月別アーカイブ  [ 2011年11月 ] 

≪ 前月 |  2011年11月  | 翌月 ≫

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[タグ未指定]
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

お休み(閉鎖)しようかと…

今まで時間のある時に一気に記事書いて予約投稿という形をとり、あたかも毎日アップしているかのように見せかけていました。実はこの記事も予約投稿。。。

突然ですが、記事を書く気力失い中につき、お休み→閉鎖の方向で考えています。
つたないブログを読んでくださった方、ありがとうございました。
お世話になっているブログには今まで通りお邪魔させていただきますので、今後ともよろしくお願いします。

[タグ未指定]
関連記事
スポンサーサイト

(未) Speak <2004/米> ★★★☆

speak.jpg
Speak
2004/89min/アメリカ
ドラマ、青春
監督/脚本:Jessica Sharzer(長編監督デビュー作)
原作:ローリー・ハルツ・アンダーソン「スピーク」主婦の友社
出演:クリステン・スチュワート、ハリー・ハーシュ、スティーブ・ザーン 
IMDb評価:7.7/10


共感度 ★★★
社会度 ★★★
哲学度 ★★
涙催度 ★★★



高校生になる直前の夏休み、友人宅でのパーティである事件が起こった。メリンダは警察に通報したが、実際には未成年の飲酒で友人たちが摘発されてしまった。友人たちには裏切り行為だと勘違いされ、新学期を迎えても誰も口を聞いてくれない。真相を話すことよりも黙秘することを選んだメリンダはどんどん孤立してしまう。しかし、ある美術教師との出会いでメリンダの心境が変わり始める…。

speak1.jpg主演は「トワイライト〜初恋〜」のクリステン・スチュワート。「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターの娘役を演じた2年後に主役、しかもこんなに素晴らしい演技を見せるとは。14歳で、あどけなさが残る。
原作本は日本のみならず数カ国で翻訳されているが、信じられないのが、普遍的なテーマでありながら本作はどこの国でも一般公開されていないこと。

夏休み明けの新学期から描かれる。メリンダは皮肉っぽくて、可愛げがないが、どこか憎めないキャラクター。しかし、メリンダがなぜみんなに無視をされ、こんなにつらい思いをしているのかわからないまま物語は進行する。パーティでの出来事が回想シーンとして丁寧に描かれ、何があったのかじんわりと明かされていくにつれ、1人で抱え込んでいる姿には自然と涙が流れる。事件前と後のメリンダは全くの別人のようで、沈黙で痛みを表現する演技は見事。

メリンダほどの経験はないにしても、友人に無視をされるといった経験はきっと誰にでもあるのでは?辛ければ辛いほど人には話しにくくなる。話せるぐらいだったらとっくに話してるわけで、話せないから余計に辛くて。沈黙を選んでしまうのは、その方が楽だということもあるだろう。1人で抱え込み、殻に閉じこもってしまうメリンダのキャラクターにはものすごく共感。

speak2.jpgメリンダは美術の授業の課題に出された“木”を描き続ける。没頭できる何かを見つけることも大切なのだろう。没頭することは、嫌なことを忘れられる時間でもあったが、絵を描く才能を見事に開花している。そんなメリンダを温かく見守ってくれた美術教師は変わり者と言われているフリーマン先生。皮肉にも変わり者とレッテルを貼られている先生との出会いできっかけを掴み、自分らしさを取り戻していく様を描く。
さらに両親から美術道具セットのプレゼント。娘の変化に気付いていないようで実はちゃんと見ている両親からのクリスマスプレゼントになんだかじんわりとさせられた。

いじめの対象となった子と親しくすれば、自分も仲間外れになってしまうことを恐れ、皆メリンダとは距離を置くようになってしまっている。横目でチラチラ見る子もおり、気にかけているようにも見えるが、集団心理は怖い。しかし、本作は良き理解者がたった1人いることで前向きにもなれること、聞く耳を持つことの大切さを教えてくれている。一歩踏み出して見ると思っていたより簡単だったり…とわかっていてもいざ行動するのは難しい。

結末はどうやら本とは違うらしく、意外だったが、ほっこりさせられた。

<鑑賞> 2011/11/9
[サイト内タグ検索] 日本未公開
関連記事

(未) Sweet Jane <1998/米> ★★★☆

sweet_20111126154616.jpg
Sweet Jane
1998/83min/アメリカ
ドラマ
監督/脚本:ジョー・ゲイトン(Joe Gayton)
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、サマンサ・マシス
IMDb評価:7.3/10


社会度 ★★★
哲学度 ★
涙催度 ★



swwet1_20111126154616.jpgヘロイン中毒のジェーンは入院中に医師からHIVに感染していることを告げられる。病院を抜け出し街を歩いていると誰かに付けられていることに気が付いた。その少年トニーはジェーンが天使に見え、ついてきた来たという。まだ14歳なのに身寄りがないと知り、行動を共にする…。

監督のジョー・ゲイトンは「ファースター 怒りの銃弾(2010)」「過ぎゆく夏(1992)」の脚本家でもあり、監督作品は本作が3作目となる。監督作品に劇場公開作はない。
出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、「ブロークン・アロー(1996)」「アメリカン・サイコ(2000)」のサマンサ・マシス。

トニーは14歳にしてエイズ患者。HIVは父親から母親に、そして息子トニーにも感染してしまったという。父親の苦しむ死に際を目の当たりにし、母親の亡くなる姿を見たくなく、逃げ出してきたという。14歳にしてそう遠くない将来に訪れる死を覚悟し、絶望的に生きる少年である。一方ジェーンは街角に立ちお客の相手をする売春婦。関係を持った男の名前を書き出すように病院で言われるが、職業上いつ誰から感染したのか見当もつかない。偶然にも引き合わせた2人のHIV感染者の心の交流を描く。

出演者はほぼ2人で、ほとんど何も起こらず、会話だけでストーリーは展開していく。トニーを演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットの実年齢が17歳とは思えないほど童顔だが、演技は既に成熟している。偶然にも最新作「50/50」では余命を宣告されたガン患者を演じているが、死を目の前にした恐怖という点では本作の演技の方がはるかに勝る。

ミステリアス・スキン」で興味を持ったジョセフ・ゴードン=レヴィット作品を最近観漁っているのだが、つらい過去を背負っていたり、病に苦しんでいたり、重すぎるのばかり。HIVの恐怖を知らしめる結末はあまりにも悲しくて涙すらでなかった。地味だが、一生忘れられない結末になりそう。

<鑑賞> 2011/11/25
関連記事

50/50 <2010/米> ★★★

50.jpg50/50
2010/100min/アメリカ
ドラマ
製作/出演:セス・ローゲン
監督:ジョナサン・レビン
脚本:ウィル・レイサー
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲン、アナ・ケンドリック、ブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ・ヒューストン、マット・フルーワー、フィリップ・ベイカー・ホール
IMDb評価:8.3/10

哲学度 ★
社会度 ★★
涙催度 ★★★
ブラック度 ★

こんなに早く日本で公開されることもあるのね。
2011年12月1日より劇場公開。簡単に。

50-1.jpg「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レビットが主演し、ガンで余命宣告を受けた青年の姿を笑いや涙を交えて描くハートフルドラマ。

酒もタバコもやらない普通の青年アダムは27歳でガンを患い、生存率50%と宣告される。同僚や恋人、家族は病気を気づかってどこかよそよそしくなっていくなか、悪友カイルだけはガンをネタにナンパに連れ出すなど、いつも通りに接してくれていた。アダムはなんとかガンを笑い飛ばそうと日々を過ごしていくが、刻々と進む病状に次第に平穏を装えなくなってしまう。カイル役のセス・ローゲンが製作を務め、ガンを克服した親友の脚本家の実体験をもとに映画化した。@映画.com

監督のジョナサン・レビンは、「マンディ・レイン 血まみれ金髪女子高生(2006)」「The Wackness(2008)」に続く3作目で初の日本上映作品となる。出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィット、コメディアンで「グリーン・ホーネット」の脚本・主演を務めたセス・ローゲン。母親役には「アダムス・ファミリー」のアンジェリカ・ヒューストン。

50-2.jpg病気を宣告されて、周囲の人に言うタイプと言わないタイプがいるが、私は完全に後者。会社を辞めざるを得ない場合も、事実は隠し通すと思う。失恋とかでも傷が癒えてしばらく経ってからでないと人には話せないし、話さない。本作の主人公アダム27歳は突如癌の宣告を受け、会社や友人、恋人に話す、私とは違うタイプ。実は私も子どもの頃余命宣告を受けたことがある。完治した今でもその事実は両親以外知らない。アダムのように話せればもう少し前向きに暮らせたのではないか…少々羨ましくも思う。生存率50%からタイトル“50/50”が付けられている。癌と向き合う生活を時にはシリアスに時にはユーモラスに描いている。

アダムがガンに侵されていると知り、死に向き合う恐怖からアダムの前から姿を消そうとする者もいる中、一緒に戦おうと親身になってくれる者もいる。自分にとって誰が大切なのかを考えさせてくれるドラマだった。

演技に定評のあるジョセフ・ゴードン=レヴィットについては今更語ることはないが、脇役の素晴らしさも本作の成功に貢献している。特にセス・ローゲン。コメディアンなだけあって、何度笑わされたことか。気分が沈んでいる時にはほんと有り難い存在。

<鑑賞> 2011/11/24
[サイト内タグ検索] ジョセフ・ゴードン=レヴィット
関連記事

マーターズ <2008/仏=加> ★★

martyrs.jpg
Martyrs  
2007/100min/フランス=カナダ
ホラー、スリラー、ドラマ
監督:パスカル・ロジェ 
出演:モルジャーナ・アラウィ、ミレーヌ・ジャンパノイ、カトリーヌ・べジャン、イザベル・ジャス、グザヴィエ・ドラン
IMDb評価:7.0/10

哲学度 ★★
宗教度 ★★★
嫌悪感 ★★★
ゴア度 ★★★★
衝撃度 ★★★

DVDレンタルしており、面白味半減してしまうので、簡単に。

martyrs1.jpg1971年のフランス。少女ルシ―は、下着姿で衰弱しきった姿を路上で発見され、保護された。食肉処理場で何者かによって監禁・拷問・虐待されており、自力で脱出したのだった。15年後、そんな惨いことをしていた者たちを探し出したルシ―は復讐に向かった。ごく普通の幸せそうな家庭であったが、ルシ―は一瞬にして血の海にしてしまう。後から駆けつけた親友のアンナも犯行現場に驚愕する。死体処理を終え立ち去ろうとするが、隠れ扉を見つけたアンナは秘密の部屋へ足を踏み入れると、そこには…。

監督は、「MOTHER マザー(2004)」のパスカル・ロジェ監督。ルシ―役は「中国の植物学者の娘たち(2005)」のミレーヌ・ジャンパノイ。殺害される一家の長男役は「マイマザー/青春の傷口」で監督主演を務めたグザヴィエ・ドラン。

martyrs2.jpg久しぶりに観たホラーが、こんなに強烈だったとは。アンナ役のモルジャーナ・アラウィは撮影中骨折し、ルシ―役のミレーヌ・ジャンパノイも殴られ過ぎて翌朝立ち上がれなかったというだけあって、リアルな描写は容赦ない。ジャンルは強いて言えば、スプラッターあり残虐行為満載の拷問系。しかも直接描写である。度を超えた要求をこなした女優魂を褒め讃えたいところだがやり過ぎ感は否めず、インパクトの大きさで言ったらかなり上位に食い込む問題作である。描写が強烈なので、免疫のある人、覚悟のある人にだけオススメします。

序盤はルシ―の凄惨な復讐劇を中心に展開するが、単なる序章にしか過ぎず、本番は主人公が親友のアンナに移ってからとなる。序盤とは全く違った展開を見せている。アンナは彼らの監禁・拷問・虐待の理由を知っているのかどうかは定かではないが、観ているこちら側は一体何が目的なのかがなかなか見えず、この先何が待ち受けているのか分からないという恐怖が襲いかかって来る。拷問の肉体的な痛みよりも怖いのは底知れぬ人間の恐怖である。一日一度の流動食と拷問を受ける毎日。精神的な苦痛の中での生かさず殺さずといった状況は、人間にとって一番つらい。

中盤、凡長に感じられる部分もあるが、筋立てはしっかりしており、哲学的で宗教的な解釈を要する結末はホラーというジャンルを超越している。タイトル“マーターズ(Martyrs)”には殉教者、犠牲者、目撃者、証人といった意味がある。私が思うに殉教者への崇敬が本作のテーマなのではないかと思う。肉体的、精神的苦痛の極限の果てに、人間には何が待ち受けているのか…目撃者のアンナは犠牲者でもあり、その後殉教者となり証人になるまでの苦痛を描いた作品。

<鑑賞> 英語吹き替え 2011/11/18
[サイト内タグ検索] グザヴィエ・ドラン監督
関連記事

(未) The Believer <2001/米> ★★★★★

believer.jpg
The Believer
2001/102min/アメリカ
監督/脚本/出演:ヘンリー・ビーン
出演:ライアン・ゴズリング、サマー・フェニックス、ビリー・ゼイン、テレサ・ラッセル、ギャレット・ディラハント
受賞:第17回(2001)サンダンス映画祭 審査員賞
IMDb評価:7.3/10


宗教度 ★★★★
哲学度 ★★★
社会度 ★
ゴア度 ★
嫌悪感 ★★


ダニエルは子どもの頃から弁が立ち、小学校でも先生に盾付いていた。成人した今ではスキンヘッドにナチのTシャツという姿で反ユダヤを掲げるネオナチのスポークスマンとして活動をしている。町でユダヤ人の姿を見かけると追いかけて、電車の中でも嫌がらせをし、その後暴行を企てていた。しかし時折、ネオナチの活動とは真逆の行動をしてしまうことがあり、仲間からも疑いをかけられるようになる…。

believer1.jpg監督のヘンリー・ビーンは、リチャード・ギア主演「インターナル・フェア」、シャロン・ストーン主演「氷の微笑2」の脚本を担当していた方で、本作が監督デビュー作となる。
主演は、「きみに読む物語」のライアン・ゴズリング。本作が映画初主演となる。

ダニエルの思想や歩んできた過去は回想シーンとして徐々に明かされ、なぜネオナチに傾倒していったのかが丁寧に描かれる。何より驚かされたのは、ダニエル自身がユダヤ人であるということ。本作は、監督自身がユダヤ人でありながらネオナチを素材にしたということが争点となり、サンダンスでの審査員賞を始め、海外で数々受賞したにも関わらず、アメリカでは一般公開されていないという事実がある。しかし特筆したいのは、ネオナチを素材にしているが、ユダヤ人やユダヤ教を批判した作品ではないということ。本作は、ユダヤ人がユダヤ人として生きることの葛藤を描いた作品である。

緊張感と説得力のある演技とストーリ展開には圧倒された。本作がもう少し社会的認知度の高い作品であったら、演じるライアン・ゴズリングの代表作になっていたことは間違いないだろう。初主演にしてもの凄い存在感を放っている。不動の人気は本作を観れば納得である。

believer2.jpg私も矛盾を感じつつの鑑賞で、中盤までの反ユダヤ的な行動やユダヤ教に対する批判的思想は、ユダヤ人でなくともあまり気分のいい展開ではない。しかし、親の期待に応えられず、敷かれたレールを外れ不良になってしまった青年の葛藤と捉えれば普遍的なテーマにも感じられ、終盤になるにつれて共感度が高くなる。ユダヤへの愛が感じられる内容だが、本作を批判している人たちは、最後まで観ていないのはないかとさえ感じてしまう。

大人たちの言うこと全てに反発するかのようにネオナチに傾倒したが、心のどこかではユダヤ教を否定しきれず、タリート(ユダヤ教の礼拝の時に男性が着用する、布製の肩掛け)を腰に巻いてTシャツで隠し、こっそり集会に通う姿も見られる。恋人がヘブライ語に興味を示したのをきっかけに、ユダヤ教への思いを一層強めるのであった。そして、ネオナチとユダヤとのジレンマに苦しみ抜いた末の結末はあまりにも哀しいが、観た者全ての心に響く印象的なシーンに導いている。

結末に触れています。
ダニエルはネオナチの仲間たちと共に集会の時間に合わせて爆弾を仕掛けていたのである。集会に参加していたダニエルは他の信者たちを一斉に外へ逃がし、自分1人が犠牲となった。そして、ひたすた階段を駆け上るダニエルに小学校の先生の姿が声をかける。「上に行っても何もないよ。」と。天国を目指しているのだろう。先生の言葉を振り払っても登り続けるダニエル。悔いるダニエルに酬いはあるのだろうか。

<鑑賞> 2011/11/21
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ライアン・ゴズリング
関連記事

(未) A Bear Named Winnie <2004/加> ★★★

winnie.jpg
A Bear Named Winnie
2004/90min/カナダ
ドラマ、戦争
監督/脚本:ジョン・ケント・ハリソン
出演:マイケル・ファスベンダー、ギル・ベローズ、デヴィッド・スーシェ、、スティーヴン・フライ
IMDb評価:6.9/10



A.A.ミルン童話「クマのプーさん」の着想になった物語。
あまりにも有名な話なので、結末まで書いています。




winnie2.jpg第一次大戦中のカナダ。獣医のハリー・コルボーン中尉は、休憩のために下車した町で売られている小熊に出会い、20ドルで購入する。コルボーンの故郷であるウィニペグ(Winnipeg)からウィニー(Winnie)と名づけられた。大佐の命令で一度は森に返すが、戻ってきてしまい、一緒に渡英することになる。しかし、前線には連れては行けず、最終的にはロンドン動物園に預けられ、人気者となる。そこに「クマのプーさん」の原作者ミルン親子が遊びに来ていた。父親が息子にウィニーの生い立ちを話し聞かせる姿があった。

監督は「トロイ ザ・ウォーズ」のジョン・ケント・ハリソン監督。出演は「エンジェル」「イングロリアス・バスターズ」のマイケル・ファスベンダー、「名探偵ポワロ」でポワロ役のデヴィッド・スーシェ、「ショーシャンクの空に」のギル・ベローズ、「Vフォー・ヴェンデッタ」のスティーヴン・フライ。

winnie1.jpg癒された~。子ども向けのテレビ映画で、わかりやすいストーリー展開。背景が戦争といえど戦闘シーンもなければ、血も流れない。私のように汚れてしまった大人が見ると、突っ込みたい所もあるが、ツベコベ語るのは止めます。
名優が名を連ねるが、主演はクマのウィニー。愛くるしい仕草が何ともいえない。常にコルボーンの後をちょこちょこついて回っていて、一緒にベッドで寝る姿は恋人のよう。メイキング映像を見ると、ほんとに懐いているようで、繋ぎ合わせではなく、もしかしたら実際に撮っていたのかも。

実際はコヨーテが原因なのだが、馬が逃げてしまったことに濡れ衣を着せられてしまい、森に返すように命じられてしまう。コルボーンはルームメートと森の深い所まで行き、置き去りにするが、何度試みても戻ってきてしまった。仕方なく、大佐たちには内緒で一緒に渡英してしまう。しかし、さすがに前線には連れて行けないので、ロンドン動物園に預けることになった。動物園でも当初は凶暴だと決めつけられ、“危険”という看板まで貼りつけられたが、人間に育てられたウィニーはおとなしい。檻に落ちた子どもを襲うのではなく、顔をぺろぺろ舐める姿を見て、飼育員たちは安心するのであった。負傷したコルボーンが療養中、寝言でウィニーに名前を呼んでいたと知り、すっかり大きくなってしまったウィニーがお見舞いに来たりと、ウィニーはとことん愛くるしい。
ウィニーは亡くなる20歳まで動物園の人気者だった。

<鑑賞> 2011/11/18
関連記事

266. 二人の女 <2010/韓> ★★★

two.jpg
二人の女/두여자
2010/105min/韓国
ロマンス
監督/脚本:チョン・ユンス
出演:シン・ウンギョン、チョン・ジュノ、シム・イヨン



官能度 ★★★
哲学度 ★★★
社会度 ★★
民族度 ★




two2.jpg大学建築工学教授ジソクと産婦人科医ソヨン夫妻の10回目の結婚記念日。思い出のバーを貸し切り、妹夫婦とお祝いをしていた。ソヨンは夫のギターを弾き語りしようとケースを開けたら、コンドームが入っており疑惑を抱き始めた。夫婦間では使わないからである。ある日、夫の研究室を訪ねた際、ふとPCを覗いてしまった。ある学生からのチャットの内容に、夫の相手であると確信したソヨンは尾行を始め、ヨガの講師であることを知る。素知らぬ顔でジムに登録し、不倫相手と接点を試みる…。

監督は、「妻が結婚した」のチョン・ユンス。出演は、「花嫁はギャングスター」のシン・ウンギョン、「マイ・ボス・マイ・ヒーロー」のチョン・ジュノ、「パジュ」のシム・イヨン。

チョン・ユンス監督は、「今、愛する人と暮らしていますか?」では2組夫妻の四角関係、「妻が結婚した」では夫妻+男の三角関係、そして本作では夫婦+女の三角関係、どれも大人の交差する恋愛を描いている。3作品の中で本作が一番性描写が過激であり、結婚10年の夫婦とは思えないほど演出の凝ったベッドシーンには不自然に見えるが、仲の良さを強調したかったのだろう。3人のヌードをウリにしている宣伝方法にも首をかしげてしまうが、3作品の中では一番まともな倫理観のもとで展開していく。

two1.jpg韓国映画ではありきたりな三角関係であるが、時代の変化を感じる。妻は医師であり、金も名誉も手に入れている女性。別れても金銭的な苦労はしないという点においては男女平等であり、決して立場は弱くない。しかし、10年の結婚生活にも関わらず不妊という事実に妻は引け目を感じていたのかもしれない。不倫行為が許せず離婚を決意したというよりは、3人にとってどうするのが一番良いのかを冷静に見極めようとする姿には知性すら感じる。

妻は、夫とは別れることを前提に不倫相手に近づき、夫との情事を聞くわけだが、韓国特有の起伏の激しい感情のぶつかり合いではなく、冷静に不倫と向き合おうという姿勢を見せている。しかし、愛人と接点を持てば持つほど情が湧き、殺したいほど憎かった愛情に友情が芽生えてしまう。本作の主人公は“2人の女”であり、2人の友情が事を更に複雑にさせ、ストーリーにも面白さを持たせている。妻の職業、産婦人科医という設定が終盤でうまく使われており、それに恐怖をプラスさせている。夫への執念が導いた意外性のあるオチが私の評価を一気に高めている。

<鑑賞> 2011/11/1
[サイト内タグ検索] 日本未公開 チョン・ジュノ
関連記事

別離 (英題:Separation) <2010/イラン> ★★★★★

separation.jpg別離/Jodaeiye Nader az Simin/ Nader and Simin, A Separation
2011/123min/イラン
ドラマ
監督/脚本:アスガー・ファルハディ(Asghar Farhadi)(監督5作目)
出演:レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ
受賞:第61回(2011)ベルリン映画祭金熊賞、銀熊賞の女優賞、男優賞
IMDb評価:8.6/10

哲学度 ★★★★
社会度 ★★★
宗教度 ★
民族度 ★★★
余韻度 ★★★★


separation1.jpgテヘランに住むナデルとシミン夫婦には11歳の娘テルメがいる。
シミンは夫と11歳の娘テルメと共にイランを出国したいと考えているが、ナデルは拒んだ。同居している父親がアルツハイマー病であり、置いては行けないからだ。仕方なくシミンは離婚を決意し、家庭裁判所で訴えたが、親権は父親に渡ってしまった。シミンは夫と娘を残し、実家へと帰るが、代わりに義父の面倒を見てくれる家政婦を雇った。ある日、少し早く夫が家へ帰ってきたら、家政婦の姿がない。アルツハイマー病の父親はベッドに足を縛られ、上半身はベッドから落ち意識を失っていた。更にお金まで消えていた。夫は家政婦が盗んだと思い込み、帰って来た家政婦をすぐさま追い出してしまう。突き飛ばしたら階段から転げ落ちてしまい、流産してしまった…。

2009年ベルリン国際映画祭で監督賞に輝いた「彼女が消えた浜辺」のアスガー・ファルハディ監督の最新作。

separation2.jpg個人の立場では正しいと思ったことをしたがゆえに泥沼にはまっていく悲劇と人々の葛藤を描いた作品。
舞台はイランのテヘラン。物語は、比較的余裕のある中流家庭の夫婦を中心に進行していく。ごく一般的な家庭でありながら、いろいろな問題が交差しながら複雑に絡み合い、人間心理の深いところまで掘り下げられている。

家政婦は妊婦であり、病院に行っていたという。アルツハイマー病の父親が1人で外出してしまい大騒ぎしたこともあり、仕方なく足をベッドに縛っていったのだった。そんな言い分を聞くことなく、夫は家政婦をはじき出してしまった。しかし、玄関の先はすぐ階段になっており、転げ落ちてしまった。家政婦は雇われた時に妊婦だと伝えたというが、夫は聞いていないという。言った、聞いてないの水かけ論。母親が家を出たことを発端に、アルツハイマーの父親の介護を巡る諍いや家政婦と雇い主の信頼関係にまで発展し、事態は思わぬ方向へと向かっていく悲劇を繊細に描いている。

ほんの些細な個人レベルのことでここまで大きな問題にまで発展していくとは誰が予想していただろうか。個人の立場で考えれば決して過ちではないが、宗教や倫理上では責められ、刑事事件絡みのサスペンスを見ているかのような緊張感を生みだしている演出力は卓越している。

イスラム社会における男女や格差問題を背景としており、家政婦が男性のオムツを取り替えることが宗教的倫理に触れるのかどうか電話で確認するあたりには宗教的な制約の違いを感じるものの、普遍的な問題を投げかけており、国籍問わず考えさせられる問題である。家族のためにどうすべきか、倫理的にはどうすべきか、観終わった後もいろいろな思いが頭を巡るであろう。

<鑑賞> 英語字幕 2011/11/9
[サイト内タグ検索] 日本未公開
関連記事

(未) Manic <2001/米> ★

manic.jpg
Manic
2001/100min/アメリカ
ドラマ、犯罪
監督:ジョーダン・メラメッドJordan Melamed
脚本/出演:Michael Bacall
脚本:Blayne Weaver
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、ドン・チードル、エルデン・ヘンソン
IMDb評価:7.4/10

社会度 ★★
哲学度 ★
ゴア度 ★★
嫌悪感 ★★★



manic1.jpgライルは学校での喧嘩で相手に50針も縫わせる重症を負わせてしまった。大人たちはライルの言い分を聞こうとせず、そのまま精神病院に送ってしまう。ライルはセラピーを受けながら自分を見つめ直していく…。

監督は、ジョエル・シューマカー監督チェイス・クロフォード主演「トゥエルヴ(2010)」の脚本を担当したジョーダン・メラメッドの唯一の監督作品。出演は、「(500)日のサマー」のジョセフ・ゴードン=レヴィットとズーイー・デシャネル、「ホテル・ルワンダ」のドン・チードル。

これ、ポイントが全くわからなかった。ドキュメンタリー風に、精神病院の様子をひたすら垂れ流すだけの作品。本当に精神病の人もいるが、ほとんどの子は家庭環境が問題で、ドラッグや暴力に依存している子たち。自傷癖があり、リストカットを見せ合ったり、グループセラピーで境遇を告白しながら傷を舐め合う。普通に生活していたら想像もできないほど壮絶な人生を歩んできた子たちばかりで、すぐ感情的になり、観ている側も精神が病みそうになる。

実情を赤裸々に映すドキュメンタリーならばこういう展開も多少理解はできるが、問題定義だけで、監督の意図するものが何なのかもわからなければ、前向きな解決策も読み取れない。手持ちカメラの映像は臨場感があるのだが、酔ってしまう欠点もある。内容も内容なだけに、具合悪くなってしまった。トリアー監督の「イディオッツ」を彷彿とさせる作風で鬱に苛まれそうになる。

<鑑賞> 2011/11/17
関連記事

(未) Roger Dodger <2002/米> ★★

roger.jpg
Roger Dodger
2002/106min/アメリカ
ドラマ、コメディ
監督/脚本:ディラン・キッド(監督デビュー作)
出演:キャンベル・スコット、ジェシー・アイゼンバーグ、イザベラ・ロッセリーニ、エリザベス・バークレー、ジェニファー・ビールス
IMDb評価:7.1/10


社会度 ★★★
哲学度 なし
共感度 なし
官能度 なし
ブラック度 なし


roger1.jpgニューヨークの広告会社でコピーライターをしているロジャーの所に 甥で16歳のニックが訪ねてきた。はやく童貞を卒業したく、手解きを受けに来たのである。金曜の夜、ロジャーは行きつけのバーや友人宅のパーティ、売春宿に連れ出し、ニックのお相手してくれる女性を探す…。

監督は「ルイーズに訪れた恋は…(2004)」のディラン・キッド監督の監督デビュー作。
「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグの映画デビュー作。「ソーシャル~」の捲し立てる口調にハマれなかったのだが、デビュー作からすでに頭角を現している。倍以上も年の離れた女性に熱弁をふるうあたり、ドン引きしてしまった。私は「ソーシャル~」が嫌いなのではなく、ジェシー・アイゼンバーグが嫌いなのかも…。

roger2.jpgロジャーは既婚者であり、女性経験豊富と自負している。持論のセックス論を理論的に並べ立ててはひけらかし、年下男性には慕われるが、女性には印象はよくない。説得力のある口調に説教をされている気分になり、私だったら、一緒に飲みたくもないし、寝たくないタイプ。

物語はほとんどロジャーの会話だけで成り立っていて、ロジャーの経験を基にしたセックス論を軸に展開していく。この手のことは成り行きに任せるのが一番で、16歳なのだからそんなに焦る必要もないとは思うが、ニックは必死で、ロジャーのプランを一つ一つこなしていくのである。

はやくバージンを喪失したいと焦る気持ちはよ~くわかるが、それを手助けするロジャーのやり方には共感できない。お酒の力を借り、勢いで事を運ばせようとしたり、友人に頼んでみたり、挙句の果てに最終手段は娼婦である。“セックスはどこにでもある”というのが彼の持論だが、どれも子どもが思い付くような方法であって、健全とはいえないし、ロジャーの思うように事は運ばない。大人なら、彼女を見つけるほうを伝授してあげるべきだと思うが、ロジャー自身も健全な道を歩んでこなかったのかもしれない。

結局、ニックはロジャーから学んだことはあったのだろうか…

<鑑賞> 2011/11/15
[サイト内タグ検索] 日本未公開
関連記事

Mysterious Skin <2004/米> ★★★★

skin.jpgミステリアス・スキン/Mysterious Skin
2004/アメリカ
製作/監督/脚本/編集:グレッグ・アラキ
ドラマ、同性愛
原作:スコット・ヘイム
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブラディ・コーベット、ミシェル・トラッチェンバーグ、エリザベス・シュー
IMDb評価:7.8/10

2004年第61回ヴェネツィア国際映画祭
2005年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映

嫌悪感 ★★★
社会度 ★★★
哲学度 ★★
刺激度 ★★★★★


カンザスの田舎町の少年ニールとブライアンは幼少時代同じリトルリーグに入団していた。男性コーチは性的虐待をしており、2人はその犠牲となっていた。ブライアンはその時は記憶が曖昧で、宇宙人に誘拐されたと信じ込み、ニールは男娼となっていた…。

skin1.jpg監督は日系三世のアメリカ人、グレッグ・アラキ。主役ニール役には「(500)日のサマー」 や「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レヴィット。母親役にはエリザベス・シュー 。ブライアン役には「ファニ―ゲーム」のブラディ・コーベット。

同性愛やレイプを素材とした作品は人並みには観ているし、本作の概要も知っていたし、それなりに構えて観たつもりだったが、吐きそうになった。監督ご自身が同性愛者なだけあって、男性から見た男性の描き方のリアルさには、恐怖でおののいてしまった。しかしそれがまた癖になりそうな刺激。幼児性的虐待、エイズ、性病といった要素も加わり、本作の前に北野武作品をいくつか観たが、全て色褪せてしまうほどの問題作。グレッグ・アラキ監督には苦手意識があったのだが、本作は本人原作ではなく、他作とは作風が異なっていることを後になって知った。ジョセフ・ゴードン=レヴィットにも全く興味もなかったのに、不思議な魅力に執り付かれてしまった。(後日、出演作品アップ予定)当時23歳でありながら、14歳から成人までの役を見事にこなしている。

2人の幼少時代のリトルリーグの様子から丁寧に描かれる。コーチは子どもが好きなお菓子やおもちゃを用意し、数日間かけてじんわりと手懐けた後、行為に及ぶといったことを日常的にやっていた。子どもにしてみれば何をされているのか全くわからない。ニールに至っては行為はコーチのご褒美だと勘違いしてしまうという始末。回想シーンはどこかファンタジーのようなカラフルな世界になっており、ニールにとっては楽しかった出来事として記憶されいるのが恐ろしい。ニールは鮮明に覚えていて、ブライアンはうろ覚えになっている性的虐待の記憶が、2人の運命を翻弄していることだけは確か。性的虐待を受けた子どもがその後どう成長していくのかを描いた作品。

skin2.jpgニールの生き方が壮絶。コーチのせいで男性に目覚めてしまったニールは、男娼となり年上男性とばかり関係を持つようになる。その時に想像するのはコーチの姿であった。田舎町にそんなにゲイがいるとは思えないが、町の全ての男性と寝たとまで豪語している。やがて、更なる収入を求めてニューヨークに渡る。そして、客にコンドームを使うように言われ、コンドームの存在を初めて知るのであった。股間に痒みを訴えており、毛虱だろうか、その後治療を受けた様子もない。いかに危険な橋を渡って来たのかがうかがい知れる。幼馴染のウェンディに安全な仕事に就くようにとピザ屋店員の仕事を紹介してもらうが、すぐに男娼の仕事に戻ってしまうのであった。しかも、都会は田舎町とは違って一般的な性行為では満足できない客ばかり。その後どんな危険が待っているのか露とも知らずに。

やがて大人になり、実家に帰ると、ブライアンが待っていた。ブライアンは忌まわしい過去を記憶から消し去り、その空白は宇宙人にさらわれたからだと信じ込んでいたが、曖昧な記憶を埋めるためにニールに会いに来たのであった。

ニールに衝撃の事実を聞き、傷を舐め合う2人、その後どういう道を歩むのだろうか。一見対照的な2人であり、生き方も真逆であったが、絶望的ではなく、2人で乗り越えられそうな期待がやんわりと込められている。
幼児の性的虐待のシーンは編集を巧みに使い繋ぎ合わせたと知り、安堵。仮に映画だとしても子どもを犠牲にして性的虐待シーンを撮っていたとしたら、作品としてのメッセージ性を失ってしまうから。幼児虐待に強い批判的な描き方をしているが、同性愛者に対しての目線は温かい。

<鑑賞> 2011/11/11
[サイト内タグ検索] ジョセフ・ゴードン=レヴィット
関連記事

(未) Wristcutters A Love Story <2006/米> ★★★

wrist.jpg
Wristcutters: A Love Story
2006/88min/アメリカ
コメディ
監督/脚本:Goran Dukic(長編監督デビュー作)
出演:パトリック・フュジット、シャニン・ソサモン、Shea Whigham、レスリー・ビブ
IMDb評価:7.5/10


社会度 ★★★
共感度 ★★
哲学度 ★
ブラック度 ★★



wrist1.jpg彼女にフラレ傷心のジアは自宅のバスルームで手首を切り自殺を図った。しかし、目を覚ました死後の世界は、自殺した人たちだけが住む世界だった。人々は普通に生活しており、ジアは“カミカゼ”というピザ屋でバイトを始めるが、生活はパッとしない。そんな時バーで知り合ったロック歌手ユージンから、ジアをフッタ彼女も自殺を図り、この世界にいると言うことを聞く。生きていくのが嫌で自殺を図ったのに、それでも尚また生かされていても夢も希望もなかったが、“生き甲斐”(死んでいるのだが)を見出したかのようにジアのスイッチが入り、ユージンと共に彼女を探す旅に出る…。死後の世界での異色なロードムービー。

監督はクロアチア人で、本作が長編デビューとなる。主演は「あの頃ペニー・レイン」のパトリック・フュジット。

wrist2.jpg人々が普通に生活し、インフラ設備も整っており、一見、何の変哲もない世界だが、何か変。一度は希望を失い自殺した者ばかりなので、活気はなく、顔色も悪いし、状況もひどい世界。しかも、自殺した時の姿そのままなので、頭に銃痕が残ってる人なんかもぞろぞろいる。ジアも手首に傷が残ったままである。自殺により自らの命を絶ったといってもただ異次元に移動しただけで、思い出はそのまま残っている。良き思い出もあれば、自殺に至るまでの辛い体験も全て記憶しており、何かがリセットされるわけではないから、思考も悲観的なままである。しかし、自殺という素材をこんなにコミカルに描いている作品は初めてで、発想が新鮮で面白い。この世界で暮らす人たちは人生には失敗したが、“自殺の成功者”であり、初対面の人たちとの会話は決まって自殺方法。自殺理由ははっきりいってそれほど深刻なものではないが、呆気らかんと話す自殺エピソードが面白い。

死後の世界は決してユートピアではなく、前いた世界のほうがよっぽどよかったとを後悔させられることになる。皮肉にも、自殺をして初めて気がつく。私たちも大切な人を失ってみて初めて有難みに気がつくってことがあるけど、気がついた時は後の祭り。自殺してもいいことはないよってメッセージがきちんと込められている。

面白いのが、実はリアルライフと繋がっているブラックホールなんかもあったりして、気持ちいいエンディングになっている。

<鑑賞> 2011/11/5
[サイト内タグ検索] 日本未公開
関連記事

(未) Pu-239 (別題:The Half Life of Timofey Berezin) <2006/米> ★★★☆

pu.jpg
Pu-239/The Half Life of Timofey Berezin
2006/97min/アメリカ
ドラマ、コメディ
製作:スティーヴン・ソダーバーグ
監督/脚本:スコット・Z・バーンズ(Scott Z. Burns)
原作:Ken Kalfus (short story "PU-239")
出演:パディ・コンシダイン、Oscar Isaac、Valeriu Pavel Dan、ジェイソン・フレミング、ニコライ・リー・カース
IMDb評価:6.9/10

社会度 ★★★★★
ブラック度 ★★★
哲学度 ★★★



ロシアの原子力発電所で事故が起き、自動制御システムが作動し、作業員のティモフェイは閉じ込められてしまった。施設責任者はそれを知りながら助けることなく逃げてしまう。放射能を浴びてしまったティモフェイはシャワー洗浄し、数値を測るが正常範囲内であったと知らされ、書類にサインの上、解雇。しかし、実は規定値以上の量を浴びてしまったことを後から知ってしまった。体調にも変化が現れ始め、余命あとわずかだということを悟った。職を失い、このままでは妻と7歳の息子を養えない。ティモフェイは施設から“プルトニウム(Pu-239)”を盗み出し、売り捌くことで収入を得ようと考えた…。

pu1.jpg「コンテイジョン」「インフォーマント!」の脚本家スコット・Z・バーンズの監督デビュー作。スティーヴン・ソダーバーグが製作を務める。主演はイギリス人のパディ・コンシダイン

ティモフェイは段ボールに“Pu-239”とだけ書き、100g30,000ドルでブラックマーケットで売り捌こうとしていた。そのマーケットはあるギャングたちの縄張りで、ギャングの一員シヴは「プ(Pu)って何だ?」と話しかける。“Pu-239”と化学記号で書いてしまうと、分かる人には分かるが、分からない人には分からない。シヴはギャングの下っ端で、車のワイパーや飼い犬を盗んでは売り捌き、得た金はボスに取られる生活。一攫千金でギャングから抜け出したいと思っていた矢先でもあり、何だかよくわからない物を売ろうとしているティモフェイの手助けをすることにした。
全く違う道を歩んできた2人だが、共に息子がおり、家族には普通の生活を送らせてあげたいとただただ願う良き父であった。

pu2.jpgギャングたちの行動をコミカルに描いているが、プルトニウムが何なのか知らないが故の無知なる行動には顔が引きつってしまう。自身が被爆者であるにも関わらず、プルトニウムを売ろうというティモフェイの考えも到底理解できない。悪人の手に渡り、核兵器でも作られたら自分の二の舞になる被害者が続出することは明らかである。しかし、余命わずかだと悟った彼はそんなことどうでもよく、身近な物で金になる物であれば何でもよかったのであろう。

被爆したティモフェイは、毛が抜け始め、吐血し、鼻や耳からも出血、皮膚も爛れていた。製作は2006年。広島、長崎、チェルノブイリに関しても言及しており、明らかに放射能の危険性を訴える内容である。隠ぺい体質の国営企業、危険物質の管理の甘さ、犠牲となる作業員といった、今の日本では決して他人事ではない問題がいろいろと見えてくる。

ギャングのボスは、マックのポテトは6分後に廃棄されるが、それを拾えば7分後にはビジネスになるとも言っている。どこにビジネスが転がっているのかわからない。見極めるのも才能であると妙に関心させられてしまった。しかし、チョコレートに含まれるテオブロミン(Theobromine)が犬にとって強い毒性であることを知らなかった。チョコレート8ピース食べて死んでしまうアフガン犬のエピソードは身近な物にも危険が潜んでいることを暗示していたのだろう。取り扱い方によってはたとえ悪意がなくてもどんな危険を及ぼすのかわからない。プラトニウムも手に渡った人の知識や使い方によってどう扱われるのか…

<鑑賞> 2011/11/14
関連記事

(未) The Banishment <2007/露> ★★★★★

banishment_20111102115520.jpgThe Banishment/Izgnanie
2007/157min/ロシア ・ベルギー合作
ドラマ
監督&脚本:アンドレイ・ズビャギンツェフ「父、帰る
撮影:ミハイル・クリチマン
出演:コンスタンチン・ラヴロネンコ、アレクサンダー・バルエフ、マリア・ボネヴィー
受賞:2007 カンヌ映画祭 男優賞他1、3ノミネート
INDb評価:7.6/10

哲学度 ★★★★
宗教度 ★★★★
社会度 ★
映像美 ★★★
余韻度 ★★★

一家4人は田舎にある母の残してくれた家へ移り住む。新しい生活に胸を弾ませる子ども2人に対し、夫婦の表情は浮かない。妻は不倫をしており、田舎で一からやり直すために引っ越してきたからだ。夫婦のわだかまりは消えていない。そんな時の妻の一言。「妊娠しているけど、あなたの子ではないの」…。

banishment2.jpg父、帰る」のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の2作目。
初監督作品「父、帰る」で、ヴェネチア国際映画祭の新人監督賞と金獅子賞をダブル受賞、2作目の本作ではカンヌ映画祭でコンスタンチン・ラヴロネンコに最優秀男優賞をもたらし、3作目の最新作「Elena」ではカンヌ特別審査員賞を受賞している。 主演は、「父、帰る」で父親役を演じたコンスタンチン・ラヴロネンコ、その妻役はスウェーデン、ノルウェーを代表するマリア・ボネヴィー。ロシア語の話せない彼女の台詞はどうやら吹き替えられているらしい。

本作が監督2作目と思えないほどの完成度で、観る度に新発見があり、新たな琴線に触れることができ、観る度に理解度も満足度も高まる1級品と呼ぶべき作品。日本では一般公開はおろか、未だにCSでも映画祭でもお目見えしていないとは…。これは恥じるべき行為。

妻は妊娠したことを弁解もせず、子の運命を夫に託し、裁きを受ける覚悟を決めた。妻よりもむしろ夫のほうが葛藤と戦っている様子が延々と映し出される。不倫の原因は描かれていない。夫も妻を問い詰めたりもせず、抑制された感情は修羅場などなく、本作の大半を占めるのはむしろ沈黙である。背景が描かれなくとも、出来てしまった夫婦の溝は深く、重いことが覗える。

banishment1_20111102115520.jpgかなりのスローテンポで、ショットが名画のように美しくもあり、構図の意味をいちいち考えさせられる。手法としては、抽象的ではあるが圧倒的な映像を脳裏に焼きつけさせ、忘れた頃に補足説明が入るといった、観る側にとっては少々負担となる描き方。時間軸も前後し、映像からはどのタイミングの話なのかは掴み難く、おもちゃの電車のレールを繋ぎ合わせるかのようでもある。子供が遊んでいるジグソーパズルがダ・ヴィンチの「受胎告知」だったり、細部の小道具にまで伏線が張られているため、隅々まで隙がない。一旦レールが繋ぎ合わさると電車が加速するかのごとくストーリーも一気に進むが、商業大作映画を好む人は間違いなく熟睡できる作品でもある。

無邪気な子どもたちの笑い声、電話が鳴る音と車のエンジン音が時折静けさを破る程度で、聞こえてくるのは最低限の生活音のみ。怖いほどに排除された音の緊張感が夫婦の溝をさらに引き立てている。
ダイヤル式の黒電話に交換手が出ることから、時代背景は現代ではないであろう。車で通り過ぎる薄暗い工業地帯はソ連時代を連想させ、堕胎が違法とされている時代であろうことは推測できる。テーマは“赦し”。不倫をし、子を身籠った妻を赦すのか。子はどうするのか。

タイトルの意味は“追放”。誰が誰を追放するのか。最終的には何が罪なのか。畳みかけるように押し寄せる結末のどんでん返しまで観る者に自問を促してくれる。

初版:2010/8/9
最新版:2011/11/12 (★★★☆から★★★★★に変更)

関連記事

(未) Stephanie Daley <2006/米> ★★★☆

step_20111108221915.jpg
Stephanie Daley
2006/92min/アメリカ
ドラマ
製作/出演:ティルダ・スウィントン
監督/脚本:Hilary Brougher(監督2作目)
出演:アンバー・タンブリン、Timothy Hutton
IMDb評価:6.2/10


社会度 ★★★★
哲学度 ★★★
宗教度 ★
余韻度 ★★★



少女が血を流しながら雪の上を歩いている。
スキー場のトイレで嬰児(えいじ)の死体が発見された。

学校のスキー教室に参加していた16歳の女子高生ステファニーは殺人容疑と死体遺棄容疑で逮捕された。未成年の彼女には検察側のカウンセリングが付き、一体何があったのか調査が行われた。ステファニーはリフトで上に登り、いざ滑ろうとした矢先、激しい腹痛に見舞われ、トイレに駆け込む。ドアの隙間からステファニーの苦しむ姿が見えるが誰も気にはとめない。トイレの一室でこんなに苦しんでいる子がいることなど誰も予想せず、トイレでぺちゃくちゃとおしゃべりする少女たちがいる中、ステファニーは声を抑えながら出産してしまった。死体は彼女が産み落とした嬰児だった。しかし、妊娠しているとは知らなかった、そして、死産だったと主張する。ステファニー本人は本当に妊娠に気が付いていなかったか…本当に死産だったのか…カウンセラーは妊娠前後の出来事からを詳しく聞き出し、カウンセリングによって真相を暴いていく…。

step1_20111108221915.jpg女優のティルダ・スウィントンが製作とカウンセラーのリンディー役を務める。監督は本作が2作目となる女流監督、Hilary Brougher。日本での公開作、ソフト化作品はない。主演は「127時間」のアンバー・タンブリン。

一番の論点となるのは、ステファニーは本当に妊娠に気が付いていなかったかどうかである。もしかしたら、気付いていた上で今まで隠し通していたのかもしれない…。犯罪なのか事故なのか、緊張感のある見せ方で、かなりハラハラさせられた。
カウンセリングを行うリンディーは29週の妊婦であり、40代半ば。高齢出産への不安を抱え情緒不安定なリンディーと、妊娠していることを知らなかったと主張するステファニーを対照的に描く。
リンディーは待ち望んでいた妊娠であるのに対し、ステファニーは望んでいなかったとはいえ、あまりにも平然とした態度でのカウンセリングには少々違和感を感じる。印象的なのは、警察による誘導尋問的な取り調べではなく、カウンセラーによるカウンセリングの仕方である。いつ、どこで、誰と何があったのか、妊娠前後の出来事からを詳しく聞き出し、本人に思い起こさせると同時に、感情まで引き出し、嘘を見抜こうとしているのである。

step2_20111108221915.jpg1人での壮絶な出産が地獄であり、地獄の体験でもうすでに罪は償ったと言うステファニー。しかし、その地獄を招いたのは自業自得とも考えられる。
未成年の軽率な性交渉、避妊を怠ったこと、生理不順を気にしなかったこと…学校で性教育を受けていたとはいえ、カウンセリングから見えてくるのはそういった教育が全く無意味であることと避妊への無関心さ。日本は避妊は男性がするという認識が高いが、欧米はその辺も男女平等で、避妊方法にピルを選択する人のほうが多いと感じる。自分の身は自分で守るという意識も高い。ステファニーが避妊を怠ったという責任も大きいであろう。
本作で彼女の行動の是非をめぐるわけではないが、観る側にも自問を促し考えさせる展開を見せている。ステファニーの何が間違っていたのか、どうすべきだったのか明確な答えも提示されず、結末も観る側の解釈に委ねられている。

ティーンエージャーの妊娠ストーリーはありふれているが、私が知っているのはほとんどがハッピーエンドで、そんなに現実は甘くないのに、妊娠の先には幸せな結婚生活が待っていると勘違いしてしまうような作品ばかり。その点、本作は未成年が観るべき内容。どうせ妊娠なんかしないって軽く思っている未成年には特に観て欲しいが、おそらくいい年の大人しか観ないんだろうな。

<鑑賞> 2011/11/7
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ティルダ・スウィントン
関連記事

(未) Le Donk & Scor-zay-zee <2009/UK> ★★★

ledonk.jpg

Le Donk & Scor-zay-zee
2009/71min/UK
コメディー
監督/脚本/撮影:シェーン・メドウス
出演:パディ・コンシダイン、スコゼイジー、アークティック・モンキーズ
IMDb評価:6.4/10



敬愛なるシェーン・メドウスについてはこちらパディ・コンシダインについてはこちら






ledonk1.jpgLe Donkはミュージシャンで、アークティック・モンキーズのローディーもしている。友人で白人ラッパーScor-zay-zeeをアークティック・モンキーズのライブのオープニングに起用してもらおうとする奮闘記。

監督は、「This Is England」のシェーン・メドウズ監督。主演は、シェーン・メドウズ監督作品でお馴染みのパディ・コンシダイン。ロックバンド、アークティック・モンキーズは日本武道館でも来日公演を行っている。2006年「Leave Before the Lights Come On」のMVはパディー・コンシダインが主演を務めている。

予算繰りに困っていた時、アークティック・モンキーズからドキュメンタリー制作の話を持ち掛けられたことで完成したモキュメンタリー。低予算で5日で撮りあげたという。そもそも劇場公開の予定はなく、映画祭上映とDVDのみのはずだったが、エジンバラでのワールドプレミアで好評により本国でも急遽、劇場公開の運びとなった。

もともとはバンド出身のシェーン・メドウズ(ボーカル)とパディ・コンシダイン(ドラム)。メドウズ監督作品の音楽使いの良さは言うまでもないが、パディ・コンシダインはラップまで披露している。歌がうまいのは知っていたが、ファンとしては貴重な映像。

モキュメンタリーなので、ドキュメンタリーともフィクションとも違う味わいがあり、台詞回しが面白い。パディ・コンシダイン演じるLe Donkのキャラが良く、いちいちおかしい。この人、犯罪者系の役柄が多い気がするが、コメディアンとしての才能もあるようで、ますますファンになった。彼が歌うラップの歌詞まで真剣に聞き入ってしまった。パディ・コンシダイン、スコゼイジー、アークティック・モンキーズ好きな人は必見。

<鑑賞> 2011/11/13
関連記事

(未) Sinners <2002/アイルランド> ★★★

sinners.jpgSinners
2002/90min/アイルランド
ドラマ
監督:Aisling Walsh
脚本:Lizzie Mickery
出演:アンヌ=マリー・ダフ、Karen Ardiff, John Boland and Ruth Bradley、
IMDb評価:7.5/10

哲学度 ★★★
社会度 ★★
宗教度 ★★★
ゴア度 ★
閉塞感 ★★★

sinners1.jpgピーター・ミュラン監督2作目の「マグダレンの祈り」と同様、マグダレン修道院を舞台にした作品。こちらはBBC製作。どちらも2002年製作であるが、本作のほうが公開(放送)は早いようである。
「マグダレン~」で従兄にレイプされ修道院に入れられたマーガレット役のアンヌ=マリー・ダフが主演を務める。

「マグダレン~」では、何が“罪”で修道院へ送られたのかそれぞれのケースごとに詳しく描かれるが、本作では全員が妊婦であり、未婚での性交渉が罪となる。その背景は恋愛ばかりではなく、レイプや近親相姦も含まれるが、さほど触れていない。みな修道院内の便器のような椅子の上で産み落とし、一定期間母乳を与えられるだけで、赤ちゃんは予告なしに孤児院にもらわれていく。我が子を奪われる妊婦たちの苦悩に焦点を当てている。

「マグダレン~」と異なる点は、本作はカトリックの立場で描かれていること。少女たちは逃げ出したいと願うものの、やはり罪の意識を感じているのである。本作の意図は、当時は未婚での性交渉は認められておらず、それを破るとこうやって罪を償っていたんだよ、と伝えたかっただけだろう。「マグダレン~」のような痛烈な批判もなければ、女性の尊厳に触れる節もない。

マグダレン修道院の意義にも触れていないため、予備知識なしでいきなり本作の鑑賞では理解度は低い。罪を洗い流すと言う意味で洗濯に従事しているのだが、なぜ洗濯の仕事なのかの説明もない。あくまでも「マグダレン~」の補足としての鑑賞をオススメする。エンターテイメント性はなく閉塞感があるが、結婚を申し出る人がいれば修道院を出れるという希望も残した描き方をしている。救われる思いはするが、現実味の薄い演出にも思え、「マグダレン~」には及ばない。

<鑑賞>聞き取り度 60% 2011/10/27
[サイト内タグ検索] 日本未公開 アンヌ=マリー・ダフ
関連記事

マグダレンの祈り <2002/アイルランド=UK> ★★★★★

昔、日本語吹き替えで観た記憶がある。たぶん、民放。当時はハリウッド映画と韓国映画しか観ていなかったから、良さが全く分からなかったのだけど、観直して見て、かなりの衝撃を受けた。個人的には「ハンガー」とか「XXY」と並ぶ1級品。ますますピータ・ミュランのファンになってしまった。

magda.jpg

Magdalene Sisters
2002/119min/アイルランド=UK
ドラマ
監督/脚本/出演:ピーター・ミュラン
出演:ノラ=ジェーン・ヌーン、アンヌ=マリー・ダフ、ドロシー・ダフィ、ジェラルディン・マクイーワン、アイリーン・ウォルシュ
受賞:2002年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
IMDb評価:7.8/10



哲学度 ★★★★
社会度 ★★
宗教度 ★★★
ゴア度 ★



1964年、アイルランド、ダブリン。マグダレン修道院に、時を同じくして3人の少女が収容される。孤児バーナデットはその美しさで周囲の少年たちの目を惹きつけてしまうことが、マーガレットは従兄弟にレイプされたことが、そしてローズは未婚のまま赤ん坊を産んだことがそれぞれ“罪”とされたのだった。彼女たちは、修道院を管理する修道女たちに性悪女と決めつけられ、祈りと労働によって神に奉仕し“罪”を悔い改めるよう言われるのだった。しかしそこで彼女たちを待っていたのは、過酷な労働と自由の一切ない刑務所以上に非人間的な環境だった。@allcinema

magda1.jpgキリストによって改心した娼婦マグダラのマリアに因んで名付けられたマグダレン修道院。性道徳が厳しいとされるカトリックで、性的に“堕落した”女性たちを矯正させる目的で運営され、閉鎖される1996年までに延べ3万人もの少女が収容されたという。そこで経験した女性たちの過酷な実態を描いたドキュメンタリー「Sex in a Cold Climate」に衝撃を受け、監督は映画化を決意したそうだ。俳優ピーター・ミュランの監督第2作目。監督自身もカトリックである。なお、そのドキュメンタリーはDVDの特典に収録されている。

マーガレットの親戚の結婚式の場面から始まる。アイルランド独特の楽器が使われ、「The Well Below The Valley(谷間の井戸)」というアイルランドの民族音楽が奏でられる。その歌は近親相姦によって子供を産んだ女性の哀しい歌だという。結婚式に相応しいとは思えぬ歌詞は、あたかも独身女性たちを戒めるかのようでもある。この日、マーガレットは従兄にレイプされた。悲しみにくれるマーガレットは母に報告すると、司教へ伝えられ、翌日、修道院へ送られた。加害者の従兄にお咎めはない。

孤児院にいたバーナデットは美貌のせいで、少年たちの注目の的であった。肉体的交渉の有無によらず、美貌のせいで修道院へと送られた。そして、未婚のまま出産してしまったローズも修道院へと送られた。3人は性道徳の厳しいカトリックにおいて“罪”を犯した人間なのである。物語の舞台となるのは1960年代。同時に修道院へ来た女性3人と、もう1人クリスピーナの4人の視点で修道院の実態に迫っていく。この4人が見事なキャスティング。当時は新人、もしくは無名女優たちだったが、今ではアイルランドを代表する女優さんである。

magda2.jpg罪を洗い流すという意味で、少女たちは日々洗濯に従事していた。洗濯機がなかった時代であり、全て手洗い。労働による対価は表向きは修道院の運営費用に回されているが、実際はシスターたちの私腹を肥やしていたとされる。食事のメニューの違いでも明らか。更に、少女たちを一斉に裸に横一列に並ばせ、胸の形や陰部を笑いのネタにするという始末。
刑務所のように刑期があるわけでもなく、いつ出れるのかもわからなければ、出られる保証もない。ここでおばあちゃんになり、生涯を終える者も少なくない。信仰心の深さの違いなのだろうか。宗教とは救いだけではなく、さまざまな葛藤をも生み出すものでもある。耐え切れず逃げ出す者もいれば、ここで試練を全うすることが死後の幸せに繋がると本気で思っている者もいる。

修道院は96年に閉鎖され、4人のその後はテロップで流れる。矯正させる目的の修道院でありながら、4人は矯正されておらず、その後の道を踏み外してしまっている。やはりここでの生活や家族から見放されてしまったことで歪んでしまったように思う。性行為がいけないことだと洗脳されてしまったのも起因しているだろう。
本作の批判的な描写がバチカンから抗議を受けたとされるが、監督の主張は宗教冒涜ではなく、修道院そのものの存在意義に疑問を投げかけているのである。彼女たちの肉体的、精神的苦痛は計り知れない。

淡々とした描写でありながら、監督の主張も見せ場もはっきりしており、エンターテイメント性も高いが、催涙性の高い過剰な演出はない。ドキュメンタリー「Sex~」での当人たちの証言によると、実際はもっと過酷だったという。本作では、少女たちを娼婦にさせていたというくだりはないが、裸での品定めは娼婦にさせる前の儀式だとも言われている。本作では司教からの性的虐待のシーンが数秒ある程度、しかも意識してみないと見逃すほどのシーンであり、何が起こっているのすら分からない人のほうが多いと思われる。若干説明不足と感じる箇所も多いが、敢えて伏せていたように思う。関連作品を観ることで、説明不足箇所は補えるため併せて観ることをオススメするが、衝撃は一層大きい。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/26
関連記事

ブリューゲルの動く絵 (原題:The Mill and the Cross) <ポーランド=スウェーデン> ★★★☆

the millブリューゲルの動く絵/The Mill and the Cross
2011/92min/ポーランド=スウェーデン
ドラマ
製作/監督/脚本/撮影/音楽:レフ・マイェフスキ(Lech Majewski)(監督8作目)
出演:ルトガー・ハウアー、マイケル・ヨーク、シャーロット・ランプリング
言語:英語
IMDb評価:7.2/10

第24回(2011)東京国際映画祭の特別招待作品
2011年12月17日より渋谷ユーロスペースにて公開

芸術度 ★★★★★
映像美 ★★★★
哲学度 ★★
宗教度 ★★★
邦題のセンス ★★★

the mill1舞台は16世紀のフランドル地方のアントウェルベン(現在のアントワープ)。村の中心にある岩山の上には巨大な風車が建っている。明け方早く、石臼で穀物が挽かれ、風車が回り始める。一日の始まりを知らせるものであった。農民たちは畑を耕し、女性たちは家事を始める。ある日、赤い服の騎士たちが1人の若い男性を木の上にくくりつけた。カラスが寄って集り、男性の肉を啄ばむのを妻は嘆き見ているだけ。異端者だと言われた男性を助ける者もいない。画家ブリューゲルはそんな村の日常の風景をスケッチし始める…。

ビーテル・ブリューゲルは現在のベルギーにあたるブラバント公国に生まれ、16世紀中頃に活躍した画家である。代表作は「バベルの塔」など。画家ピーテル・ブリューゲルが背景を語りながら自身作品 「The Way to Calvary(十字架への道/十字架を担うキリスト)」を完成させていく過程を描く。ブリューゲルの作品は、細部まで丹念に描きこまれ、歴史的に忠実に再現されていると言われているが、まさに歴史的、宗教的背景が紐解かれている作品になっている。

監督はポーランド人のレフ・マイェフスキ。詩人や舞台監督としても活躍している方である。ジュリアン・シュナーベル監督の「バスキア」の脚本としても有名。
ブリューゲル役は「ブレードランナー」のルトガー・ハウアー、キリストの母マリア役はシャーロット・ランプリングが演じる。

the mill2絵画が動いた!
色彩やタッチ、構図にいたるまで絵画に忠実で、まるで本物の絵画に人々が入り込んでしまったような不思議な錯覚に陥る。この監督の作品は数作品しか観たことがないが、作風はどれも同じ。だが、本作の完成度は驚くほど高い。美術館が大嫌いで、絵画に酔いしれるという趣味が全くない私でも、映像に魅入ってしまった。聞こえる音は生活音ばかりで、台詞はほとんどない。ブリューゲルの独り言のようなつぶやきが若干の補足説明となっている。
しかし、映像があまりにも圧巻で、何を言っていたのか耳にも入ってこないのが正直な感想。同じような絵が続くので、少々眠気を誘う時があるが、絵画に詳しくない人でも楽しめる映像展開になっている。

ブリューゲルの生きていた16世紀の農夫たちの日常生活から始まるが、時代はキリストの受難にまで遡る。キリストは十字架を担いでゴルゴタの丘へ向かい、それを横目に悲しみに暮れる母マリアの姿がある。1週間の様子が描かれ、絵画に描き込まれていく。そして、時代は更に飛び、現代へ。「十字架を担うキリスト」が飾れている現代のウィーン美術館へとカメラは移る。隣に飾られている「バベルの塔」が、美術館のホール全体が映し出される。あたかもタイムトリップをしたかのような感覚。

<鑑賞> 2011/11/2
関連記事

2011年 第24回ヨーロッパ映画賞 作品賞候補45作品、ノミネート・受賞作品

第24回ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表されました。(2011/11/5)
受賞結果が発表になりました。(2011/12/3)

★:Kooの相対評価(満点3つ星)

作品賞
「The Artist」ミシェル・アザナヴィシウス(Michel Hazanavicius)、フランス
「The Kid With A Bike(Le gamin au vélo)」ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、ベルギー=フランス=イタリア
未来を生きる君たちへ」スサンネ・ビア、デンマーク ★★☆
「英国王のスピーチ」トム・フーパー、UK
「Le Havre」アキ・カウリスマキ、フィンランド=フランス=ドイツ
メランコリア」ラース・フォース・トリアー、デンマーク=スウェーデン=フランス=ドイツ ★★★

監督賞
未来を生きる君たちへ」スサンネ・ビア/デンマーク ★★☆
「The Kid With A Bike」ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ/ベルギー=フランス=イタリア
「Le Havre」アキ・カウリスマキ/フィンランド=フランス=ドイツ
メランコリア」ラース・フォース・トリアー/デンマーク=スウェーデン=フランス=ドイツ ★★★
「二ーチェの馬(The Turin Horse)」タル・ベーラ/ハンガリー=フランス=スイス=ドイツ

男優賞
ジャン・デュダルジャン「The Artist」
コリン・ファース「英国王のスピーチ」
ミカエル・パーシュブラント「未来を生きる君たちへ
ミシェル・ピコリ 「We Have a Pope(Habemus Papam)」ナンニ・モレッティ監督/イタリア=フランス
アンドレ・ウィルム「Le Havre」

女優賞
キルステン・ダンスト「メランコリア」★★★
セシル・ド・フランス「The Kid with a Bike」
シャルロット・ゲンズブール 「メランコリア」★
Nadezhda Markina「Elena」アンドレイ・ズビャギンツェフ監督/ロシア
ティルダ・スウィントン「We Need to Talk About Kevin」リン・ラムジー監督/UK

脚本賞
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 「The Kid with a Bike」
アナス・トーマス・イェンセン未来を生きる君たちへ」★★
アキ・カウリスマキ 「Le Havre」
ラース・フォン・トリアー 「メランコリア」★★★

撮影賞
マヌエル・アルベルト・クラロ(Manuel Alberto Claro)「メランコリア」★★☆
フレッド・ケレメン(Fred Kelemen)「ニーチェの馬」
ギヨーム・シフマン(Guillaume Schiffman)「The Artist」
アダム・シコラ(Adam Sikora)「エッセンシャル・キリング」★★★

編集賞
タリク・アンウォー(Tariq Anwar)「英国王のスピーチ」
マティルド・ボンフォワ(Mathilde Bonnefoy)「Three」トム・ティクヴァ監督/ドイツ
モリー・マレーネ・ステンスガード(Molly Malene Stensgaard)「メランコリア

美術賞
パオラ・ピッツアリ(Paola Bizzarri)「We Have a Pope」
アンチョン・ゴメス(Antxón Gómez)「La Piel Que Habito(The Skin I Live In()」ペドロ・アルモドバル監督/西
イェッテ・レーマン(Jette Lehmann)「メランコリア

作曲家賞
ルドヴィック・ブールス(Ludovic Bource)「The Artist」
アレクサンドル・デプラ「英国王のスピーチ」
アルベルト・イグレシアス「The Skin I Live In」
ヴィーグ・ミハーイ(Mihály Vig)「ニーチェの馬」

ディスカバリー賞
「Adem (Oxygen)」Hans Van Nuffel監督/ベルギー=オランダ
「Atmen (Breathing)」Karl Markovics/オーストリア
「ミヒャエル(Michael)」マルクス・シュラインツァー(Markus Schleinzer)/オーストリア
Smukke Menesker (Nothing’s All Bad)」Mikkel Munch-Fals/デンマーク
「Tilva Ros」Nikola Ležaić/セルビア

********************************************************************************************************

第24回ヨーロッパ映画賞 作品賞候補45作品32ヶ国の45作品が発表されました。(2011/9/12)

対象は2010/7/1から2011/6/30までに劇場公開もしくは映画祭で公開された長編フィクション作品。
ただしドキュメンタリー作品は除外。

2011年11月05日 ノミネーション発表
2011年12月03日 授賞式@ベルリン

--------------------------------------------------------------------------------------

*「タイトル」監督名、国名 ★:Koo評価(満点5つ星)

「Almanya - Willkommen in Deutschland」Yasemin Samdereli、ドイツ=トルコ
「América」João Nuno Pinto、ポルトガル=スペイン=ブラジル=ロシア
「The Artist」ミシェル・アザナヴィシウス/Michel Hazanavicius、フランス
As If I am Not There」ファニタ・ウィルソン/Juanita Wilson、アイルランド=マケドニア共和国=スウェーデン ★★★☆
Attenberg」アティナ・ラシェル・ツァンガリ/Athina Rachel Tsangari、ギリシャ ★★☆
「Ave」Konstantin Bojanov、ブルガリア=フランス
「The Last Circus/Balada triste de trompeta」アレックス・デ・ラ・イグレシア/Álex de la Iglesia、スペイン
「White White World/Beli, beli svet」Oleg Novkovic、セルビア=ドイツ=スウェーデン
「Cirkus Columbia/Cirkus Columbia」ダニス・タノヴィッチ、ボスニア・ヘルツェゴビナ=仏=UK=独=スロベニア=ベルギー
「Silent Sonata/Circus Fantasticus」Janez Burger、スロベニア=アイルランド
「Three /3」Tom Tykwer、ドイツ
「Volcano/Eldfjall」Rúnar Rúnarsson、アイスランド=デンマーク
Elena」アンドレイ・ズビャギンツェフ/Andrey Zvyagintsev、ロシア ★★★
エッセンシャル・キリング」イエジー・スコリモフスキ、ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー ★★★★★
「The Kid With A Bike/Le gamin au vélo」ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、ベルギー=フランス=イタリア
「We Have a Pope/Habemus Papam」ナンニ・モレッティ/Nanni Moretti、イタリア=フランス
未来を生きる君たちへ」スサンネ・ビア、デンマーク ★★★★
「Stopped On Track/Halt auf freier Strecke」アンドレアス・ドレセン/Andreas Dresen、ドイツ
「Infiltration /Hitganvut Yehidim」Dover Kosashvili、イスラエル=フランス
「英国王のスピーチ」トム・フーパー、UK
「Le Havre」アキ・カウリスマキ Aki Kaurismäki、フィンランド=フランス=ドイツ
「Lidice」ペトル・ニコラエフ/Petr Nikolaev、チェコ
「Loverboy」カタリン・ミツレスク/Catalin Mitulescu、ルーマニア
「Mothers/Majki」ミルチョ・マンチェフスキー/Milcho Manchevski、マケドニア共和国
メランコリア」ラース・フォース・トリアー、デンマーク=スウェーデン=フランス=ドイツ ★★★★★
Neds」ピーター・ミュラン/Peter Mullan、UK ★★★
「We Believed/Noi credevamo」マリオ・マルトーネ/Mario Martone、イタリア=フランス
Oslo, August 31st」ヨアキム・トリアー/Joachim Trier、ノルウェイ ★★★★
「Silent Souls/Ovsyanki」Aleksei Fedorchenko、ロシア
「Black Bread/Pa negre」アグスティ・ヴィラロンガ/Agustí Villaronga、スペイン ★★★★
「The Little Room/La petite chambre」Stéphanie Chuat & Véronique Reymond、スイス=ルクセンブルク
Little Whilte Lies/Les petits mouchoirs」ギョーム・カネ/Guillaume Canet、フランス ★★☆
「The Skin I Live In/La piel que habito」ペドロ・アルモドバル/Pedro Almodóvar、スペイン
プレイ」ルーベン・エストルンド/Ruben Östlund、スウェーデン
「Surviving Life (Theory and Practice)/Prezít svuj zivot (teorie a praxe)」ヤン・シュヴァンクマイエル/Jan Švankmajer、チェコ=スロバキア
「Bullhead/Rundskop」Michaël R. Roskam、ベルギー=オランダ
Suicide Room/Sala samobójców」Jan Komasa、ポーランド ★★★★
Beyond/Svinalängorna」ペルニラ・アウグスト/Pernilla August、スウェーデン=デンマーク=フィンランド ★★★★
雨さえも~ボリビアの熱い一日~/Even The Rain」イシアル・ボリャン/Icíar Bollaín、西=仏=メキシコ ★★★★
「Tilva Ros」ニコラ・レジャイッチ/Nikola Ležaić、セルビア
「Tirza」ルドルフ・ヴァン・デン・ベルグ/Rudolf van den Berg、オランダ
「Tomboy」セリーヌ・シアマ/Céline Sciamma、フランス
「二ーチェの馬/The Turin Horse」タル・ベーラ/Bela Tarr、ハンガリー=フランス=スイス=ドイツ
「The Unintentional Kidnapping of Mrs. Elfriede Ott/Die unabsichtliche Entführung der Frau Elfriede Ott」アンドレアス・プロハスカ/Andreas Prochaska、オーストリア
少年は残酷な弓を射る」リン・ラムジー、UK ★★★★☆


[タグ未指定]
関連記事
[ 2011/11/08 21:32 ] ★映画関連★ 映画賞 | TB(0) | CM(0)

(未) Innocence <1997/トルコ> ★★★

masumi.jpg
Masumiyet
1997/110min/トルコ
ドラマ
監督:ゼキ・デミルクブズ(Zeki Demirkubuz)(長編監督2作目)
出演:グヴェン・キラック(Güven Kiraç)、Haluk Bilginer、Derya Alabora
IMDb評価:8.3/10



哲学度 ★★★
社会度 ★
民族度 ★★★
余韻度 ★★
     
 

ユスフは姉の不倫相手を殺した罪で10年を刑務所で過ごし、刑期を終えようとしていたが、服役中、巨大地震に見舞われ、家族も家も失ってしまっていた。刑期を終えても行き場のないユスフは、刑期を伸ばしてくれと頼むが却下されてしまう。仕方なく、姉の住む町へと向かう。しかし、ユスフのことを許していない姉は顔すら合わせようとしない。いたたまれなくなったユスフは安い宿を住処とすることにした…。

masumi1.jpg監督は、「群れ」等で知られるゼキ・オクテン監督の助監督を経て、本作が長編2作目となる。。4作目「Fate」と5作目「The Confession」の2作品が2002年のカンヌ国際映画祭ある視点部門に同時出品されたこともあり、カンヌでも異例の扱いを受けている。ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督と共に、現代のイランを代表する映画監督であるが、日本では映画祭のみの上映に留まっているようだ。日本での劇場公開作品はなく、ソフト化されている作品も、CS等で放送されたこともない模様。

人間の絶望と孤独を描いた傑作。噂通りの作品だった。主人公は殺人罪を犯してはいるが、姉思いが強いゆえの出来事であった。心優しく内向的なキャラクターであり、困っている人には手を差し伸べずにはいられない。宿で一人淋しくテレビを見ていた少女にも優しく接する。その少女が風邪を引き看病をしたことで仲良くなった父親は、妻が娼婦ということで嫉妬心を燃やしており、ユセフは良き話し相手になってあげる。更に少女は聾唖障害を持ち、喉を切り声を失った姉と重ね合わせ、やはり放ってはおけない。

ユセフの周りは社会のどん底を這いずり回るように生きる人たちばかりで、警察沙汰になる者、希望を失い自殺する者、夜逃げする者といった人たちばかり。純粋なゆえに貧乏くじをを引いてしまうユセフは、いつも誰かの尻拭いをさせられる運命にある。常に絶望の淵に立たされているユセフだが、それでも前へ進もうとするユセフに感銘を受ける。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/19
[サイト内タグ検索] 日本未公開 グヴェン・キラック
関連記事

西欧 (原題:Occident) <2002/ルーマニア> ★★★☆

occident.jpg
Occident
コメディ、ドラマ
2002/105min/ルーマニア
監督/脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:Alexandru Papadopol、Anca-Ioana Androne、Samuel Tastet、Gabriel Spahiu
IMDb評価:7.5/10


ブラック度 ★★
普遍度 ★★★
哲学度 ★
社会度 ★★




occident2.jpg4か月、3週間と2日」のクリスティアン・ムンジウ監督のデビュー作。
「4か月~」ような閉塞感はなく、同じ監督とは到底思えないほど拍子抜けコメディ。悲劇をユーモラスにテンポよく描いている。

3話構成だが、とてもユニークに入り組んだ混成。第1話はルチとソリナ、カップルの話で、第2話はルチの仕事仲間のミカエルと母親の話、第3話はミカエラの父親の話。完全に独立した話ではなく、登場人物もかぶり、同じ場面が違った視点が描かれ、3話で一つの大きなストーリーが完結する仕掛けになっている。1話で腑に落ちなかった点が2話や3話で違う視点で明かされるというスタイルである。

第1話「ルチとソリナ」
買い物からの帰り道、2人は滞納している家賃について話していた。仕事を変えようかと思っていたが、部屋の家財道具が全て外に出されていることに気付いた。強制退去である。ソリナは父のお墓参りに行けば何か助言をもらえるのではと考え、2人はお墓参りに行く。すると、ルチは指輪を見つけ良いことの前兆だと喜ぶが、その矢先、空から呼んできたワインボトルが当たり、病院送りになる…。(指輪とワインボトルについては第3話で詳しく描かれる)

第2話「ミカエラと母親」
ミカエラの結婚式の当日、父親はワインが3本なくなっていることに気付いた。そして、主役である新郎が消えてしまった。結婚式は中止し、結婚も破談になってしまう。ミカエラはウエディングドレスのまま逃げ出し、あるベンチに座っていると、気絶している男性が運ばれた。(第1話のルチである。)その後、偶然にルチと仕事を共にすることになる。宣伝用の携帯電話とビールの着ぐるみを来てチラシを配るという仕事である。一方、母親は結婚相談所に登録に行く…。

第3話「ジクフリドと大佐」
ミカエラの父(大佐)は、職場で娘の結婚を報告する。そして、結婚式当日、指輪を無くし嘆き悲しむ花婿を見つける。ヤケクソになった花婿はワインを飲み干し、ボトルを投げるのであった…。(第1話のルチに当たる)

occident1.jpgその他、ソリナの駆け落ち話、ミカエラの見合い話、ルチの従兄(ジクフリド)の亡命話、オランダに連れて行かれる養子縁組の話など、サブストーリも充実しており、全て3話で完結となっている。

画質の悪さのせいか、70年代の作品のように見えてしまうが、ひょっとしたらその時代を背景としており意図的なのかもしれない。ルーマニアというとあまり明るい話題が思い浮かばず、こういったコメディーに違和感を感じてしまうが、どんな時代でも明るく生きている人はいるということだろうか。普通の人々の日常を描くことで普遍性を持たせているが、背景にも混沌とした社会情勢が見え隠れし、ただのおバカ映画で終わっている訳ではない。

<鑑賞> 2011/11/1
関連記事

オーファンズ -みなし子たちの夜- <1997/UK> ★★

orphans.jpg
Orphans
1997/101min/UK
コメディー、ドラマ
監督/脚本: ピーター・ミュラン
出演:ダグラス・ヘンシュオール、ゲイリー・ルイス、ローズマリー・スティーヴンソン、スティーヴン・マッコール
IMDb評価:7.0/10


ブラック度 ★★★★
哲学度 ★★★
社会度 ★★
民族度 ★★★
普遍度 ★★


スコットランド・グラスゴー。長男トーマス、次男マイケル、脳性マヒの妹シーラ、そして末っ子ジョンのそれぞれ成人した4人の兄弟は母の家に集まっていた。彼らの母親が死んだのだ。葬儀の準備を終えパブに繰り出す4人。そこでトーマスは母が好きな歌を歌い泣き崩れる。マイケルは、そんなトーマスを見て笑った客とケンカし腹を刺され、血だらけで街をさまよう。弟ジョンはマイケルに復讐を約束し、銃を探し回る。一方車イスのシーラは遺体の安置されている教会から締め出されてしまう。その夜、激しい嵐が街を襲う…。彼らは無事母の魂を見送ることができるのか。@allcinema

orphans1.jpgケン・ローチ監督作品「マイ・ネーム・イズ・ジョー」でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し、自身監督2作目「マグダレンの祈り」でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞しているピーター・ミュランの初監督作品。監督の出身地スコットランド・グラスゴーを舞台に、自身の体験を基にしている。

愛する母親を亡くした4人の子どもたちが、さまざまな騒動に巻き込まれる姿を描いた人間ドラマ。ピーター・ミュランの出演作からは想像もつかない、しかも今まで観たことのないパターンの悲喜劇である。個人的には好きなタイプの作品ではないが、こんな才能やセンスがあったことに驚き。

頑固で頭の固い長男トーマス、離婚したが2人の子どもがいる次男マイケル、脳性マヒで車椅子生活の長女シーラ、そして、心優しい三男ジョン。4人の子どもといっても皆成人しており、またキャラが濃い。
長男が死んだ母の好きな歌をパブで歌ったことを笑った男の客がいた。その男と次男が取っ組み合いの喧嘩になったことから物語は展開していく。喧嘩の相手への復讐に挑むのだが、全て空回り。必死にもがけばもがくほど、墓穴を掘ってしまい、笑いのネタになってしまう。ポスターに“今年一番のブラックコメディー”とあるが、かなりきついブラックになっている。日本で公開&VHS化されたことにも驚き。
最終的には家族愛を認識させるような結末に繋がっている点がせめてもの救い。

<鑑賞> 聞き取り度50% 2011/10/29
[サイト内タグ検索] ピーター・ミュラン
関連記事

(未) Stuff and Dough <2001/ルーマニア> ★★

stuff.jpg
Marfa si banii/Stuff and Dough
2001/90min/ルーマニア
ドラマ
監督/脚本:クリスティ・プイウ(Cristi Puiu)(監督デビュー作)
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク(Razvan Radulescu)
出演:Alexandru Papadopol、ドラゴス・ブクル、Ioana Flora
IMDb評価:7.0/10









stuff1.jpgOvidiuの両親は田舎町で小さな食料品店を経営している。商品の調達はOvidiuがブダペストまで買いに行っている。ある日ある人から、調達のついでに運び屋の仕事をやらないかと持ちかけられ、引き受けることにした…。

監督は「ラザレスク氏の死」のクリスティ・プイウ監督。本作がデビュー作となる。
主演のAlexandru Papadopolにとってもデビュー作となる。日本での公開作はなく、海外進出もしておらず、世界的にもおそらく無名に近いと思うが、「4か月、3週間と2日」のクリスティアン・ムンジウ監督作の2作品に出演している。そして、特に注目しているわけではないのだが、最近観ているルーマニア映画のほとんどに出演しているドラゴス・ブクル。本作は3本目の出演で、まだ無名に近いようだが、今となってはルーマニア映画に限らず、「コッポラの胡蝶の夢(2007)」や先日アップしたアメリカ映画「The Way Back」にも出ている。2人とも、本作の演技が認められ、人気を獲得としたといっても過言ではないようだ。

中盤の1時間はバンを運転しながらブダペストへ向かう道中で、うだつの上がらない日常の会話でもたつきを感じる。15分程度の短編で十分だったように思うが、最新作以外の3作品を全て観た感想としては、シニカルな台詞回しが特徴であり、見所となっているようだ。私の苦手な、しかしながら俳優たちがこぞってノーギャラでも出演したがる韓国のホン・サンス監督を彷彿とさせる。

貧困ゆえに知らぬ間に犯罪に加担してしまっている日常の恐ろしさを描きたかっただとは思うが、ちょっと肌に合わず、いまいちポイントが掴めない。見逃している恐れあり。

<鑑賞>英語字幕 2011/10/31
関連記事

(未) Angel <2000/ポーランド> ★★★

angelus.jpg
Angelus/ Angel
2000/110min/ポーランド
コメディー、伝記
監督/脚本/セットデザイン:レフ・マイェフスキ(Lech Majewski)(監督6作品目)
IMDb評価:7.5/10

映像美 ★★★★★
哲学度 ★
シュール度 ★★★

マイェフスキ監督最新作「ブリューゲルの動く絵(The Mill and the Cross)」、12月公開予定


teofil1.jpg現在のポーランド南西部からチェコ北東部(プロイセン王国時代の行政区画も含めればドイツ東部のごく一部も)に属する地域の歴史的名称シレジア初のコメディーとなる。

シレジアの1920-60に実在したコミューンでのオカルト現象を、ある画家たちは絵画に残していた。その中には世界的に有名なTeofil Ociepkaや Erwin Sowkaも含まれる。その絵画にあたかも息を吹き込んだかのように、シレジア地方に住む炭鉱夫の日常生活を叙事詩的に描きながら、主人公のナレーションと共に絵画に秘められた思いを謎解いてゆく。
teofil4.jpg












←↑Teofil Ociepkaや Erwin Sowkaの作品



angelus1.jpg絵画が見事に3D化され、映像はより誘惑的になっている。これでもかと思うほど裸の女性がでてくるのは、そういう絵画が多かったからのようである。絵画のとおり、登場する女性も見事にふくよかである。

部屋の壁には必ず絵がかかっており、絵柄と同じことを再現するといった凝りよう。景色のショットもまるで美術館の絵画のようである。
ハチ除けマスクをずっとし続ける男、太陽を浴びると髪が増えると信じている男、ハワイの女性は皆裸だと信じ、妄想に明け暮れる男、頭を冷やすために窓を開け、そのまま寝てしまい、頭に雪を積もらせる男、逆立ちして本を読む男、、、オカルト現象の再現なだけあって、どこか可笑しい男たちのシュールな行動が延々と続く。ほんの数分で出演者が入れ替わり立ち替わり、しかも台詞がない場合も多い。各ショットは綺麗なのだが、そんなシーンが延々と100分も続くと一体何を意図しているのか全くわからない。不自然に突如現れる天使も一体なんだったんだ?

ポーランドの評論家によると、中央ヨーロッパの魂が描かれているらしい。あいにく字幕ではわからないが、現在のポーランド語とは異なる言語が使われているようで、言葉遊びも楽しめるとか。ヒトラーやスターリンも登場し、歴史的背景を知っているかどうかで理解度はかなり異なると思われる。絵画の予備知識も必要であろう。

ニューヨーク近代美術館等の美術館でも上映されている。
angelus3.jpgangelus5.jpg

<鑑賞> 英語字幕 2010/10/4

初版:2010/10/5
最新版:2011/11/2

[サイト内タグ検索] 日本未公開 レフ・マイェフスキ監督
関連記事

(未) Neds <2010/UK> ★★★

neds.jpg
Neds
2010/124min/英=仏=伊
ドラマ、犯罪
監督/脚本/出演:ピーター・ミュラン(長編監督3作目)
出演:Conor McCarron、Greg Forrest
IMDb評価:7.0/10

第24回(2011)ヨーロッパ映画賞 作品賞候補 全45作品についてはこちら


暴力度 ★★★
哲学度 ★★
民族性 ★★★
社会度 ★★




neds1.jpg1970年代のスコットランド、グラスゴー。労働者階級が住む地域である。学校ではケンカが絶えなかった。ジョンは成績優秀だが、アル中の父親と警察沙汰になる兄のせいで学校の先生にも目を付けられてしまう。次第に友人たちともうまくいかなくなり、喧嘩に巻き込まれ、自身の身を守るために、不良グループと付き合わざるを得なくなっていた…。

ケン・ローチ監督作品「マイ・ネーム・イズ・ジョー」でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し、自身監督2作目「マグダレンの祈り」でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞しているピーター・ミュランの監督3作目で最新作。デビュー作に続き、自身の体験を基にしている。実兄Lenny Mullanは「マグダレンの祈り」に引き続き、キャスティング・ディレクターを務めている。

日本で公開される、もしくは日本人好みのUK映画はおそらく上流階級物語が多いのかもしれないが、私の好みはむしろ労働者階級の作品。どの監督も“貧困”や“暴力”、“犯罪”といった観点で描いており、ストーリーにはさほど違いはないと改めて思った。
本作は「トレインスポッティング」ほど娯楽性も高くなく、ケンローチほど社会性が強いわけでもなく、おそらく日本でお目見えすることはないでしょう。シェーン・メドウス監督に近い作風だが、彼よりも冷徹で客観的に捉えている。ピーター・ミュランはパディ・コンシダインと並んで、UKの中で1番か2番目に好きな俳優。本作を観て、更にファンになった。

neds2.jpg父親からの暴力、不良たちの喧嘩、先生の対応などジョンを取り巻く環境の悪さがこれでもかというほど描かれる。序盤では、優等生で真面目だったジョンだが、そういったエピソードを経て、不良に落ちぶれていく様を丁寧に描いている。40%が監督の自伝だそうで、アル中の父親は自身の父親がモデルであり、自ら演じている。自伝的要素が高いだけあって、不良へのターニングポイントが明確に示され、説得力がある。

学校での鞭打ちの体罰には驚かされたが、これもスコットランドでは30年前まで行われていたとか。馬を調教する時使うようなムチである。先生による鞭打ちの体罰も痛々しいが、15歳前後の少年たちによる暴力も容赦なく描かれている。ピーター・ミュランが保護観察員を演じた「BOY A」へと繋がっていきそうなストーリー展開である。
NEDsとはNon Educated DelinquentSの略で、“教育を受けていない不良”という意味である。敷かれたレールを進むかのように落ちぶれていく少年たちの翻弄された運命に一向に出口は見えない。意見の分かれそうなエンディングに嫌悪感を覚える人が多そうだが、私はジョンの強い意志を感じ取った。抜け出す意思と勇気さえあれば、人間はいつでも方向転換できる可能性を持っている、と信じたい。

<鑑賞> 聞き取り度70% 2011/10/25
[サイト内タグ検索] 日本未公開 ピーター・ミュラン
関連記事

【短編】カタリン・ミツレスク(Catalin Mitulescu)監督作品 短編 3本 ★★★

ルーマニア人若手監督カタリン・ミツレスク(Catalin Mitulescu)は、「Trafic」で2004年に短編部門のパルムドールを受賞。脚本を担当した「If I want to whistle, I whistle」は第83回(2011)米国アカデミー賞外国語映画賞ルーマニア代表作品に選出され、長編2作目「Loverboy」は第64回(2011)カンヌ映画祭、ある視点部門に出品している。
日本では長編デビュー作「世界の終わりの過ごし方 (2006)」がNHKBS第2で放送されたのみ。

第83回(2011)米国アカデミー賞外国語映画賞各国代表作品についてはこちら
第64回(2011)カンヌ映画祭、ある視点部門についてはこちら

******************************************************

Bucuresti-Wien, 8-15
2000/ルーマニア
監督/脚本:カタリン・ミツレスク
脚本:Keraj Sokol
出演:Andi Vasluianu、Cosmin Selesi、Maria Dinulescu
IMDb評価:7.0/10
ある仕事のために男2人は妻の元を離れた。1人はすぐ戻ると伝え、1人は2年経ったら戻ると伝えた。
パスポートを持っているので、海外に行くことが予測される。
しかし、仲間割れの後、1人は行かないと言い出した。もう1人は1人で行くことにしたが、パスポートが逆になっており、仕方なく家へ戻る。3本の中で唯一はっきりしたオチがあり、白黒で、荒い感じの映像がまたいい。
出演しているAndi Vasluianuは英テレビドラマ「セックス・トラフィック(2004)」で少女たちの監視やお金を搾取するアルバニア人を演じていた。「17minutes late」にも出演。

17minutes late
2002/10min/ルーマニア
短編
監督/脚本:カタリン・ミツレスク
脚本:Andreea Valean
出演:Andi Vasluianu、Maria Dinulescu、Dan Bordeianu
IMDb評価:7.5/10
全て順調に事を終え、車でどこかへ向かうが、急いでいるあまり何かを轢いてしまった。車を降りて確認すると、幸い馬だった。事故で携帯電話が壊れてしまい、電話を借りようとレストランを営む彼女の家へ向かうが、歓迎されていない。弟と結婚したことを知らせれ、一連の出来事の疲れが出たのか、しばしソファーで横になることにする。そして、客を装ってきた殺し屋に射殺されてしまう。それは出発してから17分後だった。

Trafic
2004/15min/ルーマニア
監督/脚本: カタリン・ミツレスク
脚本:Andreea Valean
出演:Bogdan Dumitrache、Maria Dinulescu、Ana Bart
受賞:2004カンヌ映画祭短編部門パルムドール
IMDb評価:7.0/10
運転中の携帯電話で誰かと話をしている男性。会話の節々から、家族構成、妻と娘との関係、職業が読み取れる。
淋しさを紛らわすかのように必死で仕事をこなしているが、やはり娘のことが気がかりである。運転中からも垣間見れる男性の淋しさが切ない。
主演のBogdan Dumitracheはラドゥー・ムンテアンの助監督もされ、「不倫期限」のキャスティング・ディレクターも務めている。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/23
関連記事

【短編】 Cigarettes and Coffee <2004/ルーマニア> ★★

Un cartus de kent si un pachet de cafea/Cigarettes and Coffee
2004/10min/ルーマニア
短編
監督/脚本:クリスティ・プイウ
出演:ミミ・ブラネスク、Mihai Bratila、Victor Rebengiuc
受賞:2004ベルリン国際映画祭短編部門 金熊賞
IMDb評価:7.8/10

監督は「ラザレスク氏の死」のクリスティ・プイウ。出演は「不倫期限」で不倫をしていたミミ・ブラネスク

父と息子の喫茶店での会話。
煙草とコーヒーを楽しむ息子に対し、その良さがわからない父親。
要件だけで済ませたい息子に対し、世間話をしたい父親。
メニューをろくに見ずに注文する息子に対し、なかなか決められない父親。
正反対の2人の会話は少々くどいと感じるが、やはり台詞回しが特徴である。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/23
関連記事

ラザレスク氏の死 <2005/ルーマニア> ★★★★

death.jpgMoartea domnului Lazarescu/The Death of Mr. Lazarescu
2005/153min/ルーマニア
ドラマ、コメディー
監督/脚本:クリスティ・プイウ(Cristi Puiu)(長編監督2作目)
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク(Razvan Radulescu)
出演:イオアン・フィスクテーヌ、ルミニタ・ギョルジュー、ドルー・アナ、ダナ・ドガル、ドラゴス・ブクルミミ・ブラネスク、Bogdan Dumitrache、Gabriel Spahiu
IMDb評価:7.8/10
2005年 カンヌ国際映画祭 ある視点出品
2005年 アカデミー賞外国語映画賞 ルーマニア代表作品

社会度 ★★★★
ブラック度 ★★
余韻度 ★★★

日本ではシネフィルで放送されたのみ。

1980年代、チャウシェスク独裁政権下のルーマニアの首都、ブカレスト。62歳のラザレスク氏は集合住宅で3匹の猫と一人暮らしをしている。ある土曜の朝頭痛で目が覚めた。鎮痛剤を服用したが、効き目がない。さらに吐き気までもよおすようになってしまった。救急車を呼んだが、なかなか来ない。もう一度電話してみるが、来る気配がない。隣人に助けを求め、部屋に来てもらうと、血液混じりの嘔吐をしてしまう。酒の飲み過ぎだと思っていた隣人もようやく事態の深刻さに気付き、救急車を手配してくれた。頭痛と嘔吐が原因で救急車を呼んだが、救急隊員はお腹にしこりを見つけ、大腸がんの疑いをかけ、最初の病院へ搬送する…。

death1.jpg監督はルーマニアで今もっとも期待されている若手監督の1人。デビュー作「Stuff and Dough (Marfa si banii)」、本作、次作「Aurora(2010)」の長編3本全てがカンヌ映画祭に出品され、短編「Cigarettes and Coffee (Un cartus de kent si un pachet de cafea)」はベルリン国際映画祭短編部門で金熊賞を受賞している。
「Six Stories from the Bucharest Suburbs(ブカレスト郊外での6つの物語)」を構想中とのことで、本作はその1作目になる。2作目「Aurora」では自身が主演を務めている。監督と共に脚本を書き上げたのはラズヴァン・ラドゥレスク。国際的に評価の高い近年のルーマニア映画にはこの方が携わっていることが多く、個人的に注目したい方。先日アップした「不倫期限」にも名を連ねている。

タイトルに“死”が使われており、重くなりがちなテーマだが、不思議と悲壮感はない。深刻というよりどこか温かみを感じる。実際にラザレスク氏が死ぬわけではなく、明らかに弱り果て、この状態が続けばいずれ死を迎えてしまうという警告である。コメディーといっても笑い転げるというより、特に医師同士の台詞回しが面白く、シニカルなブラックに仕上げている。医師が練り上げたのかと思うほど医療専門用語が巧みに使われているが、病名や症状がストーリを理解する上でさほど重要なわけではない。

death2.jpg2時間半という長さ、弱っていくラザレスク氏、疲労困憊の医師たちの姿を延々と見せられることになる。病院を何軒もたらい回しにされ、医療現場の現状と問題点が浮き上がってくる。常に患者と医師の板挟みになっている救急隊員の目線で、患者側と医師側を客観的に描いているのが興味深い。

ラザレスク氏にとってはタイミング悪く交通事故が重なり、医師は緊急性を要する患者たちを優先したが、それは単なる言い訳に過ぎない。ラザレスク氏は低所得者の老人であり、病院はできれば処置したくない状況が覗える。共産政権下という時代背景だが、今の日本の医療現場も同じ状況である。老人の孤独な1人暮らしという点も日本と共通している。
一方、救急隊員と医師との身分格差も垣間見れる。ろくに患者の身体に触れないため、シコリに気がつく医師はいない。救急隊員が口を出せば、「救急隊員ごときが口挟むな」とお叱りを受けることとなる。しかしながら、救急隊員のほうがよっぽど人間的な対応であり、救急隊員なしでは見過ごされ、まともな治療も受けられなかったかもしれないという恐ろしい現状も見え隠れする。しかしながら医師も人間であり、24時間体制で働き詰めというわけにはいかない。医師不足も日本と同じ状況であり、浮かび上がってくる医療現場での多くの問題点は日本も対岸の火事ではない。

なお、ラザレスク氏を演じたイオアン・フィスクテーヌ氏は本作が遺作となり、2007年に他界されました。
ご冥福をお祈りいたします。

<鑑賞> 英語字幕 2011/10/23
関連記事
カテゴリ/Category by Countries
ユーザータグ/Tags

日本未公開(236)

 クシシュトフ・キェシロフスキ監督(16)

 キム・ギドク監督(14)

 キム・ボドゥニア(12)

 パディ・コンシダイン(11)

 ヒアム・アッバス(9)

 キム・ギヨン監督(8)

 ニコラス・ウィンディング・レフン監督(7)

 ロマン・ポランスキー監督(7)

 マイケル・ファスベンダー(7)

 アナス・トマス・イェンセン(7)

 ヴァンサン・カッセル(7)

 ハ・ジョンウ(6)

 ピーター・ミュラン(6)

 ミカエル・パーシュブラント(6)

 ステラン・スカルスガルド(6)

 マッツ・ミケルセン(6)

 クリストファー・ヨーネル(6)

 シェーン・メドウス監督(6)

 モーテン・ソーボー(5)

 ジェラール・ドパルデュー(5)

 トゥーレ・リントハート(5)

 ファティ・アキン監督(5)

 ダール・サリム(5)

 マリア・ボネヴィー(5)

 シン・サンオク監督(5)

 マリウス・ホルスト(5)

 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督(4)

 イ・チャンドン監督(4)

 ジョセフ・ゴードン=レヴィット(4)

 デイヴィッド・デンシック(4)

 アレクサンドル・ソクーロフ監督(4)

 ウルリッヒ・トムセン(4)

 ラース・ミケルセン(4)

 ヘンリク・プリップ(4)

 カティ・オウティネン(4)

 シャーロット・ランプリング(4)

 アンジェイ・ワイダ監督(4)

 クリスティナ・ヤンダ(4)

 ミシェル・ウィリアムズ(4)

 ドラゴス・ブクル(4)

 ラズヴァン・ラドゥレスク(4)

 シャルロット・ゲンズブール(4)

 グザヴィエ・ドラン監督(4)

 パプリカ・スティーン(4)

 オルジード・ルカセウィッツ(4)

 Jens_Jørn_Spottag(4)

 チェ・ミョンス(4)

 ヤコブ・セーダーグレン(4)

 ムン・ソングン(4)

 チャン・リュ監督(4)

 フルーツ・チャン監督(4)

 イネス・エフロン(4)

 トリーヌ・ディルホム(4)

 レオナルド・スバラグリア(4)

 ミハイル・クリチマン(4)

 ライアン・ゴズリング(4)

 アッバス・キアロスタミ監督(3)

 マジッド・マジディ監督(3)

 キム・シャピロン監督(3)

 スラッコ・ラボヴィック(3)

 ロメイン・ガヴラス監督(3)

 ビョルン・スンクェスト(3)

 リカルド・ダリン(3)

 イーベン・ドールナ(3)

 ソニア・リクター(3)

 ルイス・プエンソ監督(3)

 ノオミ・ラパス(3)

 ギョーム・カネ(3)

 ピルウ・アスベック(3)

 ミョン・ゲナム(3)

 ケイト・マーラ(3)

 アシュラフ・バーホム(3)

 サリー・ホーキンス(3)

 キム・ソヨン監督(3)

 ルイス・トサル(3)

 ブラッドリー・ラスト・グレイ監督(3)

 アレクサンダー・スカルスガルド(3)

 スティーヴン・レイ(3)

 ペップ・マンネ(3)

 オリヴィエ・バーテレミ(3)

 ホン・サンス監督(3)

 ムハンメド・マジュド(3)

 ラース・フォン・トリアー監督(3)

 パク・チア(3)

 トマス・ヴィンターベア監督(3)

 セバスチャン・イェセン(3)

 レスリー・シャープ(3)

 トーマス・ターグース(3)

 グヴェン・キラック(3)

 ウスマン・センベーヌ監督(3)

 ソ・ジソプ(3)

 ガエル・ガルシア・ベルナル(3)

 ボディル・ヨアンセン(3)

 ティルダ・スウィントン(3)

 フリドリック・トール・フリドリクソン監督(3)

 AndersDanielsenLie(3)

 キム・フォップス・オーカソン(3)

 クリスティアン・ムンジウ監督(3)

 スサンネ・ビア監督(3)

 ピーター・ガンツェラー(3)

 パク・アム(3)

 イ・ファシ(3)

 キム・ミョンミン(3)

 トビアス・リンホルム(3)

 チェ・ウニ(3)

 ウルスラ・メイヤー監督(3)

 ニコライ・リー・カース(3)

 ウルリヒ・ザイドル監督(3)

 ミカエル・ニクヴィスト(3)

 ダニー・ボイル監督(3)

 ペルニラ・アウグスト(3)

 クリスティ・プイウ監督(3)

 キム・ハヌル(3)

 ミミ・ブラネスク(3)

 ニコラス・ブロ(3)

 BogdanDumitrache(3)

 アンヌ=マリー・ダフ(3)

 ルシア・プエンソ監督(3)

 レオン・カーフェイ(3)

 ナタリー・ポートマン(2)

 ジャック・ノロ(2)

 セシリー・A・モスリ(2)

 ミカエル・ハフストローム監督(2)

 マリア・バルベルデ(2)

 ノア・テイラー(2)

 ソル・ギョング(2)

 ユン・ジンソ(2)

 チェ・ミンシク(2)

 チョン・ジュノ(2)

 キム・ジェロク(2)

 ムン・ソリ(2)

 アリ・スリマン(2)

 エラン・リクリス監督(2)

 イ・ジョンジェ(2)

 チュ・ジンモ(2)

 チョ・ジェヒョン(2)

 イ・ミスク(2)

 シム・ジホ(2)

 キム・ドンウク(2)

 チョン・ドヨン(2)

 キム・ガンウ(2)

 ペク・チニ(2)

 カン・シニル(2)

 キム・ナムギル(2)

 アンドレア・アーノルド監督(2)

 パク・チョンジャ(2)

 シベル・ケキリ(2)

 ビロル・ユーネル(2)

 ヤヌシュ・ガヨス(2)

 キム・セロン(2)

 フランソワ・オゾン監督(2)

 ガス・ヴァン・サント監督(2)

 ジェーン・カンピオン監督(2)

 アンジェイ・ズラウスキ監督(2)

 ジュリエット・ビノシュ(2)

 マイク・リー監督(2)

 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督(2)

 パク・チャヌク監督(2)

 アンドレイ・タルコフスキー監督(2)

 トラン・アン・ユン監督(2)

 ソン・ヒョナ(2)

 オリヴィエ・グルメ(2)

 マルック・ペルトラ(2)

 アキ・カウリスマキ監督(2)

 ギャスパー・ノエ監督(2)

 ミシェル・シュボール(2)

 レフ・マイェフスキ監督(2)

 GabrielSpahiu(2)

 キリアン・マーフィ(2)

 クレイグ・ロバーツ(2)

 スティーヴン・ソダーバーグ(2)

 SettarTanriögen(2)

 スティーブ・マックイーン監督(2)

 キャリー・マリガン(2)

 イザベル・ユペール(2)

 ニール・シュナイダー(2)

 クシシュトフ・ピチェンスキ(2)

 オーレ・ボールネダル監督(2)

 フランソワ・クリュゼ(2)

 キッレ・ヘルム(2)

 ナーセル・ヘミール監督(2)

 ドメ・カルコスキ監督(2)

 ペルッティ・スヴェホルム(2)

 ウド・キアー(2)

 ナディーン・ラバキー監督(2)

 チャン・チェン(2)

 トーマス・ヴィルム・ヤンセン(2)

 アンドレアス・ウィルソン(2)

 アモス・ギタイ監督(2)

 サーデット・アクソイ(2)

 ニーナ・ホス(2)

 イ・ジェフン(2)

 ツヴァ・ノヴォトニー(2)

 Rosalinde_Mynster(2)

 ニコライ・アーセル監督(2)

 パトリシア・シューマン(2)

 ミケール・ビアクケーア(2)

 クリスティアン・ペツォルト監督(2)

 ジュリア・シャハト(2)

 ラン・ダンケル(2)

 ペーター・アンデション(2)

 グスタフ・スカルスガルド(2)

 ポール・シュレットアウネ監督(2)

 Shanti_Roney(2)

 Sarah_Boberg(2)

 Annette_K.Olesen監督(2)

 ミキ・マノイロヴィッチ(2)

 ズラッコ・ブリッチ(2)

 カタリン・ミツレスク監督(2)

 キャリー・ジョージ・フクナガ監督(2)

 ShantiRoney(2)

 ゾーイ・カザン(2)

 リチャード・ジェンキンス(2)

 ラミン・バーラニ監督(2)

 ルクレシア・マルテル監督(2)

 MadsSjøgårdPettersen(2)

 トム・マッカーシー監督(2)

 レハ・エルデム監督(2)

 パヴェル・パヴリコフスキー監督(2)

 ハン・ウンジン(2)

 ヴィンセント・ギャロ(2)

 クレール・ドゥニ監督(2)

 ハビエル・バルデム(2)

 ホリデイ・グレインジャー(2)

 ニコラ・デュヴォシェル(2)

 チョン・ジェホン監督(2)

 エレナ・アナヤ(2)

 フリオ・メデム監督(2)

 マキシム・ゴーデット(2)

 キム・ヘジャ(1)

 クリスティーナ・ヤンダ(1)

 ダレン・アロノフスキー監督(1)

 ウォンビン(1)

 チャン・チョルス監督(1)

 シャルナス・バルタス監督(1)

 フィリップ・リオレ監督(1)

 アニエスカ・ホランド(1)

 コ・ソヨン(1)

 イ・ビョンホン(1)

 ホ・ジュノ(1)

 ポール・ラヴァーティ(1)

 ニーナ・イヴァニシ(1)

 チ・ジニ(1)

 キム・スンホ(1)

 アレックス・ファン・ヴァーメルダム監督(1)

 オム・テウン(1)

 Henning_Valin_Jakobsen(1)

 パク・ヘイル(1)

 カン・ジファン(1)

 イエジー・スコリモフスキ監督(1)

 シン・ミナ(1)

 ビアギッテ・ヨート・スレンセン(1)

 ソーレン・マリン(1)

 ジェニファー・ローレンス(1)

 Signe_Egholm_Olsen(1)

 ジャファール・パナヒ監督(1)

 ハ・ジウォン(1)

 キム・スンウ(1)

 キム・ユンジン(1)

 エマニュエル・セニエ(1)

 イム・スジョン(1)

 ナ・ホンジン監督(1)

 イェジ・シュトゥール(1)

 ヴァンサン・ランドン(1)

 ノルマ・アレアンドロ(1)

 ミーラー・ナーイル監督(1)

 アナマリア・マリンカ(1)

 ブラッド・アンダーソン監督(1)

 AlexandruPapadopol(1)

 イム・グォンテク監督(1)

 ユン・ジョンヒ(1)

 ブリュノ・デュモン監督(1)

 スカーレット・ヨハンソン(1)

 マリア・ポピスタス(1)

 TomHarper監督(1)

 村上春樹(1)

 キム・スヨン監督(1)

 ヴィルジニー・ルドワイヤン(1)

 ジョン・マルコヴィッチ(1)

 ダニス・タノヴィッチ監督(1)

 ケヴィン・スペイシー(1)

 ヤン・クーネン監督(1)

 チョン・ジヨン監督(1)

 カリーヌ・ヴァナッス(1)

 ヴァンサン・ロティエ(1)

 アダム・フェレンツィ(1)

 アミール・ナディリ監督(1)

 リュディヴィーヌ・サニエ(1)

 パブロ・トラペロ監督(1)

 イム・サンス監督(1)

 RomaGasiorowska(1)

 リシャルト・ブガイスキ監督(1)

 ロネ・シェルフィグ監督(1)

 チャン・フン監督(1)

 ヴィム・ヴェンダース監督(1)

 アブデラマン・シサコ監督(1)

 イ・ジョンギル(1)

 マルティン・シュリーク監督(1)

 キム・ジョンチョル(1)

 ジョン・キューザック(1)

 

メールフォーム/Mail Form
ご自身のメールアドレスを知られたくない方は、コメント欄からどうぞ。

名前:
メール:
件名:
本文:



    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。