盗聴器をつけ証拠をつかもうとする。
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不倫の事実を知り絶望の淵に立たされた夫は離婚を決意するが、妻は愛人と別れ、夫とやり直したいと言う。愛人とは性欲を満たすためだけの関係だったのだ。愛人に別れを告げるが、彼にはその気はない。気晴らしのために1人で行ったスキーにも愛人はついて行ってしまった。それを夫は勘違いをし、夫婦の運命は思いもよらぬ方向へと進んでしまう。夫は妻の不倫を責めることなく、孤独の殻に閉じこもってしまうのだ。一度狂ってしまった歯車はどうなってしまうのか?
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車の助手席前のグローブボックスが閉めても閉めても開いてしまうのだ。中には愛人が残したノートが入っていた。別れたくても別れられない愛人との関係を暗示してたのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/14
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デカローグ第8話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, osiem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:7.9/10、9.2/10(全体)

8条「隣人に関して偽証してはならない。」をテーマにした第8話「ある過去に関する物語」について。

教授ゾフィアはワルシャワの大学で倫理学を教えている。講義を聴講したいとうアメリカから来た女性研究者を学部長から紹介される。研究者エルジュビエタはゾフィアの全著作の翻訳者であり、かつてゾフィアがアメリカを訪ねた際、案内をしてくれた人だった。
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この日の講義は、「デカローグ第2話」をテーマとした内容だった。自身の都合で子どもを産むべきか、おろすべきかを医者の判断に委ねるという話だ。「子どもの命が大切だ」という教授の言葉にエルジュビエタが口を開き、第二次世界大戦中のユダヤ人のある少女の話を始めた。ナチス時代のワルシャワで、命を守るためにその少女はある家庭にかくまわれ、カトリック洗礼の受けた。その家庭の夫婦が名付け親になることを一旦は承諾したが、結局は拒み、外出禁止の時間帯に少女は外へ出されてしまった。そしてナチス軍に捕まり収容所へ送られたという。

教授ゾフィアはすぐさま自分のことだとわかった。少女を外へ放り出した張本人だったのだ。そして、あの時の少女が研究者のエルジュビエタのことだったのだ。収容所は死を意味するのに、生きていたのだ。

実はこの出来事は誤解が招いてしまったことだったのだ。全ての事情を話しエルジュビエタの赦しは得られたが、未だ過去から立ち直れず、赦してくれない者もいる。ゾフィアとエルジュビエタが仲良さそうに歩いている姿を見て、気に入らない顔もしているのだ。誤解であったとはいえ、罪を赦すことは難しい。しかしながら、倫理学を教えていても、矛盾した行動を取らざるを得ないこともある。人間の弱さなのか、境遇なのか、はたまた偶然なのか。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/15
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デカローグ第7話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, siedem
1989/55min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:8.0/10、9.2/10(全体)

7条「盗んではならない。」をテーマとした第7話「ある告白に関する物語」について。

マイカは16歳で娘アンカを出産するが、母親エヴァは自分の子として戸籍に入れてしまう。実父というのはマイカの国語教師で、その高校の校長は母親だったのである。母親は孫を自分の籍に入れ、その教師を辞めさせることで、この不祥事をねじ伏せ、体裁を保ったのだ。

「アンカは私の娘。マイカはあなたの娘」と夫に言う母親。校長としての地位もある彼女は、自分の思い通りにならないマイカに落胆すると同時に、孫アンカを自分の設計通りに育てようとしていた。この6年間、マイカは我が子に一度もママと呼ばれず娘と母親の関係を羨み、ついに自分が本当の母であると告白することにする。劇だか何かの練習中に忍び込んで娘アンカを連れ出してし、実父の元に向かったのだった。

実父はアンカを見るやいなや、すぐ自分の娘であることに気がついた。マイカはカナダへ行く予定だったから3人で暮らすつもりはなかったのだろう。わざわざ実父に合わせた理由はよくわからなかった。逆探知されないよう、マイカは公衆電話から家へ電話をかける。誘拐犯がマイカであることに動揺する母親に対し、父親は娘はマイカに返すべきだという。
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育ての親と産みの親という2人の親。大人の都合で起こした行動が後先、子どもにどう影響するのか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/10

↓以下、ネタバレします。
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デカローグ第6話 および 愛に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★★

ドラマDekalog, szesc/映画 Krótki film o milosci
1989/58min,86min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:グラジナ・シャポウォフスカ
IMDB評価:8.5/10(ドラマ)、8.3/10(映画)9.2/10(全体)

6条「姦淫してはならない。」をテーマとした第6話「ある愛に関する物語」および映画「愛に関する短いフィルム」について。

孤児院で育ち、友人の母親と住むトメクは郵便局に勤めている。夜8時半に目覚ましをかけ、電気を消した部屋にこもる。向かいの棟に住み、8時半に帰宅する女性マグダを望遠鏡で覗き見するためだ。覗き見行為は1年にも及んでいるという。下着姿、牛乳をこぼしたこと、泣いていたこと、彼氏との営み、彼氏との喧嘩。部屋でのできごと全てを知っているのだ。初めは自慰行為の対象としてとして覗いていたが、彼氏との抱擁に嫉妬してしまうほどマグダへ気持ちは膨らんでいく。そして、会いたいという気持ちから偽造の入金書を作成し、自分が働いている郵便局に足を向かせるように仕向けるのだ。しかし、不審に思った郵便局はマグダを詐欺師扱いをしてしまう。そして、怒って郵便局を後にしたマグダを追いかけ、トメクは自分がやったと自白するのだ。そして、牛乳配達のバイトを始めて、彼女の家へ配達することを日課にする。
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毎朝の配達で顔を合わせ、とうとうデートに誘うことに成功したトメクは、覗き見をしていること、下着姿を見てかつて自慰行為をしていたこと、全てありのままに話してしまう。女性経験のない無垢なトメクはマグダにとって新鮮だったのか、怒るどころか、彼を部屋に招き入れてしまう。そして、お風呂上がりのマグダは彼に太ももを触らせる。そして、トメクは服を着たまま、、、あまりの恥ずかしさにトメクは家を飛び出すのであった。
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この映画は10代の頃に一度観たのだが、トメクがなぜ走って去って行ったのかがわからなかった。年齢を重ねてようやく理解できることも増えてくるが、こういった男性の行為もその一つだ。誰にでもある失敗なのかよくわからないし、どれだけ恥ずかしいことなのかもわからないが、ここまで赤裸々に掘り下げた作品には出会ったことがない。

映画版とドラマ版では結末が異なる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9

↓以下ネタバレします。


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デカローグ第5話 および 殺人に関する短いフィルム <1989/ポーランド> ★★★★

ドラマDekalog, piec/映画 Krótki film o zabijaniu
1989/56min,84min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:オルジード・ルカセウィッツ
IMDB評価:8.4/10(ドラマ)、8.2/10(映画)、9.2/10(全体)

5条「殺してはならない。」をテーマとした第5話「ある殺人に関する物語」および映画「殺人に関する短いフィルム」について。

核心にまで触れています。
ゴキブリ、ネズミの死骸、猫の首吊り、人間の首だけの飾り物。はやくも冒頭から死にまつわる描写。首吊りをしている猫はネズミを殺した猫なのだろうか。これから起こることをはやくも暗示しているのだ。
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当てもなく街を彷徨う青年ヤツェック。やっと弁護士になれた青年ピョートル。団地に住む中年のタクシー運転手。共通点のない3人が犯行当日に街の中で偶然にも出会ってしまったのだ。ヤツェックが殺人の準備をしていたカフェに、ピョートルは恋人といた。晴れて弁護士になれたことを喜んでいたのだ。その後、偶然にも乗ってしまったタクシーの運転手が犠牲者となってしまう。弁護士ピョートルはヤツェックの弁護が初仕事となる。3人の運命が偶然の出来事で交錯する。
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タクシーの洗車が終わるまで待っていた客(第2話の夫婦)がいたのに拒否して出発してしまったり、若い女性に色目を使ったりとイヤな男ではあったが、野良犬にサンドイッチを分けてあげるやさしい一面もあった。何とも運の悪い男だ。

殺人シーンは残酷でかなりリアルで、嫌な気分にさせられるので覚悟したほうがいい。カフェで用意した紐で絞殺するのだが、なかなか手強い。湖に引きずられながらも、妻の名前を必死で叫ぶ姿が脳裏に焼きついて離れない。「殺人は究極の暴力だ。」と考える監督は容赦なく、残酷なシーンを突き付けてくる。

判決は死刑を宣告された。死刑執行直前、ヤツェックはピョートルにおそらく初めて胸の内を語る。殺人に及んだ経緯、家族のこと、妹の死の背景、母の心配、自分の墓の心配。犯行前、初対面の少女たちに笑顔で接していたヤツェック。妹と重ねてみていたのかもしれない。妹思いだった一面も垣間見れ、それほど冷淡な男ではなあったのかもしれない。

「法とは人間がお互いの関係を調整するために作った理念である。犯罪を防止するためだけではない。法によって下された刑罰は法ではなく、復讐だ。本当に無垢なる人々が法を作っているのか?」
弁護士でありながら自問し続けるピョートルは死刑の是非について悩んでいた。そんな時に聞かされたヤツェックの本音。もしかしたら他に彼を救う方法があったのではないか、と自責の念に駆られるピョートルであった。

殺人を殺人で裁く矛盾。監督は、「死刑実行も殺人だ。」と唱える。恐怖で怯えるヤツェックの死刑シーンも残酷な殺人そのものとして描かれていた。
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予算工面のための映画化に監督自身が選んだのは本作だった。映像は終始暗く、薄気味悪い。赤、青、黄のフィルターをかけ、怪しいを演出したとのこと。空虚で物悲しく、逃れられない閉塞的なポーランド社会をも描きたかったのだろう。

なお、ドラマ版には、ピョートルが恋人に弁護士試験に合格したとの報告、ヤツェックがピョートルに話す胸の内はカットされている。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/9


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デカローグ第4話 <1989/ポーランド> ★★★★★

Dekalog, cztery
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:ヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛
IMDB評価:8.4/10、9.2/10(全体)

4条「あなたの父母を敬え。」をテーマにした第4話「ある父と娘に関する物語」について。

父親の死後開封するようにと書かれた手紙を娘は開けてしまう。この手紙はもともとは母親が亡くなる時に描いたもので、娘が大きくなったら読ませ欲しいということだった。娘が10歳になった時にはまだ小さすぎると思い、15歳になった時にはもう遅すぎると思った父は、更に封筒に入れ、自分の死後に読ませようと考えていたのである。
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手紙の内容は、父親は実父ではないという内容だった。父親は手紙を読んだのかどうかはわからないが、内容は察しており、心のどこかで自分が健在中に娘に読んで欲しいという思いがあったようだ。なぜか?娘を異性として意識していたからではないだろうか?心のどこかで、結ばれることを望んでいたのではないか?実父だという確信もなかったのではないか?娘に運命を託す父親には恐れも感じるし、理性と本心で揺れ動く葛藤がひしひしと伝わってくる。

手紙を読み父親が実父ではないと知った娘の発言には衝撃を受ける。「他の男と寝る時、お父さんに罪悪感を感じる」というのだ。そして、もはや親としてではなく、男として意識している父親の前で裸になり、父親を誘惑するのだ。愛を選んでしまうのか?それとも20年間の親子の絆を選ぶのか?

終盤でどんでん返しがあり、真実が明らかになっていく仕掛けはお見事。ラストの落とし所も巧妙。昔、男女の駆け引きに使われていたEaster Monday(水をかけ合う)を思わせる冒頭も、男女関係を暗示していたのだろう。実は自分なりに解釈するのに一番時間がかかったのがこの第4話であり、私にとって一番の傑作でもあった。親子を異性として意識すること自体が罪に思えるが、親子、血の繋がり、愛することとは一体何なのか?親子のもどかしさを見ていて、そんな疑問が生じた。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8

↓以下ネタバレします。
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デカローグ第3話 <1989/ポーランド> ★★★

Dekalog, trzy
1989/56min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDB評価:7.6/10、9.2/10(全体)

3条「主の日を心にとどめ、これを聖とせよ」をテーマとした第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」について。

1話に出ていた父親が冒頭にでてくる。アパートの入口で主人公のヤヌーシュとすれ違い挨拶を交わす。
子どものためにサンタクロースに扮しプレゼントを配るヤヌーシュ。家族で過ごしていたクリスマスイヴに元恋人のエヴァから電話がかかってくる。夫が行方不明だから一緒に探して欲しいとのことだ。ヤヌーシュは車が盗まれたから、とウソをつき家を出る。
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思い当たる所を2人で方々探し回る。交通事故があったと聞いては死体安置所に死体確認へ行ったり、自宅へ戻ったり、留置所まで見に行ったり、一晩中振り回され、最後に行き着いた駅である事実が明らかになっていく。
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<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

↓以下、ネタバレします。

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デカローグ第2話 <1989/ポーランド> ★★★★☆ 編集あり

Dekalog, dwa
1989/57min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
出演:クリスティナ・ヤンダ尋問
IMDB評価:7.9/10、9.2/10(全体)

2条「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」をテーマとした第2話「ある選択に関する物語」について。

ワルシャワの病院に勤める医師は、団地のとある階に住む。ある朝、上の階に住んでいる女性が訪ねてくる。医師は夫の主治医で、夫の回復の可能性を聞きたかったのだ。その理由は、夫の親友との間の子どもを身籠り、夫が生き延びるようなら中絶するし、もう長くないのなら産もうと考えていたからだ。年齢的にもこれが最後の出産のチャンスだ。しかし、医師はわからないと言う。妻と娘を亡くしているので、死に対しては人よりも特別な思いがあるのだ。
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不倫しているとはいえ、まだ愛する夫の回復を願う反面、死んでくれれば赤ちゃんを産めるのに、と葛藤の中での彼女の決断は中絶だった。夫の主治医にその旨を伝えると、医師はついに口を開いた。夫はもうすぐ死ぬのだと。だから、中絶はするなと。しかし、これは阻止さえるための医師のウソだったのだ。そうとも知らずに産むことを決意する。

医師の判断に委ねた結果は果たして正しかったのか?医師のウソを知った時に判断を悔いることになるのか?それとも、それでも良かったと思うのか?もし逆の選択をしていたら、どうなっていたのだろうか?十戒的に考えると正しい決断をしたかのようにも思えるが、結果的には果たしてどちらが幸せだったのだろうか?この話は第8話の倫理性を問う講義の中でも引用されている。
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ジュースの中で溺れたハエがもがき苦しみ、必死でストローを這い上がろうとするシーンが印象的。人間への教訓だ。甘い誘惑に負けると後悔することになると。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/3

↓以下、ネタバレします。

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デカローグについて+第1話 <1989/ポーランド> ★★★☆ 編集あり

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Dekalog, jeden
1989/53min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ監督
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
IMDb評価:8.2/10、9.2/10(全体)

<デカローグについて>
トリコロール3部作監督で知られるクシシュトフ・キェシロフスキ監督のポーランド時代のドラマである。旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条の戒律をテーマに、ワルシャワの団地に住む人々をそれぞれ独立した10話で描いている。各話の登場人物がすれ違うのも面白い。

旧約聖書の「十戒 The Decalogue」の10条とは、、、
1.わたしのほかに神があってはならない。
2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
4.あなたの父母を敬え。
5.殺してはならない。
6.姦淫してはならない。
7.盗んではならない。
8.隣人に関して偽証してはならない。
9.隣人の妻を欲してはならない。
10.隣人の財産を欲してはならない。

第1話「ある運命に関する物語」53分
第2話「ある選択に関する物語」57分
第3話「あるクリスマス・イブに関する物語」56分
第4話「ある父と娘に関する物語」55分
第5話「ある殺人に関する物語」57分
第6話「ある愛に関する物語」58分
第7話「ある告白に関する物語」55分
第8話「ある過去に関する物語」55分
第9話「ある孤独に関する物語」58分
第10話「ある希望に関する物語」57分

「聖書の十戒 を思い出させるためのものではなく、むしろ、エピソードの経過とともにワルシャワ団地に住む人々を通して日常生活を観察して欲しかった。そして、人々はみな孤独であるということがわかるだろう。白黒はっきりした答えは求めていない。何が正しくて何が悪いのか?何が真実で何が真実ではないのか?何が誠実で何が不誠実なのか?という質問を投げかけるための試みだった。」とキェシロフスキ監督は言う。(Kieslowski on Kieslowskiより)

1981年というと、戒厳令施行によりポーランド国内で映画の公開・輸出が禁止されていた(1983年7月 戒厳令全面解除)。1982年、弁護士で作家のクシシュトフ・ピェシェヴィチと出会い、脚本の共同執筆を開始した。その第1作として「終わりなし」(84)を完成させる。そして1987年、ピェシェヴィチの発案で「デカローグ」に着手。まずテレビ局に話を持ち込むが、十分な予算をもらうことはできなかった。そして、予算を補うために2本を映画化するということで別予算を得ることに成功した。監督自らの希望で第5話が「殺人に関する短いフィルム」(87)、映画担当者の判断で第6話が「愛に関する短いフィルム」(88)となったのだ。当初は10話を10人の監督に依頼するつもりだったがシナリオを見て結局はキェシロフスキ監督がメガフォンを取ってしまった。1989年ヴェネチア映画祭国際映画批評家連盟賞、1988年ヨーロッパ映画グランプリを受賞している。

その後1991年には初のフランスとの合作「ふたりのベロニカ」を発表。1993~1994年にかけて、「トリコロール」3部作をヴェネツィア、ベルリン、カンヌ映画祭に連続出品。次回作に世界中の期待が集まる中、1996年3月13日、突然の心臓発作により54歳の生涯を終える。

<レビュー>
まずは、この1条「わたしのほかに神があってはならない。」をテーマとした第1話「ある運命に関する物語」について。

団地の一室に住むある男性クシシュトフは大学教授で数学を教えている。息子パベルも時々授業を傍聴したりする。家では息子に問題を出しては算数や科学を学習させたり、パソコンで計算させている。普段遊んでいる湖の氷の厚さの算定もその一つだった。その日の気温などの条件を入力しては、氷の耐荷性を計算するのだ。その日も、息子の体重の3倍まで耐えられるという自分の理論には絶対的な自信があった。しかし、万年質のインクがこぼれ、クシシュトフは理屈では説明のつかない不吉な予感を感じるであった。
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伯母は信仰心が強いが、クシシュトフは神を全く信じていない。全ての出来事が理屈で説明がつくと思っているのだ。しかし、直観的な不吉な予感を拭い去ることができず教会へ足を運び神にすがろうとするが、理屈で説明のつかないことに葛藤が生まれるだけだった。

犬の死を目撃した息子との死に関する親子の会話。伯母との神に関する会話。結局はこの時に息子の運命は決定づけられていたのか?息子と遊んでいた友人が事故のことを何かを知っていそうで親に口止めをされいる。結局、どういう状況だったのか曖昧なままストーリーは終わる。運命は神のみぞ知るのだ。結局、人間の作る出す物に絶対はなく、自然の摂理・神には勝てないのだろうか?

<鑑賞> 英語字幕 2010/9/30
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ルルドの泉で (原題: Lourdes) <2009/オーストリア=仏=独> ★★★★

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Lourdes
2009/96min/オーストリア=フランス=ドイツ
監督/脚本:ジェシカ・ハウスナー
出演:シルヴィー・テステュー、リー・シドー、ブルーノ・トデスキーニ
受賞:
2009ワルシャワ国際映画祭 ワルシャワ・グランプリ
2009ベネチア国際映画祭 コンペティション部門出品
IMDb評価:6.9/10

芸術度 ★★★
社会度 ★★
感動度 なし
催涙度 なし

ルルドというのは、フランスのピレネー山脈のふもとにあるキリスト教の聖地。そこに湧き出る水が奇跡を起こすと信じられ、年間500万人もの巡礼者が訪れるとか。主人公クリスティーヌは首から下が動かない、四肢麻痺の身体障害者であり、人の手助けなしには生活ができない。彼女も奇跡を求め、ルルドの巡礼へ行くことにする。ボランティアが世話をしてくれる施設に滞在し、そこから毎日巡礼に連れて行ってもらうのである。クリスティーヌ自身は既に希望を捨てており、母親に連れてきているように見受けられる。
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「なぜ、私には普通の生活ができないの?」と弱音をはくクリスティーヌだが、「五体満足が幸せだとは限らない」と神父は言う。
世話をしてくれるボランティアはほとんどが若者である。クリスティーヌ専属のボランティアの女性は、同じくボランティアで来ている男性が気になって仕方がない。世話をすべき人をほったらかしにし、話に夢中になってしまうこともしばしば。クリスティーヌも男性と仲良く話す女性を羨ましそうに横目で見ていた。

しかし、献身的な人が1人いた。うつつを抜かしているボランティアを叱り、1人賢明にお祈りを続けるリーダーで年配の女性である。彼女はある日、クリスティーヌが歩く夢を見たと言う。実はこの人カツラっぽいなっと思っていたのだが、彼女自身も病に冒されていたようである。クリスティーナたちとの巡礼を終えることなく、突然倒れてしまった。人一倍献身的だったのも、病に冒され自身の安否を恐れていたからであろう。病院に運ばれた後どうなったのかは描かれていない。

そして、クリスティーヌに変化が見え始めたのだ。動かなかった指が動くようになり、ベッドから起き上がり歩けるようになったのである。ボランティアのリーダーが見た夢の通りに。しかし、その奇跡を心の底から喜んでくれたのはごく一部の人たちだけであった。巡礼の参加者たちは皆障害者やその家族なのである。クリスティーナの奇跡を手放しには喜べないのが本音である。「なぜ、クリスティーヌなの?なぜ、うちの娘じゃないの?」と神父に問い質す者もいるほどであった。しかし、医者は言う。「一時的な可能性な場合が多い」と。クリスティーヌはどうなのだろうか?

奇跡がおとずれ、ハッピーエンドで終わるだろうと思っていた。障害者の苦悩を掘り下げるわけではなく、様々な立場の人たちを客観的に描いている。人間なら誰しも欲を持っており、嫉妬もうまれる。神父が言うように五体満足が幸せとは限らないのかもしれない。五体満足を得た後に失ってしまう人間関係もある。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/14
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愛おしき隣人 <2007/スウェーデン=仏=デンマーク=ノルウェー=日> ★★

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Du levande/ You, The Living
2007/94min/スウェーデン=フランス=デンマーク=ドイツ=ノルウェー=日本
監督/脚本:ロイ・アンダーソン
製作: ペルニラ・サンドストレーム
撮影: グスタフ・ダニエルソン
音楽: ベニー・アンダーソン
出演:エリザベート・ヘランダー、ジェシカ・ランバーグ 
IMDb評価:7.4/10

邦題のセンス ★★★
ユルユル度 ★★★★★
芸術度 ★★
感動度 なし
催涙度 なし

ソファーで寝ていた男が「悪夢だ!爆撃機が襲撃した夢を見た!」という目覚めで始まる本作は、爆撃機が雲の彼方に飛んでいくのを発見するシーンで幕を閉じる。爆撃機は夢なのか?現実なのか?

本作の固定カメラによる映像はクローズアップもない。メインキャラクターがいるわけでもない。なんだかツイテいない人たちの日常の一幕はコント集のようにだらだらと垂れ流すだけの作品だ。
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・爆撃機が襲来する悪夢に飛び起きてしまった男性。
・調子にのってテーブルクロス抜きを披露するが失敗。壊れた食器は年代物で裁判にかけられ、あいにく死刑になった男性。
・夫婦の営み中に貯蓄の話をする旦那。うまい具合にアイヅチを打っているかのような妻の会話はセックスに夢中になっているだけで、結局会話は噛みあっていない夫婦。
・重要な会議のために床屋に行くがひどい頭にされ、仕方なく坊主に。そして役員の急死によって全てが台無しになってしまた男性。

特定の人物を掘り下げて描くこともなく、あくまでも断片的で、登場人物がどこかで交差するわけでもない。共通点は寂しさと不満を一様に持っているだけだ。カメラに向かって直接不満をぶつける者もいる。

CM監督出身なだけあって個々のストーリーのアイデアそのものは面白く、ボタンをかけ違えてしまったような歯痒さがあるが、全体の繋がりは見えてこない。劇的な展開もない、オチもない、筋もない。そもそも全てが夢なのではないかとさえ思う。

この街のとあるバーで働くバーテンダー。
「ラストオーダーだよ。明日は明日の風が吹くよ。」と鐘を鳴らす。このねぎらいの一言で日々の小さな不満が吹っ飛ぶような気がした。

本作は完成までに3年を要したそうだ。色調を変えたり、出演者を変えたりしながら、全てのシーンを10パターン前後撮り検証したからだとか。素人器用で低予算かと思ったが、6カ国・18のソースから予算取りに成功している。そう言われてみれば、全てセットだったのかも。

しかし、この独特な間は眠くなるなぁ。アキ・カウリスマキ監督といい、ロイ・アンダーソン監督といい、やっぱり苦手なんだよなぁ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/13
[タグ未指定]
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(未) 【短編】Talking Heads <1980/ポーランド> ★★★

talking heads
Gadajace glowy
1980/16min/ポーランド
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
IMDb評価:7.8/10

「あなたは誰ですか?いつ産まれましたか?人生に何を望みますか?」

1歳の赤ちゃんから100歳のおばあちゃんまで、3つの同じ質問を投げかけ、年齢順にその答えを流すだけのドキュメンタリー。皆の回答を聞きながら、自分の答えを考えてみたが、「あなたは誰ですか?」という質問への答えが見つからないし、まだわからない。私と同様に「わからない」と答える人もいたが、営業職だとか教師だといった職業を答える人もいれば、保守的だとか内向的だといった性格を答える人もいた。

興味深かったのは、最後の質問だ。様々な世代、性別でありながら、答えは似通っている。世界平和、皆が幸せになること、今がずっと続くことを願う人が数多くいるのだ。共産主義や歴史的背景がそういう思想を導いているのか?望んでいると同時に恐れでもあるのかもしれないと感じた。
日本で同じ質問をしたらどんな答えが返って来るだろうか?自己満足を満たすだけのエゴな答えが多いのではないだろうか?
最後の100歳のおばあちゃんの答えは、「もう望むものは何もない」だった。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/11
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230. 風と砂の女 (原題:境界) <2007/韓=仏> ★★★

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境界/경계/Desert Dream/ Hyazgar
2007/123min/韓国=フランス
監督:チャン・リュ(またはチャン・リュル)
出演:ソ・ジョン「魚と寝る女」、バトウルズィーBat-Ulzii、シン・ドンホ
受賞:第57回ベルリン映画祭 金熊賞
言語:モンゴル語、韓国語
IMDb評価:6.7/10





邦題のセンス なし
韓流度 なし
芸術度 ★★★
社会度 ★★
感動度 なし
催涙度 なし

<レビュー>
前作「キムチを売る女は観ていないのだが、次作の「イリ」は鑑賞済み。カメラは固定され、人が去っても追わなかったり、最低限の台詞に効果音はなしと言ったスタイルは「イリ」と同様だ。感情表現を抑えるのもこの監督のスタイルなのかもしれない。感情移入させられることなく、一歩下がった状態で冷静に観れるといえば聞こえはいいかもいれないが。

モンゴルを舞台とした韓国映画である。主人公フンガイは遊牧民で、妻と娘がおり、ゲルで暮らしている。夜は暖房を使っているが、半袖を着ているのでおそらく夏だろう。少し足をのばせば青々とした草原が広がっているが、ゲル周辺は砂漠化している。フンガイはそんな砂漠化を食い止めるべく、1人で植林活動をしているのだ。燃料用の羊の糞を拾いにいったり、乳搾り、オボー(石積みの道標みたいなもの)を信仰したり、ワイルドな男女の営みといった日々の生活習慣も興味深い。青い空、キレイ過ぎる夜空が印象的だった。
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娘は耳が聞こえず、母親はウランバートルの病院に連れて行きたいと思っている。しかし、フンガイは植林が忙しいと言い、娘の病気には興味がなく、母娘は出ていってしまう。心も砂漠化してしまっているようだ。そこへ言葉の通じない母子が訪ねてくる。一晩だけ泊めてもらい、母親は翌朝には出発するつもりだったが、息子チャンホは疲れたからまだここにいたいという。そんな訳で3人の共同生活が始まっていくのだ。この母子はどこから何をしにここへ来たのかは2人の会話からようやく知ることができる。豆満江を超えてきた脱北者だという。モンゴル経由で韓国に向かうルートが最近の傾向だとどこかで読んだことがある。「クロッシング」もモンゴル経由だった。

ラジオで民謡のアリランがかかると歌いだした息子チャンホ。脱北者なのにまだ朝鮮が恋しいのか、脱北の意味がわからないのか。この歌を聞き、フンガイは初めて彼らが朝鮮人だということを知るのだ。テポドンのニュースも流れ、北朝鮮の脅威、増える一方の脱北者も知っていたはずだ。脱北者を囲うことはモンゴルでも犯罪になるであろうに、フンガイは何も言わず、2人を何日も置いてあげるのだった。実の娘の病院行きには無関心だった人と同一人物だとは思えないほどの優しさだ。2人の存在が彼の心にとっての植林になったようだ。

原題は「境界」である。砂漠と草原の「境界」で出会う人々といえば、長い旅路の途中で休憩させてもらう者だったり、北朝鮮の母子もいずれは去る人たちばかりだ。とどまる者はいないのだ。フンガイ自身も遊牧民だからいずれ去るだろう。人間関係にも「境界」があるということが言いたかったのではないか?「風と砂の女」という邦題では、解釈が異なってしまうのでは?

母親役はキム・ギドク監督「魚と寝る女」に出演していたソ・ジョンであった。監督は彼女の鋭く力強い目に惚れこんだとか。全く訛りのない標準な韓国語には違和感を感じてしまった。そしてモンゴル男フンガイを演じるのは、モンゴル映画界を代表する役者であり監督だそうだ。監督作「心の言葉」「逃亡者トゥムル」は、アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されている。いかにもモンゴル男らしいたくましさがある俳優さんだった。

チャン・リュウ監督は中国吉林省延辺出身の朝鮮族の方だ。2作目「キムチを売る女」では朝鮮族の女性を主人公に描いている。最新作「豆満江」はタイトルから容易に推測できるように北朝鮮からの脱北者を描く。幼い頃、よく目にしていたのだという。朝鮮族出身の監督さんだからこそ描けた次作が待ち焦がれる。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8
[サイト内タグ検索] チャン・リュ監督
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231. (未) 青い河は流れよ <2009/韓> ★★★

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青い川は流れろ 푸른 강은 흘러라
2009/78min
原作:リャン・チュンシク,キム・ナミョン
脚本:イ・ジサン
監督:カン・ミジャ 
出演:キム・イェリ、ナム・チョル

純愛度 ★★★
芸術度 ★★
社会度 ★★★
衝撃度 ★★
感動度 ★★
催涙度 ★

<あらすじ>
中国朝鮮族第2高中学校3年生のスギとチョリは,お互いに愛のような友情をわかちあう間で,勉強もでき,他人をよく助ける正しい学生だ。トマンガン(豆満江)のほとりに暮らす二人は,トマンガン(豆満江)のようにいつも青く生きようと確かめ合っているが,チョリは,母が韓国で仕事をして送ったお金で,バイクと携帯電話を買ってしまう。チョリは,この時からトマンガン(豆満江)のようにいつも青く生きようとスギと話した青春の約束を破るようになるが,スギは,チョリを本来の姿に戻すため,厳しい叱責を加える。泥棒船に乗って韓国に行き,劣悪で苦痛な状況の中で仕事をしているチョリの母スヨン。韓国に戻ると話したチョリの母は,韓国で意外な事故に遭うようになる。

<レビュー>
舞台は、中国吉林省延辺。町には漢字とハングルが混在している。ここには、中国国籍だが韓国語(または朝鮮語)を話す中国朝鮮族と呼ばれる人々が住んでいる。この地域の学校教育も韓国語(または朝鮮語)で行われている。漢族と接する時は中国語を使うそうだ。新大久保のコリアタウンには朝鮮族の姿もよく見かけるが、韓国語がだいたいわかる私でも彼らの癖のある訛りはほとんど聞き取れない。韓国語と中国語がチャンポンしたように聞こえるのだ。朝鮮族の書いた小説が原作だが、本作のスタッフは全て韓国人とのことで、台詞も少々訛っている程度で、朝鮮語ではなく韓国語だったのが少々残念。

朝鮮族の住んでいる町がどういう所で、どんな生活をしているのか。そして、どちらのアイデンティティーを持っているのかに興味があった。数日前に観た「Stolen Eyes」ではブルガリアに住むトルコ人はブルガリア語を母国語としてながらトルコ人としてのアイデンティティーを持っていたからだ。劇中では、特に言及されておらず。

青い河とは豆満江のことだ。豆満江を境に北朝鮮と接しているため、不法入国が絶えない所だと記憶している。本作では北朝鮮には一切触れていなかった。「河の夢は海になること」だとチョリのお母さんは言う。「毎日休むことなく海に流れ込むように河のように自分も働き続けたい。そして、青い河のように澄んだ心を持ち続けたい。そんな青い河は夢だ。」という。そう言って、韓国へ出稼ぎに行くのだった。延辺地方は両親がそろっている家庭はほとんどないそうだ。韓国へ出稼ぎに行ってしまうからだ。小さい船で渡り、もちろん不法入国だ。危険を伴うのを承知で家族のために行くのだ。チョリの母も稼いでは仕送りをする。
blue1_20101108232847.jpg
この町は素朴でのんびりしているが、資本主義の波はこんなところにも押し寄せている。
携帯電話、PC、オートバイ。日本の若者が欲しがるように、ここの若者も同様に欲しがる。
チョリと恋人のスギは毎日自転車で一緒に通学し、帰宅後はチャットでの会話を楽しんでいた。中学生らしく微笑ましいカップルだったが、クラスメートのバイクを見て、スギも買ってしまうのだ。しかも母の出稼ぎのお金で。どんな思いで得たお金なのか、親の気持ちを子は知らずに。このバイクのせいで2人の関係にも亀裂が走る。

2人の恋を軸に描かれる本作は、純粋で素朴でどこか懐かしさを感じる青春映画だ。未成年の喫煙、性への関心は普遍的テーマだ。その影に潜む朝鮮族の生活環境や問題、民族が違うというだけで弱い立場に立たされる現実。出稼ぎ者は女性が多いということにも驚かされた。不法入国、滞在と同時に問題提起される偽装結婚の話も本作で登場する。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/8
[サイト内タグ検索] 日本未公開
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(未) Stolen Eyes <2005/ブルガリア=トルコ> ★★★

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Otkradnati ochi/Stolen Eyes
2005/110min/ブルガリア=トルコ
Director: Radoslav Spassov
Writers: Radoslav Spassov, Neri Terzieva
Stars:Vesela Kazakova, Valeri Yordanov and Nejat Isler
IMDb評価:7.3/10

純愛度 ★★
芸術度 ★★
社会度 ★★★★
衝撃度 ★★
感動度 ★★
催涙度 ★

ブルガリアには1割ものトルコ人が住んでいる。ブルガリア語を話し、公的にはブルガリア人だが、イスラム教を信仰しているため、差別的にモスリム・ブルガリア人と呼ばれることが多い。長い歴史の中で多くの迫害や非難を受けてきたが、共産主義政権の崩壊以降、トルコ人の権利回復や複数政党制の導入をきっかけにブルガリア人のトルコ人に対する意識は徐々に変化したと言われているが、忘れてはいけない、そして繰り返してはいけない歴史的事実がこの映画によって明らかになる。ブルガリアのタブーに触れてしまった作品だということでブルガリア国内での上映を禁じたそうだ。

1989年、キリスト教を信仰するブルガリア人ではないことを理由に30万以上のモスリム・ブルガリア人はトルコへ強制送還させられたという事実からこの映画はスタートする。荷物を載せた車で皆国境に向かう中、主人公Aytenは車を降り、ブルガリアへと引き戻すのであった。祖父を訪ね、時は数年前に戻る。そして、強制送還に至るまでの出来事が描かれいく。モスリム・ブルガリア人はブルガリア語を母国語としているにも関わらず、自らをトルコ人だと名乗る。ブルガリア人としての自覚がない彼らにとった政策とは創氏改名(ブルガリア人の名前に変えること)だった。子どもに名前を聞くと、公式の名前は・・・です。といった返事が返って来る。トルコの名前を持ってると同時にブルガリアの名前も持たされているからだ。そして、ブルガリア人と同化させることを目的として、世俗的な生活と現代的で非イスラム的な服装、女性への教育を推進した。
stolen1.jpgstolen2.jpg
主人公Aytenも状況に応じて、民族衣装をあえて着たりして、トルコ人であることを主張する。トルコ特有のダンスや生活習慣も垣間見れる。
stolen3.jpg
こんな歴史的背景の中で出会ってしまったトルコ系女性とブルガリア人男性。この2人に芽生える恋心を繊細に描いている。タブーを映画にしてくれた勇気には感謝したいが、どうも説得力に欠け、ことの重大さが伝わってこなかった。あらかじめ背景を知っていなければ、ただの国際恋愛程度にしか感じられない。時間軸や場面設定が曖昧なのもわかりにくかった要因だろう。

どちらかといえばブルガリア側の視点で描かれているような気がするので、監督はトルコ系ではないのかもしれない。トルコ系ですぐさま思い浮かぶのはドイツ人監督のファティ・アキン。彼だったらもっと力強い描き方をしたであろう。「愛より強く」はいい映画だったんだなぁと改めて思い知った。

1989年にトルコ人の強制送還を行ったのはブルガリアだけではない。今日までヨーロッパ内でもニュースになることはほとんどなく、関連映画も本作が初だそうだ。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/7

[サイト内タグ検索] 日本未公開
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尋問 <1989/ポーランド> ★★★★★

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Przesluchanie /Interrogation
1982(公開1989)/118min/ポーランド
監督/脚本: リシャルト・ブガイスキ
製作: タデウシ・ドレヴァノ
製作総指揮: アンジェイ・ワイダ(ノンクレジット)
出演:クリスティナ・ヤンダデカローグ第2話」、アダム・フェレンツィヤヌシュ・ガヨストリコロール 白の愛」、アニエスカ・ホランドオルジード・ルカセウィッツ
受賞:1990 カンヌ映画祭 主演女優賞
IMDb評価:8.3/10

芸術度 ★★
社会度 ★★★★★
衝撃度 ★★★★★
感動度 ★★★
催涙度 ★
演技力 ★★★★★

<あらすじ>
キャバレー歌手アントニーナは、身に覚えのない容疑で投獄。公安から執拗な尋問を受け、それは恐るべき拷問へと変わる。彼らは彼女に知人を陥れる嘘の証言を強要。頑としてそれを受け入れない彼女に地獄の日々が7年もの間続く…。

<鑑賞> 英語字幕 2010/11/4

<レビュー>
たまたま出くわした映画が、いい意味でとんでもない作品だった。ポーランド映画数本しか観たことがなくても見たことのある顔ぶれが名を連ねていた。主人公アントニーナと獄中仲間であった女性を驚くべきアニエスカ・ホランドが演じていた。クシシュトフ・キェシロフスキ監督の助手や監督としての彼女しか知らなかったが、かなりの存在感がある。何よりも主人公のクリスティナ・ヤンダの体を張った迫真の演技に圧倒させられる。「デカローグ第2話」とは全く違う役柄で同一人物だとは気付かなかった。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したのにもうなずける。惜しくもパルムドールは逃してしまった。

本作は1982年に完成していたが、1981年の戒厳令施行によりポーランド国内で公開・輸出が禁止されていた。1983年7月 戒厳令全面解除されたが、8年後の1990年、カンヌにて公式初上映された。

キャバレー歌手アントニーナは仕事後、ファンだという男性2人と飲みに行く。ものすごいピッチで飲み続けたアントニーナは見事に酔い潰れてしまった。そして、翌朝目覚めると、そこは牢獄であった。一緒に飲んでいた男性2人が連れてきたのだ。

50年代のスターリン体制下という時代背景である。身に覚えのない容疑でも不当に逮捕されてしまうとんでもない時代だ。そんな時代をたくましく生きた人々の苦痛は計り知れない。

アントニーナもなぜ投獄されたのか全くわからず尋ねるが、逆に過去に関係を持った男性の名前を洗いざらい全て言わされる。その中の一人であるオルツカは国家反逆罪の容疑をかけられており、たった一度関係を持ったアントニーナを共犯と仕立てようとしていたのだ。国家反逆罪を立証する自白をさせ、都合良く仕立てられた調書にサインをさせようとする。「国家の安全のためなら友達をも犠牲にしなければならない場合もある。自白さえすれば、罪は軽くなる。」とまでいう取調官。無実だということは承知しているということだろう。
interrogation2.jpginterrogation3.jpginterrogation1.jpg
同じく投獄されている者たちもやはり不当逮捕であった。共産党のある者は、党の命令でアメリカ人を国家施設に案内してしまったことが、諜報活動に手を貸したことになるという理由であった。自白をさせるために、人権を無視した暴力的な拷問が繰り返し繰り返し行われる。犬のように扱われたり、独房で水死させられそうになったり、ピストルで頭をぶち抜かれた死体を見せられ、次はお前だと脅かされたり、よく次から次へと思いつくものだと関心してしまうほどあらゆる手段で自白、署名を強要するのだ。拷問に耐えられず自白してしまう者も少なくないであろう。裏切り、裏切られ、皆人間性を失っていくのだ。しかし、アントニーナは決して人間の尊厳を見失うことはなく賢明に立ち向かい、無実であることを訴え続けた。

耐え抜きながらアントニーナは毎日夫のことを思っていた。ついに面会に来てくれたのだが、別れを告げられてしまった。関係を持った男性遍歴を知ってしまった以上、離婚せざるを得なくなってしまったのだ。生きがいを失ってしまったアントニーナは手首を噛みきって自殺を図ってしまう。出血多量で亡くなったかと思ったが、どうにか一命はとりとめ、病室房に送られる。そこへかつての取調官タデウシュがお見舞いにやってくる。彼はアントニーナの意思の強さに魅了されており、手を挙げることはなかった人である。クリスマスだったその日に2人は結ばれたのであった。やがて獄中出産し、子供は孤児院に預けられる。

↓以下、ネタバレします。

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229. ハッピー・エンド <1999/韓> ★★★

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ハッピー・エンド/해피 엔드/Happy End
1999/99min
脚本/監督:チョン・ジウ  
出演:チェ・ミンシクチョン・ドヨンチュ・ジンモ、ファン・ミソン、チュ・ヒョン
受賞:
2000 第1回 釜山映画評論家協会賞 主演女優賞(チョン・ドヨン)
2000 第53回 カンヌ国際映画祭 批評家週間 招請
2000 第20回 映画評論家協会賞 新人監督賞,主演女優賞(チョン・ドヨン)
2000 第45回 アジア太平洋国際映画祭 主演男優賞(チェ・ミンシク
2000 第8回 春史映画芸術祭 主演女優賞(チョン・ドヨン)
2000 第37回 大鐘賞映画祭 主演男優賞(チェ・ミンシク),助演男優賞(チュ・ジンモ
2000 第14回 英国 リーズ国際映画祭 審査委員特別賞
IMDb評価:7.0/10

純愛度 なし
官能度 ★★★★
衝撃度 ★★★
感動度 ★★
催涙度 ★
演技力 ★★★★★

<あらすじ>
妻の不倫によるぞっとする異常な進行を描いた世紀末痴情劇。チョン・ドヨンの果敢なベッドシーンで注目され,興行的にも成功した作品。

6年間勤めた銀行を整理解雇されたソ・ミンギは,英語学院を運営する妻チェ・ボラの稼ぎに頼って久し振りの閑静な時間を送っている。忙しい妻の代わりに5ヶ月になる娘ソヨンの面倒をみながら,古本屋で小説を読んだり, 料理の本を開いて食べ物を作ったり, ゴミの分別回収の要領も体得していくミンギ。一方,ボラは,大学時代の恋人で軍入隊で別れたキム・イルボムに偶然に会い,夫に隠れて彼と常習的な出逢いを繰り返している。ミンギは,妻の不倫に気がついて,ほどなく彼らの密会場所のイルボムのオフィステルまで探り出すようになり,彼ら三人の互いに違う欲望が緊張を起こし始める。互いに違うハッピーエンディングを夢見る彼らの愛情,執着,殺意の三角関係は,予想できないエンディングに向かい駆け上がる。


<鑑賞> 字幕なし 2010/10/30

<レビュー>
当時、ベッドシーンが話題になっていた作品。観たいけど、チェ・ミンシクのベッドシーンはちょっとなぁ、、、なんて思いながら10年も経ってしまった。実際はチェ・ミンシクのベッドシーンはない。話題になっていたのはチャン・ドヨンのオールヌードだったのだ。冒頭から扇情的なベッドシーンに圧倒される。今観ても濃厚だと思うのだから、99年なら尚更だろう。「下女」のチャン・ドヨンはずいぶん大胆に脱いだものだと関心していたが、すでに本作でここまでこなしていたのなら、何でもできちゃうわね。愛人役には「霜花店」のチュ・ジンモ
HappyEnd1.jpgHappyEnd3.jpg
よくある不倫映画かと思ったら、不倫しているのは妻という男女逆転型であった。失業中の夫ミンギが家事全般を担い、妻ボラが家計を支えている。更に愛人イルボムに会社のホームページデザインを任せ、彼をも養っているのだ。夫はヨン様のテレビドラマ<愛の群像>(原題:私たちは本当に愛したのだろうか)に夢中で、牛乳パックを切り開いてゴミに出すなど、完全に主婦化している。しかし、車内に落ちている高速道路の領収書などから薄々と浮気を感ずいてしまった夫。ショックのあまりしばし抜け殻のようになるが、走行距離を日々ノートに記録するなど、妻の行動をチェックし、愛人宅まで突き止めてしまうのだ。このへんまではよくある不倫映画だ。面白くなるのはこれからなのだ。

タイトルは「ハッピーエンド」。ハッピーエンドの意味をストレートに捉えてしまうととんでもない結末に度肝を抜かされる。後半30分で夫の恐るべき復讐劇が繰り広げられるのだ。不倫の事実を知り殺意を感じ始めた夫が起こした行動は狂気的ではるかに予想を超え、結末が気になり目が離せなくなる。

↓以下、ネタバレします
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